天為ネット句会報2017年12月

 

天為インターネット句会2017年12月分選句結果

(作者名の後ろの点は互選点)
 ※特選句、入選句内の順番は互選点、句稿番号の順。また互選句は高点句から順に、同点句は句稿番号順に並べました。
 ※一部インターネットで表示できる文字に置き換えております。ご了承ください。

<福永法弘同人会会長選 特選句>

短日や占ひ小屋に人絶えず           上脇立哉   (3点)

日が短くなって何かと気ぜわしい頃なのに、占い小屋に入れ代わり立ち代わり客がある。占いにはまる人の多くは、当たるか当たらないかは問題ではないのだそうだ。決断に迷うとき、後押ししてもらいたいとき、あるいは、寂しくてしかたがない心の隙間を、占い師に埋めてもらうのだ。季語とよく合っている。(法弘)

この一年が思わしくなかった人が期待を込めてつい訪れる所でしょうか……(律子)

すれちがふとき灯りたる聖樹かな        明隅礼子   (2点)

いつも通る住宅街の、住宅の前に飾ってあるクリスマスツリーが、人を感じるセンサーに反応して点ったのだろう。一瞬どきりとしたが、クリスマスリーだとわかって、心が和んだのだ。「すれちがふとき灯る」の状況描写が的確。(法弘)

なにげない言葉ですが、柔らかな情景と叙情が浮き上がってくるようです。(博子)

<福永法弘同人会会長選 入選句>

笑はせて終はる法話や石蕗の花         小野恭子   (10点)

巧拙の巧。(法弘)

近頃、坊さんのトークは洗練され巧み。トークも修練の一つとお聞きしました。(仁)

生死の意味や祖先のこと等重くて深い話をしながら最後は笑わせて終わった今日の法話。結局、坊さんの言いたかったことは、楽しくしっかり生きよ、と言うことか。(勘六)

御住職はお話がうまくてほろっとしたり、しんみりしたり、でも最後は皆で笑って終わります。石路の花の季語がよくあっています。(泰子)

こつのいる蔵の開け閉て花八つ手        石川由紀子  (5点)

時代物の蔵。(法弘)

昔の建付けはどれもちょっとしたこつが要りました。ちょっと浮かせたり、押し加減だったり。花八つ手がぴったりです。(泰子)

花八手は日影の蔵のそばなどに静かに咲きます。長い年月、蔵とともに旧家を守ってきた楚々とした姿を思い描きました。(明)

相槌も途絶えて妻の毛糸編           中川手鞠   (5点)

一心不乱。(法弘)

夢中で編んでいると相槌も打てなくなるのがわかります。目数を数ええていたらなおさら(みつ子)

強そうな鯛焼きひとつ選びけり         中村光男   (5点)

面白い選択基準。(法弘)

強そうな鯛焼きって一度食べてみたい。(柳匠)

タイ焼きだって強い方がいい、、、、のかな。選ぶときは何を基準にするのか考えてしまいました!(志昴女)

「強そうな鯛焼き」の表現が面白いと思います。鯛焼きに肖り少し気を強く持とうという気分になります。(相・恵美子)

同じに焼けていても強そうなのを選ぶ私は優しそうなのを選びそう(みつ子)

三の酉火伏稲荷は路地の奥           安藤小夜子  (5点)

三の酉の年は特に火の用心。(法弘)

江戸庶民のストレス解消の行事が路地奥の稲荷で目を覚ます。(柳絮)

今年はそういえば三まである酉の日。火事が増えませんように。(志昴女)

三の酉まである年は火事が多いとか。火伏稲荷はひっそりと路地の奥で町を守っているのです。(泰子)

熱燗に瀬戸の小魚焙りたる           今井温子   (2点)

酒が恋しい。(法弘)

しみじみとした風情あり。一文にして、佳き映像、佳き詩…演歌です。思わず全身で唸っております。(仁)

八代亜紀の「舟唄」のような風情。でも地名によって明るく突き抜けました。(博子)

手袋を片方なくし恋終る            佐藤武代   (2点)

未練は捨てて。(法弘)

渓谷の紅葉づる地層チバニアン         髙橋紀美子  (1点)

旬な時事。(法弘)

リフォームの部屋にとまどふ神の留守      相沢恵美子  (1点)

神も戸惑う。(法弘)

冬めくや書架に戻らぬ一書あり         満井久子   (1点)

やや未練。(法弘)

<互選句>

天へ打つ地へ打つ太鼓神還る          松浦泰子   (9点)

八百万の神おしなべて出雲へ還る合図の荘厳さ。(柳絮)

何かのお祭でしょうか。確かにあの大太鼓の響きは天地を揺るがします。(志昴女)

天へ打つ地へ打つ太鼓が雄大な景として眼に残る。(豊)

神を迎える為に是ほどの力強い句を書かれるとは・・・作者の方はベートーヴェンの生れ変りかもしれません(早・恵美子)

墨の香や写経道場咳一つ            小野恭子   (4点)

写経道場の広さや、静けさ、匂ひ等また咳き一つ咳き一つが写経道場の静かさをを強調している。(豊)

山眠る教会堂の水鏡              室 明    (3点)

聖域の清浄さ静謐さ。(柳絮)

鏑矢の馬上うるはし小春凪           松浦泰子   (3点)

馬上から放つ鏑矢の音が小春凪の空へ飛んでゆく勇壮な句(豊)

ほろほろと零余子も芋の葉も雨も        岡崎志昴女  (3点)

上五の「ほろほろと」と云う表現がとても気にいりました(貞郎)

ほろほろ、という擬態語に続き、むかごも芋の葉も、雨も、という三つの言葉がとてもリズミカル。(ユリ子)

障子透く日の彩りや和三盆           諸中一光   (3点)

障子に当たる柔らかい日差しと、和三盆のほんのりとした彩、甘さを思い、厳しい冬の日々の束の間のやすらぎを感じます。(明)

和三盆のほの甘さが障子明りと引き立て合っています(早・恵美子)

冬鵙のこゑ切落す東尋坊            早川恵美子  (3点)

「切落す」の言葉の表現に効果があると思います。高く切り立った東尋坊の景が見えて来ます。(相・恵美子)

アララトの石を土産に冬遍路          松山芳彦   (3点)

アララト巡礼なさったのでしょうか。もちろん五千メートル頂上ではなく麓でしょうけれど、お土産の意思は宝と思います。(ユリ子)

赤い服鏡に映す十二月             小髙久丹子  (3点)

枯菊の細き骨もて火を創る           早川恵美子  (3点)

久闊を叙せばオリオン瞬けり          森山ユリ子  (3点)

旧友あての封書をポストに入れたのだろう。長年の無沙汰をわび、近況報告に俳句数句を添えた。見あげると、夕暮の南の空にひときわ赤い星がある、ああ、オリオンだ。心が温もる。(茂喜)

オリオンが瞬けり、という表現が詩情があって素敵だなあと思いました。(律子)

再会の喜びを、なんと美しい表現で詠まれたのかと・・。(博子)

ワルツの碑冬芽ふくらむ三拍子         髙橋紀美子  (2点)

ワルツの碑横浜にあるのですね横浜らしい冬芽が踊ってるようです(みつ子)

森閑と陽を詩となす冬館            關根文彦   (2点)

雪いよよ白し柱の黒漆             内村恭子   (2点)

心字池白雲ながるる漱石忌           浅井貞郎   (2点)

蒼穹の似合ふ皇帝ダリアかな          荒川勢津子  (2点)

まっすぐに青空に向かって咲く皇帝ダリアは名の通り堂々としています。上五がぴったりだと思います。(明)

最果ての小樽運河の雪明り           原 豊    (2点)

運河の雪明かりは何度みても美しい(ユリ子)

一年の過ぎて行きけり柚子の風呂        瀬尾柳匠   (2点)

天体観測毛布分け合ふ二人かな         杉 美春   (2点) 

異国語の飛びかふ古都や菊日和         阿部 旭   (2点)

観光地に限らず、異国語が飛び交っております。和のテースト・・・菊日和が効いております。正に国際俳句の時代です?(仁)

昔は日本人が外国へ観光へ行くことが多かったが、最近は海外から大勢の人が我が国に来てくれるようになった。秋の古都のなら尚更多いのだろう。日本文化を存分に楽しんで行って欲しい。(勘六)

神無月電波時計に来ぬ電波           土屋香誉子  (2点)

人との交流などがうまく行っていないことに置き換えているような気がします。(相・恵美子)

検温に始まる午後や蜜柑むく          瀬尾柳匠   (2点)

雪虫や谷中銀座の小間物屋           西脇はま子  (2点)

黄落の明るく己が影作る            鹿目勘六   (2点)

汽笛鳴る油滴天目冬銀河            小橋柳絮   (2点)

地球から仰ぐ夜空は天の川銀河、何千億の星が光り輝き渦をまく。手元の天目茶碗は、黒釉地に油滴に似た銀色や金白色の斑文がひろがる。この大小の空を汽笛が取り結ぶ。詩想がおもしろい。(茂喜)

天狗めく梢の鴉落葉山             石川由紀子  (1点)

山茶花や青磁の秘色に薄茶かな         武井悦子   (1点)

中七の青磁の秘色が良いです、薄茶も美味しそうです。(貞郎)

平成の年の名残や紅きタワー          妹尾茂喜   (1点)

トライせしラガーの胸のクロスかな       鈴木 楓   (1点)

自信作一寸朱を入れられ小春          満井久子   (1点)

達磨忌や喫茶去なんて言わぬだろう       岡崎志昴女  (1点)

禅問答のようで面白いです。勧められたら嬉しいかも!?(早・恵美子)

蔵あれば蔵を愛でたる雪見酒          内村恭子   (1点)

椀の蓋開ければ綺羅と十二月          原 豊    (1点)

まどろんで抱くぶりきの湯婆かな        中川手鞠   (1点)

孔子像の遠まなざしや楷落葉          原 道代   (1点)

水鳥の見えず廃るる渡しかな          上脇立哉   (1点)

坂鳥の青光りなる朝の雨            永井玲子   (1点)

楼門の幣に集まる小春の日           竹田正明   (1点)

太白に明ける露けき多摩郡           内藤芳生   (1点)

木枯しやドールハウスの青き屋根        西脇はま子  (1点)

ペアセーター箪笥の奥にひっそりと       中村光男   (1点)

昔拵えたペアのセーターが、今は夫婦とも歳を重ねて若き日の夢と共に箪笥に仕舞われている。どこの家庭にもありそうな情景がしみじみとした句になっている。(勘六)

暖炉燃ゆ鍵穴のある食器棚           荒木那智子  (1点)

積日の垢を落として障子張る          岩川富江   (1点)

知らぬ間に付いている垢、それは過ぎた時間でもありそれをぬぐい落として新しい時間を重ねていく、そんな情景が浮かびました。(律子)

こたつ居に己の時間取り戻す          相沢恵美子  (1点)

蕪村忌に三十五士の憂いあり          浅井貞郎   (1点)

蕪村忌」に、蕉風俳諧を興した蕪村に思いを寄せる。与謝蕪村は、天明3(1783)年12月25日に没、享年68。「三十五士」とは、蕪村筆の『三十六俳仙図』に由来する。その屏風をよくみると、なぜだか一人、内藤丈草がぬけている、という。(茂喜)

小鳥来る森の小さなカフェテラス        和田 仁   (1点)

雪ばんば年賀欠礼また届く           土屋 尚   (1点)

近からずまた遠からず鴨の陣          加茂智子   (1点)

大いなる冬日の中や蛭が島           永井玲子   (1点)

軒々に干し柿下がる柿の里           片山孝子   (1点)

ゴッホの目青きひかりの冷たさよ        原 道代   (1点)

廃校の裏に一本冬桜              佐藤武代   (1点)

冬紅葉半身不随なんのその           加茂智子   (1点)

真っ赤に染まった冬紅葉を見て青春の熱き血が蘇ったのでしょう、下5の「なんのその」に感動しました。(貞郎)

里の杜風音たてて神帰る            染葉三枝子  (1点)

以上

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