ネット句会報2014年10月

 

天為インターネット句会201410月分選句結果 (作者名の後ろの点は互選点)
 ※特選句、入選句内の順番は互選点、句稿番号の順。また互選句は高点句から順に、同点句は句稿番号順に並べました。

<対馬康子編集顧問選特選句>
能面を付ければ虫の集くなり  町野敦子  (3点)

能面を付けることができるのは能師だけで一般の人は付けることはできない。作者は能面を前に、その静謐な面を自ら付けた瞬間を創造した。それまで聞こえなかった虫の声が一斉に聞こえた。静から動へ時間の交差。(康子)

能面を付けると虫が集まって来る詩情あり。(芳彦)

 

集めたる石を並べて夜長かな  明隅礼子  (2点)

秋の夜は長く、旅先で拾い集めた石を一個一個思い出しながら並べている。太古の層の赤い石、波に洗われた白い石、森で拾った石。なにげない石たちのはるか昔からこの世への記憶の集約が、人を癒す。その象徴性がよい。(康子)

いかにも夜長を過ごすのにふさわしい!人はガラクタと呼ぶ石ころを眺める至福の時間。(美代子)

夜のゆったりしたひと時、収集した石を並べて作者は思い出に浸っているのでしょうか。石の色、丸み、模様などなど、夜の静けさと心の豊かさが伝わってきます。(明)

<対馬康子編集顧問選入選句>
長月や机に積みし農日記  竹田正明  (10点)

御生活の記録、お忙しいお仕事を大切に慈しんで居られる御様子感じられます。(万里子)

 

満月や戯画の獣も浮れをり  内藤繁  (6点)

ショジョ寺の狸も鳥獣戯画の獣たちもポンポコポン♪(美代子)

 

仮面の眼ヴェニスの月を映しをり  町野敦子  (3点)

発想力の見事さ、仮面の眼から三日月をイメージ(豊)

 

かなかなや絵を売る人もゐなくなり  明隅礼子  (3点)

秋の気配が強く感じられます。(万里子)

 

里山に雨雲低く葛の花  阿部旭  (1点)

 

天鵞絨の真鴨の首や薄暮来ぬ  西脇はま子  (1点)

 

素粒子に周期表あり望の月  髙橋紀美子  (1点)

物質を構成する最基本的な粒子ですね。周期律に従って元素の配列があるよに素粒子にも周期があるのですか?望の月をみて、きっと月の周期や宇宙の不思議を作者は感じられたのですね。望の月が良い。(文)

 

海?廻しきりきり痛む少年期  小橋柳絮  (1点)

 

たましひの器からっぽ小鳥来る  小橋柳絮  (1点)

何が有ったのでしょう。小鳥が来て小さな喜びを見つけられ良かったです(勢津子)

 

ユダまとふ浅黄の衣や二日月  小野恭子  (1点)

 

鳶の笛小磯の潮の澄みてをり  阿部旭

 

竹の春一軒のみの道があり  柴﨑万里子

 

誕生祭孔子夫人や秋気満つ  劉海燕

 

天使いま羽を繕ふ天使祭  鈴木楓

 

山葡萄吹かれてバスの窓を打つ  柴﨑万里子

<互選句>
戸隠の鬼女棲む里の蕎麦の花  内藤繁  (6点)

いかにも鬼女の住んでいそうな戸隠山の麓。白い蕎麦の花の明るさとの取り合わせがよいと思う (ユリ子)

 

むかご飯子は平凡に二児の父  岡崎美代子  (6点)

もう少し何とかなるかと思ったが、息子は平凡なサラリーマン。休みの日にもふたりの子と他愛無く遊んでいる。その様子をみて、これも人生、これでいいのだ、感じている。諦観と安寧感が伝わってくる。季語のむかご飯が効いている。(光男)

素朴なむかご飯は吾子か?健康な二人の孫に恵まれ、平凡こそがなによりの幸せですね(勢津子)

何でもない句に見えるがいろいろと想像が膨らむ句。(閑生)

 

踊る手のひらりと流れ風の盆  齋藤みつ子  (5点)

踊る手のひらりに風の盆を感じたという感性よいと思う。(芳彦)

「ひらりと流れ」が風の盆らしさを感じさせる(貞郎)

「ひらりと流れ」にゆったりとした情感溢れる踊りの様子が眼に浮かびます。(秀章)

 

風切つて細身のジーンズ鵙日和  永井玲子  (5点)

若い女性の颯爽と歩く姿が目に浮かびます。鵙日和が引き立てました。 (赳夫)

季語から、ヒールを履いてA4トートバックに書類をたくさん詰めたキャリアウーマン?!を想像しました。(博子)

颯爽として街を歩く。「細身」がいいです。気持ちいいでしょうね。(秀章)

 

片恋のまま老いにけり酔芙蓉  熊谷かをるこ  (4点)

酔芙蓉は華やいだ大きな花であるが一日花、老女の一寸せつない思い出か。 (赳夫)

 

白波の寄せくる岬秋遍路  和田仁  (4点)

 

柿赤し石見の国のなまこ壁  満井久子  (4点)

島根県の街の秋の景が見えてきました。(編人)

 

影といふ美しさあり二日月  佐藤博子  (4点)

わずかの時間だけの月だからこそ、その影も美しい。と同時に、はかなさも伝わってきます。(秀章)

 

秋高し隅田にかかる橋数ふ  満井久子  (3点)

作者の立ち位置、主体的作句姿勢が明確で無理がない。しかも観念に走らずモノを通してのこだわり表現に好感。(仁)

ゆったりとした気持ちですね。(劉海燕)

 

病む友のメール短し秋深む  山下閑生  (3点)

病状が悪化したのでしょうか、メール短しで感じます。秋深むで作者の悲しみや優しさが伝わります。(孝子)

いつもは長いメールが、短いのは疲れやすいのか、日に日に秋も深まり気になります。お友達の快癒を祈ります(勢津子)

 

口紅の濃きも淡きも薯喰らふ  中村光男  (3点)

見て居られる作者は男性でしょうか、美味しそうに薯を頬張る様子がユーモラスに表現されています。(孝子)

 

金木犀香り傷心気づかれず  熊谷かをるこ  (3点)

和む心と苛立つ心、お上手と思いました。(万里子)

金木犀は沈黙のなか、その香りで人々に気づかれる。作者の心の痛みはさて、誰にも気づかれないままなのでしょうか。(明)

 

秋の夜に白寿を刻む時計かな  妹尾茂喜  (3点)

白寿とは夢の又夢 おめでたいことです。何時までもお元気でお過ごし下さい(温子)

 

一筋の窓の拭きむらそぞろ寒  安藤小夜子  (3点)

この拭きむら一つで、心の中の蟠りが表面に出てきて戸惑っている作者です。なんか解ります。(文)

 

どんぐりを拾ひしことを言はざりし  上脇立哉  (3点)

ママには内緒の大きな秘密!でもポケットの中にはどんぐりが・・・・・(手鞠)

 

餡こ玉?張りスカイツリーかな  佐藤武代  (2点)

スカイツリーが出来て下町散歩盛んなようですね。戦前の駄菓子屋さんの1銭の餡こ玉懐かしく思ひ出しました。有難うございました。(小夜子)

 

蟷螂の干し物につく日和かな  上脇立哉  (2点)

洗濯物の白い布に薄緑の小さな蟷螂も日向ぼこ。穏やかな日和が目に浮かぶ。(閑生)

 

うろこ雲湖に添い寝の影浮かす  原豊  (2点)

中七の表現に引かれました。(編人)

着想が佳。景が大きく眼が効いている。このしたたかさ(受け身でなく主体的な作法)に嫌味がなく、具象表現がエンターテインメントとして成功。(仁)

 

撓なる葡萄の里や無人駅  荒川勢津子  (2点)

しおりた葡萄の里に無人駅があるという詩情あり。(芳彦)

 

野葡萄を噛めば童に戻りけり  芳賀赳夫  (2点)

田舎育ちの私にはこの心境がよく分かります。(編人)

 

放牛の尻尾よく振る秋夕焼  安田孝子  (2点)

淡々なる秋意が溢れます。(劉海燕)

 

卓袱台を知らぬ子ばかり衣被  鈴木楓  (2点)

昭和も遠く遠くなりましたね(温子)

食卓、勉強机、月見台などなど機能的な万能の家具無くなって惜しいですね。衣被も知らないでしょうね。(小夜子)

 

川岸の夕陽取り込む芒かな  竹田正明  (2点)

夕陽を受けた川辺の芒の姿は実に美しい。それを、芒が「夕陽を取り込んだ」と見たところが素晴らしい。(明)

 

折詰の隅にころりと煮染芋  西脇はま子  (2点)

季節感の乏しい折詰弁当。小粒ではあるがお煮しめの里芋。業者の細やかな配慮が嬉しいですね。(繁)

ほっとします。隅にころりと入れてあることで一段と他の食材を引き立たせています。名脇役です。懐かしい味です。(文)

 

石段を登りてみれば秋の風  片山孝子  (2点)

 

秋暑し肩定まらぬやじろべゑ  渡部有紀子  (2点)

残暑の日中、やじろべえで遊んでいる。いつまでたってもおさまらない。もうそろそろ季節だって落ち着いて欲しいよ、という気持ちが表われている。肩定まらぬ、という表現がいいと思う。(光男)

 

小宇宙作りて壊す芋の露  中村光男  (2点)

一瞬の情景が水の玉の中に込められている。(豊)

芋の露を小宇宙と表現しているところが面白い。(麻実)

 

花野より戻りきたりし我が臨死  佐藤博子  (2点)

 

御嶽山の憤怒の姿すがれ虫  室明  (2点)

伝統の作法からブレることなく、時事を捉え、一句を成す。憎いね!犠牲者への鎮魂の情も伝わって参ります。(仁)

 

桐一葉ひらりひらりと夜の動く  山本光華  (2点)

オノマトベの「ひらりひらり」にちょっと気になる。「天下の秋」を知るより「夜の動く」と捉えた作者の詩心に魅了された。(繁)

桐の葉のひらりひらりが、動と静の調和を生んでいる。(豊)

 

煙立つ白露の朝の五台山  齊藤昭信  (2点)

中国山西省の霊峰か、奈良の多武峰か、風絶えた白露の朝の風景、五台山に魅かれました。 (赳夫)

 

駅を出て寂し笛の音秋祭り  荒川勢津子  (2点)

今まで賑やかだった祭り、駅を出ると遠くから笛の音が、秋祭りは何処となく裏寂しいものですね。(孝子)

心に沁みるような笛の音が聴こえてきそうです。賑やかな祭と対象的ですね。(小夜子)

 

鰯雲華厳の空を流れ往く  原豊  (2点)

 

月出づと声する辺り貴船菊  永井玲子  (2点)

外で出くわした瞬間の状況を巧みに捉えた佳句。視覚と音の相乗効果が印象を深める。(閑生)

 

曼珠沙華樹間に山の音響く  關根文彦  (1点)

 

列車より見るふるさとの地蔵盆  安光せつ  (1点)

 

物干に稚の衣のあり秋うらら  嶋田夏江  (1点)

季語秋うららで頂きました。(麻実)

 

晩年や学成り難くそぞろ寒  内藤芳生  (1点)

ことわざも季語も絶妙に融合しました。内容の方も若者としての私を励ましました!感心しました!(劉海燕)

 

秋灯過去帳に書く新仏  佐藤武代  (1点)

何も言えない寂しさを照らす灯です。(美代子)

 

草取らぬ狭庭いつしか虫の宿  西野編人  (1点)

我が家の庭が虫の宿になっているとは何とロマンチックな贅沢な話でしょう(貞郎)

 

星飛ぶや白壁つづくシナゴーグ  髙橋紀美子  (1点)

「星飛ぶ」という季語と、ユダヤ人の栄光と苦難の歴史があっていると思いました。(博子)

 

色鳥や森の小径の郵便受  安光せつ  (1点)

童話の世界のようですね。(和弥)

 

小鳥来る白樺林絵本館  森山ユリ子  (1点)

いわさきちひろ館を思い出しました。(麻実)

 

大滝を仁王立ちして仰ぎけり  芳賀赳夫  (1点)

滝をみると霊気を授かるような気がする。その滝にこちらは仁王立ちして立ち向かっている。若者の覇気を感じる好句である。(光男)

 

川沿ひに空き家一軒花茗荷  荒木那智子  (1点)

墨絵のような風景に花茗荷の薄紅色が良く似合っている (ユリ子)

 

咲き初めは白と決まりて秋桜  熊谷秀章  (1点)

 

銀杏の実鱗の脚の鳥銜ふ  渡部有紀子  (1点)

中七が効いています。(和弥)

 

わが星の獅子座を飾れ盆の月  岡崎美代子  (1点)

私も獅子座思わずとってしまいました(みつ子)

 

菊月の弁慶石州紙人形  滝澤たける  (1点)

 

観自在菩薩の衣や涼新た  劉海燕  (1点)

 

海峡に揺れる桟橋鯊の潮  嶋田夏江  (1点)

桟橋で鯊を釣っているのでしょう、鯊の釣れる時は短い、一潮変わればシーズンが終わることもある、「鯊の潮」だから大潮の上げで良く釣れたのでしょう、3時間で100匹以上かな?(貞郎)

 

介護てふ言葉身に入む齢かな  内藤芳生  (1点)

 

花野ゆくロザリオ握りしめたまま  小野恭子  (1点)

 

秋しぐれ昨日出家の僧の鬚  江原文  (1点)

 

はや小鳥来てをり帰郷一日目  中川手鞠  (1点)

対比の妙。(繁)

 

チター聴く窓辺に桜紅葉かな  室明  (1点)

「チター」の存在が効いています。(和弥)

 

たまゆらの蓮見の席やたいこ橋  浅井貞郎  (1点)

 

奏で舞ふ天女のやうに小鳥来る  澤田和弥  (1点)

以上

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