天為ネット句会報2015年11月

 

天為ネット句会2015年11月分選句結果 (作者名の後ろの点は互選点)
 ※特選句、入選句内の順番は互選点、句稿番号の順。また互選句は高点句から順に、同点句は句稿番号順に並べました。
 ※一部インターネットで表示できる文字に置き換えております。

<日原傳編集顧問選特選句>

蘭陵王影を大きく月に舞ふ       西脇はま子  (3点)
「蘭陵王」は北斉(550~577)の皇族である高長恭をいう。その武勇伝を材とした同じ名の舞楽がある。自分のやさしい顔を隠すために戦場で面を付けていたという話が伝わる蘭陵王。 舞楽の「蘭陵王」は吊り顎の金色の面を付けて踊るようだ。その舞が月の差す屋外で催されているのであろう。「影を大きく」というところ、観衆の目を奪うように踊る勇壮な姿が想像されてくる(傳)。

吉野には青の権現源義忌        佐藤博子   (1点)
吉野の金峯山寺蔵王堂の本尊である金剛蔵王権現は青い顔をした異形の巨大な仏像三体である。その秘仏が今年の十月末から十二月初めにかけて特別に御開帳されている。「青の権現」はそれを指すのであろう。 角川源義の忌日は十月二十七日。
源義には「花あれば西行の日とおもふべし」という有名な句がある。西行は陸奥国への旅から戻ったあと高野山に入って草庵を結ぶが、その時期は毎年のように吉野に花を見に通ったという。吉野山には西行が三年間幽居したと伝えられる西行庵もあり、西行を慕う芭蕉も訪れている。源義も吉野という地に特別な思いを抱いていたことであろう(傳)。

<日原傳編集顧問選入選句>
肉じゃがの程よく甘く文化の日     熊谷かをるこ (8点)
庶民の享受する自由・平和・文化の象徴としての程よき甘さ。(柳絮)

「ほどよく甘く」がいい表現だと思う。季語の斡旋もいい。(光男)

「肉じゃが」と「文化の日」の取り合わせが以外でもあり、俳句ならではの機智と矜持の両立を見事に達成させております。巧みです。(仁)

今や飽食の時代ですが、やはり庶民にとっては忘れられない、家庭の味庶民の文化~季語が良い。(文)

ハロウィンの行列につく乳母車     荒木那智子  (5点)
実景なのでしょうが、ハロウィンだけにローズマリーの赤ちゃんを想像しました。(美春)

最近流行のハロウィンに対する興味が持っている様子が感じられて面白いと思います。(光男)

楽しい句です。この子も大きくなったらきっと楽しい仮装をすることでしょう。(文)

赤ちゃんより、乳母車を押している若い母親の方がハロウィンを楽しんでいる様子。(はま子)

茶の花や重吉詩碑の丸き仮名      渡部有紀子  (5点)
八木重吉の詩の仮名文字と茶の花の白さが、純粋な詩の雰囲気を表現している。(ユリ子)

二人だけの回転木馬秋惜しむ      根岸三恵子  (4点) 
このお二人は若い恋人たち。小さい遊園地の平日の昼下がりはガラガラ。しばし童心に戻ってください。(かをるこ)

二人は若い。(麻美)

二人だけの回転木馬の上五中七の措辞は詩的で晩秋を感じますね。(はま子)

どんぐりを踏まねば行けぬ奥の院    上脇立哉   (2点)
山中の感じを上五、中七で上手く表現していると思う。(光男)

秋声と聴くやグレコの巴里の歌     森山ユリ子  (2点)
パリの空の下グレコの歌とイヴ・モンタンの粋で洒落た哀歓の演技がよみがえる。(柳絮)

鉄床の火花四方に鍛冶祭        原 豊    (2点)

月読の社に深き落葉かな        西野鴻山   (2点)
荒ぶる神の社も秋深く落葉が厚く降り敷いて静寂である。つきよみのみことも鎮もって居られるのだろう。(かをるこ)

秋風や駿馬の墓を守る女        中村光男   

俳聖堂開け放たれて秋の風       浅井貞郎   

<互選句>
林檎いま賢治の風に磨かれて      早川恵美子  (5点)
賢治の風に磨かれた林檎の柔らかな紅色が思い浮かびます。(明)

宮沢賢治は本統の百姓になるため身を粉にして田畑を耕し、青年に語りつづけ、数々の著名な詩や童話を著し、岩手の新しい風となった。いま林檎園では、林檎が紅潮の最中である。(茂喜)

サバンナを恋ふ秋風の象の耳      小橋柳絮   (4点)
ゾウの耳と秋風の取り合わせが侘しさを醸している。(ユリ子)

口下手の論は正論とろろ汁       江原 文   (4点)
素朴で訥々とした生真面目な人なのでしょう、とろろ汁が効いていると思いました。(美春)

寺町の白壁の路地柿日和        根岸三恵子  (4点)
金沢でしょうか、路地に柿の木があったのでしょうか。情緒豊かな作品だと思います。(孝子)

澄んだ秋空に美しい情景です。(紀美子)

瀬戸内海に面した寺の多い町を想い出した。白壁の家々に柿が赤く実っているのどかな景色。(ユリ子)

銀河濃し魚座の魚の跳ねてをり     内藤 繁   (4点)
地平線に近くてなかなか見えない星座ですが、11月の下旬に南中するとのことぜひ見たいと思います。(紀美子)

さり気ない、ソフトなイメージの膨らみを持つ癒しの一句。過不足の無い表現に短詩ならではの豊かで確かな詩心を感じ取る事ができます。(仁)

見遥かす関八州や芋を掘る       早川恵美子  (3点)
見遥かす関八州とは大きく出たな!で、芋を掘るの?(志昴女)

秋の空少年野球の声澄みて       嶋田夏江   (3点)
秋の空の澄み切った景が少年の声とピッタリです。(孝子)

 いまグラウンドで野球に興じる少年の声が秋空にはずむ。正岡子規は少年時代から野球に熱中し、喀血してやめるまで続けた。
 子規の名は、いま野球殿堂に刻まれている。(茂喜)

紙箱のたわみて熟柿届きけり      安藤小夜子  (3点)
大きな百匁柿の甘くておいしい熟柿でしょうか。たわむということでいろいろ想像が膨らみます。(紀美子)

冬凪の星よりライム届きけり      室 明    (3点)
不思議な味わいがある句です、ライムの青がきれいだと思いました。(美春)

素直な認識による清潔感と和やかさが青春性を呼び覚ます。(柳絮)

コスモスの風浮き沈む貝の舟      小橋柳絮   (2点)
おおらかな生命力を感じます。秋天に白い産衣が、はためいている情景が浮かびます。気持ちの良い句です。(文)

着せ替への紙人形の秋思かな      杉 美春   (2点)
紙人形が愁思にふける、静かな日差しが感じられます。(志昴女)

懐かしい紙の着せ替え人形…本を立て掛けてお人形のお家に見立てよく遊びました。愁思はのっぺりとしたお顔のお人形さんではなく追憶に浸る私に。(かをるこ)

文化の日今日は旗日と祖母の云ふ    中川手鞠   (2点)
永らへば移ろふ世上に驚きます。この日は明治節(明治天皇の誕生日)で敗戦前は、各家々の門に日章旗を立てて祝いました。
 (勢津子)

なか空の泳ぎ果てなし鰯雲       佐藤博子   (2点)

星の数かぞへる母子十三夜       和田 仁   (2点)

鴨の来て沼の容の整ひぬ        今井温子   (2点)
鴨が飛来して、今まで静まり返っていた沼が、急に活気づき賑やかになった。と作者は喜んでいるのでしょう。(はま子)

ニコライの鐘の音はこぶ秋の風     森山ユリ子  (2点)
「ニコライの鐘」と「秋の風」の取り合わせが素敵です。ちょっと淋しくもあり、根源的な余情も感受できる存分に詩性豊かな一句です。(仁)

利根川の治水の文書雁渡る       竹田正明   (2点)

沼舟の棹しなやかに月の雁       和田 仁   (2点)
「沼舟の棹」と「月の雁」との取り合わせが大変良いと思います。(貞郎)

墨絵のような世界に、かすかな音と月の色の重なる様式美を感じました。(博子)

言の葉に角なかりけり秋桜       小野恭子   (2点)
言の葉に角がなくなってほしい。この通り。(芳彦)

中七と秋桜がぴったりです。(室明)

日は西に黄金色へと花芒        阿部 旭   (2点)
雄大な自然界の美しさを良く捉えていると思います。(貞郎)

父のなき家の戸軽し花八手       渡部有紀子  (1点)

沼太郎一家離宮の散歩かな       室 明    (1点)

山野辺に根差す遺伝子曼珠沙華     広岡育子   (1点)

銀杏舞ふ昨日と変りなく独り      熊谷かをるこ (1点)

天高し芭蕉生家に幟立つ        浅井貞郎   (1点)
芭蕉は伊賀国上野に生まれた。木造の生家には、句碑「旧里や臍のをに泣としのくれ」が建っているという。いま滝山渓谷は紅葉の最中だろう。生家を一度はこの目で見ておきたい。(茂喜)

赤とんぼ影の正しう並びけり      上脇立哉   (1点)
赤とんぼの飛ぶ様子を影で表現した写生句。好いですネ。。。。。(麻美)

馬駆けし大地色無き風の過ぐ      中村光男   (1点)
開拓の頃の北海道の広々とした風景を思いました。(明)

秋天や”子供のころは”と言う四歳    岡崎志昴女  (1点)
おしゃまな四歳児。可愛いですネ。。。(麻美)

大都会の若者かぶくハロウィーン    石川由紀子  (1点)
テレビで騒いでいました。かぶくの表現が面白いと思いました。(孝子)

はぐれ鵜の漁港離れぬ暮の秋      武藤スエ子  (1点)

硝子吹くひとに戻れり十三夜      明隅礼子   (1点)

烏瓜風の別れに種の音         原 豊    (1点)
晩秋実が赤く熟しそしてはじけて種が飛ぶ、それを中七の風の別れと表現いいですね~詩があります。果肉も種も薬用などの効用あり~(文)

月光に金の薄目がこちら向く      小高久丹子  (1点)
満月には開かれるという猫集会に迷い込んだ気分です。(博子)

揚げ船へ行く秋たたむ波頭       武藤スエ子  (1点)

ハロウィーンの魔女の飛び去る星夜かな 鈴木 楓   (1点)
情景が見えてきれいな句です。(芳生)

退院の天に柘榴を割り飾る       關根文彦   (1点)
石榴の実は豊穣の意味もあると聞きます。退院後の喜びが表れているのでしょうか。(博子)

大宇陀の老は狐火見たさうな      広岡育子   (1点)
説話の世界でしょうか。昔話をしてくれる老人、暖かな炬燵か囲炉裏の周りの子供達が浮かびます。(志昴女)

泣きべそのスーパーマンやハロウイーン 中川手鞠   (1点)
可愛さがあふれています。(貞郎)

以上

◆ホームへもどる ◆アーカイブへ戻る