天為ネット句会報2018年8月

 

天為インターネット句会2018年8月分選句結果

(作者名の後ろの点は互選点)
 ※特選句、入選句内の順番は互選点、句稿番号の順。また互選句は高点句から順に、同点句は句稿番号順に並べました。
 ※一部インターネットで表示できる文字に置き換えております。ご了承ください。

<福永 法弘 同人会会長選 特選句>

土佐湾の深層水を水見舞        安光せつ    (2点)

水害の後、水道の復旧に時間がかかる。水はありがたい見舞い。ミネラル豊富な深層水ならなお。(法弘)

冷たく清らかな水・・・爽やかです。(宙)

イニシャルの白き刺繍や夏手套     佐藤律子    (2点)

白がまぶしく目立つ。黒いレースの手套だろう。(法弘)

<福永 法弘 同人会会長選 入選句>

ナイアガラ天地をつなぐ虹たてり    土田栄一    (7点)

スケールの大きい発想。(法弘)

スケールの大きな句ですね、下5の「虹たてり」が効いています(貞郎)

天地をつなぐ…スケールの大きな虹です(佐和)

ナイアガラの轟く水煙にかかる大きな虹。太古の雄大な景色を思わせる表現。(ユリ子)

壮大な景です。(博子)

風鈴や心乱れし日は外す        佐藤武代    (5点)

気になると、涼しさを通り越して煩わしい。(法弘)

風になる風鈴、その音色にも心が乱れる日、、、、ありそうです。(志昴女)

潔癖な態度を思います。何か一大決心をしたのかもしれません。(順一)

野外劇ト書きには無き銀やんま     早川恵美子   (4点)

ハプニングもまた楽し。(法弘)

野外劇ならではの光景に観客も思わず微笑む。和やかな雰囲気が伝わってきます。(明)

水平に横切る?銀やんま。どんな劇だったのか想像が膨らみます。(博子)

だまし絵に騙されてゐる酷暑かな    満井久子    (4点)

暑さも忘れさせてほしい。(法弘)

全く思考力ゼロの暑さです(佐和)

季語との調和が見事である。(兎平)

酷暑とだまし絵の取り合わせ・・頭がクラクラしそうな暑さと暑さゆえに一層目を惑わすだまし絵・・素晴らしいと思いました。(美穂)

大西日チンギスカンの丘に立つ     鈴木 楓    (4点)

モンゴルの雄大な大地。(法弘)

モンゴルの大平原でしょうか。スケールの大きな西日に、大らかな気持ちになります。(ユリ子)

片影を譲り合ひての帰り道       加茂智子    (3点)

縦に並べば良いのにと思ったが、それだと話がしづらい。横に並ぶには、片蔭を譲り合うしかない。なお、片蔭であって片影ではない。(法弘)

酷暑の中の方影優しい気持ちが嬉しいです(和)

譲り合ひて・・がとても優しさを感じ、行き先でもその帰り道でも仲良く楽しく過ごされた様子が伝わり心が温かくなりました。(美穂)

アルバムの若き笑顔や盆の夜      染葉三枝子   (2点)

故人の懐かしい思い出か。(法弘)

第二次世界大戦で逝った父の遺影は若い軍服姿で笑顔では有りませんが大切な一枚です 遠からずあちらで父の笑顔と再会出来る事と思います(温子)

極楽鳥昼寝をせむと花の下       佐々 宙

カラフルな句。枝にとまると暑いので花の下に?(法弘)

<互選句>

水鉄砲今日は十回死ぬつもり      佐藤武代    (11点)

お孫さんと今日も水鉄砲で遊ぶ予定があるのでしょう。今日は何回死んであげましょうかと楽しみにしている様子がつたわります (光男)

水鉄砲で自殺?何回でもしたいこの夏。面白い句だなぁと思いました(律子)

所謂孫俳句。しかし、このくらいは許されるであろう。作者と共感して選句した。(兎平)

お孫さんの相手も大変ですね。(智子)

海の日や今日父となり母となり     森野美穂    (5点)

ごく最近幼き頃を知る青年が父となった日があり、感慨深かった私の気持ちそのものです(律子)

若き日を思い出にして、大地に立ちました。(宙)

尖塔の街深閑と天の川         森山ユリ子   (5点)

ヨーロッパの古都であろうか。「深閑と」が天の川を浮かび立たせている。(孝雄)

深々とした秋の星空という大自然と人工的な尖塔との対比が読み手に色々な想像力を掻き立ててくれます、(明)

豪雨炎天山河崩落地獄変        妹尾茂喜    (5点)

確かに。その通りですね。(智子)

清流へ戻す夕べの囮鮎         小野恭子    (4点)

釣り師の優しさがさわやかに詠まれた句ですね囮鮎が効いています、(貞郎)

暑さにも筋道通す昭和人        嶋田夏江    (4点)

昭和も遠くなり人の規律を感じます(みつ子)

昭和人がいいと思います(和)

挨拶でしょうか墓参りでしょうか、筋道を通す昭和人が、とても共感を呼びます。(孝子)

滴りの石筍を成す一雫         安光せつ    (4点)

ひんやりとした洞窟の中に引き込まれております。(温子)

紀元前1万年から紀元前4百年頃まで続いた言われる縄文文化特に土器や土偶のユニーク性は興味深いものが有ります。 (昌夫)

一さじが母の命や桃ゼリー       安西佐和    (4点)

食べ物も余り喉を通らなくなったお母様、大好きな桃のゼリーだけは何とか口に・・・優しい作者の気持ちが良く現れていると思います。(孝子)

石灼けて蜥蜴一歩に止まれり      相沢恵美子   (3点)

炎天に戸惑う蜥蜴の様子がうまく表現されていると思う (光男)

トルヴェール白夜爪弾くバラライカ   松山芳彦    (3点)

ポエジー溢れる句ですね。吟遊詩人さんペテルブルク辺りでバラライカ弾いていたのかしら?(早・恵美子)

夕焼けやスコアボードに並ぶ零(ゼロ) 瀬尾柳匠    (3点)

熱戦が続く球場、夕焼けが優しく包む。(孝雄)

夕方になるまで勝敗がつかなかった試合の様子が伝わってきます。中々勝敗がつかない様子、17音で色々なことを想像できる句だと思いました。(美穂)

炎天をものともせず続く熱戦を思い浮かべました。青春を感じる句です。(博子)

糸瓜咲いて子規と鼠骨の六畳間     浅井貞郎    (3点)

鼠骨なる俳人と子規との関係を踏まえた句としていただいた。若干つきすぎかと思わないでもない。(兎平)

ラムネ抜く江戸のはづれのゆふぐれに  明隅礼子    (3点)

深海魚めきて臥す母青すだれ      安西佐和    (3点)

高齢で体が縮んだ母上かしら、と思いました。心も少し子供に帰ったような母上が昼寝をしている姿が動かない深海魚めいている、と。(志昴女)

ご病気なのでしょう、うす暗い部屋に臥されているお母様へのいとおしさと不安げな気持ちが伝わってきます (光男)

とんがった屋根とんがった夏の空    森野美穂    (3点)

「とんがった」が2回繰り返され独特のリズムを成してとんがった空もとんがった屋根もまるで同等であるかのような幻想。上等な幻想だと思いました。(順一)

潮騒の澄みたる路地や夜の秋      竹田正明    (2点)

神島灯台に登ったとき伊良湖水道を奔る潮騒の音が遙か天空からざーと響いて来るのを始めてきいた、平地ではほとんど聞こえない潮騒ですが静かな秋の夜ならきっと聞こえるのでしょう、本当に不思議な響きです、(貞郎)

背表紙の金の花文字夏の果       内村恭子    (2点)

端正な句ですね。(智子)

声高く山門の偈を法師蝉        内藤芳生    (2点)

法師蝉に秋を感じるは夏の暑さに耐えた安堵からでしょうか、その声は仏の真理を聞くと言うより生き方を一喝されているのかも。 (昌夫)

望郷の海大いなる晩夏光        中嶋昌夫    (2点)

ふるさとの海いくつになってもふる里は懐かしさと震災にあった海の儚さが晩夏光でよく出ていると思いました(みつ子)

花かんざう詰問跡の掟書        荒木那智子   (2点)

花かんぞう厳しい顔をしています。(宙)

鳥類は並べて撫肩竹婦人        石川由紀子   (2点)

鳥は撫肩ですね。季語の斡旋に驚きました(早・恵美子)

平成終夏大気の喘ぎ地の揺らぎ     小髙久丹子   (2点)

平成になって早30年今年ほど色々感じる事ありませんね実感です(みつ子)

駄菓子屋にビーフジヤーキー蠅叩    永井玲子    (2点)

駄菓子屋にビーフジャーキーがあるかどうかはわかりませんが、蠅叩が効いています(律子)

縄文の女神の旋毛蚊遣香        石川由紀子   (2点)

南天の火星きらめき七月尽       荒川勢津子   (2点)

天領の水たつぷりと熟れトマト     小野恭子    (2点)

天領の水をたっぷりと貰った完熟トマトどんなにか美味しい事でしょう(温子)

日々記録更新さるる酷暑かな      加茂智子    (2点)

喪に急ぐ夜の海月の光けり       今井温子    (1点)

神宮の大鳥居より黒揚羽        佐藤博子    (1点)

父母のなき故郷異国めく晩夏      鹿目勘六    (1点)

時の経つのをしみじみと感じさせる句だと思います。(孝子)

初蝉や明るき声と聞きにけり      かや和子    (1点)

飛ぶ鳥を喰ふ魚や大南風        土屋 尚    (1点)

一掬ひ山の崩れしかき氷        瀬尾柳匠    (1点)

ああ夏が体にべつたりまとはりて    齋藤みつ子   (1点)

ジプシーの奏でるギター明易し     阿部 旭    (1点)

短夜を奏でつくす情熱ですね。(ユリ子)

お早うの小声訃報や露涼し       片山孝子    (1点)

蜂飼ひの花アカシアや日本海      早川恵美子   (1点)

Tシャツの遍路道行く酷暑かな     上脇立哉    (1点)

ローレライの歌より生るる景涼し    竹田正明    (1点)

ローレライの歌と下五の「景涼し」の取り合わせが合っているともいます。(相・恵美子)

夏炉焚く針葉樹からシベルウス     松山芳彦    (1点)

高原の避暑地 針葉樹の垣間よりシベリウスロマンがあります(佐和)

風死せり岩肌焼けた恐山        原 道代    (1点)

梔子の花の扉のチャイム押す      妹尾茂喜    (1点)

梔子の甘い香りがしてきれいなチャイムの音が聞こえてくるようです。(相・恵美子)

茄子洗ふ小人の棘を刺さぬやう     中川手鞠    (1点)

蔕を小人の棘とは!新鮮な茄子の表現力に脱帽(早・恵美子)

街灼けて赤銅いろの夕日かな      相沢恵美子   (1点)

噴水や西洋館にダビデ像        武井悦子    (1点)

ダビデ像のある西洋館に「噴水」は良く似合います。広いお屋敷が広がります。(孝雄)

出目金の水泡一吹艶めける       原 豊     (1点)

蓮の葉の上に葉の影寛永寺       永井玲子    (1点)

黒揚羽荒磯の潮溢しける        原 豊     (1点)

焔立つ樹齢不詳の百日紅        中村光男    (1点)

炎熱の昼、百日紅の赤が燃えるように感じられたのでしょう。しかも古木、樹齢不詳。何だか執念が、、、(志昴女)

ダイビングスーツ吊るされ海の家    渡部有紀子   (1点)

炎昼の我が影道にへばりつく      鹿目勘六    (1点)

「へばりつく」の表現が的確で俳諧味があります。(相・恵美子)

朝顔や客をもてなす躙口        垣内孝雄    (1点)

緊張して庭の闇を来る客人を優しくもてなす主人の心遣いが感じられます。 (昌夫)

短夜や地名に残す古代牧        岡崎志昴女   (1点)

古代牧。何か歴史のロマンを掻き立ててくれます。西欧のか日本のか分かりませんが、何らかの歴史ロマン。(順一)

蝉声の咽ぶがごとく義経堂       内藤芳生    (1点)

炎昼や人早起きの散歩道        嶋田夏江    (1点)

大夕焼砂浜駆ける犬と児と       阿部 旭    (1点)

裂織は祖母のにほひや夕蛍       西脇はま子   (1点)

遺品の着物地を使って裂織をなさっている様子を、夕蛍となっておばあ様が見守っていらっしゃる、、、という感じでしょうか。(明)

以上

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