天為ネット句会報2021年3月

 

天為インターネット句会2021年3月分選句結果

 ※特選句、入選句内の順番は互選点(選句者名を記載しています)、句稿番号の順。
  また互選句は句稿番号順に並べております。
 ※一部インターネットで表示できる文字に置き換えております。ご了承ください。

   <日原 傳編集顧問選 特選句>

菜の花や南部片富士青みたる          荒木那智子

南部片富士」は盛岡市の北西部にそびえる標高二〇三八メートルの岩手山をいう。県内の最高峰。「岩手富士」「南部富士」の呼称があり、南方から眺めて左右非対称をなすことから「南部片富士」とも呼ばれる。掲句は菜の花の黄色と岩手山の青という色彩に焦点を当てた作だが、片富士の「片」という字によって不均衡な山の姿も読み手に印象づける。岩手出身の青邨先生にも〈蕗の薹傾く南部富士もまた〉の句がある(傳)。

旭、玲子、悦子、礼子

花ミモザ村の広場の時の鐘           武井典子

村の中心に広場があり、そこに立つ教会の鐘が鳴って村人に時を知らせる、といった欧州の村落の暮らしを想像した。冒頭に置かれた「花ミモザ」の明るい黄色のイメージが一句全体を支配している。ミモザはオーストラリア原産の常緑高木。切り花用の栽培が南フランスで盛んだという(傳)。

春を迎える喜びが、小さな・鄙びた村中に響き渡っています。(憲史)

聖鐘でしょうか。ヨーロッパの村の感じが致します(早・恵美子)

こんな春の広場に居合わせたことがある、と思いました。(ユリ子)

花ミモザ満開の広場で、春祭りでも始まりそうです。懐かしい景。(博子)

  <日原 傳編集顧問選 入選句>

春泥を来て少年の弾む息            てつお

「弾む息」に少年が際立つ。(孝雄)

少年の弾む息に春を迎えた喜びが凝縮されていると感じました(柳匠)

早春の息吹を感じ、若々しい気持ちと、元気を頂けました。(美穂)

紀美子、匠子、史子、玲奈

漬け丼の醤の甘し島の春            内村恭子

「醤の甘し」に作者の見立が活きる。(孝雄)

どこの島でしょう?新鮮な魚に甘めの醤、食欲がそそられます(律子)

正治、眞登美、那智子

春の雪合掌造りに灯の入りて          阿部 旭

一枚の絵を見ているよう。春の雪で明るさが出ています。(佳久子)

白川郷の雪景色をおもいだします、夜明かりが灯った四角い窓が印象的ですね、(貞郎)

典子、勘六

珈琲の香る窓辺の風信子            鈴木 楓

風信子の季語の斡旋が素晴らしい。(光男)

穏やかな昼下りの様子が浮かびます。(智子)

夏江、旭

すれ違う猫の流し目桜草            今井温子

優美な猫の仕草・・、桜草、で、猫の背丈、目線も思い浮かべることが出来ると感じました。(美穂)

典子、手鞠

海峡に水脈ひく渡船風光る           嶋田夏江

水脈をひき明るい陽光の中を行く渡船、きらきらとした光まで見えるようです(律子)

春の訪れを感じます、季語「風ひかる」が良いですね(貞郎)

蒲公英に保線区の昼しづかなり         上脇立哉

季語の斡旋が素晴らしい。(光男)

百り子

春宵やルネラリックの透彫           髙橋紀美子

眞登美、玲奈

ハモニカで吹く讃美歌や鳥雲に         西脇はま子

野に出でてハモニカで讃美歌を・・・いいですね。(佳久子)

由紀子

白梅や会葬終えし靴の音            野口日記

告別式の帰り皆無言ですね、靴音だけが響きます。(孝子)

まんさくの花の発条緩みたる          小栗百り子

由紀子

疫病の地球をおほふ彼岸かな          土屋 尚

疫病が地球を覆っていると言っても過言ではない。お彼岸も来たのに。(芳彦)

雛透く懐紙に京の有平糖            髙橋紀美子

匠子、玲奈

麗らかや白寿の句集賜りて           森山ユリ子

木の根開く墨書の報せ届きけり         瀬尾柳匠

復元の遺跡に遊ぶ花菜風            小石日和

初島やゆらりと寒の蜃気楼           斎川玲奈


春寒料峭赤子を抱くゴリラの背         鈴木 楓


    <互 選 句>

いちどきに椿と梅の藁屋かな          山口眞登美

ひじき煮る夜の寂しさぼたん雪         瀬尾柳匠

静かに降る牡丹雪、ひじきを煮ている夜、実感として良く伝わります。(孝子)

風を待つ湊小路の雛かな            合田智子

船を迎えては送り出す港町に代々受け継がれている雛人形。小路に生活感があります。(ゆかり)



肩書を外すベンチに亀鳴けり          野口日記

香誉子

幼子と話すも正座梅真白            土屋香誉子

「梅真白」に背筋の伸びた大人の矜持を感じます。(ゆかり)

恭子、礼子

ももんがのまなこはルビー春の雪        熊谷佳久子

「ルビーのまなこ」が印象深く浮き上がってきます。(ユリ子)

正治

魚は氷に声変りの子の頼もしき         永井玲子

季語『魚は氷に上る」と子供の成長を取り合わせたのが面白い(貞郎)

那智子、玲奈

城址や群れゐて淋し一花草           室 明

一花草により城址のはかなさがより感じさせられました。(道代)

群れて咲いているもののどこか淋しげな一輪草、一花草と表されたのも淋しさが増していいと思います(律子)



朝摘みにレシビを添へて蕗の薹         荒川勢津子

日記

叶ふなら翼の欲しき絵踏かな          木村史子

キリスト教弾圧の悲しい出来事 "翼が欲しい" 本当にそう思う。(智子)

道代

泛かばれぬ種こそ命土に置く          早川恵美子

泛ばれぬ種こそ大切な命である。土に置いてあげなさい。と言っている。泛ばれぬ種には生命力あると、人間世界も同じ。(芳彦)

古来より風の名あまた春北風          竹田正明

風の名を検索してみたく思いました。下5の季語も決まっていると思いました。(順一)

谷みちのところどころのあたたかさ       鉄谷 耕

ほとんどひらがなで道の暖かな場所の柔らかな空気が感じられます。(春野)

立哉、尚

少年に後悔のある余寒かな           佐藤律子

若気の至りか?でも再起の機会はある。(眞五)

『後悔のない人生なんてない。後悔して反省して明日へそっと踏み出す。』もし少年が後悔に胸を痛めていたら肩に手を掛けそんな風に優しく慰めたい。余寒とよく響いていると思う。(万記子)

泰山木

古式なる百歳の雛母憶ふ            武井悦子  

勢津子

千手観音千手に桜吹雪かな           西脇はま子

豪華な景ですね(芳生)

恭子

学舎より「パプリカ」のうた春兆す       原 道代

悦子

新造船の出帆の銅鑼風光る           合田憲史

鳴り響いている銅鑼の音が聞こえて来るようです。新造船の出帆は港が明るくなりよいものですね。(相・恵美子)

ミモザ咲く岬日和やハーレーダビツドソン    三好万記子

ハーレーのサイドカーに奥様を乗せ、ツーリングしていた老夫婦を思い出しました。「岬のミモザ」で物語が広がります。(博子)

牡丹の芽昔刑事の優しき眼           金子正治

眞吾

野仏の小道うららか風を生む          合田智子

「風を生む」に読みができあがる。(孝雄)

治美

銀の匙いつしか曇り子は卒業          中川手鞠

一歩踏み出す我が子への期待・喜びに溢れるなか、一抹の感傷(いつしか曇り~この表現)が滲み出ています。(憲史)

はま子、礼子

FMに周波をあわせ春の耕            永井玲子

くるくると周波をあわせて苦労して聴いたラジオ。今はスマホでポン。余情ある残したい風景です。(万記子)

勢津子、勘六、匠子

風光る路面電車の走る街            荒木那智子

地方都市だろうか。ゆったりとした街のたたずまいが風光るという措辞で感じられる。(光男)

今時珍しい路面電車。上5の季語と合っていると思いました。(順一)

春野、典子

師の影や白梅匂う増上寺            小栗百り子

東京例会の後、増上寺側のホテルへ向かう先生のお姿を思い出します。(手鞠)

尚、悦子

妻と子のレンズはみ出し卒業す         酔猿

はま子

漕ぎ出でてかくも高きに古巣かな        明隅礼子

啓蟄や深き眠りの蝦夷の山           熊谷佳久子

深き眠りと蝦夷があってると思います(みつ子)

菜の花や補助輪なしの四歳児          石川由紀子

補助輪なしでやっと乗れるようになった様が菜の花とあってると思います(みつ子)

広い河川敷で自転車(四歳になりようやく補助輪を取り!)を漕ぐ我が子に、土手の斜面の真黄色な菜の花が応援してくれています。(憲史)

啓蟄や歳尋ね合ふ三歳児            小石日和

幼い児が互いに年を尋ねあっているところがよいです。季語が効いています。(相・恵美子)

日記

凍返る川面震えるビルの影           児島春野

さざ波に揺れるビル影、コロナ禍に苦しむ人の存在を感じ気になる一句でした。(博子)

摘草や芹の香りの嫌ひな子           中川手鞠

芹の香は子供にはまだ少し早いかも知れませんね。そのうち、きっと好きになるでしょう。(てつお)

啓蟄やいよいよ動く旅ごころ          片山孝子

真に同感です。(眞五)

芳生

料峭や土管遊びの日の遥か           内村恭子

はま子

またひとつ雛の道具の笛失せて         芥ゆかり

古くから伝わる雛の道具の笛がまた見えなくなったとの表現に大切に残されていたひひなへの愛情が伝わりました(柳匠)

恭子

猫に抱かれ眠る今夜は春寒し          齋藤みつ子

道代

叡山の影を揺らして鳥雲に           竹田正明

叡山の雄大な景色が見えて来る。(芳彦)

比叡山の雄大さと鳥雲のマッチがいいと思います(みつ子)

山影を揺らす大きな景がひろがります。(智子)

筑紫次郎天草四郎鯥五郎            山根眞五

有馬先生がお好きな鯥五郎を筑紫二郎、天草四郎から導いてとても楽しい句になっています。九州生まれの私も嬉しくなりました。(明)

九州そろいぶみ、ことばあそびですね(夏江)

尚、玲子

冬麗の山冬麗の里の上             鹿目 勘六

スケールの大きい句ですね。(泰山木)

澄み切った里の風景がみえてきました。里も山もキラキラ輝いています。(明)

神坐す不二へ漕ぎだす半仙戯          佐藤博子

ぶらんこのかなたの富士山が見えるようでした(柳匠)

二十まで数へつ摘みし蕗の薹          榑林匠子

蕗の薹がたくさん生えている場所があるのですね、私も行きたいです。(春野)

雪どけの水やはらかに注ぎをり         嶋田夏江

蕗の薹摘みし手の香を惜しみけり        てつお

早春の季節感あふれる句だとおもいました(夏江)

春光やステンドグラス彩散らす         森山ユリ子

治美

頭上より光の如き初音かな           浅井貞郎

初音の澄んだ響きに思わず仰ぎ見た空。聴覚、視覚のどちらをも楽しませてくれた初音だったのですね。(明)

手鞠、芳生

空遠きビル街に咲く辛夷かな          上脇立哉

ビル街に咲く辛夷ですね、空遠きがコロナ禍を反映しているようにも思えました。(孝子)

空を遠くに咲く辛夷の花は白く美しい。ビル街のイメージを変える。(ユリ子)

香誉子

地虫出づ邪馬台国は何処なり          中村光男

私も邪馬台国はどこかなぁとずっと思って・・温かいユーモアを感じました。(美穂)

土産屋のバケツに栄螺呟けり          相沢恵美子

正治

駆けてくる子を抱き上げて桃の花        森野美穂

桃の花で母親の優しさが出ていました。(佳久子)

動きがあって、最後の静止の桃の花でまとまっています。桃の花に納得感があります。(眞登美)

紅い頬で駆け寄る子を抱き上げて見る桃の花はまた格別でしょう。(てつお)

幸せな一瞬の動と静。桃の花の季語が際立っています。(博子)

人類に逃げる場のなし涅槃西風         土屋 尚

コロナ禍の事と思い同感です。季語が語っているように感じます(百り子)

勢津子、由紀子

海光に眩き白衣島四国             合田憲史

遍路さんの白衣が海が光を返す中にいっそう輝いて見える景色です。(百り子)

柚子の黄をもぎ尽くしたる峡の空        内藤芳生

もぎ尽くすのだから山間の柚子どころか。収穫の労の後の清々しさを感じます。(ゆかり)

もぎ尽くした後も、眼裏にはまだはっきりと柚子の黄色が残っているのでしょう。(てつお)

玲子、紀美子、史子

はれよりもくもり日好み古雛          佐藤律子

仮名書きの柔らかさを感じました(耕)

治美、立哉、香誉子

太陽に踏みだす一歩犬ふぐり          佐藤博子

太陽に踏み出したのは犬ふぐりでしょうか。『小さな僕には小さな陽射しで十分です。』なんて言わず太陽をぐっと見上げて歩みだしたのだろうか。そんな幻想を抱いた。(万記子)

太陽に踏み出すの表現で家籠りの生活が伺われます。犬ふぐりが新鮮で景が明るくなります。(相・恵美子)

天地の逆転を思いました。面白い発想かと。(順一)

紀美子、早・恵美子

留袖の和語やはらかに春の雪          金子正治

日記

麗日や上海よりの古き文            窪田治美

季語の使い方が上手です (早・恵美子)

啓蟄や戯画から出でし鳥獣           中村光男

春の陽気で鳥獣戯画の鳥たちまで浮かれ出てきたというのが面白い。(泰山木)

勘六、那智子

肩書を外すベンチに亀鳴けり          野口日記

立哉

                         以上

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