ネット句会報2013年6月

 

天為インターネット句会2013年6月分選句結果 (作者名の後ろの点は互選点)
 ※特選句、入選句内の順番は句稿番号順。また互選句は高点句から順に、同点句は句稿番号順に並べました。

<有馬主宰選特選句>
星満ちて闘牛冷やす奄美かな  西野編人  (12点)

直感的に、この闘牛は観光用でも、娯楽のそれでもないと思った。牛と牛を闘わせて強い牛を作り、その強い遺伝子を後世に残してゆくためのものであろうと想像する。その島の上には普遍的な星空が広がっている風土性豊かな佳句である。(渭水)

大変ゆったりとした句だと思いました。(美代子)

清々しい句ですね。(和男)

一読癒される句です(白蜂)

闘牛冷やすが凄まじい戦いだった様子が出てます、でも星満ちてがなんとも言えない清清しさが感じます。 (昭信)

闘牛冷やす・・・がいかにも奄美 (佐和)

勇壮な奄美の闘牛、戦い終えた闘牛を丁寧に愛情を込めて、満天の星の下で洗う水音、闘牛の労をねぎらう飼い主の優しい声、それに答えるかのような闘牛の息づかいが聞えてくるようです。(敦子)

 

月満ちて森より海へ蟹の道  伊是名白蜂  (7点)

満月の夜に南の島では、マングローブの林から夥しい数の蟹が産卵のために海へ向かって大移動するということを聞いたことがある。掲句はこの鑑賞文そのものである。ちなみに、我が足摺岬では、満月の夜にサンゴの産卵が見られる。(渭水)

生きものの行動には月も星も潮の満ち引きも何らかが作用している。月満ちてがお上手。(大久子)

夥しい蟹の行軍 テレビで見た事ある 自然界の神秘 月満ちて・・に言い尽くされてる (佐和)

マングローブの生い茂る森から月の満ち欠けで蟹が移動するというような景を想像します。大景とディテールがうまく表現された佳句。(閑生)

 

ユトリロの白に始まる更衣  安田孝子  (2点)

ユトリロの詩情あふれる風景画、小路、教会、運河等の壁の白が印象的その静謐さ、白に始まる更衣、夏の始まりは白ですね!(文)

 

<有馬主宰選入選句>
絵を売る灯置くアカシアの散る街路  關根文彦  (1点)

散り敷く白いアカシアの花に、画家の灯す光が映えて美しい (ユリ子)

 

三十階にひとつ灯ともるリラの街  大澤久子  (1点)

ビルや高層マンションからこぼれて来る灯り。中七が良いですね。(和男)

 

石走る水に立夏の響きあり  内藤芳生  (1点)

石の上を流れる水音は心地良く、立夏となれば尚更のことでしょう。(正明)

 

朦朧の汨羅の淵や露涼し  西野編人

 

<互選句>
一八や和紙で括りし巫女の髪  津久井紀代  (7点)

巫女の黒髪の艶まで感じる括りの和紙、一八がまた美しい。(輿志子)

どちらの神社でしょうか。一八の紫、巫女の白衣と緋袴、黒髪を束ねている白い和紙と紅白の水引、それぞれの色彩の美しさが浮かび、巫女舞、神楽の音まで聞えてくるようです。(敦子)

 

柿若葉眩し一人に余る家  荒川勢津子  (7点)

「眩しくが光り、余るが溢れ」詩情豊かな素晴らしい句と思います。(強)

この家には かつて家族の明け暮れがあった。子供たちは巣立ち 連れ合いも 今はもういない。一人の家には広すぎるほどの家の庭に柿若葉が眩しい、孤独を詠んで暗くないのが嬉しい(かをるこ)

 

真白き帆 立夏の風をとらへけり  石川渭水  (6点)

季語立夏の風が良いですね、(貞郎)

白い帆がいっぱいにふくらみ、夏が来た喜びと爽やかさを感ずる句。(ユリ子)

 

青山椒摘めば風湧く籠の中  竹田正明  (6点)

青山椒のあのさわやかな香りを”風“に表現、感心しました。(美代子)

 

どの亀が鳴くかしらんと突いてみる  芳賀赳夫  (5点)

俳句のあそびこごろもここまでくるとホンモノ。(紀代)

突かれた亀はしぶしぶ鳴くかもしれないなー(貞郎)

 

わんぱくのすぐに横向く夏帽子  土屋香誉子  (5点)

腕白坊主は帽子を横にかぶり又すぐすねる様子が目に見えるようです。(みつ子)

すねた子供に夏帽子と持ってきたところが上手いと思いました。(赳夫)

夏にはわんぱくの気をそそる虫や生き物がたくさん出てくる、大人の言うことなど聞かずにあちこちに好奇心いっぱいの目を向けている子どもの姿が目に浮かび微笑ましい(美春)

 

空港に身軽き僧の素足かな  江原文  (5点)

森澄雄の「炎天より僧ひとり乗り岐阜羽島」によく似ているようにも見えるが、実は似て非なるものだと思えるのが、「素足」を発見したところにある。これによって空港と僧という異質な素材が見事に俳味を以て融合されるのである。(渭水)

青い目の禅僧を空港でお見かけした事を思い出しました。(温子)

オレンジ色の僧衣にサンダル履きのお坊さんが空港のロビーを歩いている様子が見える(美春)

青々とした坊主頭の若いお坊さんが素足、身軽ないでたちで飛行機でお勤めに行くというような景でしょうか。初夏の爽やかさを感じます。(閑生)

「空港」との取り合わせが面白い。(和弥)

 

決闘の島をひた打つ青葉潮  伊藤高甫  (5点)

巌流島に寄せる青葉潮。ひたうつの表現に決闘を想像。(編人)

 

アブサンの色のアンニュイ巴里暮春  三宮隆宏  (4点)

アブサンとアンニュイはつき過ぎ。(朗人先生

パリの暮春の感じ。(紀代)

巴里暮の春のアンニュイをアブサンの色洒落ている。(芳彦)

 

夏に入る水郷古鎮陶の笛  鈴木楓  (4点)

陶の笛の音が聞えてくるようです、美しさを感じます   (輿志子)

水郷古鎮は上海に近い古い巷、水郷西塘のことと思われる。夕燕が飛び楝の花が散る運河に陶の笛の音が響きわたる。初夏の美しい光景。(はま子)

 

神饌の鮑を固く結び藁  武藤スエ子  (4点)

 

清和なる地平天成四書五経  鈴木楓  (4点)

 

赤ダリア太陽五つの暦石  渡部有紀子  (4点)

赤ダリアの季語が効いている、取り合わせが新鮮(美春)

 

麦秋の空を従へ巫女の鈴  宮本よしえ  (4点)

中七の把握に惹かれました(白蜂)

巫女の鈴が作品全体の「凛とした俳景」の締めとなっている素晴らしい句と思います。(強)

 

峰雲に梯子を掛けて曲芸師  和田仁  (4点)

夏雲に梯子を掛けると言う表現が大らかで、曲芸師も生き生きと見えてくる。(ユリ子)

 

薬局は茶房となりし夕薄暑  安田孝子  (4点)

地域に根ずいた薬局なのでしょう夕薄暑が効いてますね(麻実)

薬は飲むけれど、そんなに重い病気ではない患者さん達ですね。クーラーの効いている薬局でお茶を御馳走になれるのは、都会の薬局ではないでしょう。(香誉子)

 

どの田にも水ゆき渡る仏生会  安光せつ  (3点)

流れるような平易な表現が好ましく景が素直に眼前に浮かびます、美しく張られた田水には やがて来る秋の豊かな実りの予感が…類句多しと言われるのかなぁ(かをるこ)

 

はつなつの机にひらく鳥図鑑  三雲繪里子  (3点)

初夏に鳥図鑑を入れた所面白い。(芳彦)

ひらがなと漢字のバランスに若さを感じました(麻実)

 

ボンネットバス膨らみて雲の峰  町野敦子  (3点)

アニメの猫バスを連想してしまう。子供で満員の賑やかなバスが九十九坂をどんどん空に向かって昇っていく。夢があって楽しい。(大久子)

ボンネットバスの色は何色だろかと想像が膨らみます(佐藤博子)

今でも田舎で昔のボンネット型バスがたまに見られるが、登山客か観光客を一杯乗せて喘ぎながら峠越えをするシーンが目に浮かびます。(閑生)

 

郭公や大地圧して夜明け富士  荒尾保一  (3点)

 

産土の山河引き寄せ五月鯉  荒尾保一  (3点)

 

神田祭何と隣に菊之助  三宮隆宏  (3点)

隣に菊之助がいたなんて、生涯忘れられない神田祭となりましたね。(はま子)

 

藤の昼きのふの日記書いてをり  明隅礼子  (3点)

藤の花の枝垂れる中に書く昨日の日記、久々に自分の時間を得た作者の喜びが伝わってきます。(文子)

 

緑雨降る眼元優しき北魏仏  董?  (3点)

北魏仏の優しさが出ている句です。(昭信)

 

ほりかへす土の匂ひや夏燕  佐藤博子  (2点)

 

マンボウと浮かびて昼寝夢の中  嶋田夏江  (2点)

 

みどりごの丈となりたる草を刈る  橋本和男  (2点)

 

ラムネ飲む空を飲み干す口をして  杉美春  (2点)

 

伊弉冉尊の円き神陵蛇跨ぐ  宮本壮太郎  (2点)

 

炎天や長江遥か海に消ゆ  齊藤昭信  (2点)

雄大な句ですね(貞郎)

 

乙女らの四肢よくうごく更衣  大澤久子  (2点)

厳しかった冬からの解放感が乙女の更衣によって、動的に表現されています。(正明)

 

花柘榴身を捻り着る夜のドレス  關根文彦  (2点)

夜のパーテイドレスは 女性美の曲線を強調するあまりか 着るときも(脱ぐときも!)着用中の動作にも かなりの無理を強いられる。遠い日の苦心した記憶を想い出して思わず一人笑い(かをるこ)

 

薫風に解けぬ知恵の輪ソクラテス  和田仁  (2点)

薫風を受けた爽やか頭でも解けない知恵の輪!ソクラテスは言っています。「最大の賢者は自分の知恵が無価値である事を自覚すること」いいんですよ解けなくて!  (文)

知恵の輪とソクラテスの取り合わせがいい  (佐和)

 

秀衡の括り枕や亀鳴けり  西脇はま子  (2点)

 

身のうちに匿ふ悪女 五月闇  熊谷かをるこ  (2点)

悪女に惹かれました。五月闇が効いています。(赳夫)

 

水湛え棚田に春の来りけり  芳賀赳夫  (2点)

 

青嵐や一段高く火伏神  武藤スエ子  (2点)

怖い火事を抑えてくれる火伏神、夏になっても。(美代子)

 

竹の子を網で運ぶや海人の町  あさだ麻実  (2点)

 

道端の象棋対戦夏に入る  劉海燕   (2点)

道端の情景をうまく表出(白蜂)

中国かどこかの風景であろうか。昭和の初期のころの夏になると家の前に床几出してステテコ姿のおじさんが将棋を指しているような映像をみた記憶がある。懐かしい光景。(大久子)

 

縄文の食の気品や椀涼し  滝澤たける  (2点)

木の実、野草、様々な動物、魚介類と思ったよりも豊な食生活だったようですが、そのしつらえは至って素朴。現代の色鮮やかで、凝った盛り付けではない、それを気品と捉えられ、涼しいと表現されたことを興味深く感じました。(敦子) 

 

梅花藻の水豊かなる水車小屋  町野敦子  (2点)

 

陪塚の壁画の女官頬涼し  熊谷佳久子  (2点)

 

反り高き菅公の太刀梅雨の雷  吉野巨楓  (2点)

 

封印を解く子羊や月涼し  和気千穂子  (2点)

魔術的な雰囲気が好みです。神秘的です。(和弥)

 

防人の山城あとやほととぎす  西野編人  (2点)

 

李世民の駿馬駆けゆく青葉風  熊谷佳久子  (2点)

唐2代目皇帝の座につき改革にのりだした力強い姿が見えてきました。(編人)

 

流水を知らぬ目高に鉢の空  今井温子  (2点)

 

足摺や怒涛の泡に椿落つ  山下閑生  (2点)

足摺岬の晩春の景。怒濤の泡にひかれました。(編人)

 

あめんぼの動き直線自在なり  満井久子  (1点)

「科学的な眼」の感性を門外漢ながら拝察できるような素晴らしい句と思います。(強)

 

ガキ大将目高の学校探しをり  上川美絵  (1点)

ガキ大将今でもいるのでしょうか? (みつ子)

 

カンツォーネ夏の運河にこだまして  内藤繁  (1点)

カンツォーネと来るとナポリ、気持ちが良いですね。(赳夫)

 

サロベツの風に切たるメロンかな  早川恵美子  (1点)

 

ナマケモノ探す案内青嵐  須田真弓  (1点)

おもしろい発想。(紀代)

 

ハンカチの中から魔法追憶も  杉美春  (1点)

 

実桜や阿修羅大地の色のこし  澤田和弥  (1点)

阿修羅大地としたところ面白い。(芳彦)

 

やりくりをどうにか終へし涼しさよ  三雲繪里子  (1点)

やりくりは何かと大変ですね。しかし達成感が満ちた句です。(和男)

 

リトマス紙みな青くして夏の風邪  安西佐和  (1点)

感覚的に面白い句だと思いました。リトマス紙が青になると言うことは、塩基傾向ですね!たしかに、風邪って酸性の感じじゃなく、なんとなく解らない物が混じっている、塩基なのかも!(文)

 

茜雲映して揺るる植田かな  片山孝子  (1点)

 

雨音や守宮はりつく風呂の窓  土屋香誉子  (1点)

 

卯の花の匂ふ比婆山ほの冥し  宮本壮太郎  (1点)

 

浦風の卯の花こぼす野墓かな  西野編人  (1点)

 

雲の峰折り紙のゴリラ猛猛し  土田栄一  (1点)

 

炎天や無字碑の堅く聳えたり  劉海燕   (1点)

則天武后は夫の高宗帝と同じ乾陵に埋葬された。その墓陵前に巨石からなる高さ8m幅2mの一字も無い碑を建てた。則天武后は碑文だけでは自分の一生を表せないと思い無字碑を建て、又自分の是非を後世の判断に任せたと考えられている。「炎帝や」は動かし難い季語である。(はま子)

 

花蜜柑匂ふ小道や天城越  土田栄一  (1点)

 

自転車の傾いで茅花流しかな  安西佐和  (1点)

 

若葉風チワワの足にあわせゆく  土屋尚  (1点)

 

若葉風ひと来ぬ部屋に飾り壺  妹尾茂喜  (1点)

 

守宮鳴く夜風の運ぶカオスの香  江原文  (1点)

 

手水舎に鳩の水浴ぶ薄暑かな  根岸三恵子  (1点)

 

宿坊の大盛り飯や青葉木?  杉山良  (1点)

 

諸人へ秘仏の御目若葉光  枝松洋子  (1点)

 

樟若葉隠岐の駅鈴響かせり  髙橋紀美子  (1点)

 

上布着て鈴木真砂女を偲びをり  橋本和男  (1点)

 

新田の治水を今に夏薊  竹田正明  (1点)

 

川風を頬に見上ぐる朴の花  満井久子  (1点)

 

巣鴨夏中山道の一里塚  染葉三枝子  (1点)

 

走り梅雨きしむ寄木の秘密箱  安藤小夜子  (1点)

 

対馬より望む韓国夏霞  根岸三恵子  (1点)

 

張り通す意地の一ツや夏祭り  岡崎美代子  (1点)

 

逃げ水をママちゃり軽く追ひ越しぬ  佐藤博子  (1点)

母は強し!(繪里子)

 

入梅や紅のうするる天上絵  津久井紀代  (1点)

 

梅雨深しラフマニノフのリフレイン  土屋尚  (1点)

ラフマニノフの旋律は心を豊かにしてくれます、梅雨の最中に聴いているところが良いですね。(輿志子)

 

白夜かな天井に吊る魔女人形  荒木那智子  (1点)

 

八幡の神鎮まりて楠若葉  あさだ麻実  (1点)

 

飛ばされて電車の下に夏帽子  佐藤武代  (1点)

夏帽子の軽さ、夏休みの旅行、青い空が見えました。(香誉子)

 

眉太き坂東の仏虎が雨  石川由紀子   (1点)

 

病院の癒しのパティオ花貝母  滝澤たける  (1点)

やさしい気持ちになりました。(香誉子)

 

母の日の寄せ植へ抱へ娘来る  熊谷秀章  (1点)

「植へ」ではなく「植ゑ」。(朗人先生

 

万緑に包まれ猩猩の頬の杖  安藤小夜子  (1点)

 

網戸して象棋さしたる僧侶かな  董?  (1点)

虫でも入ってくるのですか、網戸をして象棋を指している僧侶、中国での寺ですね、のんびりした風景が感じられます。(昭信)

 

夜の新樹みどりに灯る非常口  石川由紀子   (1点)

 

与謝郷蕪村の牡丹散りにけり  石川渭水  (1点)

 

緑なるベンチに人も緑なる  小高久丹子  (1点)

俳句を横書きから縦書きにしてみました この句は縦書きにする事により詩情あふれる一枚の絵となりました(麻実)

 

淋代の虚貝置き棚涼し  西脇はま子  (1点)

 

トナカイの狩する村や明け易し  高橋紀美子  (1点)

以上

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