ネット句会報2014年9月

 

天為インターネット句会2014年9月分選句結果 (作者名の後ろの点は互選点)
 ※特選句、入選句内の順番は互選点、句稿番号の順。また互選句は高点句から順に、同点句は句稿番号順に並べました。

<日原傳編集顧問選特選句>
祇園会や謎の解けたるタペストリー  あさだ麻実 (3点)

毎年七月に行なわれる京都の祇園祭。鉾を立てた山車に飾りが施される。「タペストリー」は、壁掛け・机掛けなどに用いる装飾用の織物。祇園祭では「鯉山」に用いられたものが有名。そのタペストリーは江戸時代初期にオランダから徳川家に献上されたもので、絵柄はトロイア戦争をモチーフにしているという。もともとは一枚であったものを九つに分割し、利用しているようだ。祇園会の古い歴史へと思いが導かれる(傳)

伝統ある祭りだからこその謎。その謎を聞いてみたいような。(せつ)

京都人のしきたりを重んじる心と美意識のおかげで、守られてきた懸装品の数々があると知りました。祇園会は日本人の深層にあるものをいつも呼び覚ましてくれます。(博子)

 

軒ごとの風鈴の音や路地の風  安藤小夜子  (1点)

路地に面した家々の軒にそれぞれ違った風鈴が吊られている。風が吹くと一斉に揺れて、異なる音色を奏でる。一軒一軒違いはありながら、全体として一つにまとまっている路地に住む人々の暮らしぶりが、軒風鈴に焦点を当てて描かれた(傳)

<日原傳編集顧問選入選句>
秋水のしづかに洗ふ浮御堂  内藤芳生  (3点)

琵琶湖の夕べの景でしょうか。(編人)

秋水のさざ波と浮御堂・・澄みきった淡海の情景が目に浮かびます。(博子)

 

薫風や反り身にうたふカンツォーネ  和田仁  (2点)

ドミンゴ・カレーラス・パバロッティなど声量豊かなイタリヤ歌曲を脳裏に再現。(柳絮)

 

秋天へ大き弧を描き観覧車  森山ユリ子  (2点)

秋天の清々しさが読み取れる句。(豊)

すがすがしい大景(閑生)

 

集落を囲む棚田や小鳥来る  根岸三恵子  (2点)

なぜか小鳥がいとしく思えてくる句です。このような景がいつまでも残っていて欲しいなと思いました。(秀平)

 

赤とんぼ千年学府の中庭に  斉藤輿志子  (2点)

 

モルディブの夕焼空や浜散歩  劉海燕

 

戻り来し大阪駅の残暑かな  上脇立哉

 

野菊咲く無人の島の教会址  西野編人

<互選句>
たそがれは酔芙蓉咲くあたりから  熊谷かをるこ  (10点)

黄昏の様子を上手に表現なさっていると思います。(明)

綺麗な句だと思います。芙蓉の大きな花弁の透けるような色が見えてきそうです。保育園のお迎えの夕方に芙蓉を見つけた時は、こうやって娘に教えたいものです。(有紀子)

優しい淡い色のもつイメージは黄昏にピッタリ。ちょっとつきすぎかな?でも選びたい気持ちです。(文)

今朝は真っ白だったのにほんのりピンクにそして更に色濃く、一日花のはかなさ、たそがれは美しく。(小夜子)

 

ジャズ好きな母のミシンや終戦日  齋藤みつ子  (10点)

ギリギリの貧しい生活、でも何か明るい活気のあった日々。(せつ)

戦後の自由な雰囲気の中でラジオから聞こえるジャズに痺れた一人です。なんでも手作りの時代で足踏みミシンは必需品でした。水着まで手作りって信じられますか。私の季語は敗戦日です。(小夜子)

 

嘘ひとつ風に送りて秋扇  熊谷秀章  (9点)

読み手との間合い、掛け合いが絶妙。作り手と読み手と対話が成立しているような雰囲気あり。このセンス・・・さらりと洒落てます。(仁)

こんな扇が一つあったらいいなー。(豊)

 

星ひとつ残して消へる大花火  阿部旭  (6点)

花火と星の取り合わせが大変良いと思います(貞郎)

大花火の華やかな賑わい後の静けさが、「星一つ」で表現されていると思う。(ユリ子)

 

丸ごとの西瓜ひと飲み河馬の口  髙橋紀美子  (5点)

 

山里に生きて炎暑の畑起す  原豊  (5点)

まだまだ炎暑、でも畑仕事は、もう秋の準備です。山里に生きてと、炎暑で力強さを感じました。(孝子)

運命という言葉を想起させる句(閑生)

 

八月の雲を汲み揚ぐ釣瓶井戸  原豊  (5点)

 

行水の父は硫黄の匂ひして  土屋尚  (4点)

 

種オクラひとつ残して秋耕す  上川美絵  (4点)

かならず次の季節のための心遣いを忘れない作者。(文)

 

天に問ふ屈原しかと秋の月  斉藤輿志子  (4点)

屈原が自害したことを天に問うところ秋の月が出て居たということ面白い。(芳彦)

屈原の天問と秋の月、組合せが面白い。(董?)

 

虹の根を洗つてゐたる沖つ波  和田仁  (4点)

 

日時計の針は人影秋澄めり  安田孝子  (4点)

 

金秋の乳房弄る子牛の瞳  江原文  (3点)

子牛の様子がよく見えます(編人)

 

秋遍路向かうの森は痩せてゐる  町野敦子  (3点)

秋遍路の寂しい気持ちが、あの森は痩せているなあと感じさせたのでしょう。(明)

 

五箇山のすぐに暮れたる葉月かな  山下閑生  (3点)

山々に囲まれた合掌作りの里が、暮れて行く様が思い浮かびます。(孝子)

 

蛇皮線の島唄を聞く端居かな  嶋田夏江  (3点)

沖縄の美しい海の色、美味しい泡盛~いいですね。(文)

 

舟下り涼し北斎波の中  永井玲子  (3点)

急流を下りながら虚空に北斎の浪裏の富士を思い浮かべる。(柳絮)

「北斎の波」という表現で、白い波のダイナミックなイメージが思い浮かぶ。(ユリ子)

 

水鉄砲星の真中を狙ひけり  明隅礼子  (3点)

中七が面白い (編人)

 

星流る西の果てなる十字墓  西野編人  (3点)

 

生涯をただ啼くばかり蝉時雨  芳賀赳夫  (3点)

四年間ぐらい土の中で成長していた蝉が夏に必死に鳴いている。蜉蝣、蝉など数多くの昆虫はその生涯が実に短い。その極めて短い生涯に交尾を目標として、達成したら、そのまま死んでしまうという。毎年の夏、耳にする蝉時雨。それが土の闇に黙々と発育してきた四年も前の蝉だろうと思うと、いっそう切なくなる。「ただ啼くばかり」、これが蝉の命の歌だろう。(董?)

 

蝉時雨紙一片の遺書なりし  鈴木楓  (3点)

一片の遺書を残して散った若者たち。蝉時雨が切ない。(せつ)

 

電柱の影に身を寄す炎暑かな  阿部旭  (3点)

 

カサと音して色鳥のかくれんぼ  中川手鞠  (2点)

 

こんなにも小さな川に出水かな  岡崎美代子  (2点)

 

秋蝉や声を限りの惜別歌  熊谷秀章  (2点)

 

芋の葉の水玉雲を映しをり  土田栄一  (2点)

早朝でしょうか?夕立の後でしょうか。澄んだ空気、すがすがしさと自然の大きさ感じます。(小夜子)

 

五台山朝の香深く吾亦紅  齊藤昭信  (2点)

五台山は中国の山か奈良県多武峰であるか知らないが朝の吾亦紅が香深いとしたところ旨い。(芳彦)

霊山の清らかな朝に、ふと見ると秋の小さな花が咲いている。現世との接点を可憐な花が担っているようです。(恵美子)

 

出番なき身には忙しき団扇かな  芳賀赳夫  (2点)

仕草に隠された心の裡を捉えて妙。世渡りに時に忍従も要。可能なら、常に平常心を保ち、泰然自若としていたいものです。(短腹の私には出来ませんので皆さまに申し上げているのです。(仁)

 

女郎蜘蛛逆さに闇をたぐる糸  渡部有紀子  (2点)

 

角出して丸い地球のかたつむり  小橋柳絮  (2点)

でんでん虫さん、怒りたくなりますよ!憲法も消費税もね!見立てが上手です。(恵美子)

 

少林寺達磨図を見て秋思かな  董?  (2点)

達磨様が秋思をなさったとは思えませんが、、、、人間はします。(美代子)

 

新涼や玄武うごめくキトラ塚  竹田正明  (2点)

 

父母も阿呆となりぬ阿波踊  小野恭子  (2点)

踊る阿呆に敬意を表します。いくら練習しても、年季の入った地元の阿呆名人には叶いません。男踊りも女踊りも実に巧み。更に、この取り合わせこそ秀抜。阿波踊りの調子をお借りし、いつかは「俳句を作る阿呆」の域に到達したいものです。(仁)

 

碧天の澄む水に似て秋思かな  武井悦子  (2点)

秋の真っ青な空は確かに澄む水に似ていると思うことがあります。この場合の愁思もまたすっきりとした深い思いを想像させます。(明)

 

編笠のうなじ艶めき阿波踊  満井久子  (2点)

中七の「うなじ艶めき」が大変美しいと思います(貞郎)

赤い蹴出しに編笠、日本の祭りはいいですね。(豊)

 

葉の上に顔なめてゐる蜥蜴かな  土屋香誉子  (2点)

これこそ俳句の「観察力」だろう。(董?)

俗界を断絶しているような、、、、考えすぎか?(美代子)

 

?時雨破り正鵠射し矢音  滝澤たける  (2点)

 

Uターンして産土の神輿舁く  安光せつ  (1点)

 

金風を浜松城の天守門  澤田和弥  (1点)

浜松城は出世城と言われています.。上五の「金風を」で大きい景をより大きくしていますね。(麻実)

 

シェフの鑿氷の鯱の生き生きと  内藤繁  (1点)

 

その上の街道絵図や遊行の忌  滝澤たける  (1点)

 

秋冷の万年筆のくの字点  渡部有紀子  (1点)

秋冷の中のブルーブラックのインクが見えてきます。(和弥)

 

隠れなき夜のジンジャー白を見つ  佐藤博子  (1点)

なんとも不思議な美しさをもった句です。(和弥)

 

雲海に仙人峰の立ちにけり  董?  (1点)

切り立った壁が雲海の上に有るという、人を寄せ付けない神々しさを感じます。(恵美子)

 

机勝手に開けるな中に蟷螂いる  永井玲子  (1点)

どうにも気になっていただきました。机の中に蟷螂を入れたのは作者ですか?それにしては虫が苦手そうなのですが・・・。もしかして、蟷螂の卵入れちゃいました??あぁ、それは絶対に開けるな危険!(有紀子)

 

迎え火や祖父母までしか知らぬ顔  安光せつ  (1点)

ご先祖様といっても親しく顔を見たのは祖父母まで。それでも迎え火をたくと顔も知らないご先祖様たちが待ちかねてやってくるのです。(美代子)

 

高原の白秋詩碑に秋日さす  森山ユリ子  (1点)

 

砂浜にビーサン二足月涼し  劉海燕  (1点)

「ビーサン」を句に取り入れた探究心に敬意を表します。(和弥)

 

鷺草のつばさ水平に夜の闇  西脇はま子  (1点)

 

姉の紅そつと試せる木染月  小高久丹子  (1点)

艶があってよい。特に木染月が上の句に合って居て魅力的。(芳彦)

 

長き夜の誰も黙する酒場かな  澤田和弥  (1点)

 

雨烟るまほろばの秋平泉寺  片山孝子  (1点)

季語「まほろばの秋」が美しい表現です(貞郎)

 

小鳥来る乾皇帝の多宝格  早川恵美子  (1点)

 

秋草に陶片埋もる備前窯  山下閑生  (1点)

 

水浴びて恋なほ燃える祭髪  江原文  (1点)

 

蝉丸の盲の面世阿弥の忌  髙橋紀美子  (1点)

延喜帝の第四皇子の盲目の貴公子面に権力に翻弄された世阿弥の苦悩さえ覗われる。(柳絮)

 

潮満ちて小鰺のりこむ青岬  浅井貞郎  (1点)

 

蝉しぐれ仏兵眠る攘夷の地  嶋田夏江  (1点)

 

蔵のある昭和の家や緑濃し  岡崎美代子  (1点)

 

誰も来ぬ夜店の目高泳ぎけり  明隅礼子  (1点)

夏の盛りが過ぎ、少し寂れた夜店を想像しました。(ユリ子)

 

遅咲きの向日葵畑秋学期  佐藤博子  (1点)

 

朝市の籠に茘枝の武漢かな  齊藤昭信  (1点)

 

潮入りの離宮の庭や鯔飛べり  根岸三恵子  (1点)

静寂の景色に動きがある。他の魚ではなく鯔であるのがよい。(閑生)

 

読み止しの本をまわりに夜の秋  上脇立哉  (1点)

 

二拍子の踊り率ゐる鉦の音  満井久子  (1点)

 

銀河垂れ靑びかる窓睡る猫  關根文彦  (1点)

 

噴水やシャガールの空に十字切り  菅野強  (1点)

 

巫女の髪束ねて光る夏の果  齋藤みつ子  (1点)

 

箒目の白露の波に石の影  荒木那智子  (1点)
以上

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