天為ネット句会報2018年5月

 

天為インターネット句会2018年5月分選句結果

(作者名の後ろの点は互選点)
 ※特選句、入選句内の順番は互選点、句稿番号の順。また互選句は高点句から順に、同点句は句稿番号順に並べました。
 ※一部インターネットで表示できる文字に置き換えております。ご了承ください。

<日原 傳 編集顧問選 特選句>

斑鳩の塔を目指して蜷の道           今井温子     (5点)
斑鳩には法隆寺の五重塔のほかに、法起寺や法輪寺の三重塔もあり、「斑鳩三塔」と呼ばれている。当地で見つけた蜷はそれらの塔を目指して這っているのだと大仰に捉えた。その断定が楽しい(傳)。

蜷の道が斑鳩の塔を目指しているところが佳いと思います。(相・恵美子)

聖徳太子の目指した高邁な理想を思う。(柳絮)

法隆寺は謎の多い寺です、塔の相輪の鎌もその一つ色々と思いを馳せながら行く蜷の道まだ何かありそうですね(昌夫)

黎明の安達太良十座夏来たる          鈴木 楓     (2点

夜明けの空に安達太良連峰の峰々が姿を現わしてくる。十を数えるその一つ一つが作者にとっては親しいものであることが想像される。それらの姿を愛でつつ夏の到来を実感したのである(傳)。

澄み渡る空に安達太良の山並が刻々と姿を整える様子はまさに待ち望んだ初夏の到来を告げる光景なのでしょうと想像しました。(明)

<日原 傳 編集顧問選 入選句>

母の日の母は畑に出てゐたり           荒木那智子  (10点)
母の日もいつもと変わらず働き者のお母さん、頭が下がります(律子)

飾らない温かさ 優しさに胸をうたれました (温子)

いつものように働く母の姿が愛(いとお)しいです。(宙)

雉鳴いて連山雲を脱ぎゆけり           内藤芳生     (4点)   
山が雲を脱ぐ、という表現は面白いと思いました(律子)

雉の一声にふる里の四国連峰の晴れ渡った空を思い浮かべています (温子)

縄文のハートの土偶山笑ふ            浅井貞郎    (3点)
女性の胸や腰を強調した縄文の土偶、仮面を付けたユーモラスな姿等々、土偶に春の山が相まってタイムスリップして見たい気持ちです (温子)

乳の張る牛の血管春深む             佐藤武代     (3点)
観察の鋭さと、春の豊かさが、「乳」に表れているように感じました。(美穂)

確かな写生眼。生きとし生けるものの哀れが伝わってる来る。(はま子)

薔薇色の岩塩削る夜の薄暑            石川由紀子   (2点)
気怠い暑さの中、岩塩の欠片がひと時の清涼感をもたらしてくれているようで素敵です(早・恵美子)

畑打ちの蓮如の輿を遠拝み            中嶋昌夫    (1点)

藤棚の花虻せはし昼下り             染葉三枝子

秉燭の月は下弦や鐘朧              松山芳彦


<互選句>

明日はまた母へと戻す花衣            瀬尾柳匠    (6点)
工芸として景観として伝統継承の現場スケッチ。 (柳絮)

花衣は着るときも大変ですが、脱いだ後、汚れをベンジンでふいたり、衣桁に掛け風通しをしてから畳んまなければならない、非常に厄介なもの。頼りになる、お母さんが居られて良かったですね。(はま子)

谷に添ふ百戸の甍鯉のぼり           佐々 宙     (5点)
「百戸の甍」がいいですね。鯉のぼりが勢いよく泳いでいる姿が見えます。(光男)

新樹と百戸ばかりの小さな山里の黒々輝く甍を背景に元気に泳ぐ鯉のぼり、すべてが初夏の喜びを見せてくれているようです。(明)

犬ふぐり踏んで猫ゆく百閒忌          土屋 尚     (5点)

朝桜村の要の小学校              小野恭子     (4点)
朝桜の鮮やな清々しさと、村の静かな佇まいがよく合っていると思いました。すっきりと美しい句。(ユリ子)

朝桜と村人たちに大切にされている小学生たちの様子が伝わって心洗われる思いがいたします。(明)

片方は術後の眼養花天             中村光男     (4点)

イカロスを嗤ひ飛魚空を飛ぶ          中村光男     (4点)
空高く舞い上がったイカロスは翼が溶けて海へ真っ逆さまに落ちる、それを見て飛魚が嗤う、何とも妙な取り合わせですが季語飛魚が生き生きとしています、(貞郎)

蔦若葉ルルド聖母の青い帯           森山ユリ子    (4点)
ルルドの泉の奇跡を讃えたて胸高に青い帯をくゆらす聖母。  (柳絮)
 
花水木都会に淡き光立つ            中川手鞠     (4点)
大輪の白花を淡い光と見立てたところが素敵です。(博子)

撫牛の背に青梅の音たてて           石川由紀子    (3点)

童子(わらんべ)を遠野に残し竹の秋      早川恵美子    (3点)
自らの子供時代を遠野に置いて偲びました。(宙)

草餅も赤ん坊も載せ田舟曳く          西脇はま子    (3点)
田植時の一家総出の忙しさが見てとれる。(豊)

欠けの無き恐竜標本若葉寒           内村恭子     (3点)
季語の「若葉寒」が効いていますね。(光男)

からみつつ道をひとすぢ二羽の蝶        土屋香誉子    (3点)
睦まじく飛んでいる蝶の表現に春爛漫を感じました。(博子)

えご散るや弥生の人の眠る地に         佐藤博子     (3点)
えごの花は地味であるがこの句の情景にぴったり合っていると思います。(相・恵美子)

掛け替へる七言絶句夏隣            満井久子     (3点)
作者の日常とお部屋のたたずまいを想像します。季節に敏感なお暮しでしょう。(志昴女)

あご飛んで平家入水の瀬戸響む         内藤芳生     (3点)
瀬戸響むと大きく出られました。合戦場面を見るようで歴史を感じさせます(早・恵美子)  

壇ノ浦の戦いですね。下五の「瀬戸響む」が効いていると思います。(光男)

春暁や船の汽笛も神戸かな           土田栄一     (2点)
作者は仕事の出張などで日本中の港を知り尽くしおられぬのでしょう。神戸に対する挨拶の句。(はま子)

ぬばたまの闇に鈴の音うかれ猫         佐藤律子     (2点)
ぬばたまの闇に鈴の音が聞こえて来る。浮かれ猫の季節になったのかと作者が感じている情景が見えて来て良いと思う。
(芳彦)

独り掘る友が還りし地の野蒜          關根文彦     (2点)
自分にも亡き友を想う場所が彼方此方に有ります。野蒜の野趣がいいですね。(志昴女)

夏帽子内緒話の樹に集ふ            佐藤博子     (2点)

ほぐれゆく上州の山こごみ採る         岡崎志昴女    (2点)

蟇穴を出でしその夜轢かれけり         土屋 尚     (2点)
あ~春の夜、よく目にする、哀しい姿です。しかもボリュームがあってね、、、(志昴女)

新樹光追憶のぺーじ白いまま          安藤小夜子    (2点)
どうして追憶のページが白いままなのかしら、と想像してしまいました(律子)

機織りの音にも拍子桜時            満井久子     (2点)

春泥を飛び越してゆく大男           明隅礼子     (2点)

花満開お城のやうな駐在所           荒木那智子    (2点)
花が咲いて普段はみすぼらしい建物がお城に変わる。よく分かります。(ユリ子)

ビル風やミッドタウンの鯉のぼり        荒川勢津子    (2点)
林立のビルの中にも鯉のぼり。時代ですね。(ユリ子)

人間には手強いビル風も、鯉のぼりにとっては豊かな風ですよね。(博子)

海舟の操練所跡若葉風             土田栄一     (2点)
季語の選択が海舟の人となりを表しているようです(早・恵美子)

しゃぼん玉バベルの塔を取り囲む        森野美穂     (2点)

やあやあと三社祭の近づいて          安藤小夜子    (1点)

酒蔵に岩清水ありつばくらめ          武井悦子     (1点)

老鶯や南木曽櫛挽物語             室 明      (1点)
老鶯は木曽節うまく歌ってそうです(みつ子)

春雷や秘密の小箱隠したる           瀬尾柳匠     (1点)
雷が隠したとはいい表現です(みつ子)

明日葉の葉の生き生きと夕廚          土屋香誉子    (1点)
生き生きしている明日葉を今晩の夕餉のおかずにしようといている明日葉の道端でとれる島は羨ましい。島の生活が見えてきて良いと思う。(芳彦)

平成の空の流れや鯉幟             竹田正明     (1点)
そうですね平成の空で鯉のぼりは今年で終わりですね。感慨深いです(みつ子)

一天に富士と銀河の朧かな           岡崎志昴女    (1点)
一天、富士、銀河、の取り合わせは雄大です、季語朧が効いています、(貞郎)

気が付けば今を盛りのつつじかな        加茂智子     (1点)
季語のつつじがよく合っている思います。日々追われている身としてこの句に共感出来ます。(相・恵美子)

長閑なり裾野に一人声もなし          片山孝子     (1点)
雄大な裾野の風景がやがて夏野へと移り行く感動を強く感じます(昌夫)

飛石に弾き返すも著莪の雨           松山芳彦     (1点)
飛石に弾き返す雨の音が句を大きく見せている。(豊)

熊蜂のとうせんぼうの散歩道          上脇立哉     (1点)

辿りつきしキリシタン塚余花明かり       原 道代     (1点)

鯉のぼり童歌かなケアハウス          武井悦子     (1点)
鯉のぼりとわらべ歌、そこに繋がるケアハウス・・人の一生を垣間見るような、なんとも言えない感覚に襲われました。
(美穂)

英霊碑そばに一本桜の木            嶋田夏江     (1点)

汐騒の音を間近に春の月            相沢恵美子    (1点)

桜鯛見詰られたる箸使ひ            早川恵美子    (1点)

花盗人の手よりはらはら春の月         永井玲子     (1点)
春のお月様に現場を見られてしまった様子がわかる。(豊)

果樹園を抜けて五月の甲斐の山         内村恭子     (1点)
果・五月・甲斐 カ行の音の三段跳びでジャンプ!(宙)

武蔵野の春や足踏み水車            西脇はま子    (1点)

教会の古き煉瓦や花水木            佐々 宙     (1点)
古い煉瓦造りの教会と花水木の取り合わせがよい。花水木は日本で名付けた言葉で、ワシントンに桜の苗木を贈ったお返しに花水木が選ばれたようですが、米国ではこの花を「Dogwood]と呼んでいるそうです。花水木を英訳したときに情緒が半減するかも!。(芳彦)

朝の庭鉄線の藍空を染め            原 豊      (1点)

雪嶺と湖を隔てる花の雲            鹿目勘六     (1点)
湖北を訪れた時湖上の船の上から見た対岸の風景っを思い出しました、花の雲が棚引いているようでした、(貞郎)

空海の歩く道筋夏の海             齋藤みつ子    (1点)

鯖鮨や姑の味は未だ越せず           今井温子     (1点)
姑の味に拘らず、ご自分の味もそろそろよい按配に (昌夫)

船頭の操る竿や雪解川             阿部 旭     (1点)

以上

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