天為ネット句会報2019年1月

 

天為インターネット句会2019年1月分選句結果

(作者名の後ろの点は互選点)
 ※特選句、入選句内の順番は互選点、句稿番号の順。また互選句は高点句から順に、同点句は句稿番号順に並べました。
 ※一部インターネットで表示できる文字に置き換えております。ご了承ください。

  <日原 傳顧問選 特選句>

奈良太郎一打に南都淑気満つ          中嶋昌夫    (5点)

「奈良太郎」は東大寺の大鐘の別称。新年を迎えた奈良の町に除夜の鐘の音が響きわたる。「淑気満つ」という新年の季語を得て、「奈良太郎」「南都」という固有名詞がどっしり据わった大きな句となった(傳)。

東大寺創建以来の国宝奈良太郎は重さ26.3トンで音の余韻が長く続く事で有名、「一打に南都淑気満つ」の措辞が素晴らしい、(貞郎)

鐘の余韻が聞こえるようです。奈良のお正月ですね(早・恵美子)

廚の手まだ濡れてをり除夜の鐘         土屋香誉子   (4点)

片付けものをしたり、年越し蕎麦を作ったりと廚を預かる者は新年を迎える時が近づいても働き続ける。炊事で濡れている手に焦点をしぼり、あわただしく新年を迎える気分を示した(傳)。

年越しそばの後片付けや、お節の準備など、いろいろな内容が浮かんで来ました。除夜の鐘でもききながらお勝手仕事をするのはおつなものかもしれません。(順一)

  <日原 傳顧問選 入選句>

聖夜劇宙より紙のガブリエル          佐藤博子    (7点)

紙のガブリエルが宙より、聖夜劇が目の前に展がります。(孝雄)

聖夜劇に登場するガブリエルが紙でできている、というのがとても面白いと思いました(律子)

大天使ガブリエルを紙で作ったとは! (宙)

風呂吹や父の遺影の丸眼鏡           中村光男    (5点)

「丸眼鏡」がご尊父様のお人柄を、「風呂吹」とともにしっかり知らせてくれています。(孝雄)

お父様に対しての暖かい気持ちが表れている句であると思います。風呂吹と丸眼鏡の取り合わせが面白いです。(相・恵美子)

大根の○と眼鏡の○がハーモニーを奏でました (宙)

朴落葉束ね売らるる飛騨の市          染葉三枝子   (4点)

土地によって売られるモノが違いますが、朴の落葉とはね!飛騨の市に行ってみたくなりました。(志昴女)

あの大きな葉が売られていると言うだけでもインパクト十分だと思いました。朴葉味噌や朴葉寿司なども思い浮かびました。(順一)

庵主さまの病よき日や枇杷の花         今井温子    (3点)

庵主さまの病も少しずつ癒え、庭は枇杷の花咲く頃となりました。病よき日に柔らかい日差しさえ感じます。(玲子)

ひよつとこも囃子も子らの里神楽        竹田正明    (3点)

「ひょっとこ」と「囃子」の取り合わせで子供の里神楽の様子が充分伝わってくる。(貞郎)

刀傷深き釈迦堂冬の鵙             染葉三枝子   (1点)

大聖樹てつぺんに星立てとほす         渡部有紀子   (1点)

小商いの金糸銀糸や冬の雨           佐々 宙    (1点)

冬至梅白し芳しかんざし屋           永井玲子    (1点)

トリエチルヘキサノインの初化粧        内村恭子

法隆寺の伏藏に注連飾りかな          今井温子

年忘れ港に船を見てゐたり           相沢恵美子

  <互選句>

ささやかな佳き事しるし初日記         中川手鞠    (7点)

謙虚に新たな年を迎える気持ちがにじみ出ていて佳句だと思います (光男)

平凡な日常に幸せがひそんでいるのですね。(智子)

病気や介護の話の増える近頃。私もささやかな幸せを見つけて行きたい。(博子)

懐炉抱き本能寺へと急ぎける          永井玲子    (7点)

歴史上の本能寺の特徴を上手くとらえた佳句だと思います (光男)

京都でのオフ句会のお知らせに是非参加をと希望しておりましたが都合で断念 以前有馬先生ご来京のおり本能寺をご一緒させて頂きました 懐炉を持って本能寺に急がれてる掲句の方のお気持ちに感じ入っております  (温子)

御尤も!歴史も感じられ、オイラ達足軽は、駆り出されて寒いんだぜ!って感じかな?(早・恵美子)

本懐を遂げた光秀と懐炉とのミスマッチに思わず笑ってしまいました。(明)

買初にふる里行きの切符かな          中嶋昌夫    (5点)

福袋売出しなどで賑わっている町。ふと、ふる里への郷愁にかられた心情に共感しました。(博子)

透きとほる光のかたち寒牡丹          長濱武夫    (5点)

美しい句ですね。(智子)

真夜の闇貫き育つ軒氷柱            渡部有紀子   (5点)

「闇を貫き」の措辞は面白い「軒氷柱」の季語は動かない、(貞郎)

貫き育つが良かったと思います (和子)

上五中七から氷柱の生まれる強い意志のようなものを感じます。(明)

平成の喜怒哀楽も初昔             小髙久丹子   (4点)

次の元号が気になります (昌夫)

底冷えや歯切れよき声漬物屋          嶋田夏江    (4点)

「歯切れ良き」と「漬物屋」の言葉の取り合わせが巧みで季語がよく合っていると思います。(相・恵美子)

京都盆地の事と解釈しましたが、底冷えで漬物の旨味も増し京都の漬物も有名です (昌夫)

葱刻む素顔の妻のをりて朝           松崎日記    (4点)

愛情と感謝の気持ちがとても良く現れていると思います。(孝子)

水音を消してひしめく滝氷柱          竹田正明    (3点)

「ひしめく」の言葉で極寒の様子が表現されており、引き締まった景が見えて来ます。(相・恵美子)

人の子に微笑みかけて初笑           中川手鞠    (3点)

心情が溢れています (和子)

初笑いの季語が良く効いていると思います。(孝子)

年惜しむ平成の世の鐘撞いて          内藤芳生    (3点)

茶柱の立つ日立たぬ日冬籠           荒木那智子   (3点)

大きな景ではなく、手の中のささやかな景色を詠んでいます。如何にも冬ごもりに相応しい題材だと感心いたしました。(志昴女)

茶柱にフォーカスすることで冬籠のゆったり流れる時間を感じました(律子)

凍蝶や水にうつれる翅の青           明隅礼子    (3点)

秩父夜祭極彩色の叫びかな           長濱武夫    (3点)

山車やら冬の花火やらを極彩色の叫びと表現されたことに感銘 (温子)

応仁の劫火鎮めし冬の梅            西脇はま子   (2点)

京の歴史を上手くとらえた句だと思います (光男)

みんなみに子どもを残し雪をんな        上脇立哉    (2点)

伝説上の雪をんな。暖かいところでは生きられぬゆきをんな。雪をんなの素性と悲しみを垣間見ました。(孝雄)

雪をんなにもある母性を上五中七で表現されていることに共感を覚えました。(明)

森深し寒禽のゐる水の音            明隅礼子    (2点)

裏通り拾って歩く福詣             石川由紀子   (2点)

グランドゴルフ冬日へ記すマイスコア      瀬尾柳匠    (2点)

同じ心境でした (和子)

グランドゴルフへの熱意! (宙)

晩酌一合至福の刻や去年今年          阿部 旭    (2点)

冬の蠅叩いて家の壊される           早川恵美子   (2点)

冬の蠅を叩くという行為と全く関係のない「家の壊される」の二物衝撃に驚かされました。壊された家はご自身の長年住まわれた思い出の家と思いました。動かずに叩かれる冬の蠅に作者の無念を感じました。 (武夫)

蠅を叩いて家が壊されるとは。この家は家屋?家庭?冬の蠅がよいです。(玲子)

月太るまた寒星の一つ減り           上脇立哉    (2点)

蒼穹の広く広ごる初御空            鈴木 楓    (2点)

冬ぬくし胸にひやりと聴診器          垣内孝雄    (2点)

胸にヒンヤリしたのは聴診器、あるあるです。御大事に。(玲子)

シナモンの香り”ぼっち”のクリスマス     岡崎志昴女   (2点)

シナモンの香りという心地よさ、甘さと、ぼっちのクリスマスという現代の若者の孤独の二物衝撃が佳いと思いました。今の時代を詩的に描かれた句と思います。 (武夫)

カピバラのやうな顔して長柚子湯        中村光男    (2点)

ぼろ市の暮色の街に人群るる          原 豊     (2点)

歳晩の猫にも一席祝い膳            原 豊     (2点)

いよいよ今日は大晦日。無事に一年過ぎたね~と。家族の中には猫も入る、そういう家庭ですね。(志昴女)

淑気かな子規宝塔の燦燦と           浅井貞郎    (2点)

しぐるるや鐘の絶えざる蛸薬師         西脇はま子   (2点)

心身の病気平癒を祈願して撞く蛸薬師の鐘は絶えることがない。病んでいる人のなんと多いことか!(律子)

母子のほほ笑ましい話に心が引かれます (昌夫)

花キャベツ湯気も香も真白かな         室 明     (1点)

パトカーのサイレンしきり年の暮        土田栄一    (1点)

柚子もぐや一天の碧籠に入れ          内藤芳生    (1点)

コンパスは聖書真白き冬薔薇          松崎日記    (1点)

聖書の教えに従い、冬の白薔薇のような穢れ無き晩年を生きているという句として頂きました。白き冬薔薇は作者の現在であると同時に、その理想の姿でもあるのでしょう。 (武夫)

人と会ふ大つごもりのあたたかし        荒川勢津子   (1点)

大晦日四七士が気にかかる           石川順一    (1点)

銀杏落葉天に撒きたる異邦人          佐藤律子    (1点)

スケールが大きく異邦人という言葉と銀杏の黄色がどこか響き合っているように思います(早・恵美子)

足跡さえ寂しさが有り雪の道          高橋信治    (1点)

凍てつく雪の足跡と寒さが何故かそこに一抹の侘しささえ感じる句(豊)

静かな御降り天井画は北斎           内村恭子    (1点)

北斎の龍(多分?)が季語と破調によって躍動感を増し、取り合わせも見事だと思いました。(博子)

年惜しむ大河ドラマの最終日          森野美穂    (1点)

一湾の尖る波消え春立ちぬ           かや和子    (1点)

湾港の波が静まり春のような気配を感じる。(豊)

木鉦と読経荒ぶる寒行堂            鈴木 楓    (1点)

草枯れにやたらと赤き実の一つ         片山孝子    (1点)

クリスマス楽屋口よりドレスの子        相沢恵美子   (1点)

寒晴やスマホに里の山白く           妹尾茂喜    (1点)

初空に穏やかな世や深呼吸           松山芳彦    (1点)

冬の蝶ひかりの方へ浮き上がる         佐藤博子    (1点)

冬の蝶も自然と暖かさを求めるのだろうか?(豊)

AIに負けるな一茶冬の陣             齋藤みつ子   (1点)

冬菜畑の続く道なり大覚寺           原 道代    (1点)

雀来ぬ庭の静けさ実南天            佐々 宙    (1点)

翌檜の犬猫の墓冬ぬくし            高橋紀美子   (1点)

供養墓にたいしてはどうしても厳粛な気持ちになりますが、犬猫の墓、そして翌檜の木で出来ていると言う現実を知り、事実の力が感じられると思いました。(順一)

以上

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