ネット句会報2015年4月

 

天為インターネット句会20154月分選句結果 (作者名の後ろの点は互選点)
 ※特選句、入選句内の順番は互選点、句稿番号の順。また互選句は高点句から順に、同点句は句稿番号順に並べました。

<対馬康子編集顧問選特選句>
猫脚の家具動き出す目借時  武藤スエ子  (2点)
ついうとうととする春の陽気に、ふと乙女チックな猫あしの家具が動きだす。居眠りを起こさぬように猫のように忍び足。目借時という季語が効いていて面白い。(康子)

 

卒業歌円空仏に届きけり  中川 手鞠
丸く柔らかい木喰仏ではなく、ゴツゴツとした一刀彫の円空仏に卒業の歌が届く。巣立つ者への激励、未来への希望、まだ見ぬ試練など、力強い円空仏のそこはかとない微笑が、卒業していく子等を包み込む。卒業ということへの諧謔が感じられ独自性がある。(康子)

 

<対馬康子編集顧問選入選句>
花冷や千の空(うろ)もつ千羽鶴  小野 恭子 (5点)
折り鶴は確かに空をがあります。これを「千の空」としたところが面白い。(芳彦)

千羽鶴のもつ意味~折る人の心の虚ろと希望!?花冷の季語が寂し過ぎて~情緒に流される、きらいあり。でもフレーズが好き!(文)

 

野良猫の子をくはへゆく朧かな  土屋香誉子  (5点)
この母猫はある意志を持って子を運んでいるのです。朧という言葉が逆にそのように感じさせます。(明)

 

小豆煮る匂い小路に春彼岸  嶋田 夏江  (4点)

 

飛火野のあをにまみれて遊びけり  内藤 芳生  (3点)
昔の飛鳥野の旅を思い出しました(編人)

 

相模野に風のやむ日や桑ほどく  土屋 尚  (3点)
相模野の穏やかな情景描写が見えます。(豊)

桑をほどくことから養蚕が始まる。懐かしい風景。 (せつ)

 

蝶のこと思ひてゐれば蝶に逢ふ  明隅 礼子  (3点)
思い人を蝶に託して詠まれたロマンティックな句ではないでしょうか。「逢ふ」という字からそのように感じました。美しい春の到来です。(明)

虫の知らせに類する超常的現象をうまく句にされた。(閑生)

旧かなの字体に蝶の柔らかさを想像し、ひかり野の幻想的なイメージを感じました。(博子)

 

灯の揺れてうしろ向きたる吊し雛  明隅 礼子  (2点)
一陣の風と吊し雛の景を素直に詠まれた句である。しかし「うしろ向きたる」を見逃さなかった作者の視線の鋭さにより掲句は俄然と光彩を放っている。同時に読者に思わず深読みをさせたくなる。どこが正面か判然としない「吊し雛」が一瞬でもうしろ向きになりたがる時はどんな心境のときであろうかと、思わずいつも寄り添うひとの顔を見つめてしまう(繁)

 

泥棒橋渡れば桜茶屋のあり  西脇はま子  (1点)

<互選句>
春光や古代瓦に馬の戯画  竹田 正明  (8点)
馬の戯画というので、この瓦は古代中国の 物でしょうか 。季語の春光が 古代への浪漫を誘っています。(はま子)

古代瓦に馬の戯画があったというところが珍しい発見でこれに春光が輝いていた。良いと思う。(芳彦)

春のゆっとりした気持ちですね。(劉海燕)

 

佇めば身延の里の花の息  室 明  (6点)
「花の息」という表現がユニーク。里いっぱいに花盛りと思える。(ユリ子)

身延の里に佇んだ処花の息を感じたという。「花の息」という言い方が面白い。(芳彦)

里に咲く桜達の息づかいが聞こえてきそうです。(博子)

 

花の夜は硝子の靴を脱ぎ棄てて   早川恵美子  (5点)
靴を脱ぎ捨てて花に浮かれるシンデレラのイメージ。ロマンチックです。(ユリ子)

童話の世界から現実の世界へ、ガラスの靴を脱ぎ捨てた勇気に感動 (温子)

 

ゆりかごのやうな川波流し雛  荒木那智子  (5点)

 

児に叱られてをり万愚節  根岸三恵子  (5点)
パパ、靴が汚れたままよ。(編人)

朗人先生の〈もう既に子猫が申す好き嫌ひ〉が思い浮かびました。(はま子)

自己主張に目覚めた二歳児。反抗することも成長の喜び。(温子)

 

初蝶の一つが谷を明るくし  荒川勢津子  (4点)
一隅を照らすかのような情景を巧みに詠まれた。(閑生)

 

不開の間覗く鍵穴西行忌  武藤スエ子  (3点)

 

焼き立てのパンのゆがみや朝桜  安藤小夜子  (3点)

 

ポストまで二百歩あまり飛花落花  熊谷かをるこ  (3点)
満開の桜のトンネルのようですね。(ユリ子)

病後の方でしょうか。こんなに近いポストまで歩数を数えてしまうのは。(志昴女)

 

花朧ボンタン飴にオブラート  小野 恭子  (3点)

 

初花の孤高のひかり西行忌  室 明  (3点)

 

点描の青を揺らして蛍烏賊  髙橋紀美子  (3点)
蛍烏賊の発光器の青白い光、群遊海面に点描のごとく!景が見えます。(文)

 

光りては雫となりて氷柱かな  片山 孝子  (3点)

 

佐保姫に誘ひ出されし鳶の笛  西野 編人  (3点)

 

のどけしや湾を横切る渡し舟  満井 久子  (2点)
手漕ぎの渡し舟ですか。凪の湾の一景。(編人)

 

七島に漁明知らす鰆船   原 豊  (2点)

 

梅散るや水琴窟の音幽か  阿部 旭  (2点)
梅の花びらのかそけさ、水琴窟の幽かさ (せつ)

 

緑濃き鶯餅のせ置き手紙  土田 栄一  (2点)

 

風光る円空仏の太き眉  渡部有紀子  (2点)

 

春暁の駅旅立つ者にひらく  妹尾 茂喜  (2点)

 

桜守千歳引き継ぐ吉野山  西野 編人  (2点)

 

朧月祖母の御百度まだ半ば  妹尾 茂喜  (2点)

 

蚤市のホルンと化せし蝸牛  西脇はま子  (2点)
滑稽とは異なるフランス語の「エスプリ」の効いた一句(繁)

発想の展開が面白い(豊)

 

結願の鈴の音高く揚雲雀  石川由紀子  (2点)
何かの願いが叶った昂揚感と揚雲雀の組み合わせが絶妙。(閑生)

今月の作品の中でもっとも「挨拶性」の高い作品である。視覚の写生句ではなく、複数の聴覚を競い合わせているところに句の広がりが認められる(繁)

 

日暮れても明るき左岸 りらの花  熊谷かをるこ  (2点)

 

列島のハザードマップ冴返る  内藤 芳生  (2点)

 

風水の龍の抜け穴ビル霞  斎川 玲奈  (1点)
風水は、吹く風流れる雲の状況で、地勢判断の技術と方位の吉凶を占う。そこに雨、雲を自在に支配し、大海や地底を行き来する龍、そのビルは霞んでいて人間様には見えにくい、面白い!なんてファンタジックな発想!(文)

 

山笑ふぬくみの残る素焼皿  江原 文  (1点)

 

空青く桜満開色濃くし  齋藤みつ子  (1点)
桜の満開をいきいき表現しました。 (劉海燕)

 

芽吹くもの薄く覆いて春の雪  片山 孝子  (1点)

 

参道の先に町あり霞みつつ  上脇 立哉  (1点)

 

顎に打つチタンの杭や四月馬鹿  土屋 尚  (1点)

 

椿落つニュートンここにも存在す  中村 光男  (1点)

 

墨堤や打ち揃ひたる春の使者  伊藤 高甫  (1点)

 

鞆の津の路地を吹く風ひな祭り  安光 せつ  (1点)
鞆の浦の旧家に代々伝わる雅なお雛様を思い浮かべました。吹く風もしっとりした優しい風のように思われます。(明)

 

山桜この奥きつと鬼女がをり  齋藤みつ子  (1点)
そうでしょうね!!この山桜の気迫は、人間のものではありません。(志昴女)

 

目借時湾に真白き帆掛船    根岸三恵子(1点)

 

先生も笑顔で走る卒園日  菅野 強 (1点)

 

のどけしや転読尼のこゑ軽く  山下 閑生(1点)

 

堕天使の羽根を擽る春の風  石川由紀子(1点)

 

春の雨暫し佇む哲学路  菅野 強  (1点)

 

青空へ精一杯の若桜  劉海燕   (1点)
年を経れば、空も人をも魅惑するであろう若桜のこころを感じました。(博子)

 

橋詰は雀隠れや沈下橋  山下 閑生(1点)

 

早春の橋に数多の愛の鍵 安光 せつ(1点)

 

洗ひ張る父の大島初桜   江原 文 (1点)

 

被災地の河津桜の朱深し  松山 芳彦(1点)

 

約束よ指切りげんまん卒業す  安藤小夜子(1点)

 

見慣れたるいつもの道の初桜  小高久丹子(1点)
通勤途上や買い物で通る道にも桜はありますよねやはり日本はいい(みつ子)

 

みやこより背負われてきし古雛  荒木那智子(1点)

 

図書館にかみしばゐする春休  佐藤 武代(1点)
春休の図書館の一こま、今も昔も変わりませんね。(はま子)

 

霾や書庫に眠れる紙芝居  原  豊 (1点)

以上

ホームへもどる 句会報へもどる