天為ネット句会報2016年6月

 

天為インターネット句会2016年6月分選句結果

(作者名の後ろの点は互選点)
 ※特選句、入選句内の順番は互選点、句稿番号の順。また互選句は高点句から順に、同点句は句稿番号順に並べました。
 ※一部インターネットで表示できる文字に置き換えております。ご了承ください。

<対馬 康子 編集顧問選 特選句>

初夏や雨も光の中を降る                岡崎志昴女  (6点)
さりげない一句だが、きらきらとした雨が夏の訪れを清新に伝えて、すがすがしい。モネの睡蓮の絵画を見るような、この世はまだ美しいとほっと救われた気持ちになる。(康子)

雨も光の中を降る・・・・・なんと詩的な初夏の句なんでしょう。(麻実)

ポエムです!印象派の絵を見るようです。(恵美子)

昏鐘のしづかに渡る牡丹かな              内藤芳生   (1点)
艶やかに咲き誇る牡丹の花と夕暮れの鐘の音の取り合わせは、一歩まちがえると如何にもありがちである。だが、それを「しづかに渡る」という繊細な表現によって、凛とした日本人の美意識まで感じさせる世界に高めた。子規の「柿食へば」の句と見事に唱和する。(康子)

<対馬 康子 編集顧問選 入選句>

草萌えに沈む石ころオラショの地            小橋柳絮   (5点)

日曝しのペルリの錨卯浪立つ              竹田正明   (4点)

陵の際まで青田大和かな                松浦泰子   (3点)
昔、山の辺の道を歩いた折のことを思い出しました。(芳生)

蕗を煮る駿河のひとの泊まる夜は            あさだ麻実  (3点)
季節の山菜を煮る匂いはいいですね~しかも”駿河のひと”??どんなお方でしょうか!(志昴女) 

例えば伽羅蕗は、蕗の茎の灰汁抜きをし、醤油・砂糖などで伽羅色になるまで煮つめる。「駿河のひと」は転勤先から帰宅する家族か、実家からひさしぶりに来訪する親か。蕗煮のよい匂い。(茂喜)

母の日の靴を揃へて脱ぐ漢               渡部有紀子  (2点)
漢とあるので、30代以降の男性。母親の躾が良かったので何時もきちんと靴をそろえて脱いでいる。なんでもない日常の生活が、季語「母の日」により、詩に変身した。(はま子)

父の忌を千本の葉桜の中                芥ゆかり   (2点)
季語に光や風、生前の立ち姿まで感じられる。心に響きました。(博子)

大豆撒く姨捨山に昼の月                小野恭子

白靴の紐に星の環ほどの張り              渡部有紀子

<互選句>

香水や離婚届を書くつもり               佐藤武代   (8点)
ドキッとしますね~香水が効いています。何があったのか!すべて香水が語ってくれます。(文)

作者が女性なら、男前の性格でしょうね。(立哉)

香水の季語が離婚の後の新たな生活を想起させる(柳匠)

香水はそれ程大袈裟なものでないと思うが、作者にとって特別な取っておきのものかも知れない。それを身につけ気を引き締めて離婚届を書く。香水と離婚の取り合わせに「女性の心」を感じる。(ユリ子)

香水の力を感じました。(麻実)

神官の折目際立つ夏衣                 今井温子   (7点)
更衣の時期さすが神様に仕える方たちきちんとした服装ですね(みつ子)

神官の衣替えした衣装の折り目には、清々しいものがあります。(允孝)

対象を絞り込んだ具象表現が、読み手の多様なイメージを喚起。効率的に奥行を持たせた巧みな一句。(仁)

折目の際立つた夏衣を纏った神官は、どことなくぎこちがない。神に仕える神官の少々浮世離れした御様子が、よく実写されている。諧謔も感じられる。(はま子)

足の指ぐうちょきぱあで夏に入る            齋籐みつ子  (6点)
確かに冬は寒いからそのようなことをしない。夏なわらでのこと。季語の「夏に入る」が効いている(光男)

足の指を拡げる体操をすると体にいいと聞いたことがあります。いかにも溌剌とした夏が来た様子がよいと思います。(泰子)

素足が気持ちのよい季節の到来をうまく表現されていると思います(律子)

尾骨なき蝸牛にもある野心               江原 文   (6点)
尾骨のない蝸牛にも野心はあるとしたところ面白い。(芳彦)

む、おぬしも野心、野生だもんな。(志昴女)

尾骨なき、とはよく言ったもの(光男)

蝸牛にも野心があると考えるのは面白いなあと思います(律子)

くすぶりを残し薄暑の登り窯              後藤允孝   (5点)
陶工の想いが~くすぶりを残し~と言う表現に詰め込まれている。薄暑の季語が上手い!(文)

くすぶり・薄暑に象徴される懸念と期待感。 (柳絮)

雲幾重空の重しと栗の花                松浦泰子   (5点)
栗の香は厳しいが、花は素朴でいいですね。(允孝)

上五中七とも重い風景。それにも増して、栗の花は重ったく、臭い。その感じが良く表現されている(克朗)

青嵐和して同ぜぬ老欅                 内藤 繁   (4点)
老欅の堂々とした様が眼に浮かびます。共に揺れ季節を謳歌し、そしてなおかつ同じない立ち居に感服!写生が効いています。(文)

名人の手から新茶の針千本               石川由紀子  (4点)
名人が造る手揉茶さぞかし美味しいでしょうね。(豊)

まるで魔法みたいに揉まれて上等のお茶が生まれますね。(泰子)

茶畑やたすき姿の娘らの笑み              岩川富江   (3点)
青空の下で赤い襷の乙女が明るい笑顔で茶摘みをしている姿が浮かんできます、さわやかな句ですね。(貞郎)

茶摘みは終わったのだろうか?健康で爽やかな乙女たち?の笑みが眼に見えそう。(克朗)

捨てがたき物の一つに香水壜              中川手鞠   (3点)
捨てがたきものは沢山ありますが、確かに香水壜は特に捨てがたいですね。想い出が濃厚に詰まっている気がします。(泰子)

田の神に呼ばれてのそり雨蛙              原  豊   (3点)
田の神も敏捷とは思えないが、呼ばれた雨蛙は劣らずのっそりと。組合せが妙。雨蛙より蟇蛙とかの大型蛙のほうが実感がありそう。(克朗)

蛙鳴く昨日と同じカルテット              和田 仁   (3点)
蛙は毎日決まったような時刻に鳴きますね。カルテットとは美しい表現だと思います。(孝子)

行く雲を波の如くに鯉のぼり              瀬尾柳匠   (3点)
 爽快なリズム感と時間経過。(柳絮)

 雲を波と捉えた所、鯉のぼりが泳ぐさま、初夏の空の雄大さが見事に表現されています。(豊)

聖五月不戦の構へだんご虫               小野恭子   (3点)
不戦の構えがだんご虫の丸い形とマッチして微笑ましい。(豊)

だんご虫をもってきたのが上手い(光男)

おもしろい~生きているのが楽しくなります(夏江)

マグダラのマリアの涙薔薇闇(いばらやみ)        佐藤律子   (3点)
「最後の晩餐」でMの文字型にイエスの横に描かれている女性は、マグダラのマリアで福音書ヨハネが女性として描かれているだけでなく、この絵のユダはダ・ヴィンチ自身をモデルとしている。涙薔薇闇としたのは深い意味があるのか。何故かこの句に引き込まれる。(芳彦)

折鶴の四羽携ふ原爆忌                 荒川勢津子  (2点)

太古より筋金入りの滝の音               内藤 繁   (2点)

自画像の半分ほどに青葉光               江原 文   (2点)
戦中あるいは戦後まもなくの夭折の画家たちの絵を想像し、惜しい才能が多く失われたことを思いました。(明)

通勤の人皆見上ぐ燕の巣                土屋香誉子  (2点)
私も通勤の時に駅舎の中の巣いつも見上げて大きくなったなあなんて見上げていました(みつ子)

カルピスを牛乳で割る柿若葉              あさだ麻美  (2点)
カルピスと牛乳の白と若葉の緑が対比されている(柳匠)

上五中七のカラッとした白と目に染む柿若葉の緑の輝きとの対比が美しいと思いました。(明)

普段着の今日を飾りし赤き薔薇             結菜やよい  (2点)
日々の暮らしに花があるのは楽しく、特に花言葉〈情熱〉〈愛情〉の「赤き薔薇」は最高の賛辞だ。これはまた、自分と共に生きてきた家族への賛辞でもある。わたしもお相伴にあずかりたいもの。(茂喜)

一雨を含み青葉の色や濃し               瀬尾柳匠   (2点)
この季節ならではの質感を過不足なく簡潔に捉えています。情景描写にして抒情あり。(仁)

聖五月ノートルダムの守護聖人             鈴木 楓   (2点)
五月のノートルダムは美しい。守護の聖人がひときわ神々しく見える(ユリ子)

季語の斡旋が上手 (恵美子)

廃屋に小振りなれども枇杷たわわ            今井温子   (2点)

えごの花散りても星の形かな              西脇はま子  (2点)
散っても星の形知りませんでした(みつ子)

絶筆の句碑にやさしき緑雨かな             浅井貞郎   (2点)

手相見の去つて雨降る夏柳               明隅礼子   (2点)
銀座の路地の手相見がいつの間にか去り、静かに雨が降り柳が濡れている(ユリ子)

ラ・トゥールの大工と息子灯涼し            高橋紀美子  (2点)
多難な前途の予兆としてのヨセフの作業を照らすキリスト。(柳絮)

大工ヨセフとイエスの涼やかな瞳を思い出しました。(明)

鳥の影瀧のうしろをさかしまに             明隅礼子   (2点)
滝の爆音と無音の鳥の影。生命力あふれる壮大な景だと思います。(博子)

古釣瓶江戸を語りし七変化               高澤克朗   (1点)
釣瓶を通して江戸の情緒を感じさせます。七変化が時代の変遷を語っているようで上手ですね。(恵美子)

身の芯のみどりに染まる並木道             荒川勢津子  (1点)
体に沁み込むほどの目の覚めるような緑が目に浮かびます。(やよひ)

小満や親より太る雀の子                小高久丹子 (1点)
いつも身近にいる雀の親子に感じたちょっとした幸せ。共感しました。(博子)

あめんぼの生れたる岸辺離るる日            竹田正明  (1点)
あめんぼのうまれるところを見たことがないので、そうであれば、作者は良くものを見ている人だと思う。立哉

こもれびのつらつら歩き若葉風             嶋田夏江  (1点)
木漏れ日の中つらつら歩き、そして若葉風、何と贅沢な事でしょう。何時の日か有ったような気もします。(孝子)

マネキンは一歩先んずる衣更              岩川富江  (1点)
言われてみると、なるほど、その通り。読み手に負担の掛けずに、初夏の感触を心地よく表現。(仁)

短夜やコーラン聞こゆ旅の窓              森山ユリ子 (1点)

デザートは緑の風のハーモニー             小高久丹子 (1点)
食事も終えて、心地よい風、緑の風のハーモニーとは美しい。(孝子)

晩学の津軽三味なり風薫る               和田 仁  (1点)
季語風薫るで頂きました。(麻実)

外つ国の埴生の宿の白き藤               中村光男  (1点)

短夜や月と日輪せめぎ合ふ               中川手鞠  (1点)

滴れる弁天窟に童子像                 根岸三恵子 (1点)

守宮棲む奧千本の蹴抜塔                松山芳彦  (1点)

苔衣覆ひしグスクに風知草               高澤克朗  (1点)
苔衣は地を覆う苔を衣に譬えて,僧、隠者の着る粗末な衣服の事をいう、世界遺産グスクとの取り合わせが面白い、季語風知草が効いています。(貞郎)

銀行のビルはレトロや燕の子              満井久子  (1点)

みどり児の生れし朝の清和かな             嶋田夏江  (1点)
清和の季語と嬰児の誕生とが響きあい嬉しくなりますね。生まれてくれて有難う。(志昴女)

冥をゆく母の旅路や初蛍                妹尾茂喜  (1点)
亡くなったお母様は蛍になって旅立たれたのでしょう、ご冥福を祈ります。(貞郎)

つばくらめ防犯カメラに巣をかけて           土屋香誉子 (1点)

色町の小さき祠やさくらんぼ              満井久子  (1点)
昨今、色町という言葉は余り耳にしない。しかし東京の下町など吟行をすると、此処は色町であったと良く聞くことがある。そこにある祠はさくらんぼが供えられたりして今も大切にされいる。(はま子)

若冲の鶏冠赤し若葉光                 森山ユリ子 (1点)
絵を描いている(あくまで趣味ですが)自分としては若冲の赤に文句なし(柳匠)

空青く巣立ちをさそふ親の声              阿部 旭  (1点)

曲想の五線に余る雲の嶺                早川恵美子 (1点)
曲想が五線譜に収まらない雲の峰があるという。曲想も雲の峰も素晴らしいのでしょう。(芳彦)

樹も館も人に輝く薔薇の國               關根文彦  (1点)
薔薇を育て薔薇を咲かせ薔薇を慈しむ人びとが住めば、そこは薔薇の國だ。古今を問わず、北半球の温帯には数々の薔薇の國がある。つる薔薇、木薔薇いずれも花の香は高く、人生に乾杯。(茂喜)

鷹鳩と化して子規庵土蔵かな              浅井貞郎  (1点) 

<以上>

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