天為ネット句会報2017年11月

 

天為インターネット句会2017年11月分選句結果

(作者名の後ろの点は互選点)
 ※特選句、入選句内の順番は互選点、句稿番号の順。また互選句は高点句から順に、同点句は句稿番号順に並べました。
 ※一部インターネットで表示できる文字に置き換えております。ご了承ください。

<日原 傳 編集顧問選 特選句>

玄海の星の斑入りや寒鰈            早川恵美子   (8点)

玄界灘は福岡県の西北に位置する海域。冬は北西の季節風が強く、荒れることも多い。掲句は、その海で獲れた寒鰈の模様に焦点を当て、ロマンチックに詠いあげた。「玄界」という固有名詞の「玄」という字も働いている(傳)。

星が鰈についてるなんて、美しい表現ですね!感心しました。それに、美味しそう、、、(志昴女)

寒の鰈は美味です。玄海灘の潮に洗われた黒光りする背の模様を中七で表現されたところに感心いたしました。(明)

玄海の星の斑が入っているなんて、美しくてとてもおいしそうです。(泰子)

秋茄子の陽のぬくもりを収穫す         嶋田夏江    (5点)

秋茄子をもいだ時に、ぬくもりを感じたというのである。秋日がよく当たっていたのであろう。澄みゆく秋気のなかでのちいさな気付きを一句に仕立てた(傳)。

良く晴れた日には大きくなった秋茄子も温まっているのでしょう。秋の陽射しを感じます。(志昴女)

<日原 傳 編集顧問選 入選句>

面打ちの鑿研ぎ澄ます小六月          石川由紀子   (6点)

アートな題材をアートな措辞、取合せで効果を発揮。(仁)

小六月に面打ちの鑿を研ぎ澄ますとは如何にも秋らしい。(芳彦)

季語のほうは穏やかな季節を表現していますが、中の句は厳しい精進を表現。面打ち師の表情が見える気がしました。(志昴女)

蔀戸や釘一本の冬支度             小野恭子    (4点)

蔀戸を上げたり下ろしたりすることで、明暗、寒暖を上手に操る昔の人々の知恵に脱帽です。中七の措辞に感心いたしました。(明)

小鳥来る蓑虫庵の三冊子            荒木那智子   (3点)

「蓑虫庵」は芭蕉の門弟・服部土芳の草庵。芭蕉が贈った句〈みの虫の音を聞きに来よ草の庵〉が名の由来。土芳が芭蕉の遺語を集めて『白冊子』『赤冊子』『黒冊子』をまとめたが、その評判を聞いて小鳥たちも山から下りて来たのだろう。(茂喜)

菊日和飴職人は指紋失せ            西脇はま子   (2点)

菊人形展等に出店している飴屋さん、指先で色とりどりの細工物を作り出していく。だが、指紋がすり減ってしまっている。生業とは厳しいものだ。(勘六)

さざんくわや牧師の妻の丸眼鏡         西脇はま子   (2点)

滾りたる鉄瓶の音や亥の子餅          武井悦子    (1点)

伊賀焼のぬくみ黄葉のぬくみかな        荒木那智子   (1点)

温かな日だまりにいるような気分になります。(智子)

鰯雲四肢を伸ばして猫眠る           佐藤博子    (1点)

口切やまたひととせのことを言ひ        松浦泰子

<互選句>

風呂敷は一枚の布文化の日           安藤小夜子   (8点)

風呂敷一枚あれば、どんなものでも包むことが出来る立派な日本文化だ。(勘六)

見事、文化の日にふさわしい句ですね(夏江)

風呂敷の包み方は、日本人の細やかな気配りを表現するものである。文化の日と風呂敷の取り合わせで、日本の文化を言い表したことに感激しました。(富江)
季語が見事です。古くからあるこの文化を大切にしたいものです。(明)

円環のケルト十字架夜半の月          髙橋紀美子   (5点)

円環状のケルトの十字架がある。これに夜半の月が照らしている。詩的であると思います。(芳彦)

神秘的な光景ですね。(智子)

月光を掬ひ集めて観覧車            佐藤博子    (5点)

「掬ひ集めて」の表現が面白いと思います。(相・恵美子)

観覧車をこのように言った句は初めて見ました。中七の表現にもたつく感はありますが、「掬ふ」と言ったことで観覧車の動きが見えてきて、妙に納得させられた句です。(有紀子)

月光に照らされ、夜空に浮かび上がる観覧車が幻想的。「掬い集めて」の表現が新鮮(ユリ子)

秋の夜に人も乗せずに、ゆっくり回る観覧車は月光を掬っているのでしょう。空想が広がります。(泰子)

烏瓜引けばお伽の国の道            中村光男    (5点)

末枯の野山に烏瓜を見つけると本当におとぎの國にいる様な気持ちになりますね。(相・恵美子)

メルヘンの句、蔓を辿ったら本当にお伽国が見つかるかも知れません。(豊)

思いがけず見付けた小道でしょうか。(智子)

芭蕉忌の枯野の雨の降りしきる         鈴木 楓    (4点)

芭蕉忌と枯野が合ってますね(みつ子)

冬帽子寡黙な父に似て寡黙           中川手鞠    (4点)

重厚な感じの冬帽子、そして沈黙は金と教えられて育って来た漢達。今の世、親父ギャグを連発する軽佻浮薄の男が余りにも多くなってしまった。(勘六)

時雨るるや糸の通らぬ針の穴          鹿目勘六    (4点)

天主堂の片仮名オラショ露けしや        室 明     (3点)

秋冷や北京原人住みし洞            内村恭子    (3点)

北京原人が生活していた様子が想像されます。秋冷の季語も相応しいと思います。(相・恵美子)

木枯一号箒の魔女が宙を舞ふ          中川手鞠    (3点)

コスモスも一緒に背伸びして揺れる       安藤小夜子   (3点)

背伸びの感じがコスモスにピッタリです(早・恵美子)

コスモスの擬人化が面白いです。色んな事が想像できて楽しい句。(博子)

ユトリロの路地の白壁秋の風          森山ユリ子   (3点)

ユトリロの絵にある路地の白い壁に秋の風が吹いている。「今は秋だなあ」と感じたところが良いと思う。(芳彦)

神在す方へ案山子の倒れけり          明隅礼子    (3点)

案山子さんも神様を見送っていらっしゃるのですね。素敵な把握です(早・恵美子)

吹き抜けて色なき風や葛橋           小橋柳絮    (3点)

使わざる二階二間の障子貼る          片山孝子    (3点)

二階から人影が消えたのはいつ、なぜ部屋を出たのだろう。就職、転勤、結婚はたまた入院…。長き不在から戻る人を迎えるため、障子を張り替えて待つ喜びがある。(茂喜)

手のひらに輝かせ切る新豆腐          満井久子    (2点)

吊り柿の縄目に掛かる夕日かな         内藤芳生    (2点)

縄目にフォーカスされた視線が新鮮で美しい(ユリ子)

新麹ふつふつ五島の酒造蔵           室 明     (2点)

清らかに揺れ賽の目の新豆腐          杉美春     (2点)

手のひらで真白くふるふると揺れている新豆腐が見えるようです。(泰子)

テレビ消し妻と語りし夜長かな         土田栄一    (2点)

水澄むや運河明かりの蔵屋敷          竹田正明    (2点)

歴史の醸す深み、叙情をしっかり捉えています。(仁)

倒木の朽つる樹洞に冬の蝶           松山芳彦    (2点)

身に入むや小さき港の海豚漁          土屋香誉子   (1点)

命を頂いて生きていることを考えさせられた句です。(博子)

白雲の流るる方へ下り鮎            竹田正明    (1点)

鳴き龍を聞きにゆきたる霧の道         明隅礼子    (1点)

「き」の音の軽快さに、霧の中にいる不安さよりワクワク感を想起しました。(博子)

鋤焼や食べられないとメール来る        岩川富江    (1点)

現代子らしい表現メールで笑える句(豊)

孫の手で背中掻く夜の雨月かな         佐藤武代    (1点)

朝霧の宿の目覚めやビートルズ         原 道代    (1点)

木犀の香を立てて行く夜のヒール        杉 美春    (1点)

ヒールの靴音が醸す(香り、風、音、季節、等)隠れた表情がヒールの中に表現されている。(豊)

帰り花音なき雨の天竜寺            内藤芳生    (1点)

放課後を告げるチャイムや秋暑し        瀬尾 柳匠   (1点)

上五中七がノスタルジックな詩空間に誘ってくれます。(仁)

『うぶけや』の刃先の切れや十三夜       佐藤律子    (1点)

「うぶけや」は、東京日本橋にある老舗で、うぶ毛でも剃れる包物というのが店名の由来らしい。その切れの良い刃先で満月を削って後の月とした、というのがおもしろい。(茂喜)

秋うらら辻の巡査の長電話           渡部有紀子   (1点)

マグダラのマリアの涕銀河濃し         松山芳彦    (1点)

散紅葉右岸左岸へ日の移り           今井温子    (1点)

彗星の尻尾のやうな花芒            和田 仁    (1点)

老い長けて食細きかな走り蕎麦         諸中一光    (1点)

高天原の空を仰ぐや曼殊沙華          原 道代    (1点)

ゲルニカの青き馬冴ゆカタルーニャ       髙橋紀美子   (1点)

ゲルニカの絵もカタルーニャで観ると感動ひとしおと思います。(ユリ子)

銀杏散るクリムトの絵の中に散る        鈴木 楓    (1点)

山紅葉風を操り舞ふ自由            原 豊     (1点)

風と自由いいです(みつ子)

太鼓橋一文字橋紅葉晴れ            今井温子    (1点)

竹の春陽の燦燦と過疎の村           満井久子    (1点)

紅葉の山又山の甲州路             土田栄一    (1点)

般若湯そふる箱膳月の雨            小野恭子    (1点)

栗を剥く雨の一日過ぎてゆく          嶋田夏江    (1点)

笛吹けば笛で応ふる星今宵           和田 仁    (1点)

小鳥来る屋上の小さき遊園地          石川由紀子   (1点)

白雲の流るる方へ下り鮎            竹田正明    (1点)

正面に雲まとふ富士暮の秋           相沢恵美子   (1点)

玄奘将来大般若経時雨月            岡崎志昴女   (1点)

以上

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