天為ネット句会報2016年7月

 

天為インターネット句会2016年7月分選句結果

(作者名の後ろの点は互選点)
 ※特選句、入選句内の順番は互選点、句稿番号の順。また互選句は高点句から順に、同点句は句稿番号順に並べました。
 ※一部インターネットで表示できる文字に置き換えております。ご了承ください。

<日原 傳 編集顧問選 特選句>

みちのくに孫太郎虫今も売る              鹿目勘六   (1点)
「孫太郎虫」はヘビトンボという昆虫の幼虫。山間の清流の石ころの間などに生息するという。それを何匹か串に刺して干したものが小児の疳の薬として古くから売られていた。奥州の斎川宿(今の宮城県白石市)のものが有名で、「奥州斎川名産孫太郎虫」と呼び売りしたという。「孫太郎虫」も「孫太郎虫売」も歳時記に夏の季語として登録されている。珍しい季語に出会い、巧みに一句に仕立てた(傳)。

子供の頃、祖母が孫太郎虫は癇の虫に効くと言っていました。泣いたり暴れたりして、孫太郎虫を飲まされないように、祖母の言うことをよく聞きました。(はま子)

日に太るえんどう豆を摘みにけり            瀬尾柳匠
「えんどう豆」には完熟し乾燥させた豆を収穫して用いる「硬莢種」と柔らかい生の実を食用とする「軟莢種」とがあるようだ。その「軟莢種」においても、未熟な莢のまま「サヤエンドウ」として食べるものと太らせた生の実を食べるものとがあるという。掲句はその後者なのであろう。日の恵みを受けて太る「えんどう豆」。「日に太る」という上五の措辞が豆の生長を日々実感しつつ採取する気分を出している(傳)。

<日原 傳 編集顧問選 入選句>

白足袋の高く跳ねたる鹿踊               西脇はま子  (9点)
6月新鉛温泉で1泊したとき春日流鹿踊り(ししおどり)を見ました、太鼓の響きに合わせ5匹の鹿が躍動する、迫力がありました、季語白足袋が動かない見事な1句ですね(貞郎)

白足袋が鹿の足の斑のようで躍動感があります。(泰子)

躍動感が溢れ、観衆の興奮まで感じます。(博子)

周期表の中に涼しきニホニウム             髙橋紀美子  (4点)
時季を得た挨拶句。(立哉)

アジア初、日本発の元素は涼やか、うれしいことです。(泰子)

「113 Nh ニホニウム」。理化学研究所の研究グループ(代表:森田浩介・九州大学教授)の合成した新元素に命名された。わが日本の百年来の夢が、涼風となって列島をとよもした。俳句にしがたい句材をとらえて佳句をなした。(茂喜)

天平の緑釉涼し花文皿                 阿部 旭   (4点)
武蔵国国分寺跡出土の緑釉花文皿。繊細緻密な手業に大日如来信仰の深さを見る。(柳絮)

天平時代、緑釉の花文皿は日本でも作られていたのでしょうか。それとも、遣唐使が持ち帰ったのでしょうか。天平・緑釉・花文皿と言葉の織りなす綾は、実に涼しく美しく感じられます。(はま子)

ユトリロの白祐三の黒パリー祭             髙橋紀美子  (2点)
佐伯裕三のあの暗い自画像~白と黒との対比、しかし二人に共通する孤独は白と黒を繋ぐ~(文)

白い画家と云えばユトリロ。祐三は30歳で巴里で客死した洋画家佐伯祐三。黒い画家は祐三ばかりではないように思われますが、作者は、兎にも角にも、祐三ファンなのでしょう。(はま子)

水無月に透く静脈の青さかな              石川由紀子  (2点)
透くが水と静脈を響かせている(柳匠)

命は血液によって永らえる。静脈によって心臓に、さらに動脈によって肺に運ばれる。水無月は水の月を示す。稲の命を育てる水は、水源から川となり、川から田に引き込まれる。命の青と、水の青と、青の発見がほこらしい。(茂喜) 

潮騒を遠くに聞いて袋掛                和田 仁   (2点)
どこか半島の袋掛の景でしょうか。遠くの潮騒の優しい音を運ぶ風もきっと心地よいことでしょう。(明)

巴里に死すその日の朝もリラ匂ひ            内藤 繁   (1点)

即身仏眠る山寺半夏生草                鈴木 楓

日蓮が説法の辻靑嵐                  内藤芳生

結納の振袖の佇つ作り滝                土屋香誉子

<互選句>

土匂ふ考古学者の麦藁帽                 芥 ゆかり  (8点)
考古学者の現場での雰囲気がリアルに伝わってきます。(仁)

遺跡の発掘は大変な肉体労働。特に夏は、汗と土に塗れて過酷だ。それが良く表現されています。(勘六)

考古学者が目の前に現れる。(立哉)

しゃがみこんで黙々と麦藁帽子しか見えない姿に、土の匂いがして来ますね。 (孝子)

学者の一途な姿が麦藁帽と重なり映像として浮かぶ(ユリ子)

ひたすら土を掘り、遺跡を探りあて、遺物をさがす。先人の歴史を明らかにして現代人につながるものを求める。考古学者の麦藁帽子を提示して、遺跡発掘に協力する学生や地元住民の汗と土の匂いをたたえる。着眼の勝利と言える。(茂喜)

追伸のごとく夕虹立ちにけり               和田 仁    (8点)
追伸が虹とはきっといいことがありましたね(みつ子)

夕立が過ぎたとおもったら虹がかかった。夕立だけでは意を尽くせなかったのか、追伸で虹、自然からの便りだ。追伸という言葉を持ってきたのがうまい。(光男)

美しい句ですネ。。。。比喩が追伸。。絵葉書に切り取りましょう。(麻実)

好きですと言へば良かつた心太              瀬尾柳匠    (7点)
振り返ってみると反省すべきことが多いのが人生。未だに胸に残っている悔いをサラリと表現した句で共感を呼ぶ。(勘六)

季語の心太が効いてますネ。(麻実)  

思ひきり髪を短く夏薊                  松浦泰子    (6点)
短い髪と薊、青空が見えて来る。(立哉)

髪をカットされたのですね、薊の花の様にスッキリと季語が良く効いていると思いました。(孝子)

短く刈り上げた髪の様子と薊の花が不思議とマッチしています (恵美子)

脱ぎたての大きくうねる蛇の衣              佐藤武代    (5点)
正にその通り。上五「脱ぎたての」の表現が効果的。(仁)   

路地裏に鉄截るにほひ夾竹桃               小野恭子    (5点)
夏の昼、町工場では鉄を切断している。鉄の錆臭いにおいが路地に流れ、路地には夾竹桃が咲いているという情景。夾竹桃は路地裏に似合う花だ。季語の斡旋が上手いと思う。(光男)

森の香を連れ帰りたる夏帽子               室  明    (5点)
森へキャンプにでも行ったのだろうか。懐かしいひと時を思い出して夏帽子を眺めているという情景だろう。(光男)

中七の詩的な表現に惹かれました。(博子)

Bon Voyage!の声に送られ夏帽子            中川手鞠     (5点)
旅の爽やかさを感じます。(豊)

紙吹雪や紙テープを投げかう映画の一シーンのよう。銅鑼の音まで聞こえてきそうです。(博子)

万年の不二の湧水夏柳                  佐藤博子    (4点)
夏柳のそよぐ姿と富士の湧水の透明感が涼しさを運んでくれます。(明)

万年の富士山の湧水が滾々流れているそこに夏柳が垂れ下っている景色が見える。(芳彦)

うらやましきもののひとつにハンモック          土屋 尚    (4点)
漢字を使わないで心情を吐露しているところがいいですネ(麻実)

万緑や轟々とダム放水す                 中村光男    (4点)
万緑の中に吐き出されるダムの豊かな放水。大景の中で鮮やかな色彩のコントラスト、轟音が聞こえて来そうな迫力を感じる。(勘六)

万緑の美しさの中に、自然の迫力を感じさせる句(ユリ子)

山鳩のほろほろ鳴けり太宰の忌              西脇はま子   (3点)
ほろほろ鳴けり~このフレーズがあの寂しがりやの太宰治にピッタリで切ない!(文)

根の国へ急いで帰る蚯蚓かな               上脇立哉    (3点)
素敵な童話の世界が見えてきました。(やよひ)

あらら~大急ぎで行かれますか?(志昴女)

笹百合や熊野中辺路今日も雨               岡崎志昴女   (3点)
笹百合には雨がぴったりだと思います。粉糠雨に洗われた笹百合の薄緑が聖なるものを感じさせてくれます。(明)

緑蔭や坂ゆるやかな馬車廻し               佐藤博子    (2点)

蕗の葉の剥きて指までほろ苦し              片山孝子    (2点)
蕗の葉の削いだら指先までほろ苦かった。日常の生活感が見えてきて良いと思う。(芳彦)

ポケットのコインの匂ふ梅雨の街             石川由紀子   (2点)
ポケットのコイン~異国の街角のちょっと切ない一人旅を想像します。梅雨の街がその叙情を醸し出している(文)

潮の香を纏ひしままの古夏帽               中川手鞠    (2点)
潮の香を纏ったまに置かれた夏帽子をみて旅の思い出に慕っているのでしょう。(芳彦)

名前なぞ知らなくてよし薔薇香る             中村光男    (2点)

錠剤の色の明るき梅雨晴間                江原 文    (2点)

夏の月木立に沿ひて牛の群                岩川富江    (2点)

英吉利のEU離脱青嵐                  岩川富江    (2点)

雨音のちくたく聞こゆ時計草               佐藤律子    (2点)
雨の音が秒針のチクタクチクタクと聞こえてきそうです(みつ子)

雰囲気がメルヘン。ウィットが効いています。(仁)

ロボットは仁を学ばず梅雨の闇              松浦泰子    (2点)

北斎の白浪の軸夏座敷                  森山ユリ子   (2点)
富岳三十六景「神奈川沖浪裏」の軸一本で閑寂優麗な夏座敷が出現する。(柳絮)

蝸牛盲導犬の雨支度                   今井温子    (2点)
盲導犬推進のお手伝いをする私にとって、身近に感じられる温かい句です。(やよひ)

払暁に蓮の開花を聞かんとす               武井悦子    (2点)

湿原に白き帆を立て水芭蕉                後藤允孝    (2点)
中七の「白き帆を立て」が綺麗な表現で、季語水芭蕉が輝いています(貞郎)

夏涼し漢墓出土の一帳羅                 浅井貞郎    (1点)

白百合の人呼びつける庭となり              原  豊    (1点)

六月の白き花添うティンタンアベイ            小高久丹子   (1点)

帰省子の首一つ伸び十五歳                齋籐みつ子   (1点)
首一つ伸びに故郷で待つ家族の気持ちがよく出ている(柳匠)

潮騒の天に響けり大夕焼け                浅井貞郎    (1点)

荒梅雨の郷は岩もて屋根囲む               關根文彦    (1点)
情景がみえます。(豊)

夏帽子エヴァが似合ふと言ったから            小橋柳絮    (1点)

禰宜の沓並ぶ社や夏祭                  土田栄一    (1点)

シャンゼリゼ喜寿のふたりの苺パフェ           小橋柳絮    (1点)

尺蠖の小枝とまがふひたむきさ              江原 文    (1点)

古書店の匂は同じ白夜光                 安藤小夜子   (1点)

ビル街の昼静かなり夏木立                安藤小夜子   (1点)
確かにビル街の昼は静かです(柳匠)

麦の穂や畦道なほも麦の中                片山孝子    (1点)

万緑の箱根路辿り峠茶屋                 土田栄一    (1点)
箱根の峠越えに季語万緑がぴったりで良い句だと思います(貞郎)

目に染むる廻廊朱き梅雨晴間               満井久子    (1点)
朱の回廊が梅雨の晴れ間の明るさの中に鮮やか(ユリ子)

夏痩や赤福のへら乾きをり                小野恭子    (1点)

蛇呑みし岩魚に羆立ち上がる               早川恵美子   (1点)
怖~~!!どっちも、です。作者はどこに隠れてるの?(志昴女)

紫陽花が端を濡らせり長谷寺の門             渡部有紀子   (1点)

しつとりと青梅ひかる翁の碑               荒木那智子   (1点)

昨夜の雨白あぢさゐに碧少し               高橋雪子    (1点)

忌の膳に忌のこと言はず釣忍               土屋香誉子   (1点)

蚊を打って詠めぬ歌碑句碑拝しけり            根岸三恵子   (1点)
ん、わかる、わかる。句碑も歌碑も草深い場所にあるんだよね~おまけに字が、、、、読めなくて!(志昴女)

夏至の夜にとどくみじかき手紙かな             明隅礼子    (1点)
いかにも夏至の夜の手紙ならば短いでしょう。(泰子)

竜宮城めきて漁師の神輿かな               芥 ゆかり   (1点)

守宮出て一息つきし夜の闇                阿部 旭    (1点)
半世紀前霞ヶ浦沿岸の谷津沿いの家屋には神の使いとして共生していた。ほっとするアニミズム空間。(柳絮)

雷公の臍刺す構へ避雷針                 内藤 繁    (1点)
避雷針が臍刺す構へ、なるほど面白い比喩ですね。(豊)

終点の駅までとんぼ貼付きて               佐藤武代    (1点)

<以上>

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