ネット句会報2015年2月

 

天為インターネット句会20152月分選句結果 (作者名の後ろの点は互選点)
 ※特選句、入選句内の順番は互選点、句稿番号の順。また互選句は高点句から順に、同点句は句稿番号順に並べました。
※尚、誠に申し訳ございませんが、失名となっております句の作者は、俳句ネット天為句会までご一報下さいませ。

<対馬康子編集顧問選特選句>
凍てし世のパンを浸しぬ赤き酒  早川恵美子  (3点)
凍てし「夜」ではなく「世」なのである。思春期に読んだ世界文学全集の一場面のような、乾いたパンと赤い酒。込められた怒り、郷愁、信仰、生活。浸すのはスープであろうが、その省略が巧い。(康子)

すべての原罪を許すような静かな一シーンです。(博子)

 

真っ向に雪の山々雑煮食ぶ  失名  (2点)
淡々とした事実の中に、北国に生きるものの力強さが表されている。山々の精霊とともに新しい年を迎える。雑煮という季語がよく効いている。
(康子)

<対馬康子編集顧問選入選句>
風花や青空どこか破れゐて  上脇 立哉  (2点)
風花は確かに青空からちらちらと舞い降りてきます。まるでどこかに傷があるような、春浅い空の感じをうまく表現なさっていると思います。(明)

 

父は子へ兄は妹へ読み初む  明隅 礼子  (2点)

 

鉄鎖巻くカレーの市民冬深し  髙橋紀美子  (2点)
カレー市を守った6人の英雄の苦悩とロダンの人間存在に対する洞察力。(柳絮)

 

のっけから鬼の雄叫び島の春  和田 仁  (2点)

 

目薬師のめの字二つの絵馬ぬくし  滝澤たける  (1点)

 

船を待ち若布うどんを啜る島  西野編人  (1点)

 

絶え間なくマントを揺らす子の手足  土屋香誉子  (1点)
赤ちゃんの成長する力強さを思ひました。(小夜子)

 

遠海の魚荷に揺るる手毬かな  妹尾 茂喜  (1点)

 

阿蘇岳の灰にまみれし滝氷柱  西野 編人  (1点)

 

虎落笛わが祖も京を落ち来しか  安光 せつ  (1点)

 

<互選句>
寒怒濤佐渡の島影砕きををり  内藤 繁  (6点)
豪壮な光景です。  (芳生)

 

落暉へと鳥の群れ立つ枯野かな  満井 久子  (5点)
落暉の景色の写生が佳い。(芳彦)

 

波の花泡のひとつは人魚姫  荒木那智子  (4点)
生まれるのも消えるのもはかない泡の命、、、恋のため息も泡と消えたのでしょうか。(志昴女)

 

梟の鳴きかはす夜や窯火守  室 明  (3点)
窯火守は寂しいですね!(芳彦)

 

埋もれゆく少年除夜の砂時計  小橋 柳絮  (3点)
古典的な悩み、煩悩とは違う新しいかたちの悩みを持つ今の少年像を把えたところに 新鮮さがある(繁)

  

埋もれゆく少年~何に埋もれるのか?阿部公房の「砂の女」の少年版か?日常の理不尽さの中での、自己への問いかけか!除夜の砂時計がその刻を刻ざんで逝く~ミステリアスでシュールな作品、好きです。(文)

 

薄氷や縒りを戻すという話  失名  (3点)
季語が効いています。(芳生)

危なっかしくて何時もひやひやしながら見守っています。大丈夫かなあ。(小夜子)

 

柿赤し石見の国のなまこ壁  満井久子  (4点)
島根県の街の秋の景が見えてきました。(編人)

 

追伸に雪ですとあるメールかな  上脇 立哉  (3点)
寒い季節の人恋う気持が出ていると思います。受け手もまた返信したくなりますね。(明)

 

知覧にて言葉なきまま落葉踏む  満井 久子  (3点)
知覧という地名がしみじみと感ぜられる。(芳彦)

 

淡雪や見込みの深き志野茶碗  石川由紀子  (3点)
志野焼白釉の厚みと柔らかさと生地の素朴な味わいはまさに淡雪の風情。(柳絮) 

少し胴長の志野茶碗の姿に、淡雪のイメージが重なりました。(博子)

 

開くほど白透けてゆき冬薔薇  失名  (3点)

 

津軽弁とつとつ話す雪女郎  失名  (2点)
雪深い津軽が面白く表現。 (編人)

 

地に朽ちる手袋煌々と月渡る  失名  (2点)
地に朽ちる手袋~持ち主のない手袋、かってはそこに暖かい人の手があった。煌々と月光がその朽ちた手袋を浮き上がらせる。物語があって、怪奇的。(文)

 

冴ゆる夜の新美南吉童話集  安光 せつ  (2点)

 

冬日燦安産祈願の丸ろき絵馬  鈴木 楓  (2点)

 

本の山崩れて春のあさきこと  失名  (2点))
本の山の崩れ」に「春の浅さ」を感じる作者の繊細な心、しかも平仮名表記により純粋さも生れ、日常の何気ない変化に詩情を漂わせている。(繁)

 

ウルマンの一詩を胸に春を待つ  内藤 芳生  (2点)
元気をいただいた一句でした  (博子)

 

蝋梅のひとり静かに針仕事  失名  (1点)
針仕事をするときに蝋梅の開花にも気づいて、何と風雅な心ですか。(劉海燕)

 

病み上がり白湯をゆつくり春浅し  斎藤みつ子  (1点)

 

鳩サブレ丸き鳩胸春隣  江原 文  (1点)

 

八角堂円く走りて追儺鬼  今井 温子  (1点)
鬼との取り合わせで、「円く走りて」の表現がユーモラス。(ユリ子)

 

白墨の幽く青く春隣  渡部有紀子  (1点)
白墨に「幽く青い」と見たところに作者の鋭い感性が認められる。(繁)

 

日本の女美し寒椿  失名  (1点) 
私もこんな女になりたい(みつ子)

 

踏まれても踏まれても明日霜柱  早川恵美子  (1点)
そうだ!明日がある!春になったら明日はなくなるかも、、しれないが。、(志昴女)

 

梟のやがて目を閉ず明け星に  小野 恭子  (1点)

 

冬帽子駆け行列に加ははれり  佐藤 武代  (1点)
靴の紐でもゆるんだのでしょうか?遅れた行列に元気に勢いよく戻る様子が目に浮かびます。北風もなんの、季語良いです。(小夜子)

 

天誅の士魂伝えて梅真白  今井 温子  (1点) 
水戸藩か長州藩の話ですか。幕末の迫力。(編人)

 

オルガンの昭和の調べ春隣り  安藤小夜子  (1点)
足踏みオルガンの音を思い浮べる。「春よ来い」「春の小川はー」の調べが聞こえるよう (ユリ子)

 

初夢の芭蕉と下る最上川  内藤 芳生  (1点)
いいな~♪ 船がひっくり返りそうな大逆転が、、、で夢が覚めるか?笑。(志昴女)

 

初春のひかり啄み八咫烏  小橋 柳絮  (1点)

 

紙漉くや雪晒しとて白ませり  失名  (1点)

 

雪晴の空には銀の雲光る  中川手鞠  (1点)

 

春ひとりゴツホの部屋の椅子ふたつ  失名  (1点)

 

肩の紐腰の紐解き女正月  渡部有紀子  (1点)

 

初風や水琴窟の呼吸音  失名  (1点)

 

火の気なき子規の小部屋に大火鉢  失名  (1点)
(子規堂にて)

 

下萌や流木一つ浮き沈み  失名  (1点)

 

宇治十帖浮舟の図の金屏風  失名  (1点)
宇治川で匂宮と船遊びをする浮船。画面構成の不安定さが終局を暗示する。(柳絮)

 

一箸に七草の香の絡まれり  失名  (1点)

 

ぼんぼりの影を映して雛屏風  失名  (1点)

 

星飛ぶや白壁つづくシナゴーグ  髙橋紀美子  (1点)
「星飛ぶ」という季語と、ユダヤ人の栄光と苦難の歴史があっていると思いました。(博子)

 

ボロ市に昭和の品を山積みし  土田 栄一  (1点)

 

春の雪美形のゲイの咽喉仏  熊谷かをるこ  (1点)
ゲイの咽喉仏だけでは詩情がない、美形のゲイと言ったところに物語がある。若い頃の、三輪さんが丸山明宏と呼ばれていたころ~妖艶な「毛皮のマリー」~三島由紀夫に愛されていたゲイ~いいね~(文)

 

なにもかも世捨ての形冬山河  和田 仁  (1点) 

以上

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