天為ネット句会報2015年10月

 

天為ネット句会2015年10月分選句結果 (作者名の後ろの点は互選点)
 ※特選句、入選句内の順番は互選点、句稿番号の順。また互選句は高点句から順に、同点句は句稿番号順に並べました。
 ※一部インターネットで表示できる文字に置き換えております。

<対馬康子編集顧問選特選句>
月煌々少彦名(すくなひこな)も芋煮会  松山芳彦  
大国主命とともに日本の国造りをした少彦名と芋煮会という取り合わせが面白い。芋煮会は昼間行われるので月夜の設定も
おかしいことになるが、月を見ながら神話を楽しんでいるということだろう。芋煮会の世界が広がった。(康子)

渚から沖を眺むる敬老日        小野恭子  
お年寄りを敬老するというありきたりの概念ではなく、抒情的アプローチによって、年月を重ねて生きていく日々の強さや
哀しさを自ずと醸し出した。(康子)

<対馬康子編集顧問選入選句>
小鳥来る飴切る音の城下町       西脇はま子 (11点)
対象をしっかり捉え、据りの佳い作品です。(仁)
「飴切る音の城下町」がいいですね。昔と変わらない情景。渡り鳥も昔と同じようにやって来る。懐かしさに溢れる句
(光男)
城下町の景色が見えて来る。(芳彦)

海を見てばかり棚田の案山子かな    明隅礼子  (6点)
それもいいのでは…!稲雀が大挙して荒しまわった風景がも少なくなり、寂しい限り(繁)
海に魅入られた案山子。一緒に海をみている雀がいるかも・・と起想しました。(博子)

芋の露火星に水の流るる日        土屋 尚  (6点)
芋の露の転がる様からの発想の飛躍に驚かされる。「流れていた」の過去ではなく、「今、流れている」あるいは「これから流れる」と詠んだ「流るる」の用法で大きくなった。(繁)
先日のニュースで火星には水が流れているという事が、報じられて、何か生物が生息しているのか?と夢とロマンを感じさせてくれました。芋の露のきらりと光りコロコロ転がる感じが丸い火星かな~と流るる、としたことで、今この時を感じ、格調高くなった。(文)

金襴の笛袋解く秋の夜         荒木那智子 (4点) 
素晴らしい笛の音が聞こえて来るようです。(貞郎)

秋深し子規従軍の仕込み杖       武藤スエ子 (4点)
子規の仕込み杖は子規の忌の時しか展示されていないとのこと。残念ながら見ることが出来ませんでした。(はま子)

シヴァ神の衣ふはりと十三夜      佐藤博子  (2点)
ヒンドゥ教の創造と破壊の神の月光を愛でるなごみの姿。(柳絮)

蛇穴に入る前犬に吠えらるる      嶋田夏江  (2点)
発想が面白い、ユーモアのある句です(美春)
実に面白い。こういうのが俳句の「俳」なんでしょうね(繁)

天平の鴟尾退りゆく秋の雲       内藤芳生  (1点)

都向く壺のいしぶみ良夜かな      満井久子  (1点)

<互選句>
秋桜母のもの焚く薄けむり       石川由紀子 (9点)
母上との思い出の品を、断腸の思いで整理している様が伝わって参ります。(仁)
下五から亡き母上への深い思慕がうかがえます。(明)
戦中戦後を生き抜いた母が逝き、形見分けして残りのものを燃やす。コスモス色の風が吹き、煙がたなびく。思い出は
燃えず残る。(茂喜)

本棚をはみ出す図鑑小鳥来る      杉 美春  (6点)
今年も渡り鳥の季節になった。あの鳥は何なのだろうと見知らぬ鳥を見つけては図鑑を取り出して眺めている。そういう
情景が浮かぶ好句(光男)
子供さんの小さな本箱でしょうか。きれいな絵や写真のある図鑑は童話や教科書などより大き目。楽しい夢のある作品です。(はま子)

一人は寂し二人は哀し十三夜      中川手鞠  (4点) 
心境は小生と同じです。何とも遣る瀬無い思い。俳句として皆さんどの様な評価して戴けるのかなあ。(芳彦)
十三夜がいいですね。詩情を感じる美しい句ですネ(麻実)

野仏に一輪挿して女郎花        和田 仁  (4点)
伝承の野ざらし美女に手向けの一輪であろうか。(柳絮)

北斎の波濤とよもす星月夜       鈴木 楓  (4点)
浪裏の富士。澄んだ星月夜に響く波音はまた格別であろう。(柳絮)
北斎の絵と星月夜の関連が面白い。(芳彦)

刈上げの母の福耳ちちろ鳴く      小野恭子  (4点)
刈上げのお母さんのさっぱりした表情を生き生きとさせる福耳、そのふくよかな耳に優しいちちろ虫の鳴き声が~。
ほっとする光景です。(文)

秋夕焼け海へ傾斜す海人の畑      安光せつ  (3点)

秋天や竿いつぱいに産衣干す      内藤 繁  (3点)
おおらかな生命力を感じます。秋天に白い産衣が、はためいている情景が浮かびます。気持ちの良い句です。(文)

山頂の三角点に赤とんぼ        浅井貞郎  (3点)
リズムがよく、景色が見えます(美春)
山頂に着いた喜びが赤とんぼによって倍加した様子が伝わってきます。(明)

村芝居賑はつてゐる楽屋        髙橋紀美子 (3点)

鬼やんま過(よぎ)る荒さや昏れそめて 室 明   (2点)

屹然と伊吹嶺のあり秋の天       浅井貞郎  (2点)

十六夜のサティ漏れくる雲流る     小高久丹子 (2点)
あの曲だろうか?・・とイメージが膨らみます。(博子)

秋澄むや寄目の睨む鰈干す       原 豊   (2点)
秋晴の下で鰈を干している。ひょっと見ると寄り目になって鰈が睨んでいる。ちょっとした驚きを穏やかな日常生活に
みつけて詠んだ心和む句(光男)

星月夜古城に走る一角獣        髙橋紀美子 (2点)
イメージが膨らみ異世界に遊ばしてくれます。(仁)

車座に読む台本や涼新た        杉 美春  (2点)
発表会に向けて台本の読み合わせをする若者たち。台本は創作劇かシェークスピアか。演劇は車座に始まり車座に終わる。
新涼の佳景が心地よい。(茂喜)

箴言の短きに在り実山椒        早川恵美子 (2点)

利根川の治水の文書雁渡る       竹田正明  (2点)

取壊し決まる校舎や金木犀       佐藤武代  (2点)
想ひ出の校舎の無くなる寂しさと流れてくる金木犀の香り身に沁みます。(小夜子)
社会は人口減少の一途をたどる。学校が統合され残りの校舎が壊されるのは耐え難い。校庭には自分が入学したときの金木犀が今も匂っている。(茂喜)

テンポよきメトロノームや秋気澄む   満井久子  (2点)
秋晴れのようにすっきりととても気持ちの良い句です。(小夜子)

ひよんの笛聴かせてくれしことありし  安光せつ  (2点)
ひよんの笛を聴かせてくれたのは何方でしょうか。お父様、お母様、恋人、それともご主人様でしょうか。ひよんの笛の音色が聞こえてくるようです。(はま子)

夜の味と思ふひとつぶ黒葡萄      明隅礼子  (2点)

赤のまま今日のおかずは何の草     齋藤みつ子 (1点)

山野辺に根差す遺伝子曼珠沙華     広岡育子  (1点)

新涼の午後や吊革ゆれまかせ      江原 文  (1点)
昼下がり街を行くチンチン電車、乗客は2、3人東京の昔のこ情景思い出しました。(小夜子)

厚き本卓袱台に伏せ黒葡萄       渡部有紀子 (1点)

一碗に和みの茶あり秋の夜       武井悦子  (1点)

明け初めて現に還る踊かな       内藤芳生  (1点)

早々に仕舞ふ市場や鳥渡る       根岸三恵子 (1点)

台風圏ネクタイ赤し予報士は      熊谷かをるこ (1点)
中七の「ネクタイ赤し」で頂きました。(麻実)

狭き田にゆるキャラ案山子あまた立つ  あさだ麻実  (1点)

松陰の魂を慕ひて雁来る        西野編人  (1点)
私も雁になって飛んでいきたい。(貞郎)

ひそやかに窓開くる音スーパームーン  小高久丹子  (1点)
今年のスーパームーンは最高の夜空に恵まれ綺麗な大きなお月様でした、ひそやかにがいいです。(貞郎)

過疎の地や案山子までもが翁一人    内藤 繁  (1点)

秋が来たわたしの顔に胸に来た     齋藤みつ子 (1点)

石榴の実教室よりの笑ひ声       佐藤武代  (1点)

爽籟や芙美子書斎の土庇        中村光男  (1点)

錦秋の雲の溢るる畑の甕        原 豊   (1点)

虚しさは秋の彼岸の猫の墓       広岡育子  (1点)

パソコンに遺るアドレス葛の花     江原 文  (1点)
片仮名表記の語と葛の花の取り合わせが不思議に哀しさを強めているように感じました。(明)

三つ編みの頃立ちし街赤い羽根     安藤小夜子 (1点)

もろこしや親も子供も齧歯類      中村光男  (1点)
とうもろこしを夢中になって食べる姿はまさしく齧歯類ですね(美春)

木洩れ日やかさりと木の実落つる音   満井久子  (1点)

病む夫に秋の草花みやげとす      あさだ麻実  (1点)
秋の草花を話題に、穏やかに過ごされるご夫婦のひとときを想像しました。(博子)

彼岸花白きも交ぜて寺の庭       妹尾茂喜  (1点)

黄落やパリ解放の日の広場       佐藤博子  (1点)

以上

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