<日原 傳顧問選 特選句>
落葉掃く雛僧(すうそう)二人円覚寺 土田栄一 (3点)
円覚寺は北鎌倉にある大寺。臨済宗円覚寺派の大本山。少年僧が修行の一環として境内の落葉掃きをしているのであろう。「雛僧」という言葉が面白い。少年僧の初々しさが見えて来る(傳)。
「雛僧」二人が句に若さをもたらしました。 (宙)
「雛僧二人」の言葉が効果的。境内の落葉をけんめいに掃いている。絵画のよう。(ユリ子)
「雛僧」という言葉を初めて知りました。禅寺の一瞬の空気感まで伝わります(博子)
鰯雲ターレの列は豊洲へと 原 豊 (3点)
移転をめぐってさまざまな問題が噴出した築地市場。曲折を経たのち、二〇一八年十月十一日に豊洲市場が開場した。それに向けて、築地で使われていたターレが公道を通って豊洲まで大挙移動したのである。「ターレ」は「ターレット(turret)」の略語。築地で活躍していた立ち乗り運転の小型台車。ふだん屋内で使われるターレが空に広がる鰯雲のもと列をなして進む姿には、移転を言祝ぐ気分が感じられる(傳)。
<日原 傳顧問選 入選句>
重力は一つの仮説木の実落つ 高橋信治 (3点)
重力は仮説の1つに過ぎない、と言いたげでそこに木の実落つの季語を合わせたのが面白いと思いました(律子)
夕映えのひかりを返し楝の実 荒川勢津子 (2点)
楝の大木があるので実景が良く解り良かったです(かや和子)
農小屋に転がる籠や稲光 瀬尾柳匠 (2点)
郷愁を誘います。(智子)
山紅葉素焼の陶土練り上がる 相沢恵美子 (2点)
小鳥来る白きペンキの牧師館 石川由紀子 (2点)
アウグスティヌスを想起しました。鳥たちは安らぎを得て渡って行くのでしょうか。(孝雄)
ヴァイオリン工房の窓小鳥来る 明隅礼子 (1点)
「手づくりヴァイオリンの試し弾き、小鳥が集まって来るようです。(宙)
拝殿の奥のともしび七五三 竹田正明 (1点)
「拝殿の奥のともしび」の上五・中七から神社の厳かな佇まいが感じられ、又お子さんの健やかな成長を願う祈りが伝わってくる。(はま子)
留守居する猫も見てゐむ鰯雲 佐々 宙
弥撒捧ぐ船底天井の西日 垣内孝雄
<互選句>
ものいいたき口して秋刀魚焼かれけり 中村光男 (7点)
焼かれるサンマの無念の口先を見事に詠まれました!残った骨にも無念の口はついているでしょう。(志昴女)
焼かれながら何か言いたかったのかしら、と思わず尖った口が浮かびました(律子)
今年のサンマはおいしいよと言ってますね(みつ子)
良くわかります。(智子)
古酒新酒人生百年謳歌せむ 土田栄一 (6点)
実感です(かや和子)
人生百年時代に欠かせないものは古酒新酒でしょう。大いに謳歌されて下さい。(はま子)
行進の児が母探す運動会 渡部有紀子 (6点)
低学年の時はお母さん何処かなとわが家もそうでした(みつ子)
手を触れし嘆きの壁や星流る 阿部 旭 (5点)
「手を振れし」に繊細な様子が表現されていて良いと思います。星の輝きが綺麗だったことと思います。(相・恵美子)
「嘆きの壁」の乾いた澄んだ空気を思い出す。星空は美しい。(ユリ子)。
薯掘りを書く分校の行事表 安光せつ (4点)
黒板に書かれた行事予定に二重丸を入れた薯掘りの日お天気が気になりますね(温子)
「薯掘り」を学校の行事に入れているのはいかにも分校らしく良いと思います。(相・恵美子)
枯尾花仙石原をふくらませ 高橋紀美子 (4点)
陽の耀きと風に吹かれる高原の芒 我が奈良でも雄大なる曾爾高原の芒は圧巻です(温子)
この海の先は百済や秋落暉 永井玲子 (4点)
海岸で落暉を眺めながら古代の異国へ思いをはせる、綺麗な句です。滅び去った小さな異国と秋の夕日、似合いますね。(志昴女)
秋深し眼鼻の薄き石仏 中村光男 (3点)
「眼鼻の薄き」で石仏の長い時の流れが窺える。(孝雄)
石仏のしみじみとした様子が表現されていて味わいのある句であると思います。(相・恵美子)
山頭火ゆかりの宿や新酒酌む 染葉三枝子 (3点)
今年5月護国寺の山頭火の墓前に酒ビールを供え墓参りをした、近くの生家跡も訪ねてきましたが看板、幟、句碑が有るだけで周りは住宅地、記念館は無かった、ゆかりの宿が有れば行ってみたいです(貞郎)
ひなびた宿で新酒合いますね(みつ子)
ゆかりの宿で心身を癒やしている山頭火を想像しました。季語がぴったりかと・・(博子)
星月夜星をひろうて犬逝けり 佐藤律子 (3点)
「星をひろうて」は新鮮でした。愛犬は星と輝くことでしょう。(孝雄)
釣り糸を垂らす母娘や小春凪 中嶋昌夫 (3点)
この釣りは多分鯊釣りでしょう、私も良く行きました懐かしいですね、季語小春凪が良いですね、(貞郎)
鯉肥えてゆるやかに寄る小春かな 荒川勢津子 (3点)
荒磯に拾ふ小石や十三夜 西脇はま子 (3点)
廃屋となりし隣家の柿紅葉 原 道代 (3点)
淋しさ侘しさを感じさせる廃屋と彩り豊かな柿紅葉との対比が見事だと思います。(明)
鬼の子のけふまた風の挽歌かな 佐藤博子 (3点)
鬼の子を揺らす風を挽歌と捕えて季節を表現しました。 (宙)
寅さんの啖呵の切れに秋惜しむ 内藤芳生 (3点)
啖呵を切りながら家を出る寅さんの後ろ姿はいつも淋しそうでした。(昌夫)
菩薩像いろは紅葉をまとひけり 原 道代 (2点)
白猫の静かに過ぐる山茶花垣 森山ユリ子 (2点)
日本画のような静謐な景が目に浮かびます。(博子)
雲梯のしたたるほどの露の夜 土屋 尚 (2点)
たっぷりと露の降りた雲梯にさやかな月光が降り注いでいる光景が浮かびます。透明感溢れる句だと思います。(明)
ペン先に凍ての貼りつく文机 内藤芳生 (2点)
ペンの進まぬ理由が有りそうですね。(昌夫)
成り捨ての柿のたわわに少年院 石川由紀子 (2点)
たわわに実る柿を取る人もない。少年院、寂しさを感じます。(ユリ子)
実南天離れにともる和らうそく 垣内孝雄 (2点)
離れにともる和らうそくという表現にしっとりとしたものを感じ惹かれました(律子)
傾きつ揺れつ一途に木の実独楽 染葉三枝子 (2点)
温めたる牛乳甘し初霜月 室 明 (2点)
誰もゐぬ城に木の実の降りつづく 明隅礼子 (2点)
「時」が止まったような城。しかし「時」は留まることはないと確かに感じさせてくれる一句です。(明)
時の流れを感じます。(智子)
長すぎる尾を引きあまし秋の蛇 土屋香誉子 (2点)
これは青大将ですかね。私もいつも蛇は自分の長さを持て余すのではないかと考えていました。先に見事詠まれてしまいました!(志昴女)
飛石をぴょんぴょんぴょんと秋の色 齋藤みつ子 (2点)
さばえなす龍飛岬の海霧速し 浅井貞郎 (2点)
未だ見ぬものの一つに百舌鳥の贄 西脇はま子 (1点)
天平の堂甦る古都小春 中嶋昌夫 (1点)
黒々と零余子大振り狗奴国 早川恵美子 (1点)
埋蔵金記す地図なき葛の原 上脇立哉 (1点)
夜半の月昼より著き木々の影 安光せつ (1点)
火の山のケルンの影や神の旅 竹田正明 (1点)
振り向けば確かな余韻秋の声 加茂智子 (1点)
確かな余韻が良く効いて良かったです(かや和子)
コスモスやカルチェラタンの窓辺にも 原 豊 (1点)
大川を渡り馴染みの新走り 内村恭子 (1点)
押し焼くる対馬亀卜に秋暮れる 松山芳彦 (1点)
喧騒な憂き世を離れて竹の春 高橋信治 (1点)
虫塚の僧の衣擦れ過ぎにけり かや和子 (1点)
ワイパーに崩るる雨や秋思ふ 瀬尾柳匠 (1点)
その昔作りし園歌聞きし秋 片山孝子 (1点)
平成の世の最後の秋、園歌を口遊ぶご気分は。(昌夫)
捨て畑の畔に今年もまんじゅしゃげ 嶋田夏江 (1点)
ひとつ残るスタンプラリー暮早し 土屋 尚 (1点)
自転車に連れだって行く秋の蝶 森野美穂 (1点)
初時雨木曽路を急ぐ蕪村独り 妹尾茂喜 (1点)
ハレの日は薔薇一本を食卓へ 齋藤みつ子 (1点)
同郷のよしみ筆柿もらひけり 永井玲子 (1点)
「同郷のよしみ」の言葉に惹かれました。筆柿からも故郷を同じくする者同士のあたたかな心の絆が感じられました。(はま子)
天竜に映して迅し秋の雲 浅井貞郎 (1点)
秋光やワゴンの上のミニブーケ 窪田治美 (1点)
朝寒の街に溢るる外国語 中川手鞠 (1点)
紅葉焚く縄文びとの宴かな 高橋紀美子 (1点)
縄文人が紅葉を焚いて宴を開いている景、如何にもありそうな(貞郎)
亡き友の数増す寒露昼の月 岡崎志昴女 (1点)
鴫蕭条墨絵となるまで立尽す 渡部有紀子 (1点)
以上
◆ホームへもどる | ◆アーカイブへ戻る |