ネット句会報2015年5月

 

天為インターネット句会2015年5月分選句結果 (作者名の後ろの点は互選点)
 ※特選句、入選句内の順番は互選点、句稿番号の順。また互選句は高点句から順に、同点句は句稿番号順に並べました。

 

<日原傳編集顧問選特選句>
鳳笙の音にはじまれる孔子祭  西脇はま子 (1点)
孔子祭」は孔子をはじめとする儒教の先哲を祀る儀式。「釈奠(せきてん・おきまつり)」とも呼ばれる。湯島聖堂では現在四月の第四日曜に行なわれている。古い孔子廟のある佐賀県多久市のそれも名高い。掲句は「鳳笙の音」に焦点を当て、厳かな儀式のさまを描いた。「鳳笙」という漢語が働いている。李白の楽府詩「鳳笙篇」の句「鳳笙去去 窮まり已(や)むなし」も思われる(傳)。

鳳笙の音にはじまれる孔子祭 鳳笙の音で始まる孔子祭が眼に浮かぶ(芳彦)

 

羽閉ぢて燈心蜻蛉群青に  佐藤博子
「燈心蜻蛉」は夏の季語。「糸蜻蛉」とも呼ばれるか細い蜻蛉。ものに止まる時、普通の蜻蛉とは違って、蝶のように翅を合わせて止まるところに特徴がある。糸蜻蛉にはいろいろな色のものがいるが、掲句の場合は翅が青みを帯びた種類なのであろう。翅を閉じたことでその青が濃くなった。糸蜻蛉の生態の一面を捉えた作(傳)。 

 

<日原傳編集顧問選入選句>
春潮の渦百雷の鳴戸かな  西野編人  (5点)
中七の渦百雷がきいて勇壮な感じがする(豊)

百雷の鳴門がいいですね、(貞郎)

 

 

一枚の葉に争はず蝸牛  早川恵美子  (4点)
一枚の葉に、二、三匹の蝸牛が乗っている。動いているのかいないのか、蝸牛の性質をよくとらえた句だと思う(光男)

 

緑さす息を吹き込む硝子玉  荒木那智子  (3点)

 

指呼の間にパルミラの在り蜃気楼  早川恵美子  (2点)
ローマとペルシャの中間に位置し交易で栄えたパルミラ蜃気楼の如く往時が蘇る。(柳絮)

 

本郷の寺大庇柿若葉   森山ユリ子  (1点)

 

街道や古都の鍛冶屋の飾り武具  武藤スエ子  (1点)

 

からたちの棘をけぶらす春の雨  武藤スエ子  (1点)

 

楽廊の青き玻璃窓聖五月  斎川玲奈  (1点)

 

<互選句>
明日葉や昼月淡き流人島  佐藤博子  (8点)
三宅島を思い出す句です(芳彦)

流人の「いつか島を出たい」という憐れをも感じさせる措辞が巧み。(閑生)

 

囀やバスを待つ間の丸太椅子  満井久子  (8点)
緑豊かな周りからは盛んに囀りがきこえる。手作りの丸太椅子に座ってなかなか来ないバスを待つのも苦になるどころか至福のひと時。(明)

 

父祖の地の匂ひや燕低く飛ぶ  上脇立哉  (6点)
久しぶりに故郷を訪ねた作者が青葉や田畑の匂を思い出しながら燕もこの地を懐かしんで低く飛んでいるのだと感じたのではないでしょうか。(明)

 

花言葉信じ求むる種袋  満井久子  (6点)
花が咲く頃には花言葉どおりに、ハッピーな日々を迎えられることを祈っています。種袋から心の内面的なものを詠まれたところが素晴らしい(繁)

願いを託して種袋を買うという花はどんな花なのかと想像したくなる。(閑生)

どんな花言葉のどんな花の種でしょう。ほのぼのとしたお人柄を思います。種を蒔くにも夢があって楽しいことと同感します。(ユリ子)

花言葉はなんだったのだろう。愛とか幸せとかが書いてあったのだろう。それを惹かれて思わず買ってしまった女心が上手く表されている(光男)

 

ミレーの絵抜け出してきて種を蒔く   伊藤高甫  (6点)
広い風景。種蒔く姿が美しく目に浮かびます。(ユリ子)

ミレーの絵抜け出してきて種を蒔く俳句でしかできないワザですね。だから俳句が楽しい! どんどん発表してください(繁)

こんなことが起っても良いんじゃないですか(芳彦)

 

爪先に感じる春のハイヒール  石川由紀子  (5点)
軽やかな春のすがすがしさが感じられる句(豊)

 

吹き散るはムンクの叫び春一番  松山芳彦  (4点)
ムンクが叫んでいる様子が目に浮かびます(みつ子)

 

文字掠れ西行塚に花の雨  浅井貞郎  (4点)
花の下での死を願った西行に相応しい情景かも。(閑生)

 

長文の手紙届きぬ昭和の日  小高久丹子  (3点)

 

松園の美女の襟元夏近し  竹田正明  (3点)
「序の舞」の女性の清澄高雅な一瞬の静寂による夏への予兆。(柳絮)

 

じゃんけんに勝って蝶々に生まれたの  あさだ麻実  (3点)
どこかでこの句を詠んだような気ガします、面白い句ですから、(貞郎)

 

朝寝してかの数式を解きにけり  中川手鞠  (3点)

 

大阪の猫は人見る暮かぬる  小高久丹子  (3点)
面白い!あきんど魂の大阪人の在り様を猫に置き換える作者、多分この猫は一筋縄では懐かない、いいね~こんな可愛くない猫が好きです。(文)

 

自分史の跋を書き終へ明易し  内藤芳生  (2点)

 

花祭り誕生佛は三頭身  岡崎志昴女  (2点)

 

チューリップ垣に干しある子供傘  嶋田夏江  (2点)
昨日の雨も上がり、子供たちのはしゃいでいる様子が見えてきます。(明)

 

風と陽が色を溶かしてミモザ咲く  安藤小夜子  (2点)

 

夏立つや機関車の名は金太郎  土屋香誉子  (2点)
力持ちの金太郎に「夏立つ」がマッチして、生き生きとした句になったと思います。(ユリ子)

金太郎号に乗りたくなりました。(麻実)

 

行列の先は根の国蟻往けり  渡部有紀子  (2点)

 

何処をどう辿れば彼の日の花みずき  熊谷かをるこ  (2点)
方向音痴の私は、よくこういうことを経験します。でもそれ以上に過去に出会った花みずきにまつわる思いを感じた句でした。(博子)

 

行く春を逆上がりの子足蹴りに  土田栄一  (2点)
子供にとって、行く春は大人ほど感傷に浸るほどのものでは無い。一つの季節の終わりにしか過ぎない。下五の足蹴りが効いています。(文)

 

父の日は夫在りし日のお赤飯  熊谷かをるこ  (2点)

 

賜りし傘壽の朝春惜しむ  荒川勢津子  (2点)

 

蛍飛び吾は昭和の船を漕ぐ  原 豊  (2点)

 

柳絮飛ぶしたたかに生き第二幕  小野恭子  (2点)

 

開帳寺膝にかさねし少女の手  安光せつ  (2点)
花言葉はなんだったのだろう。愛とか幸せとかが書いてあったのだろう。それを惹かれて思わず買ってしまった女心が上手く表されている(光男)

 

かぎろひのジェットゆるゆる発ちにけり  山下閑生  (1点)

 

囀りや山路に馴染む膝のばね  安光せつ  (1点)

 

草履掛け子規旅立ちに春の雨  浅井貞郎  (1点)
眼をつぶると情景がみえてくるような気がする句(豊)

 

教室の窓に響くや耕運機  佐藤武代  (1点)

 

武夷の茶の香気あふるる春の宵  西脇はま子  (1点)

 

行く春や素手で洗ひし観世音  根岸三恵子  (1点)

 

逝きし人伴ひて来しさくら山  荒川勢津子  (1点)

 

母の日の赤きイヤホン買ひにけり  妹尾茂喜  (1点)
赤の似合う素敵なお母様にご挨拶がしたい(繁)

 

ひとひらの花追ひあをき少女の目  小橋柳絮  (1点)
外国の少女が舞い散る花びらを追いかけている景が、美しいと思いました。きっと髪はウェーブのかかった金髪?!(博子)

 

白象に乗りて茶を受く花祭り  岡崎志昴女  (1点)
釈迦懐胎のマーヤーの夢の中へ歩み入る幻想。(柳絮)

 

若鮎の堰越せぬまま長良川  髙橋紀美子  (1点)

 

花冷えに少し早めの投句かな  加茂智子  (1点)

 

愛称で呼び始めけり新入生  佐藤武代(1点)
やっと緊張感がとれはじめた一年生、中七の呼び始めけりに、その思いが上手く表現されている。(文)

 

二日よりラジオ講座や春の宵  加茂智子  (1点)

 

春蘭やしとしと雨にうすみどり  片山孝子  (1点)

 

八重櫻雲の奥より海潮音  關根文彦  (1点)

 

青芝や独り素振りのフェンシング  室 明  (1点)

 

瞑目の地球微熱のチューリップ  小橋柳絮  (1点)
面白い(麻実)

 

停泊の客船白く夏めける  森山ユリ子  (1点)

 

朧月湖辺ベンチの老夫婦  劉海燕  (1点)
共に経た年月を感じられる夫婦の後ろ姿。朧月という季語が効いているとおもいました。(博子)

 

入園児ひばりこまどりつばめ組  荒木那智子  (1点)

 

聖堂や蝶縺れ合ふ静けさよ  阿部 旭  (1点)

 

新緑のキャンパスに新緑の風  中川手鞠  (1点)

 

滾る湯のずつと向かうの山桜  明隅礼子  (1点)

 

蛙鳴き水音と競ふ岩の丈  原 豊  (1点)

 

玻璃歪む秋水書院若葉雨  鈴木 楓  (1点)

 

木苺の花上り框に手小荷物(チッキ)  渡部有紀子  (1点)

 

公園はいま花屑を敷きつめ  土屋 尚  (1点)

 

西行の筆洗ひたる清水疾し  室 明  (1点)


以上

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