ネット句会報2015年3月

 

天為インターネット句会20153月分選句結果 (作者名の後ろの点は互選点)
 ※特選句、入選句内の順番は互選点、句稿番号の順。また互選句は高点句から順に、同点句は句稿番号順に並べました。

<日原傅編集顧問選特選句>
白梅や絵馬をはみ出す願ひごと   満井久子   (5点)
白梅の咲く神社の境内。掛けられた絵馬のなかに沢山の字を連ねたものがある。「絵馬」であるから「はみ出す」という措辞は、実際の光景を描写したというよりも願い事を書き記した人の溢れるような思いを伝えるものとして解釈すればよかろうか。絵馬を書いたのは作者自身なのかもしれない。(傳)

湯島天神の梅だろうか。重なるように幾つも掛けられた絵馬、その一枚一枚の絵馬から願い事が溢れている。白梅とも響きあい、人々の願いや希望を感じる。 (ユリ子)

ありふれた早春の神社の風景を中七で生き生きとしたものにした(閑生)

ひとつづつ色の減りたる雛あられ   明隅礼子   (1点)
淡く色付けされた雛あられ。基本となる紅白に緑や黄色といった色も加わる。一粒一粒食べるごとに色が減ってゆくと捉えたところに、その色彩を愛でる雛あられらしさが捉えられた。子どもは目立つ色のものから選んで食べてゆくところがあるので、一層その感じがするのであろう。(傳)

<日原傅編集顧問選入選句>
病名を告げず櫻の下にゐる  熊谷かをるこ  (5点)

 

春の雨釉薬ぬりし能登瓦  荒木那智子  (2点)
釉薬を塗った能登瓦に春の雨が降っている。情緒あり。(芳彦)

 

陽炎や飛鳥の辻の標石  内藤芳生  (1点)

 

蕗味噌の香も法隆寺会式ころ  今井温子  (1点)
きれいな句です、奈良ではお会式のころに蕗味噌か。離れてもしみじみ味(香)で故郷を思います。(志昴女)

 

ミモザ咲くちりめん本のフランス語  土屋 尚  (1点)

 

焼け落ちし塔の礎石や陽炎へる  内藤芳生

 

待針を花のごとくに針供養  森山ユリ子

 

霏々と雪背骨を焦がす放射線  小橋柳絮

<互選句>
神々の影絵遊びや蜃気楼  室 明  (8点)
島原の雲仙の登山道で見た蜃気楼は上五の感じ(編人)

蜃気楼は神々の影絵遊びとしたところ面白い。(芳彦)

蜃気楼を神々の影絵遊び、と見ているのが面白い。(ユリ子)

言葉は知っていても見たことがありません。蜃気楼の見える条件神様が作るのでしょうか?影絵のような美しい蜃気楼一度見たいものです。(小夜子)

 

貸自転車磨きぬかれて春隣  江原 文  (5点)
冬の間は閑古鳥の鳴いていた貸自転車屋。山里の名もない観光地。ぴかぴかに磨いて客を待つ主人の気持ちのよく伝わってくる (繁)

春間近の浮き立つ気分を面白い句材で表現された(閑生)

 

語り部の時に燃立つ暖炉の火  松山芳彦  (4点)
暖炉を囲み、語り部の話を聞いている光景が目に浮かぶ。「時に燃え立つ火」によって、話に陰翳が生まれる。(ユリ子)

燃え立った暖炉の火影が語り部の顔を浮かびあがせる。語りのクライマックスは?(小夜子)

 

春の日の枯山水にあふれをり  内藤 繁  (4点)
枯山水の白砂が光る庭園。心が暖まります(編人)

 

同じ方見遣りてをりぬ夫婦雛  上脇立哉  (3点)

 

うたた寝や太宰の宿の春炬燵  山下閑生  (3点)
戦後の作家太宰の宿の一時。うたた寝に引かれました(編人)

 

春潮の一の鳥居を浄めをり  内藤 繁  (3点)
大きな景でありながら春の雰囲気がよく伝わる(閑生)

 

信号も血筋も無視の恋の猫  土田栄一  (3点)
人間にもこのような恋ができたら…。そうなればこのような俳句は詠まないでしょうね。共鳴する小生、作者の気持ちがよくわかりますよ(繁)

 

春灯や鬼も阿修羅も神なりし  佐藤博子  (3点)
仏の守護神になった阿修羅は幸せな元鬼。鬼のままの鬼は、追われる地域神様か。(志昴女)

 

信楽の狸目を剥く霜くすべ  早川恵美子  (2点)
霜くすべなんて知らなかったなぁ、着目がいいですね、狸ならずとも目を真ん丸に(笑)(志昴女)

 

園児らの名前づくしの身の周り  安藤小夜子  (2点)

 

正客の揺らぐ一瞬椿落つ  石川由紀子  (2点)
粛々とすすむ亭主と正客のやりとり。そのやりとりがその席の雰囲気を最高のものにする。ところが掲句、正客の気が付かないほどの動きで「椿落つ」とは!亭主はそのようなことの無いように十分に注意を払って客をお招きしているはずなのに!。何か秀吉と利休の席に紛れ込んだのでは思わせるものが漂っている(繁)

 

桂より生れし観音陸奥は春  室 明  (2点)

 

高みへと雲を乗り継ぐ雲雀かな  竹田正明  (2点)
「ノンタン雲に乗る」を思い出しました。雲雀の季語が魅力的です。(博子)

 

朧夜の三線ぽつり月桃茶  土屋香誉子  (1点)
外は朧夜で、折から三線の音が聞えて来るところで月桃のお茶を呑んでいる。こんな事があるのか絵に描いた様だ。(芳彦)

 

草餅や母の味には今一つ  斎藤みつ子  (1点)
こうして伝えられていくお袋の味(小夜子)

 

寒戻る竿に巻きつく国旗社旗  上脇立哉  (1点)

 

出番待つ手押し車に春の雪  石川由紀子  (1点)
春の雪が降り初め、外出できず残念なような暫し眺めていたいような気持ちだったのでしょうか?(博子)

 

春雨や鏡のなかの明るき夜  明隅礼子  (1点)

 

上段に細面なる古雛  佐藤武代  (1点)
引き継いでこられた古雛の気品を感じました。(博子)

 

啓蟄やスケートボードの宙返り  江原 文  (1点)

 

天窓の春光淡き茶を点てる  柴﨑万里子  (1点)

 

春寒のチョーク掠れしランチメニュー  渡部有紀子  (1点)

 

スカーフの犬が先導牧開き  山下閑生  (1点)

 

手鏡に春セーターの盆の窪  妹尾茂喜  (1点)

 

あくびして睡魔にもどる竈猫  小橋柳絮  (1点)

 

断捨離の出来ぬままなり木瓜の花  上川美絵  (1点)
私も同じくです。(みつ子)

以上

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