天為ネット句会報2020年9月

 

天為インターネット句会2020年9月分選句結果

(作者名の後ろの点は互選点)
 ※特選句、入選句内の順番は互選点、句稿番号の順。また互選句は句稿番号順に並べております。
 ※一部インターネットで表示できる文字に置き換えております。ご了承ください。

   <日原 傳編集顧問選 特選句>

長き脚もらひて立てり茄子の馬         明隅礼子

霊棚に供えられる茄子の馬。長い脚に仕立てられ、現代風だ。「もらひて立てり」という中七の措辞により、作るのを見つめているような臨場感が出た(傳)。

割り箸の脚のバランスの悪さ(ひろし)

ご先祖様たちのにこやかに集われておられる様を思い浮かべています(温子)

恭子、 道代、紀美子、玲奈、万記子、史子、三枝子

洗濯物以外はすべて秋の空           泰山木

高く澄みきった秋空のもと、たくさんの洗濯物が干されている光景が想像される。洗濯物以外はすべて秋の空だと言い放ったことで、秋高の感じを出した。言い方の妙がある(傳)。

洗濯物のそよぎと秋の空のコントラスト(ひろし)

広い秋の空に洗濯物が翻る景が見えた(柳匠)

日々の生活への賛歌。(はま子)

大胆な断定がいいと思いました。(順一)

庵主さま鬼の子に留守頼みける         今井温子

尼僧が出かけ、留守となる庵室にぶらさがる蓑虫。「鬼の子」ならば留守番役に頼めるだろうと、言葉遊びに興じた(傳)。

笑顔を絶やさない庵主さまの姿が浮かびます。鬼の子もはいはいと揺れながら返事をしているようです。(明)

玲奈

   <日原 傳編集顧問選 入選句>

水平線へ足を投げ出し三尺寝          瀬尾柳匠

水平線という語から句に大らかさが感じられて快いです。(春野)

爽快な句(泰山木)

景として砂浜を思い浮かべました。残念ながら今年はこの開放感も叶わなかったかも。(律子)

気持ちの良い三尺寝の句である。如何にもありそうな景だが、こういう三尺寝の句を初めて見た。(武夫)

勘六、万記子、久丹子、手鞠

開拓の友より豆と馬鈴薯と           土屋香誉子

届いた荷に、コロナを乗り越えるパワーをも頂いたことと想像しました。(博子)

努力が実った収穫物。それをもらった感謝の気持ちが分かります。(てつお)

日記、立哉、勢津子

しばらくはコスモスとゆく遍路道        てつお

コスモスが効いていますね (光男)

コスモスに癒され又励まされて.お遍路の足取りも軽いのではと思います。(悦子)

夏江、治美、春野、孝子

月見草軽便鉄道ありし道            中村光男

懐かしい童話の様な世界。(はま子)

1日しか咲かない月見草が、時代の移り変わりにぴったり。(典子)

茂喜

潮騒を聞きて眠りぬ神の鹿           相沢恵美子

勘六、茂喜、礼子

蕎麦の花山嶺映す池まどか           室 明

治美

反魂草色なき風に吹かれをり          鈴木 楓

三枝子

冬瓜の秀衡椀に翡翠いろ            武井悦子

夏バテしそうな時の一椀、彩りも頂く幸せ。(博子)

竹花入の真赭(まそほ)の芒静かなる      髙橋紀美子

    <互選句>

秋暑し拍手の響く甲子園            森野美穂

コロナ禍での甲子園、来年の大会を歓声で。(孝雄)

焼き上がる餃子の照りや蝉しぐれ        阿部旭

立哉

秋の蛍夜のしづけさ降る街に          木村史子

「夜のしづけさ」が良いですね。(智子)

蜩の此の世の色となりて鳴く          染葉三枝子

まるで蜩の幼虫はあの世から現世にやってきて鳴くような印象がありました。(柳匠)

此の世の色となりて、の表現に感銘を受けました。(美穂)

夕暮れ時に、音が色になる(耕)。

悦子

啄木鳥や茜の森を鳴きわたる          森山ユリ子

茂喜

菜園に小さき如雨露のある晩夏         内村恭子

真夏も過ぎ菜園の水遣りも落ち着いて来ました、小さき如雨露が可愛いです。(孝子)

日記

月影に浮かぶ漁舟や十三湖           竹田正明

きれいな句ですね。(芳生)

季語がぴったりで静かな景が見えてきます。(相・恵美子)

眞登美

極楽寺出で娑婆世界かき氷           中村光男

坂の多い鎌倉、極楽寺とかき氷がぴったりです。(玲子)

稲妻や本編しのぐ予告編            内村恭子

予告編だけで、瞬時に心を鷲づかみにされた感じでしょうか。(律子)

本編しのぐ予告編とは面白いです。(玲子)

続編ゼッタイ見たくなります!(早・恵美子)

一瞬の稲妻が簡潔な予告編を思わせたところが面白いと思いました。(匠子)

由紀子

ひとりならストレスフリー鰯雲         三好万記子

ひとりはストレスなくても寂しいですね。ゆうゆうと鰯雲があってると思います(みつ子)

香誉子

胡瓜齧る少し風来る川辺なり          上脇立哉

胡瓜の瑞々しさ、そして涼を感じる句だと思いました。(美穂)

恭子

秋ほたる吾と同じよ病み上がり         原 豊

道代

最後まで百折不撓秋深し            齋藤みつ子

自分に言い聞かせている感じがします。「秋深し」が微妙な感じです(眞登美)。

蟬時雨人つ子一人見えぬ村           内藤芳生

経験がありますが蝉時雨の中にいると自分以外誰もいないような感覚があります(柳匠)

太陽が照り付ける、真夏の昼間の景色ですね。(春野)

夏江、勘六

炎昼や進みの遅き万歩計            龍野ひろし

確かに今年は万歩計も進まなかったでしょう (光男)

手鞠

天城越えループ橋より秋の虹          今井温子

山を根にループ橋をまたいで大きな秋の虹。美しい情景に私もいつも感動します。(ユリ子)

国境は知らぬことぞと鰯雲           武井典子

秋茄子やメインディッシュを凌駕する      石川順一

「凌駕」と大げさに言ったことで、秋茄子が一層美味しそうです。(典子)

赤とんぼ姉追ひ歩く子の胸に          佐藤博子

姉の後を追いかけて行く妹の姿が浮かんできます、赤とんぼも一緒になって、ほほえましい一句となりました季語「赤とんぼ」が生き生きとしています、(貞郎)

香誉子

陋巷の残る暑さや縄のれん           山口眞登美

手鞠、楓

秋暑しひかり微塵の水面かな          佐藤博子

箱鮨の市松模様京の華             山根眞五

綺麗な句です (光男)

黍嵐テイクアウトの朱き旗           長濱武夫

写実に徹しているのがいいと思いました。(順一)

ポシェットにユーロの小銭八月尽        森山ユリ子

偶然見つけたユーロの小銭、何もなかったら今年もヨーロッパに行ってたのに…(匠子)

とうとう八月も行けなかった。世界はどう変わるのでしょうか?(博子)

紀美子、 旭、万記子、立哉

鳴き分くるすべ持ち居らず蟬時雨        上脇立哉

確かにどの蟬も没個性的な啼き方、、、(志昴女)

湯上りの襟足に風夢二の忌           武井典子

史子、芳彦、芳生、眞登美

露けしや疫病前にありし日々          中川手鞠

コロナで生活が一変してしまった今、以前の生活を懐かしんでいる。誰もがそうであると思います。(相・恵美子)

長明も兼好もゐる虫の闇            鹿目勘六

虫の闇の言葉がしっくり来る句だと感じました。(美穂)

虫の音に賢者を思う作者。生き方が見えてきます。(ユリ子)

作者の心が捉えた虫の闇。(はま子)

礼子、正明、那智子

炎天や銀の土管の吊られゆく          明隅礼子

炎昼のやりきれない不安感(泰山木)

実景をリアルに捉えていて炎天が効いています。(相・恵美子)

天高し己が足吸ふ赤ん坊            中川手鞠

赤ちゃん!の足しゃぶり。すくすくと育ってほしい。希望に満ちた季語だと思います。(志昴女)

天高し健やかに育っている様子が見えます。(玲子)

旭 、由紀子、那智子、日記、芳彦

我が家には我がもの顔のヤモリの子       嶋田夏江

濃(こ)みどりの岡に眩しき白鷺城       土田栄一

季語「緑」と白鷺城の「白」の取り合わせが素晴らしいと思います「眩しき」が効いています、(貞郎)

濃い緑とお城との対比が美しいですね。(智子)

抗体は母から貰ふ吾亦紅            松山芳彦

抗体と吾亦紅に関係がありそうで無関係のようで。「毋から貰ふ」と言い切っているのがいいと思いました。(匠子)

新生児は母からの抗体で守られるといいます。自然の不思議な力を思います。季語が効いていると思います。(明)

「吾亦紅」の字ずらが抗体のある血液、また「貰ふ」とも呼応していて面白い。(典子)

抗体という堅い言葉が吾亦紅と響き合って昇華されて上手(早・恵美子)

少女らはひらりひらりと夏の蝶         加茂 智子

迷いのなく意のままに「ひらひらと」、やがて秋から冬、「夏」はまさしく少女期である。(孝雄)

百合の花宥めて活けて自粛の日         片山孝子

香誉子

反動をつけて一歩や小かまきり         土屋香誉子

子かまきりが目の前にいるようです。(てつお)

久丹子、道代、礼子

ウィズコロナ日傘は黒と定まりぬ        土屋 尚

正明

週一の移動図書館群とんぼ           石川由紀子

移動図書館を利用していた頃を思い出します、ゆったりした感じと群とんぼが合っていると思います。(夏江)

田舎にゆくと移動図書館はまだまだ現役だ。群とんぼで景が見えるが、群れているのはとんぼだけではなく、移動図書館を楽しみにしている村人も見える。(武夫)

子供たちが嬉しそうに集まってくる光景が「群とんぼ」から伝わります。(明)

待ち遠しい移動図書館と群れて飛ぶ蜻蛉たちわくわくしてきました(温子)

トンボも本を読みに群がったのかもしれません。(順一)

三枝子

むらさきの花の零るる真葛原          荒川勢津子

地球儀に赤き日本や雁渡し           西脇はま子

地球儀を見ると小さな赤が日本を象徴しているがいいと思います(みつ子)

正明

むかご飯母ほろほろと泣き給ふ         岡崎志昴女

ご母堂にはむかご飯の切ない思い出があるのであろう。泣き給ふという俳句では見慣れぬ言葉から、作者の優しい気持ちが伝わって来る。(武夫)

十一時二分時の止まるや長崎忌         龍野ひろし

那智子

帰省子は同じ話に頷けり            加茂 智子

子供達か孫達か、お盆でしょうか、帰省して頷き合っている様子が目に浮かび良く分かります。(孝子)

コスモスやチンカラとくるロバのパン      てつお

ロバのパン屋さん、懐かしい限りである。コスモスも少年期に私を優しく誘う。(孝雄)

絵本の世界というかハイジの邑を思いました。(早・恵美子)

妖しさのヒマラヤ罌粟の碧さかな        斎川玲奈

芳生

掌に水ごと載せて新豆腐            相沢恵美子

手の中に水ごとがいかにも新豆腐おいしそう(みつ子)

豆腐屋さんが掬った豆腐から零れ落ちる水のシーンが浮かぶ(ひろし)

この新豆腐は旨そうだ(泰山木)

掌の水もきっとおいしい水に違いないと思いました。(律子)

豆腐のみずみずしさが伝わります。(てつお)

新豆腐が水の中で揺れているさまに清涼感があります。(悦子)

恭子、久丹子、史子、紀美子、玲奈、由紀子、尚、温子、耕

もちの木の落葉に重み秋初め          山口眞登美

秋の訪れを、感じます。(智子)

芳彦

透きとほる茗荷の花や雨去りて         野口日記

治美

水揚げの少なきセリや秋暑し          泰山木

多分サンマの水揚げが少ないことを詠んだ句だと思います、それにしてもサンマは何処へ行ってしまったのでしょう、(貞郎)

勢津子

奥津域に置かれ越後の新走           早川恵美子

勢津子

秋潮や残る瓦礫に僧ひとり           原 道代

今も瓦礫が残る東日本大震災のことを思いました。祈りはお坊さんに相応しい。八月はほかにも祈ることが多い月です。(志昴女)

まだ「傷み」を残す秋の浜辺に僧ひとり立つ。伝わってくるものがあります。(ユリ子)

以上

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