天為ネット句会報2018年9月

 

天為インターネット句会2018年9月分選句結果

(作者名の後ろの点は互選点)
 ※特選句、入選句内の順番は互選点、句稿番号の順。また互選句は高点句から順に、同点句は句稿番号順に並べました。
 ※一部インターネットで表示できる文字に置き換えております。ご了承ください。

<日原 傳顧問選 特選句>

四面楚歌ならず四面の虫時雨          西脇はま子   (1点)

周囲のどこからも秋の虫の音が聞こえる場所に作者は身を置いている。そして、ふと垓下に追いつめられて楚歌を聞く項羽に思いを寄せたのである。「取り囲む音」という共通点によって、二つの時空がオーバーラップする面白さがある(傳)。

項羽の絶望感を捉えながらも、こうだったなら・・と平和な世を有り難く思わせる一句です。(博子)

傷のあるトランクひとつ秋の風         卯平      (1点)

秋風の吹くなかに置かれた一つのトランクを作者は見つめている。使い古され、傷も目立つ。そのトランクは作者のかつての旅の思い出をよみがえらせる存在なのであろう。単純化された良さがある(傳)。

旅慣れた人でしょうか、風の吹くまま、気の向くまま、そんな旅が浮かびました(律子)

<日原 傳顧問選 入選句>

馬肥ゆるはち切れさうな稲荷寿司        早川恵美子   (6点)

  原句:馬肥ゆるはち切れさふな稲荷寿司

「さふな」は旧仮名で「さうな」が普通のようですので、手を入れました(傳)。

「はち切れそう」にさあさあ沢山召し上がれと歓待している声が聞こえてきます。(玲子)

中七から豊の秋を喜ぶ様子が見えてきます。(明)

竹尺の母の旧姓夜の秋             石川由紀子   (6点)

ちょっとしたところに昔をしのぶよすがを発見し、ある種の感慨を持ったという気持ちがわかります。(光男)

思い当る内容の句です。季語がよいです。(芳生)

玫瑰や最果てという海の色           満井久子    (5点)

最果てという海の色、詩情があり惹かれます(律子)

旅終へて西日の街に戻りけり          卯平      (5点)

「西日の街」、まさしく今年の景ですね。(孝雄)

「西日の町に戻りけり」。旅を終えた満足と安堵が感じ取れます。(ユリ子)

旅を満喫し戻ってきた安堵感と「西日」で少しの疲れが表現されており良いと思います。(相・恵美子)

点るまで闇の親しき大文字           内村恭子    (3点)

送るも送られるるもこもごもの思い。火が灯るしばしの闇を親しくと詠まれたことに感動しました (温子) 

列島に無数の河川厄日来る           土屋香誉子   (2点)

厄日が早く終わりますように(和子)

新涼の山のホテルの焼き林檎          森山ユリ子   (2点)

幸せのひととき。新涼の季語が効いている。(光男)

草ひばり来て鳴く朝の厨かな          原 道代    (1点)

一夏の汚れの残る道着干す           瀬尾柳匠    (1点)

汚れはどんな汚れか。この句からは分からない。句読者にどんな汚れかを当てて見なさいと委ねた句。干された道着からは持統天皇御製小倉百人一首の和歌すら思い浮かびました。(順一)

静かなる銀水引の光かな            中川手鞠

枢機卿(カーディナル)帽の赤啄木鳥(アカゲラ)幹叩く  森山ユリ子

<互選句>

大津絵の鬼の鉦打つ猛暑かな          西脇はま子   (9点)

大津絵と猛暑はよくあっている。(卯平)

猛暑の様子が良く解ります。(和子)

一村を抱きしやうに秋の虹           安光せつ    (8点)

秋の虹がかかる、折から集落全体を包むような大きさ。くっきりとした七色が見えるようです。(志昴女)

なだらかな山々に抱かれた小さな村でしょうか。中七から平和な静かな村の様子が伝わります。(明)

雁渡る帯一条を空へ置く            原 豊     (7点)

「帯一条を空へ置く」季語「雁わたる」と「帯一条」の取り合わせがが素晴らしい、(貞郎)

群れて飛ぶ雁を帯に見立て、置くと表現されたのがいいと思いました(律子)

「帯一条」というすっきりした表現が良いと思います。(相・恵美子)

雁の竿を帯に見立て、空に置くと雄大に歌われたところが素敵で(早・恵美子)

冬瓜のみんな寝ている道の駅          石川由紀子   (7点)

「みんな寝ている」が冬瓜の特徴をよく捉えていると思う。(光男)

冬瓜が沢山並んでいるのどかな光景。ホットとなごみました。(宙)

冬瓜のかたちを思い浮かべ、道の駅で寝ている、という表現がとてもユーモアを感じ楽しい句に思いました。(美穂)

転がっている冬瓜と道の駅が響き合っています(早・恵美子)

芙蓉咲く勾配ゆるきケアハウス         安西佐和    (6点)

平成は色々な事がありあっという間の30年昭和生まれの人も病には勝てずに医者通いがよく分かります頑張りましょう(みつ子)

芙蓉の花びらの柔らかさと勾配ゆるきの表現が句全体の優しさとなって、とてもいいなと思いました。(美穂)

作者の優しさを感じます (昌夫)

父祖の地は限界集落稲の花           佐々 宙    (5点)

時はこうして変わっていく。「稲の花」がいいですね。祖母が母が忙しくしていた大家族が思い出されます。(玲子)

人の気配がほとんどしない限界集落。人々が長い年月をかけて大切にしてきた田にひっそりと真っ白な稲の花が咲いている姿に心打たれます。(明)

大木の伐られし日なり蝉時雨          明隅礼子    (4点)

蝉時雨のどこか刹那的な感覚が、伐られし日の喪失感を増していくように思いました。蝉たちが惜しんでいるような・・(美穂)

大木に親しんでいた万物の哀しみを想像しました。(博子)

水の秋志賀のさざ波浮御堂           かや和子    (4点)

庭園に佐渡の赤石鬼やんま           武井悦子    (4点)

水石愛好家に有名な「佐渡の赤石」、鬼やんまとの取り合わせが新鮮でした。(孝雄)

サングラス褒められている車椅子        岡崎志昴女   (4点)

サングラスの良く似合うひろこ副主宰を思い出しました、久しくお目にかかっていませんが如何お過ごしでしょうか、(貞郎)

秋高し八十路の医師の聴診器          中嶋昌夫    (3点)

象牙の聴診器が目に浮かびます・・・。(宙)

馬の墓供ふ野菊の濡れてをり          相沢恵美子   (3点)

イマドキの馬の墓ではなさそうですね。お供えの野菊、いかにも馬に相応しい供花に思えました。(志昴女)

馬の墓にも花を供えると言うのが新鮮な事実でした。伊藤左千夫の「野菊」も思い浮かびました。(順一)

阿波の空阿波の海知る青酢橘          室 明     (3点)

炭酸水ローマの古き時代より          土屋 尚    (3点)

ヨーロッパは硬水で、ガスの入っていない水を探す方が大変。そのことをローマの昔と歴史を交え歌われたところが素敵です(早・恵美子)

炭酸水は健康に良いと日本でも大流行。古き良き時代のローマを連想しました。(博子)

秋蝉や廊下の端の懺悔室            垣内孝雄    (2点)

懺悔と秋蝉の共鳴が発見。(卯平)

秋蝉と懺悔室の静謐。賑やかな夏が過ぎ、心を見つめ直す秋なのでしょう。(ユリ子)

星飛ぶや一会の人と足湯して          安西佐和    (2点)

道後温泉に足湯が有った夜9時を過ぎても旅の人が2,3人足湯をしながら語り合っていた、旅芸人もいたなー季語「星飛ぶや」が効いています(貞郎)

満天の星を見ている一会の人はひょっとして私かも?  (温子)

芋の露多摩丘陵の真つ平ら           永井玲子    (2点)

都心に近い広大な丘陵、人々の営みと自然の残る風景を季語が引き締めている感じ (昌夫)

肩書は無けれど寄って来る秋蚊         今井温子    (2点)

この句から人生の儚さみたいな映像が読み取れる。(豊)

自分に対する哀感頑張ってくださいね(和子)

父親に似たる我が影秋の夜           加茂智子    (2点)

蜩や崖にはりつく御師の家           満井久子    (2点)

「崖」と「蜩」と「御子」、霊山を想います。(孝雄)

山峡の険しい地を思わせます。端正な句と拝見しました。(志昴女)

竜淵に潜む神苑水の音             中嶋昌夫    (2点)

燕去ぬ巣に一片の羽根吹かれ          相沢恵美子   (2点)

江戸っ子の茶漬さらさら今朝の秋        鈴木 楓    (2点)

何処で見たテレビCM?季語で救われた。(卯平)

関ケ原踏みし一歩にいぼむしり         内藤芳生    (2点)

朝顔の鉢を抱へて終了日            佐藤武代    (1点)

小守宮や命からがら尾を残し          嶋田夏江    (1点)

夏休最後の夜や遠花火             佐藤博子    (1点)

長い夏休みの最後の日に遠くで花火音が聞こえて明日からまた頑張ってねと応援しているようですね(みつ子)

患者には待つのも仕事秋扇           かや和子    (1点)

立秋やステンドグラスの光折れ         佐藤律子    (1点)

光が床に映っている様子が美しい。 (宙)

月影が切り分けてゆくパンケーキ        森野美穂    (1点)

大きなる蕗の葉の呼ぶ昼の雨          上脇立哉    (1点)

ちぎり絵に名月飛込む夕机           原 豊     (1点)

水菓子の玻璃にひとつぶ黒葡萄         佐藤博子    (1点)

秋出水家も牛舎も飲み込みて          佐藤武代    (1点)

ビルの間の半分見ゆる大花火          齋藤みつ子   (1点)

半分しか見えなければ、すぐに去ったのかもしれませんが、意外と長いと見学して居たのかもしれないとも思いました。(順一)

平成の八月終る日も病院            鹿目勘六    (1点)

平成は色々な事がありあっという間の30年昭和生まれの人も病には勝てずに医者通いがよく分かります頑張りましょう(みつ子)

無花果や失楽園は地に満てり          石川順一    (1点)

西郷の筆意あらたに天高し           阿部 旭    (1点)

石榴大笑納曽利の面の顎外れ          高橋紀美子   (1点)

柘榴の口と納曾利の口の対比が面白い句。(豊)

烏瓜山の麓のパン工房             荒木那智子   (1点)

「山の麓のパン工房」にロマンを感じます。そこに烏瓜の彩り、いいですね。(ユリ子)

色なき風山ひだ深き田の煙           妹尾茂喜    (1点)

逝く秋や座卓一つの六畳間           浅井貞郎    (1点)

秋一日深川江戸を懐かしむ           荒川勢津子   (1点)

盆の月朝に一度の飲み薬            垣内孝雄    (1点)

毎朝一回の薬をきちんと飲む。長生きも如何なものかと言いながらふと夕空を見上げると、はや「盆の月」が、、、面白い。(玲子)

神戸よりレデイースハツト小鳥来る       永井玲子    (1点)

レディースハットの魅力と季語の取り合せが面白い (昌夫)

切り岸の松に吹く風鰯雲            竹田正明    (1点)

秋らしい風情のある句と思います。(相・恵美子)

ペディキュアの紅の踏みゆくこぼれ萩      中村光男    (1点)

小流れに足を浸せば昼の虫           佐々 宙    (1点)

野分立つ闇の航路に島灯台           浅井貞郎    (1点)

稲妻や樹海に密と獣道             染葉三枝子   (1点)

今朝三つしゃっきり咲きし桔梗かな       片山孝子    (1点)

暑さに負けず秋の花がしゃっきり咲くいいですね(みつ子)

生ずるも死するもひと夜女王花         中川手鞠    (1点)

上五中七でサボテンの花の儚さを上手に表現している。(豊)

以上

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