ネット句会報2014年1月

 

天為インターネット句会2014年1月分選句結果 (作者名の後ろの点は互選点)
 ※特選句、入選句内の順番は互選点、句稿番号の順。また互選句は高点句から順に、同点句は句稿番号順に並べました。

<有馬主宰選特選句>
水槽に河豚のひしめく銀座路地  根岸三恵子  (3点)

河豚料理は銀座の名物か?予約に応じて大量に仕入れたのだ(貞郎)

 

人形町晴れて風なし冬至粥  齊藤昭信  (3点)

 

長安の城壁沿いに冬深し  劉海燕  (2点)

 

干し鰈売り女の声や能登訛り  浅井貞郎  (1点)

 

煤逃げへ退路断たれし漢かな  伊藤高甫

<有馬主宰選入選句>
底冷の底を叩きて男舞  杉美春  (11点)

 

押しくら饅頭真中に冬日押し込んで  江原文  (7点)

押しくら饅頭の真中は暖かい。冬日を押し込んでいるから。字数もぎゅうぎゅうで、いかにも押しくら饅頭の雰囲気(美春)

 

満ちて来る潮の高鳴り寒北斗  大下亜由  (6点)

満ちて来る潮の高鳴りと寒北斗の調和が詩情を醸しだしている。(芳彦)

 

カステーラ焼く父の背に聖夜の灯  斉藤輿志子  (2点)

 

歳晩や空き家の目立つ漁師町  宮本壮太郎  (2点)

今年も1軒空きやがふえた荒れ果てていく漁師町を見るのは寂しいね(貞郎)

 

マチネーの撥ねて築地の冬ぬくし  滝澤たける  (1点)

 

水軍を迎え撃つかに牡蠣筏  早川恵美子  (1点)

 

猪罠も鹿罠もある城址かな  土屋尚  (1点)

 

鷺浦の隧道抜ける鼬かな  宮本壮太郎

 

僧侶裏道抜ける師走かな  嶋田夏江

「裏道を抜けゆく僧侶師走かな」に。(朗人先生)

 

母の居ぬ家の梟月夜かな  安光せつ

 

<互選句>

奥飛騨の夜の冴え冴えと絵蝋燭  荒木那智子  (12点)

奥飛騨と絵蝋燭、季語もよく合致して、情感があります。(美代子)

奥飛騨の夜絵蝋燭灯っている。それが冴え冴えとしているという詩情が感ぜられる。(芳彦)

雪に埋もれた白川郷や髙山の町の静けさ、絵蝋燭の長い炎のゆらめき幻想的です。 (紀美子)

寒い暗闇に絵蝋燭の絵がはっきりと見える(せつ)

 

光年といふ尺度あり霜柱  芳賀赳夫  (9点)

霜柱に「光年」という時を感じるところに詩心を感じます。(清文)

小さな霜柱から悠久の時が見える。光の煌めきが美しい句だと思います(美春)

谷川俊太郎「二十億年の孤独」と現実の霜柱の映像が交錯する。(柳絮)

果てしない宇宙、地中より盛り上がる霜柱の光。敬虔な澄んだきもちになりました。(紀美子)

光年というとてつもない単位と足元の霜柱がひかり合っている(せつ)

 

探幽の松で始まる新暦  中川手鞠  (7点)

四季松図屏風の内最右側天へすっくと伸びる春の松。誠に縁起がよい。(柳絮)

太い幹で力強い探幽の松の扉絵は新しい年のたくましさを希っているのでしょう。(紀美子)

 

寒満月影立ち上げて摩天楼  江原文  (5点)

摩天楼が影を際立たせている。(豊)

 

聖夜餐しづかに父を待つ子かな  明隅礼子  (5点)

 

カリヨンの響く八雲の郷冴ゆる  宮本よしえ  (4点)

この八雲の郷は欧州旅でのものでしょうか。響く音の厳しさに惹かれました。(編人)

カリヨンの音が八雲の幻想と命の源泉への郷愁を呼び覚ます。(柳絮)

 

プリズムの光を放つ氷柱かな  土田栄一  (4点)

 

マンモスの解けゆく凍土星降る夜  鈴木楓  (4点)

壮大なスケールで発想の豊かさに感激しました。(真弓)

 

年詰まる原稿用紙の升目かな  杉美春  (4点)

 

銅山の名残を抱き山眠る  上川美絵  (4点)

これは足尾銅山でしようか。名残りも冬の厳しさに包まれて。(編人)

かつて栄えた銅山はいま正に心から眠り作者は「あれから、日本がおかしくなったと・・」・・・・(奈緒)

かつて銅山として脚光を浴びた山。山眠るがよい。(せつ)

 

加湿器や 診察室のまるい椅子  熊谷かをるこ  (3点)

 

七浦の風や摂社の冬さくら  上川美絵  (3点)

 

数へ日を刻む和光の時計塔  武藤スエ子  (3点)

銀座4丁目の雑踏が眼に浮かぶ、昔は服部時計店、懐かしい(文)

 

除夜の鐘わが煩悩は消えぬまま  齋藤みつ子  (3点)

 

冬の朝両手に包むマグカップ  片山孝子  (3点)

 

白湯のんで五臓ひきしむ蕪村の忌  西脇はま子  (3点)

 

馬飛びを又せがまれし冬日向  永井玲子  (3点)

冬日向で遊ぶ父と子の姿が見えました。冬日向のように温かい気持ちになります(美春)

 

里神楽大蛇好みの吟醸酒  竹田正明  (3点)

言わずと知れたヤマタオロチの伝説の地。さぞ心を溶かす吟醸酒でしょう!(美代子)

 

羊皮紙の朱き封蝋日記果つ  渡部有紀子  (3点)

羊皮紙の朱き封蝋で日記が終っている。人生の哀歓が感ぜられる。(芳彦)

 

うなされて革命前の夜長かな  三宮隆宏  (2点)

上五に確かさがあります。(和弥)

 

クリスマス背なに陽ざしの靴磨き  武藤スエ子  (2点)

思わずマッチ売りの少女の世界を思い出しました。この後きっと幸せが訪れるのでしょう。切ないです。(真弓)

靴磨きへの優しいまなざしを感じます。(清文)

 

ピノキオの鼻の真つ赤な十二月  須田真弓  (2点)

真っ赤なお鼻のピノキオさんは~口ずさみながら楽しくいただきました。(麻実)

 

一画は復興支援ボロの市  安藤小夜子  (2点)

復興・復興です、7年後には完全復興を祈念します。(奈緒)

 

枯蟷螂未だ抗ふ余力あり  嶋田夏江  (2点)

もうすぐ命を終える定めでも、鎌を振り上げて抗う、やせ我慢の枯蟷螂の気概です。(美代子)

 

残心の腕真直ぐなり寒稽古  熊谷秀章  (2点)

 

思惟仏のごとく鷺立つ池普請  永井潤子  (2点)

鷺は、池で何を考えていただろうか。(豊)

鷺の立ち姿に半跏思惟像を持ってきたのが上手い。池普請で周りがよく見えます。(赳夫)

 

漆黒の鎮守の森に榾火照る  阿部旭  (2点)

 

小屋へ入る兎絵巻を抜け出して  小橋柳絮  (2点)

 

万里なる龍王朝や冬日燦  董?  (2点)

 

岬馬初日を拝し嘶けり  西野編人  (2点)

新年のめでたい句(貞郎)

 

露天湯に篠突く雨や冬の雷  浅井貞郎  (2点)

 

懺悔しつ介護の友や冬すみれ  染葉三枝子  (2点)

介護されている方の心労、御苦労は計り知れないものがあるでしょう。「懺悔しつ」という強い言葉に対して「冬すみれ」が生きています。(真弓)

 

けあらしやフェリー消えては現るる  上脇立哉  (1点)

 

コロニアル風の柱や初国旗  米田清文  (1点)

 

しばれるや悟りの位置に座布一枚  和田仁  (1点)

 

たましひは毛布に包むべし聖夜  澤田和弥  (1点)

なんとなく納得!中7の表現が良い!(文)

 

極月や隷書の波磔迷ひなし  吉野巨楓  (1点)

 

まがびとをよせあつめたる聖夜かな  澤田和弥  (1点)

似非クリスチャンあり、仏経あり(奈緒)

 

マフラーや外に七人敵の居り  上脇立哉  (1点)

 

黄帝の眠りし山や年惜しむ  董?  (1点)

 

駅伝やわが青春の街なりし  安光せつ  (1点)

熱き情熱の街、駅伝の息吹きが聞こえるような句です。(強)

 

源氏池ひかる師走の大祓  斉藤輿志子  (1点)

 

極月や日記にのこす今日の悔い  山本光華  (1点)

私も悔いだらけです(みつ子)

 

銀やんまいま抜け生れし玻璃の羽根  中村光男  (1点)

 

我こそは真田幸村雪合戦  大下亜由  (1点)

 

喜劇にも哀しみ少し片時雨  吉野巨楓  (1点)

 

極月の花買ひに来し遠き街  明隅礼子  (1点)

月の極まった雰囲気がとてもよく表現されています。(和弥)

 

銀行の繁忙時間室の花  須田真弓  (1点)

 

空缶の竹馬兄についてゆく  土屋香誉子  (1点)

 

源氏絵の色華やかや初御空  米田清文  (1点)

 

極月や未だ未完の詩を抱き  和田仁  (1点)

「未完の詩」が様々に読み取られます。極月で想いが募りますね。(赳夫)

 

紅葉燃ゆ文字薄れたる晶子の碑  柴﨑万里子  (1点)

 

高らかに第九の合唱冬銀河  安田孝子  (1点)

第九の大合唱を聴くたびに、銀河の冬を奏でる厳かな光景が浮かんできます。(強)

 

山寺の苔むす庭の紅落葉  山本光華  (1点)

 

滋味深し思い伝へる節仕度  武井悦子  (1点)

心の籠ったお節料理。母の姿が見えます。(赳夫)

 

小枝散る野外ステージ山眠る  土屋香誉子  (1点)

 

冬銀河人工授精の牛生まる  石川由紀子  (1点)

 

数え日や銀座にて買ふポチ袋  満井久子  (1点)

 

痩せぎすの遺族一同 冬木の芽  熊谷かをるこ  (1点)

 

打つ手ならまだあるはずと冬牡丹  齋藤みつ子  (1点)

 

冬の書肆古銭に女帝の細き頃  町野敦子  (1点)

 

冬の水河馬が潜れば渦巻けり  荒木那智子  (1点)

 

大年の落暉見事に幕引ける  小高久丹子  (1点)

元朝の幕開けもしかと見届けましょう。(豊)

 

独逸語の第九合唱年の暮  松山芳彦  (1点)

 

鳶の影大きく掠め冬日向  根岸三恵子  (1点)

 

日付変更線越へて去年への旅に出る  中川手鞠  (1点)

「なるほど!」と膝を打つ一句です。(和弥)

 

濡縁に出て豆を選る春隣り  今井温子  (1点)

節分の豆を選っていますか。こんな光景がまだあるのですね。(清文)

 

煤逃げてヨガのポーズをとってをり  土屋尚  (1点)

思わず笑ってしまいました。(編人)

 

白障子鶴の影絵がうかびでる  原豊  (1点)

 

峰々の天にアルプス年惜しむ  妹尾茂喜  (1点)

雄大な風景を詠むこの句は、機内の窓から私も詠んだ句と良く似ていて感じ入りました。(強)

 

木枯やヒップホップの金の靴  あさだ麻実  (1点)

木枯とピップホップの取り合わせ、加えて金の靴が斬新です。本当に踊りだしたくなります。(文)

 

目のさきの御空にあふれ初雀  佐藤博子  (1点)

 

絡繰の独楽廻り出す鳥の声  竹田正明  (1点)

 

恋初めしころよりつづく毛糸編む  今村奈緒  (1点)

 

甕棺を見し目に冬日暗かりき  内藤芳生  (1点)

 

鰰の卵あふるる身や細し   武井悦子  (1点)

以上

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