天為インターネット句会 2012年3月



 * 今回の会報で、句が白抜きになっている箇所がありますが、パソコン上の具合で生じたものであり、
   特別意味のあることではありません。ご了承ください。

  <有馬主宰選特選句>                (互選)

  一遍の青き踏みたるあとを踏む      西野編人   6点

お遍路でしょうか。青き踏むが上手く使われていると思いました。(紀代)

一遍が青きを踏んだ跡を同じように青きを踏んでみたという。一遍上人の心境は判りましたか。面白い。(芳彦)

一遍が踊りながら通った跡を今歩む。(せつ)

  霾や観世音寺の鐘の声          松浦泰子   1点

道真がしみじみ聴いたという大宰府観世音寺の鐘の音が霾の中でゆったりと響いている。春らしい情景です。(紀美子)

  恋猫を追ひて帝の屋敷跡               植田彩芳子  1点

「帝の屋敷跡」って京都御所のことでしょうか。(政変時の配流先の御座所ではないですよね) 恋猫となって奔放に動き回る愛猫を追ってきたら 御所ちかくまで来てしまった、舞台が大きくロマンがあって美しい。京都にお住まいなのですね、悠揚迫らずといったおおどかな感覚が素敵です。(かをるこ)

  町内に教会二つ雛飾る          安田孝子

 元の句は「町内に二つの教会雛飾る」でしたが、中七を直して特選としました。(朗人

  春子採る神名火山のけもの径       上川美絵

 

  <有馬主宰選入選句>

  拷問の石積む翳の花すみれ        西野編人   6点

先制の一発、花すみれにダウン。(隆宏)

  霾るや十日かかりて着く手紙       日原 傳   5点

中国から来る手紙は十日かかる、まだまだ中国は遠いい国ですね、でも黄沙はあっという間に日本にやって来る、黄沙は飛んでこなく、より友好な国を望む俳句だと思います、同感です。(昭信)

  こんなにもつめたき水に雛流す      土屋 尚   5点

春まだ浅き水辺で、流しびなをしているのでしょうか、雛に託した想いも愛しい。(美代子)

雛を流す時に触れた指を切るような水の冷たさと、雛の美しさが感じられます。(はま子)

  目鼻なき踏絵のマリア潮の香       石川由紀子  5点

禁教下の江戸時代、転宗誓約の証しとして、切支丹にとって身を切られるよりも辛い精神的拷問が踏絵であった。拒否は即、死であり、多くの信者は泣く泣く踏んで改宗していった。踏まれつづけてマリア像の目鼻も定かでなくなった踏絵に殉教の哀史を想い、館を出たそこへ春潮の香。句は作者が我を取り戻し、に立ち返った旅の一瞬であろう。 (高甫)

隠れキリシタンの哀しい歴史を伝える踏絵。長崎の小さな漁村の風景が見えてくる。(ユリ子)

  ミコノスの真白き街路風光る       杉 美春   4点

エーゲ海の紺碧に映える白い街路、そこを吹き抜ける風が生き生きと伝わってくる。(ユリ子)

  西陣の日矢縦糸に水温む         早川恵美子  3点

西陣の格子から差し込む柔らかな日差。それを「縦糸に」という表現が自然ですし季語の選択もつかず離れずよいと思いました。(ゆかり)

  山伏の笈に納まる雛かな              芥ゆかり   3点

落城秘話の一齣か?(隆宏)

いろいろな物語が生まれそう。(郁雄)

  子規堂に草稿ねむる日永かな       浅井貞郎   2点

正岡子規のどんな草稿がねむっているのか興味しんしんです。季語の春の日永が効いています。(よしえ)

重要な草稿がねむっている。日永が来ることによってのんびりした感じが一層でてきます。(真弓)

  春北風や安芸の島守る平家蟹       竹田正明   2点

春のこの時期らしい宮島を格調高く詠っているところがいい。(久子)

  鎌倉の木の芽起しや槌の音        武藤スエ子  2点

槌の音が響くことによって鎌倉の木の芽起こしが始まる。鎌倉が効いています。(真弓)

  白鳥八羽帰る相談してをりぬ       松村三冬   2点

帰る相談という措辞いいなあと思います。(游)

八羽という偶数と面白味のある擬人法により、和気藹々とした雰囲気が醸し出されています。(蟷螂子)

  月朧珠洲によき音の炭を焼く       対馬康子   2点

  春一番メリーポピンズ飛んで来る      鈴木 楓   2点

春一番とメリーポピンズの取り合わせが面白い。春一番に乗ってくるくる回るカラフルな傘と、飛んでるおばさんの姿。うきうきしてくる、楽しい句ですね。(美春)

  鳥曇いつまで平行線の恋         内村恭子   1点

平行線のままの恋いもまた良しです。 (和男)

  日脚伸ぶ海光曳けるクルーズ船      伊是名白蜂

  御告祭犬小屋に犬眠りをり        熊谷佳久子

  強東風や遠つ淡海の砂丘ゆく       あさだ麻実

  ネーブルやシェフは美術の元教師     永井玲子

  利休忌の夜半の雪に目覚めけり      西脇はま子

  亀鳴いて雨の百人番所かな        斉藤輿志子

 元の句は「雨余の」でしたが「雨」にして、また旧仮名遣いを修正して採りました。(朗人

 

  <互選>

末の子が母になります桃の花       永井玲子   11点

年の離れた甘えん坊の末っ子がお母さんになるなんて! 母親の感動を口語体で優しく言い表しているところがいい。(久子)

幸せな句はいいですね。(和男)

可愛いです、桃の花も良いですね。(貞郎)

桃の花に感慨が盛り込まれています末っ子だから猶のこと。(佐和)

おめでとうございます。桃の花の季語が効いてますネ。(麻実)

生まれてくるのは女の子でしょうか。季語により、ほのぼのとした喜びの空気がよく伝わってきます。長い間ご苦労様でした。(蟷螂子)

長閑けしや嬰のあくびのコインほど    枝松洋子   10点

嬰のあくびの口は無心で愛らしく、本当にコインのようだと思い起こし、暖かい気持ちになりました。(紀美子)

小さなあくびがコインほどとは写生でありながらなんと詩的な。(康子)

嬰のあくびをコインに見たところが良いと思います、埴輪の口を思い浮かべます。 (輿志子)

コインほどのあくびをしている嬰児、すくすく大きくなーれ、平和な日本にもどれ!(文)

比喩がたいへんユニークと感じます。(清文)

コインはピッタリの表現です。(香誉子)

国引きの湖の匂ひの蜆汁         小川 洋   7点

宍道湖の蜆汁。出雲の旅の懐かしさ。(編人)

国引きの湖〜宍道湖〜の蜆に「国来、国来」と引き寄せた出雲の神様の想い〜国引きの神様の想いの匂いがポエム。(文)

食をそそる句で、宍道湖の蜆汁を思い出しました。(百恵)

挨拶句がよいですね。(栄一)

出雲風土記を思いながら食す宍道湖の蜆汁、殊更の味です。(郁雄)

春を待つアキレス腱を伸ばしつつ         芥ゆかり   6点

足を心を励ましながら準備運動、もうすぐ春ですね。(游)

敢えてアキレス腱と言った所が面白いです(奈央子)

譲られし席に差す陽の暖かし       岡崎美代子  5点

譲られた席は、電車だろうか?(修造)

とりの貌してしらうをを啜りけり     飛鳥ゆき   5点

面白い句です。(余一)

シロウオ(シラウオ)の躍り食いは福岡市の室見川が有名。お椀の中でピチピチ跳ねているシロウオに二杯酢をかけ、おそるおそる、いや意を決してからは一気に呷るのだ。ゴソゴソ動くおなかに手を当て目を白黒させている連れの表情を 「とりの貌」 と描写、迫力がある。(高甫)

梅林や鳥語訳してみたりして       石田 游   4点

長い数式草萌える野のつづき       対馬康子   4点

詩のあるピカピカの作品ですね。(はま子)

雪をんな人に恋してとけにけり      内藤 繁   4点

 「恋してとけにけり」、類句あり。(朗人

面白い発想ですね。(編人)

身の破滅と知りつつどうすることもできず、助けることもできず。(久丹子)

窯出しの器が奏づ早春譜         西村昭憲   4点

今生れし器が早春の息に触れ、放つ音楽。(白蜂)

オカリナだろうか?(修造)

窯だしの器が冷えるまでの間、様々な音色を発する。この音を早春賦としたところが素晴らしい。どんな仕上がりになるか、待つ間は楽しみなものである。(壮太郎)

窯出の器が触れあって出す音が聞こえてくるようです。早春賦が効いていますね。(はま子)

黒潮へ乗りて呂宋へ落椿         早川恵美子  4点

スケール大の句。(和男)

海辺の崖椿でしょうか。崖椿を黒潮に落とし、その昔は夢の国だと言われた呂宗へ流されました。とても壮大な光景を思い浮かべることが出来、ご存知の方々しかご存知でない、大変古い映画主題歌「風雲黒潮丸」の歌詞を思い出しました。(敦子)

この椿は呂宋まで行くという、ロマンがあります。(清文)

梅日和貼り紙にある家出猫        江原 文   4点

梅日和の暖かさに猫も遠出をしたのでしょうか。(那智子)

梅日和がうまい。(清文)

梅に誘われて猫もどこかへ行ってしまったのでしょうか。ユーモアを想像させる句です。(真弓)

遠くより野火の匂ひと思ひけり      永井潤子   4点

 今年もこの町に野焼きが始まった。遠くから野火が匂いだし、春はそこまでやってきた。現場に行かずとも作者は、匂いで野火を直観できるのだ。そのよろこびを簡素な表現で詠んだ。私の野火は、若草山のものを除き、子ども時代に遊んだ土手や川原に燃え立っている。(茂喜)

海の音降る料峭の芭蕉句碑           小橋柳絮     3点

音が句碑に降るのは大変想像力があって、インパクト的だと思います。(海燕)

玻璃越しに蒙古の兜冴返る        大下亜由   3点

 「玻璃越しに」は説明であり不要。惜しい。(朗人

元寇の役の遺物や海底遺跡には歴史的なロマンを感じます。それ故、「蒙古の兜冴返る」と詠まれたことに大変共感しました。(正明)

岩海苔の青きを沈め残り汐        阿部 旭   3点

残り汐の中でゆらゆら揺れている青、美しい早春の写生だと思います。(游)

愈々春が来た感じ。(栄一)

鮮やかな青色と海の景色が目に浮かびます。(美春)

変面で雑伎は幕に春遅遅と        大澤久子   3点

中国雑技を鑑賞した作者の感動が伝わってくるようです。余韻のあるよい句。私も中国で観たのを思い出しました。(よしえ)

中国の雑技団の曲技には哀愁が有りますが、変面には驚かされます、春遅遅が良いと思います。(輿志子)

田舎の旧正月の光景と想像しました。最後に変面で観客がわっと沸いて大団円。春を待つ気持ちの高まりが伝わります。(ゆかり)

うねるときひかり弾ける春の川      中坂和子   3点

春よ来いと待っていた春が弾けて来た感じ。(栄一)

春の川の流れの勢いを感じる。「うねるときひかり」というひらがな並びが、流れの豊かさと柔らかさを表している。(ユリ子)

大の字に野良着の干さる春菜畠      松村三冬   3点

朴訥で大らかな土地柄・人柄が優しく言いとめられている。(柳絮)

日当たりの良い農家の軒先、お日さま、春菜の黄色。干された野良着も気持ちよさそう。(美春)

扇骨のさらさら乾く寒日和        永井潤子   3点

砂抜の浅蜊の泡に言葉あり        竹内宗一郎  3点

 ちょっと塩きつめでは? など会話してる気配確かに。(久丹子)

下五の発見がいいと思います。浅蜊のつぶやく言葉は何でしょうか。哀れさも感じられます。(ゆき)

雲巌寺魚鼓の一打やしづり雪        伊藤高甫   3点

芭蕉ゆかりの寺。魚鼓の素朴な音としづり雪が往時を偲ばせる。(柳絮)

どこかは知りませんが、厳しい修業の寺の様が見える様に思います。(美代子)

梅ふふむもしもしあのね糸電話      石川由紀子  3点

甘酸っぱさのなかのあどけない郷愁。(白蜂)

次男の子が三歳と一歳、「アンパンがね・・・」と電話が掛かってきます。受け答えに苦労しています。(晶代)

幼子の電話での話はもしもし、あのね、ばいばいの繰り返し。かわいい情景が目に浮かびます。(紀美子)

閏日の一日降り積む春の雪        満井久子   3点

四年に一度の閏日と、一日で消える春の雪の淡いうつつ感がいいですね。(康子)

実感と表現が合っていると思います。(奈央子)

雪だるまたうたう塀にもたれけり     土屋香誉子  3点

日が差してきてだんだん溶けてきた雪だるま。(せつ)

しっかり立っていた雪だるまも暖かい日差しに負けてしまった。塀にもたれて徐々に溶けてゆく姿に、憐れさとおかし味がある。 (月英)

四万十の春やモルドウ河序曲       安西佐和   3点

 スメタナ作曲。チェコの歴史や人々の哀感をモルドウの流れにたくした。四万十の清流 への発想転換に共感を覚える。(柳絮)

いいですね!四万十川にモルドウ河序曲が聞こえてくるとは。(晶代)

スメタナの交響詩「モルドウ河」から、ゆったりとした四万十川の春を思う詩情のある句。故郷でしょうか?(壮太郎)

マンモスの骨を探しに鳥帰る        米田清文   3点

虚の世界は楽しい。(紀代)

音ひとつ失くせしピアノ雛の夜      杉 美春   3点

寂しい雛の夜が、音ひとつ失くしたピアノによって上手く言い表せている。(文)

ピアノも雛段もおいて、巣立っていった娘、久しぶりに雛もかざりピアノの前に座る。調律もしないままのピアノ音がしないピアノの鍵に気が付く。春愁のひと駒。(小夜子)                

廃校の母校に春の土を踏む        滝澤たける  3点

桜の咲くころの母校は格別。土の感触が伝わる。(紀代)

青春の喪失感。(久丹子) 

春塵の床に懺悔の膝の跡         笹下蟷螂子  3点

懺悔室に春塵が一面にある。その中に懺悔したであろう人の膝の跡が残っているという。この発見に詩情を感ずる。(芳彦)

野路うららいつか踏み入る隠れ里     内藤芳生   2点

季語がとても適切だと思います。うららの日にいつか隠れ里との出会いはとてもロマンだと思います。(海燕)

こんな野歩きがしてみたい。(尚)

字足らずの例へば二月の暦かな      上脇立哉   2点

立春や臍の緒外れ竜と化す        枝松洋子   2点

臍の緒が竜とは、この大胆な発想に詩を感じました。(宗一郎)

臍の緒外れて、赤子の泣声?(晶代)

春潮や沓音すすむ朱の列柱        内藤 繁   2点

海の近くの神社、例えば厳島神社のようなところでしょうか。神官の沓音が聴こえ、春の潮の音も聴こえる静かな状況が見えるようです。(那智子)

沓音と潮の音が聞こえてきそうです。(百恵)

  立春の紅燈籠を掛けにけり        斉  平   2点

中国の俳句だと思います、中国ではに赤い燈籠を掛けて祝うのです、紅燈籠が印象的な俳句です。(昭信)

紅灯篭は立春という特別の日を鮮やかな色で染め、面白いと思います。(海燕)

椀底を掻くやうにして蜆汁        須田真弓   2点

人間の動作をよく見ている、と思いました。リアリティあり。(宗一郎)

情景が目に浮かびます。(奈央子)

億年の海を見つめる震災忌         熊谷かをるこ 2点

 震災忌は季語では九月一日のことになります。私は津波忌を提案中です。(朗人

東日本の繰り返す大震災に対し、複雑な気持ちで、かって景勝の名をほしいままにした海を眺めておられるのでしょうか。(正明)

城濠の群青深き夜の梅          今井温子   2点

雪霏霏と山も二月も隠したる       妹尾茂喜   2点

雪が頻りに降る続く中二月も隠したという面白さがあります。 (輿志子)

お涅槃を修して寺の幼稚園        滝澤たける  2点

小さな子供たちもお寺の行事に自然に身近に接している感じがよく出ていてほほえましい。(久子)

且元の弓ゆるびたる四温かな       宮本よしえ  2点

少年の汚れて眠る春の夜         安西佐和   2点

この少年は お幾つ位なのかしら。まだ幼顔がのこっている年齢ならば走り回って遊び疲れてしまって 夕食を摂らせると入浴させる暇もなく食卓で崩れるように眠ってしまった。 とりあえず 顔や手足をタオルで拭ってベッドに運んだという 子育て中の体験があります。「春の夜」という季語の持つ不思議な官能的な響きと 「汚れて眠る」から、思春期の扱いにくい少年の退廃的な一面をふっと想ったがやはりここは健康的にクタクタになる程遊び疲れた少年だと思い直した次第。(かをるこ)

柳橋船それぞれに春の雪         齊藤昭信   2点

大川の手前神田川に観光用の赤い屋台船が何艘か?がれています。重たい雪に負けず春を待つ船。私の幼いころは綺麗なお姐さんが乗ったお茶屋さんの船でした。(小夜子)

葉にひとつ虫喰の痕さくら餅        石田克二   2点

いわゆる道明寺粉の皮で餡を包み、塩気のきいた桜葉で包む餅。つぶつぶの食感が楽しいが、よく見ると葉に虫喰の痕が残っていたという。虫が食べようとした葉を人が横取りしたようで、ユーモアたっぷりだ。道明寺餅が関西風で、関東にはまた違う餅があったのを知ったのは随分後のことだ(茂喜)

目も口も鉛筆描きの紙雛         西脇はま子  2点

園児の手造りでしょうか。素朴なおひなさまの顔が目に浮かびます。紙雛らしさがよく表現されていてよいと思います。(ゆき)

薄氷の風と水とに還りけり         石田克二   2点

バレンタイン時計の針を合はせたる    稲根克也   2点

 海苔を干す夫婦に今日の風のよし     安光せつ   2点

おだやかな時間が流れています。(夏江)

角曲がる度に友ゐる四温かな       土屋香誉子  2点

暖かくなった町角を曲がる度に友がいる。きれいな非現実。(康子)

木流しのぶつかる音の調べかな      須田真弓   2点

春を告げる音には色々。冬になる前に切って山中に貯木されていた木を雪解けで増水した谷川に流し送る。谷川の流れの音、流れる木々のぶつかる音、木流し衆の掛け声、様々な音に驚く鳥達の声。これらの音が相まって聞える音を調べと言われ、長い冬を越し、春を迎える嬉しくも力強い気を感じました。(敦子)

深炒りの珈琲の香や牡丹雪        竹内郁雄   2点

 関東地方に思わぬ牡丹雪が降ったのは2月中旬だったか。作者は、窓を開けて降り急ぐ春の雪を見ている。ソファーに腰かけ、アルバムを広げ、いれたての珈琲の苦みを味わっている。あたたかい部屋と牡丹雪のすぐに解けるはかなさとの対比がおもしろい。(茂喜)

復興えんぶり田の神光る烏帽子かな    三宮隆宏   2点

被災地に春の訪れを願う気持ちが伝わります。(那智子)

やっぱりこの時期・・烏帽子も光って復興の気概が伝わります。(佐和)

しみじみと古き匂ひの雛かな       満井久子   2点

しみじみとで、トテモ懐かしい匂いが感じられます。(孝子)

初音聴く鏡のなかも身じろがず      安藤小夜子  2点

私は2月23日に早朝の公園で聴きました、気配を覚られないようにそーと。(貞郎)

恋猫の島を揺るがす鬨の声        阿部 旭   2点

島で猫が増えています。恋の鳴き声をときの声とは面白い表現です。(編人)

北窓を開き風入る隠れ部屋         橋本和男   以下1点

隠れ部屋は忍者屋敷でもなければ自宅でもなく、かつて隠れ切支丹たちが人目を避けて祈りを捧げた屋根裏の遺構と見た。彼らは隣家からさえわからない完全な秘密結社の形で信仰生活をつづけていた。居間や寝所でなく隠れ部屋であるところ、読者の興味をそそり俳味を醸す。吹き込んだひと冬越しの光と風に、オラショ の声も途絶えたようだ。 (高甫)

啓蟄やランナーは皆カラフルに      江原 文   

啓蟄とランナーがいいですねランナーもカラフルにもぞもぞ・・(佐和)

ぶらぶらとお城一周あたたかし      香月余一   

城は武士の戦いのイメージが有りますが、現代は城を中心に公園になっております、優雅なお城を見ながらの散歩良いですね、ぶらぶらと一周がこの句を良くしてます。 (昭信)

天使てふ珈琲バレンタインの日      三雲繪里子  

コーヒーというと漆黒の悪魔のイメージですが、天使と名付けられたものもあるのですね。特別な感じが季語に効いています。(ゆかり)

羽拡ぐ迦陵頻伽や寒明くる        岸田 晶   

妙なる鳴き声の鳥が羽を拡げる姿に「寒明くる」は良く効いています。(正明)

チューリップ市庁舎工事曇り空       窪田治美   

キッチンに春の気配の漂へり          植田彩芳子  

茹でる前の菜の花を飾り、笊には土筆と蕗の薹、春告魚も並べばもう寒の戻りなどと言っていられません。主婦魂もぞもぞ。(小夜子)

伊予灘の霞みてをりし鳴雪忌       根岸三恵子  

鳴雪は松山の人、ずっと後輩の子規の影響で作句を始めたという。(尚)

雛飾る廃校子らの声満ちて        山下閑生   

校庭には梅、空には小鳥、子供達も楽しそう。33日をこの学校で迎えるのはこれが最後。日本では、今、廃校がとても増えているとか。賑やかそうで寂しさが際立つ句でした。(敦子)

茅葺の雪解雫の光かな          朱 月英   

趣のある茅葺から落ちる雫が、煌いていたのですね。(孝子)

初鶯聞き洩らさじと息をのむ       土田栄一   

春雪や一文橋の残り杭          宮本壮太郎  

鶴帰る瓦礫の山をまなうらに       小川 洋   

 類句多し。(朗人

鶴も大震災を伝えてくれる事でしょう。(貞郎)

ケーキ焼くやさしい匂ひ窓に雪      中田朗子   

窓に雪が降っている台所ではケーキを焼く匂いが漂っている。平和な家庭を彷彿とさせる暖かさが感ぜられ、詩情あり。(芳彦)

みまかりし空の青さや半仙戯           鈴木 楓   

花種と本の包みを提げて来ぬ       明隅礼子   

男性であれば更にどんな人物か興味がわく。(せつ)

サロメ舞ふ五色のヴェール春の宵     森山ユリ子  

ヘロデ王の前で踊ったサロメのヴェールが妖気的であつたのかも。(百恵)

ひよろひよろと地を這ふ影は紙鳶の尾   荒木那智子  

「ひょろひょろと」がおもしろいと思いました。上がりそうで上がらない凧でしょう
か。(香誉子)

甍行く恋も今日まで春の猫        石之敦子   

恋猫の徘徊も「今日まで」ですか。言い切った所が面白い。(美代子)

人恋しさうな山羊ゐし二月畑       嶋田夏江   

そういえば山羊って人懐こい感じがありますね。何もない二月の畑がぴったりです。(月英)

浅春やあをき眼の鬼土鈴         池永 寛   

雪遊び子の泣き出して終了        中田朗子   

機嫌よく遊んでいても子供はいつ泣き出すか分からない。思い通りに雪だるまが作れなかったり、雪をぶつけられたり。そうすると遊びはお終い。下五が字足らずなのが、(はい終り)と言い渡したようで面白い。(月英)

  枇杷の花等圧線の込み合うて       高橋紀美子  

パンプスのリボンに仔猫戯るる      上川美絵   

草萌える地図を開けば汽車の音      中西 宏   

春の土やはらかき地球と思ふ       朱 月英   

生を与えられていることへの感謝。(郁雄)

春光や孔雀のやがて金色に        明隅礼子   

孔雀の羽根は光を受けると金色に見えるのですね、見てみたいです。(香誉子)

早春や少女が放つ弓の音         熊谷佳久子  

一向に去らぬ鴉や風光る                   新倉百恵   

洛中に春田打たれて残りけり       山下閑生   

京の街中に田が残っているというだけの景なのだが、実にうまく詠まれた。(尚)

しののめの白梅の香に会ひに行く     中坂和子   

明け方と白梅がマッチしていると思いました。(孝子)

青き踏むやんちやな犬の綱引きて     香月余一   

自然との一体感を心地よく表出。(白蜂)

竜天に登り黒雨の愚陀仏庵、       浅井貞郎   

ねむり姫の睫毛がピクリ日脚伸ぶ     石田 游   

いわゆる「俳句」らしくないところが魅力。楽しい句です。(宗一郎)

水輪なき時も降りをる春の雨       上脇立哉   

対象物をよく観察されており、季語もよく効いています。さらっと詠まれてはいますが、かなり推敲されていて、完成度の高い作品だと思います。(蟷螂子)

 

  (選外句)

春の月縄文ヴィーナス尻ふくら      

 下五が当然か。(朗人

英彦山の玉砂利白し冴えかへる      

 「白し冴えかへる」が平凡。(朗人