天為インターネット句会 2012年4月


 少々皆さんマンネリ傾向があり、気楽に楽しく作り過ぎのようです。やはり一句一句を大切に作って下さい。(朗人)

 

  <有馬主宰選特選句>                (互選)

  胡同にまだ春節の香の残る        小川 洋   4点

開発で胡同は減っているとか。下五に惜しむ気持ちが表れています。 (編人)

祭り果て、爆竹やご馳走の残り香が漂う胡同の路地の佇まいが伝わってきます。(游)

胡同ならではの、春節独特の香があるのでしょうね。まだ旧正の余韻が残っている人々の暮らしぶりが想像できるようです。 (月英)

春節が終わっても、まだ胡同に爆竹や先祖へのお香の匂が立ち込めているのでしょう。(はま子)

  浮世絵に庶民の暮らし花杏         米田清文   3点

あたりまえかも知れませんがあえて言ったところがかえって新鮮に思いました。(紀代)

広重のシリーズ物には庶民の生活が生き生きと描かれ民俗学的な資料価値も高いという。丸子宿は梅の蕾であるが、「丸子」の絵を思い浮かべた。(柳絮)

庶民の暮らしが仄々と伝わってきます、花杏が良いです。(輿志子)

  緋桜の一天青し烽火台          伊是名白蜂  1点

山国のここは尾根、大きな緋寒桜が雲ひとつない空に向かってそびえ、濃目の緋色が輝いている。側には烽火台がある。例えば甲斐の国では武田氏が、のろしをあげて尾根から尾根へ「急なること」を告げたのだ。山歩きで発見した一句、なかなか得られるものではない。(茂喜)

  阿弥陀堂深々とあり春惜しむ       熊谷佳久子

 

  <有馬主宰選入選句>

オカリナの一音飛んで春深む       西脇はま子  2点

雲雀鳴く古墳に四隅登り口        宮本壮太郎  2点

鳥声に目覚めて谷戸の水温む       天野小石   1点

谷戸にも愈々春が。(栄一)

四合院の大樹に積る春の雪        董  ?   1点

四合院の大樹で歴史を感じさせます、春の雪がこの俳句を明るくしてます。(昭信)

子規庵の柱の疵や春の土、        浅井貞郎   1点

芽柳やモネの好みし太鼓橋        安光せつ   1点

光の画家モネは晩年柳を描いた。色彩の諸相をその透明感の極致として表現した。(柳絮)

 

  <互選句>

知恵の輪のやうな路線図山笑ふ      大下亜由   9点

ますます入り組んできた路線図知恵の輪が新鮮に思えました。(紀代)

比喩が効いている。(芳生)

面白い表現ですね。(奈央子)

水切りの石清明の空を切り        飛鳥ゆき   8点

たまたま私もそういう光景を見ていた。清明にふさわしい水のきらめきと空の青さの見えてくる明るい一句。(久子)

遊び心の水切り石が勢いよく天体を切る心地よさ。(白蜂)

水切りの石が飛んでゆく様と清明の空がぴったり!!それこそ切れのいい句。(游)

水も温み、光のまぶしいこの季節の水切りは気持ちの良いことでしょう。何段跳びましたか。(紀美子)

清明の日ですので、清流に水切る石の清清しさと、空の爽やかさが出ている俳句だと思います。(昭信)

シャガールの馬の走れる春の空      蛭川晶代   7点

春の夢。少女を乗せてシャガールの白馬が走るのは、朧月の浮かぶ春の夜空である。どんな夢を乗せて走っているのだろうか。(寛)

青空のどこにも触れず春の虹       安西佐和   6点

美しい春の虹の空ですね。(和男)

着眼点と表現が個性的。(蟷螂子)

座禅して仏にならむ蟇蛙          西村昭憲   6点

天為の句風とは少し違うかもしれませんが、仙崖さんの蛙ですね。大好きな狂句なので一票を。(美代子)

表現の面白さ座禅して仏になったとは愉快なり。(豊)

蟇蛙の蹲っている様子を座禅と見た発想が面白い。(赳夫)

そういわれてみると泰然とした面構えに思えてきます。(ゆかり)

世の中の一切を忘れようとして座禅をしていると、蟇蛙の鳴き声が聞こえてくる。座禅の周囲の様子を表すとともに現実と非現実の間にいる作者の気持ちを、蟇蛙が引き出している。(寛)

風船のブッセの空へ翔けゆけり      内藤芳生   6点

ブッセの詩上田敏の訳詩集「海潮音」に収められ、「山のあなたの空遠く・・・」が思い出され、若いころの情熱が懐かしく感じました。(芳彦)

秋田県マタギの里近く、毎年2月行われる風船祭を思い出します。(郁雄)

ブッセの空、すぐに上田敏訳の「山のあなたの空遠く」を思い描く。(ユリ子)

涅槃図を巻く衣擦れの夕べかな      天野小石   6点

衣擦れの夕べに静かな場所の雰囲気がよく出ています。(編人)

止めの情緒纏綿。(隆宏)

風強き日は鵲の巣を思ふ         内村恭子   5点

 なぜ鵲か。(朗人

詩的感覚に惹かれました。(紀代)

鵲は黒と白の配色のスマートな鳥で、樹上に丸くて大きい巣を作る。風雨があれば、諸に当たると思う。そのことを心配されている作者の優しさが感じられた。 (月英)

舞ふひとも笛吹くひとも春の野に     明隅礼子   5点

大らかな句に惹かれました。春の野がいいとおもいます。(せつ)

冬が終わって草が芽吹き虫も地上にあらわれるころ、生きるものは春の陽ざしを生きる糧とする。どこの祭だろうか、人の輪が大きくひろがり活気に満ちている。見るひとも、もの売るひともそこにいる。作者も口笛鳴らしてあちこち歩きまわり、詠むひととなった。(茂喜)

絵草子にあるように笛や太鼓に合わせ唄ひ、踊って春を楽しんでいた頃が、今の花見より楽しそうです。(紀美子)

こんな野遊びをした日もあった。(尚)

春愁や花の名を持つ貝並べ        土屋香誉子  5点

南国のきれいな貝なのでしょう。貝に花の名があるというのが新鮮です。(康子)

少し艶っぽいアンニュイな気分、、、「花の名」が効いてますね。(美代子)

霾ぐもり唐三彩の駱駝かな        竹田正明   5点

 つき過ぎ。(朗人

霾ふる日本でシルクロード伝来の色鮮やかな陶器の駱駝を見ているのでしょうか。大陸との繋がりを感じるロマンある句です。(ゆかり)

異国情緒を醸し出す句である。(百恵)

風光るノコギリ屋根の機の街       満井久子   5点

私が知っている機の街は古い屋根でノコギリ屋根でした。風光るが良い。(和男)

地方都市の春の空が見えます。(繪里子)

光る風は見えない、けれども、季節は春、ノコギリ屋根のある桐生や一宮の風景が絵となって浮かび、織機の音、それから、紡績工場が盛んだった頃、その街で生活していた人々の物語まで想像出来る句でした。(敦子)

織機の音が軽やかに聞こえます。(香誉子)

清明や舟が舟曳くあさぼらけ       松村三冬   5点

長江あたりの景でしょうか。中七がその景にぴったり。(編人)

天心に鳥消えゆけり遍路道        対馬康子   4点

季語が効いていますね。(貞郎)

「月天心に貧しき町を通りけり」蕪村の句を彷彿させる句ですね!しかし「鳥消えゆけり遍路道」となり華麗な情緒が感ぜられ綺麗な句です。(芳彦)

切り株に番号のあり鳥帰る        荒木那智子  4点

鳥は時期になると北へ帰り、伐られた木は年輪に歴史を刻みまた再生してゆく。当然のように繰り返されている自然界の営みと切り株に番号をつけている人間界の行為。この対比がおもしろい。大きな句と思う。(久子)

切り株に番号、鳥の住所録みたいで面白いですね。(美春)

いぬふぐり摘めばほろほろ瑠璃こぼる   朱 月英   4点

ほろほろ瑠璃こぼるが、いぬふぐりの春の陽に輝いている様が目に浮ぶ。(晶代)

名前に似合わず可憐な花、といつも思う。(ユリ子)

巻き戻す体内時計復活祭         杉 美春   4点

造物主によってリセットされた体内時計のことをふと意識したのである。(柳絮)

巻き戻す体内時計と言ったところがなかなか思いつかなく、独自性があっておもしろいと思いました。(真弓)

春一番北斎の波立ち上がる        大下亜由   4点

老妻もすこし酒気帯ぶ花筵           熊谷かをるこ 4点

どこかで花見をしていたのでしょうか。それに、自分と苦労してきた老妻が愉快な気分で、お酒を飲んでいました。アルコールの含有量がすくない清酒か、それとも二、三杯だけ飲んでいましたか。酒気がすこしです。僕はこのすこしが好きです。泥酔でもない、一杯でもない、ほどがちょうどいい「すこし」です。花筵ののんびり気分にあいまって、歳月の往来をかえりみるやや寂しい気分が感じられる。(董?)

普段お酒を飲まない奥様に、無理強いをしたのでしょうか。桜満開と見えます。(赳夫)

楽しいお花見のようですね。ほんのりとしたご様子の奥様をほほえましく思っていらっしゃる。やさしい旦那さまです。(紀美子)

秩父路は石仏多しすみれ草        石川由紀子  4点

芭蕉の句を思いだし、ゆかしい感じがしました。(那智子)

芭蕉の句を彷彿させる。季語もよく効いている。(蟷螂子)

野の石仏の荒さに、可憐なすみれの取り合わせがよい。(ユリ子)

秩父には三十四箇所観音霊場札所があり、路傍にも大小の石仏があり、お遍路さんによく出会います。小さな濃紫のすみれ草がいいですね。(はま子)

春眠やもがけば奈落深くなり        大澤久子   4点

夢なら覚めてくれとは裏腹に深まる恐怖。(白蜂)

春は本当に眠い。春眠と戦おうとすればするほど眠りの深みにはまって行く。その感覚、春眠の気持ち良さが、眠りを表すには少々物騒な「もがく」と「奈落」という言葉で、逆に的確に語られていると感じました。(敦子)

妻癒ゆるまで枯らすまじシクラメン    荒尾保一   4点

早い快復をお祈りします。シクラメンが優しい。(和男)

闘中のご主人にエールを!!(游)

優しい人ですね。(貞郎)

シクラメンは丁寧に葉づくろいをする必要があり、思いがこめられています。(清文)

ポトマックより友好の花便り       根岸三恵子  4点

かの地でも桜を愛でる人たち同じように喜びを分かちあう友好の輪が広がることが平和の礎になることを願っています。(夏江)

ポトマック河畔の桜は世界的に名高い。日米友好の象徴である桜がワシントンD. Cに贈られて百年。今年も見事な花を咲かせたらしい。(蟷螂子)

我を通す一本のありチューリップ         芥ゆかり   4点

言い得て妙!! 土に植えられているものより切り花にした方が顕著に一本の我が見えてくる。(久子)

花は可愛いが寒さの中から芽を出す花、我を通すが似合います。(孝子)

私は私らしく個性的なチューリップそれもありかな。(麻実)

山焼けば風の迷路の生まれけり      上川美絵   3点

山焼きの炎が生む風の道、それを迷路と捉えて独自の発見。調べも良いと思います。   (ゆき)

風の迷路という表現が詩的だと思います。(美春)

白蓮やルルド聖堂坂の上         森山ユリ子  3点

白蓮の同じ方向を向いていて整った形をしている姿が、聖堂との組合せによってより活きています。坂の上に一本白蓮が孤高の人のように立っているようです。(真弓)

太湖石無数の穴に春の風         齊藤昭信   3点

太湖石は形が様々で名が響いています。蘇州の名園では、円い池の中によく太湖石が見えます。無数の穴から、春の風が吹いてきました。風は目で見えない無形のものですが、この無数の穴より、春の風が形のあるかのように、吹いてくる感じです。(董?)

太湖石と春の風を組み合わせることにより、この岩の塊の美しさと春を待つ気持ちが良く伝わってきます。(正明)

中国の庭園にある穴がたくさんあいた奇石、それが太湖石である。年月が穿ったその無数の穴を通り抜けるのは春の風である。中国の自然と人々の営みの歴史に思いを馳せながら春の庭を散策するのである。(寛)

太白を三日月に寄す汐まねき       高橋紀美子  3点

汐まねきが面白い。(せつ)

いつせいに千の芽吹きのさざれ波     大澤久子   3点

今年は春の訪れが遅くて、ようやく暖かくなりました。いっせいに芽吹き、花が咲き、一挙に春が押し寄せてきたようでした。いっせいの芽吹きをさざれ波と捉えたところに共感しました。(美春)

猿田彦に一隅あけて春田打            池永 寛   3点

猿田彦と春田打の組み合わせが斬新ですね。見守られながらの田打ちはのどかです。(ゆき)

鳥帰る高麗青磁鶴首瓶          滝澤たける  3点

高麗青磁の器形と釉色は「鳥帰る」という季語によって一層味わい深く感じられます。(正明)

絵タイルの魚氷に上る海の街       内藤 繁   3点

このごろはどこの街でもその地にちなんだ絵タイルをみかけます、楽しい句です。(夏江)

大仏の螺髪ほぐすや花吹雪        原  豊   3点

禅の雰囲気が感じられる。(董?)

大仏の髪は長いかな?と言う気もしますが、今年は例年になく強風が吹きました。(赳夫)

大仏様と花吹雪の美しい情景に合掌したくなる句である。(百恵)

床屋より都をどりを見にゆきぬ      中西 宏   3点

京都の粋な旦那衆の姿が目に浮かびました。(康子)

暖かくなって、床屋で髪をすっきりさせ、都をどりを見に行くというのが、季節感が出ていて良いと思います。(彩芳子)

まず床屋でさっぱりしてから出かけていく旦那の浮き浮き感が春らしい。(ゆかり)

仔猫寝る八千矛神のふところに      上川美絵   3点

八千矛神、すなわち大国主命のふところなら仔猫は安心ですね。(那智子)

子猫が大国主命の懐で寝ている、可愛らしい句です。(輿志子)

初燕じやがたらお春の文の滲み      西村昭憲   3点

スタートを印すチョークや風光る     杉 美春   3点

チョークの白さと季語が合っていると思いました。(那智子)

木の芽風遺跡に羊迷ひ来て        内村恭子   3点

木の芽風が羊を迷わせている、そこが遺跡の中と言う所が素敵です。(輿志子)

何処の、どんな遺跡なのですか分かりませんが、私は中国の奥深い場所の遺跡だと思います、ですから羊も平気で迷い込んでくるのでしょう、長閑さが出ている俳句です。(昭信)

日の本の小石丸てふ春蚕かな       斉藤輿志子  3点

小石丸は俵型の小さな繭です。皇后様が育てられた小石丸の糸で正倉院の宝物が修復されたそうです。(せつ)

風光る砂紋に浮かぶ小宇宙        江原 文   2点

空想の世界を砂紋の中に感じたところが良い。(百恵)

霾や火伏の龍の爪立ちし         鈴木 楓   2点

蒼天に春三日月と双星と         妹尾茂喜   2点

草萌ゆる縄文体験フェスティバル     松村三冬   2点

甲子園の選手宣誓桜咲く         根岸三恵子  2点

今年の選手宣誓は何時もと違い非常に良かった。(栄一)

斜里岳や野焼のけむり日矢を巻く     橋本和男   2点

入り彼岸初孫と来る初曾孫        三宮隆宏   2点

春分の日をはさんで前後の各3日が春の彼岸。彼岸には、太陽の恵みと祖先への祈りを込めて此岸から手を合わせる。墓前におおぜいの家族が揃っているが、今年はなんと孫の子、曾孫が加わったのだ。少なくとも80年後の未来をつくってくれる人、何ともめでたい。(茂喜)

満潮へ自づから落つ紅椿         枝松洋子   2点

菜の花を喰ひて今年の春を喰ふ      植田彩芳子  2点

菜の花は他の野菜に先駆けて畑で採れますし、食卓を飾ります。春到来の喜びが良く伝わってきます。(正明)

井月の孤高に亀の鳴きにけり       小川 洋   2点

井月の孤高に共感します。(芳彦)

美しき細魚の腹の黒きこと        石田 游   2点

まさにこの通りで、、、ヒトもまた?(美代子)

家族写真撮りて墓地去る彼岸かな     須田真弓   2点

お墓で眠っている方も、その前に座っている方も、皆様仲のよいご家族だったのですね。(香誉子)

官軍の軍鼓聞きしや古雛         内藤芳生   2点

幕末の音や匂いを知っている古雛大切に保存してください。(豊)

古雛を見るとどういう訳か幕末を思う。(尚)

梅ほのと築地の崩る武家屋敷       内藤 繁   2点

瀬戸内の転がり易き栄螺かな       石田 游   2点

穏やかな海にのんびりまあるく育ったよう おいしそう。(久丹子)

祭神は百済の王子飛花落花        香月余一   2点

いにしえの百済人との深い?がりは、桜と共に今に続いています。飛花落花に、しみじみとした味わいが出ています。 (月英)

鳥雲に蒔絵小箱の鷹の羽紋        吉野巨楓   2点

その家の歴史を感じさせます。(清文)

春筍や子の服きつくなりにけり      劉 海燕   2点

筍の生長の早さを子の成長に置き換えた所に発見の面白さあり。(豊)

生かされて生きまた愛でる桜かな     土田栄一   2点

 桜は人生とよく合います。(彩芳子)

托卵を中州にひそと蘆の角        宮本よしえ  2点

影長きスカイツリーや桜咲く       齊藤昭信   2点

どんなにか長い長い影でありましょうか。(温子)

花冷えや旅より戻る家しづか       山下閑生   2点

春の旅を終え一人暮らしの家に戻る。人生の後半を感じさせる句です。(康子)

楽しかった旅を終え、帰宅した時の寂しさが伝わります。(孝子)

のどかさや声のみ飛んで子の野球     土屋香誉子  2点

公園か空き地に、声のみ飛んでが具体的な子ののどかな風景。(晶代)

金星と春三日月の大手町         斉藤輿志子  以下1点

ロマンチックで良いですね。(奈央子)

湧水の母なる温み水芭蕉         荒川勢津子  

水芭蕉がよいです。(貞郎)

菜の花や一艘もなき信濃川        熊谷佳久子  

春風に味ありとせば苦きもの       安藤小夜子  

この句を読んですぐに外へ、風を口に含んで春風を味わってみました。苦いかな?冬の寒さから解放され、物みな春が来たことを嬉しく思う時に、その風の味が「苦い」なんて・・・。いったい何があったのと問いたくなる句。「春風」と「苦きもの」の組み合わせで思わず立ち止まってしまう、そんな句でした。(敦子)

春昼の大江戸線は地下深く        松浦泰子   

春疾風チンチン電車押し戻す       今井温子   

北窓を開く宣誓甲子園          荒尾保一   

朗々とした力強い声 ジャストのタイミング。(久丹子)

天井の竜の黙せる涅槃絵図        永井潤子   

捨畑の土筆の畑になりゐたり       西野編人   

土筆の畑になって人から注目されていますが、何となく寂しい、ほろ苦い句です。(真弓)

モンタンもシニョレも逝きぬリラの花   小高久丹子  

小型機のふはりと降りて風光る      山下閑生   

拆の文字白く大きくよなぼこり      日原 傳   

春の草馴染みの草も懐かしく       岸田 晶   

チューリップ売り中央駅の片隅に         芥ゆかり   

落椿一歩ためらふ自刃址         西野編人   

大木の落椿は木の根元に散らばり、最後の輝きを放つ。しかし、自刃の址なので、自刃した人の最後を思われる。(晶代)

蝶飛んで海峡碧むうねりかな       伊是名白蜂  

春の丘とんがり屋根は天近し       上脇立哉   

メルヘンチックですね。(栄一)

狼が来るぞはや寝よ雪しまく       芳賀赳夫   

廃校の鉄扉を潜る恋の猫            董  ?   

濃く淡く潮目煌めく春の海        阿部 旭   

雪割や地蔵現れ村境           須田真弓   

残り鴨闘志あらはな羽音かな       日原 傳   

春蔭や鏡のなかを滑る影         三雲繪里子  

「滑る影」の措辞は鏡の神秘性を、見事にいい顕わしている。(はま子)

花曇りみなとみらいの風見鶏        熊谷かをるこ 

春寒の分厚きまでの刺子かな       満井久子   

カーナビが選びし菜の花畑かな      安藤小夜子  

カーナビが選んだところがおもしろいですね。(孝子)

鳴龍のにやりと笑ふ春霞         江原 文   

水に消え草に現はれ初蝶来         石田不二   

瞬けば空に戻りぬ春の虹         安西佐和   

はかない春の虹ですね。(香誉子)

コンクリートジャングルにもチューリップ あさだ麻実  

 ビルの無機的表情にもマッチするチューリップのモダン感覚 均衡するインパクト。(久丹子)

手にとれば癒えゆく心地貝合せ      永井潤子   

ゆっくりとした時間こちらも癒されそうです。(夏江)

櫻ひらくとき音すれば姦しさう      竹内郁雄   

花衣帽子ひとつをクラナッハ       小高久丹子  

クラナッハの帽子ひとつのビーナスの官能的な絵と花衣の取り合わせが面白い。(清文)

鏃痕残る唐門春の雷           鈴木 楓   

浄土かな光の中に舞へる蝶         米田清文   

春の光に満ちあふれて世界は、たしかに浄土を思わせます。(彩芳子)

青き踏む五十回目のクラス会       飛鳥ゆき   

いくつになっても楽しいクラス会が前向きに表出されて頼もしい。(白蜂)   

わが欠伸移りて亀の鳴きにけり      笹下蟷螂子

 類想、極めて多し。(朗人)  

取り合わせが面白いですね。(奈央子)

春ゆふべ小さき鳥籠仕舞はるる      明隅礼子   

ただ外の鳥籠を取り込んだともとれるし、小鳥が死んでしまったともとれる。私は後者だ。(尚)

 

  (選外句)

松林図蕭蕭たる風醸しける        

 季語は?(朗人