ネット句会報2014年12月

 

天為インターネット句会2014年12月分選句結果 (作者名の後ろの点は互選点)
 ※特選句、入選句内の順番は互選点、句稿番号の順。また互選句は高点句から順に、同点句は句稿番号順に並べました。

<対馬康子編集顧問選特選句>
宿題の真つ赤な落葉探しゆく  妹尾茂喜  (4点)
「いろいろな落葉を集めましょう」というような学校の宿題が出たのでしょう。中でも自分は真赤に紅葉した落葉を探して歩く。それは人生の宿題でもあるような、さびしい思いを伴います。(康子)

きれいな落葉を拾って歩く子どもの様子が目に浮かびました(美春)

小学生の時、図工の宿題で、団栗や銀杏落葉を持つていった経験がありました。簡単なようで探してみると、なかなか大変でした。(はま子)

 

箔打ちの息寄せつけぬ雪催  安田孝子  (4点)
金銀箔を打つ時、そしてそれを貼る時も息を止めて行うと聞きます。息を「寄せつけぬ」にその気迫がよく表われていて、「雪催い」の季語が効いています。(康子)

冬の金沢の職人の仕事が目に見えるよう。(閑生)

 

冬畑の地中に挿せる温度計  土屋香誉子  (1点)
温室やビニールハウスでは温度管理が重要ですが、冬の畑も栽培に最適なように土の温度が重要。でもあまり慣れていないので温度計で測るのでしょう。状況に面白さがあります。(康子)

凍て付いたように見える地の下では、冬の間も命の営みが絶えることなく続いているのだと思いました。(智子)

<対馬康子編集顧問選入選句>
どつどどどどう賢治の村は冬支度  髙橋紀美子  (8点)

 

仕立屋の腕に針山街師走  渡部有紀子  (7点)
懐かしい昭和の1ページかと?(万里子)

句材が新鮮で師走の忙しさも伝わる。(閑生)

昔はこのような光景をよく目にしました。針山にはたくさんの針が刺さっていて、仕立屋さんの多忙な様子が見えてきます。(明)

 

むささびの展げる闇の中にゐる  町野敦子  (6点)
夜間に活動するムササビを見に行かれたのでしょうか。ムササビが飛ぶとまるでそこから闇が展開するかに感じられたのでしょう。中七に共鳴をおぼえました。(明)

 

小春日の卵のやうな白象図  永井玲子  (6点)
釈尊の誕生を予言した白象から命のカプセルとしての卵への連想。(柳絮)

ころんとした笑っている白象であれば、若沖でしょうか?ほっこりする句です。(博子)

 

紅葉づるや行きも帰りも女坂  荒川勢津子  (3点)
蔦紅葉とは違うのですか?(万里子)

 

豆炭の真赫に蕩け朝の市  室明  (3点)
中七の字面が巧みで寒い朝市の景も見える。(閑生)

豆炭を知っている懐かしい年代、蕩けるとは良く言ったものこの色になるまで少し時間がかかります。朝市の厳しい冷たさを癒す赫である。(文)

 

進行形・近未来形日記買ふ  杉美春  (2点)

 

稽古にも紋付を着て炉を開く  岡崎美代子  (1点)
紋付姿はやはり着慣れるのが一番ですものね。(麻実)

 

枯しもつけ粽のごとく括らるる  荒木那智子  (1点)

 

白き息吐きブロンズ像を運ぶ  妹尾茂喜  (1点)

 

時雨かな珈琲店に灯のありぬ  窪田治美

 

秋の夜ポストコロニアル文学と  窪田治美

 

小春日やキリンの尻尾くるくると  染葉三枝子

 

冬紅葉小さき聖母のイコンかな  阿部旭

<互選句>
広重の冬青空の日本橋  滝澤たける  (8点)
広重の「江戸百景」でしょうか、江戸の面影の濃い日本橋。今も昔も冬空の青はかわらないのでしょうね。(文)

屋根のない日本橋、あの青空をもう一度。(小夜子)

 

守り来て陽の当りたる紙漉場  土屋尚  (6点)

 

思惟仏に残る朱唇や木守柿  鈴木楓  (5点)
木守柿に思惟仏に残る朱唇としたとろ良いと思う。(芳彦)

奈良の古寺探訪中でしょうか。きれいな色が浮かびます。(美代子)

 

十二月書庫の戦記を読み直す  西野編人  (5点)
12月8日は開戦の日、人間は忘れ貝と言われる。二度と過ちを繰り返さない為に!(文)

 

冬林檎かかげ孤独な象の鼻  小橋柳絮  (5点)
大好きな林檎を鼻先でつかんで、高々と冬空に掲げ喜んでいる象の姿に、作者の鋭い感性は、はからずも象の孤独を見たのでしょう。(はま子)

 

うすれゆく石仏の顔落葉踏む  嶋田夏江  (4点)
仏の里のしみじみ感じる晩秋の景。(編人)

 

京菓子の色を選びて菊づくし  安藤小夜子  (4点)

 

朴落ち葉皆丁寧に裏返る  安西佐和  (4点)
「丁寧」に観察していましたね(繁)

落葉を見ていると、本当に律儀に裏返っている種類があります。それを“丁寧“と詠まれたのですね。(美代子)

晩秋になり、朴の葉が枝から離れ落ち着地するまでのスローモションの映像が見事に感じられます。「丁寧に裏返る」素晴らしい詩語と思います。(はま子)

 

目貼せし乱歩てふ名の喫茶店  根岸三恵子  (4点)
ハイカラさんが通るみたいですね。(万里子)

 

白寿逝く柊の花散る夜に  中村光男  (3点)
白寿の人を佳香を発する小花の取り合わせがよい (ユリ子)

 

冬ざれの風音ばかり落城址  内藤芳生  (3点)
大昔の戦の址の景が浮かんできました。(編人)

 

烏瓜森の女神のイアリング  中村光男  (3点
からからと木枯しに踊る真っ赤な烏瓜森の女神イヤリングとは素晴らしい感性ですね。(原豊)

 

鴨飛来古沼に義理のある如く  今井温子  (3点)
私の住む浜松市の佐鳴湖にも、鴨が飛来します。仲良さげに水に浮く一群れを見るとこころ温まる心地がします。(智子)

 

感謝祭少し渋めの赤ワイン  熊谷かをるこ  (3点)
少し渋めの赤ワインを選んだホストの高揚感まだ伝わってきました。(博子)

 

細榾は太き焔に牡丹焚  江原文  (3点)
細榾は太き焔という言い方が珍しい。(芳彦)

 

尼御所の砂紋に散るや沙羅紅葉  山下閑生  (3点)
この尼御所は中宮寺か法華寺か、中七に続く季語沙羅紅葉が素晴らしい。(貞郎)

 

異国語も聞こえる銀杏拾いかな  柴﨑万里子  (2点)
聞こえるで、俯いて銀杏を拾っている様子が良く出ていると思います。(孝子)

聞こえてきたのは何語かな、最近は多くなりましたね。(貞郎)

 

遠近に寄り道多し小春の日  石川由紀子  (2点)

 

何処となく美人の家系七五三  竹田正明  (2点)

 

菰巻や戌の日を待つ岩田帯  町野敦子  (2点)
樹木も戌の日を選んで菰を巻くとは気づきませんでした。大事な樹木をいつくしむ気持ちがうれしい(繁)

 

邯鄲の夢より覚めて帰り花  上脇立哉  (2点)

 

手紙一つ書きたるのみの冬日和  西脇はま子  (2点)
久しぶりに暖かな日和に恵まれ、気になっていた手紙を書いてほっとしている作者の気持ちが伝わってきます。(明)

 

石蕗の花眼帯そつと取りにけり  佐藤武代  (2点)

 

売り飛ばす寒さ銀貨の三十枚  小野恭子  (2点)

 

しづけさや障子明りに楽茶碗  内藤繁  (2点)
江戸時代からの屋敷を想像しました。(編人)

 

綿虫や古拙微笑の北魏仏  西脇はま子  (2点)

 

冬紅葉月の破片を湖底に  關根文彦  (2点)
とても美しい景色です(美春)

 

赤丸を打つて師走をはじめとす  澤田和弥  (2点)
師走突入上五の赤丸をでその気迫を感じました。(麻実)

 

蝋涙のひそかに育つ雪催  安田孝子  (2点)
蝋燭が燃え命が消去されていく経過が雪の幻影を呼び起こす。(柳絮)

 

あんな事こんな事もと日向ぼこ  熊谷秀章  (1点)

 

お荷物を肩より降ろす冬青空  小高久丹子  (1点)

 

キャンパスが大きく揺るる文化の日  片山孝子  (1点)

 

ケルン積む峠に残る秋の色  岡崎美代子  (1点)

 

しがらみのまた一つ増え年を越す  内藤繁  (1点)

 

しぐるるや一木彫りの寿老人  根岸三恵子  (1点)
何か、日本人の良さを示されたようで、とりました。一木彫りの彫師には、木の中に掘ろうとする対象の姿が見え、後は、それを木から出すだけなのだという話を子供の頃に読んだことがあります。自分も彫刻をしてみたくなりました。(智子)

 

すがれ虫覚ます残存放射能  小橋柳絮  (1点)

 

ぴかぴかの鋲で留めたし冬の月  杉美春  (1点)
上五のぴかぴかで頂きました。(麻実)

 

ひとひらの紅葉拾いて雨戸閉め  片山孝子  (1点)
我が家でも同じ、美しく紅葉した葉がひとひら家の中にそれを机に置き雨戸を閉めました。落葉ももう終りました。(小夜子)

 

牡蠣割ればむらさきの縁月細し  渡部有紀子  (1点)

 

果樹園の山燦燦と鳥威し  芳賀赳夫  (1点)

 

花のことばかり話せる師走かな  明隅礼子  (1点)
師走の忙しいながら、静かに華やかな雰囲気が伝わってきます。幸福感のある句です。(和弥)

 

懐手熱き思ひの秘めし拳  熊谷秀章  (1点)

 

鯉跳ねて桜紅葉の一葉かな  阿部旭  (1点)

 

向かひ来る鳥と見紛ふ枯葉かな  中川手鞠  (1点)

 

紅葉散る茶人の館の黒部石  満井久子  (1点)

 

露天湯に篠突く雨や冬の雷  浅井貞郎  (1点)
激しい雨そして雷、この時期の露店湯の様子がとても良く分かります。(孝子)

 

再会に紅きマフラーなびかせて  染葉三枝子  (1点)
プレゼントされたマフラーで待ち合わせの場所へ「なびかせて」に逸る気持ちがよく描かれている(繁)

 

種ほおずき赤く透けをり田圃道  柴﨑万里子  (1点)

 

小春日や白鷺城の白眩し  土田栄一  (1点)

 

深川の雨のひと日や芭蕉の忌  内藤芳生  (1点)

 

震災の厳しき跡の冬の雨  武井悦子  (1点)

 

数へ日や未来の色がパレットに  明隅礼子  (1点)

 

石柱の日あたるところ冬の蠅  佐藤博子  (1点)
季語が効いています。なんとも静かさのある景です。(和弥)

 

時雨るるや南無また南無と軒雫  武藤スエ子  (1点)
連続した言葉ぽたぽたでなく南無南無が面白いと思う。(原豊)

 

駄菓子屋の小さき模型文化祭  竹田正明  (1点)
季語がふさわしいかどうかは疑問ですが、上五中七の表現にひかれました(美春)

 

団栗をトトロに描きクリスマス  斎川玲奈  (1点)
団栗とトトロを結びつけた発想が面白い。(貞郎)

 

中吉のみくじ良しとす七五三  あさだ麻実  (1点)

 

低くとぶ烏や落葉ふりしきり  佐藤博子  (1点)
上五が効いています。(和弥)

 

冬夕焼一筆画きのやうな雲  今井温子  (1点)

 

凍星の居座つてゐる陵の上  小野恭子  (1点)

 

白鳥の見上ぐデネブの瞬けり  髙橋紀美子  (1点)
白鳥座を見上げて神話の世界に思いをはせる。(柳絮)

 

斑鳩の御仏に添う山茶花よ  武井悦子  (1点)
奈良のお寺を尋ねた旅でしょうか。結句の言葉を問題視する方もありそうですが、私はいいと思います。(美代子)

 

躊躇へば野分背を押す曲り角  芳賀赳夫  (1点)
躊躇していたところ野分に押されて、曰くありげな曲り角を曲ってしまった。(芳彦)
以上

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