ネット句会報2013年9月

 

天為インターネット句会2013年9月分選句結果 (作者名の後ろの点は互選点)
 ※特選句、入選句内の順番は互選点、句稿番号の順。また互選句は高点句から順に、同点句は句稿番号順に並べました。

<有馬主宰選特選句>

今回はございません。

<有馬主宰選入選句>

敦煌の絹の水尾引く流れ星  早川恵美子  (13点)

「敦煌の絹」とは?(朗人先生)

絹の道に降る流れ星の光を絹の水脈としたところが面白い。(編人)

美しくて涼しくて清らかな光景ですね。(董?)

きれいな句です。(和男)

流れ星を絹の水尾引くと捉えた所が素晴らしい(貞郎)

大陸の景の大きなシーンに同感(栄一)

 

銀漢や八卦に亀と天馬の図  斉藤輿志子  (5点)

理性的な浪漫さがあります。 (董?) 

洛陽の博物館で大きな八掛の図と星座の図が展示されていました。非常に印象に残っています。(はま子) 

 

朗々と読む長恨歌夜学生  董?  (4点)

取合せ・表現に無理が無く、素直に響いて来ます。(仁)

向学心に燃える若者の力強さ。(せつ)

 

玄奘も渡りし黄河桐一葉  齊藤昭信  (4点)

唐代の僧玄奘三蔵も渡ったであろう悠久に流れる黄河。桐の一葉が落ちるのを見て、秋の訪れを知ると共に衰亡の兆しが感じられ、この対比が面白い句。(よしえ)

玄奘の滅びゆく運命は、まさに大河に浮かび飲みこまれてゆく桐の一葉かもしれない、と思わされます(ユリ子)

玄奘は黄河を渡りインドから仏典を持ち帰った。 作者はその玄奘の苦難の旅を思い黄河を渡ったのでしょう。桐一葉の季語が一段と詩情を深めている。(はま子)

 

秋出水黄河を臨む王の陵  渡部有紀子  (3点)

氾濫する黄河と戦った王が偲ばれます。(博子)

秋の洪水が黄河に注いでいる。その近くに王の陵がある。背景が良い。(芳彦)

 

鉈籠や小町の郷の秋千草  枝松洋子  (2点)

露に濡れた花野の情景が浮かびます(美代子)

鉈籠に生けた秋草、小町の郷がいかにも楚々とした感じ。(せつ)

 

露草や料紙に散らす高野切  町野敦子  (2点)

 

小鳥来てウィーンに多き喫茶店  大下亜由  (2点)

秋を迎えた少し落ち着いた感じが好きです。(真弓)

 

御嶽を前に後ろに踊かな  内藤芳生  (2点)

 

夕焼けて小焼けて亀は波の中  染葉三枝子  (1点)

 

 

<互選句>

千枚田一枚となる稲穂波  安光せつ  (12点)

そういう光景が目に浮かぶ、というよりぜひ見てみたい日本のなくしてはならない里山の風景。(大久子)

きちんとした写生句、写生だけではない作者の感性が素晴らしい!(文)

私は能登の千枚田を見た時これを実感しました。「一枚となる」が効果的です。(真弓)

なんとスケールの大きい句でしょう(麻実)

千枚田一枚となる、という表現に、美しい自然の持つ力を感じた(ユリ子)

 

島一つ闇に浮かせて大花火  松浦泰子  (11点)

打上げ花火の状況設定とその効果がよく理解出来ます。(仁)

暗がりの島に眼を移すことにより、大花火の夜空はもっと美しく感じられたと言うことでしょうか。(正明)

季語大花火が効いている(貞郎)

島一つ闇に浮かせるが、上手い!花火の大きさが眼に浮かぶ(文)

 

金魚売虹を渡ってきたりけり  津久井紀代  (8点)

だから金魚はあんなに儚く美しいんだ(繪里子)

虹の国から虹の橋を渡って金魚売りが地上にやって来る。心の洗われるような美しい一篇の詩。(はま子)

「名人は危うきに遊ぶ」という白洲正子さんの言葉を思い出しました。(和弥)

 

宵町に刈田の匂ひ風の盆  三雲繪里子  (7点)

越中八尾の光景が活き活きとしている。(和男)

風の盆の男をどりは、稲刈るしぐさ束ねるしぐさです。当然刈田も稲穂も匂っています。(佐和)

 

子の書架にチェ・ゲバラ伝休暇果つ  永井潤子  (6点)

休暇中に色々なことを考えたであろう子に注ぐ親の眼差し。(せつ)

親もおどろくわが子の意外性。 親のおどろきが読者にも新鮮。 (高甫)

 

野尻湖に眠る化石や流れ星  竹田正明  (5点)

字の書けぬいもうとふたり星祭  明隅礼子  (5点)

かわいいですね。お姉さんが妹達に、何をお願いしたいの?と訊いているのですね。(香誉子)

字の書けない妹たちのためにきっとお兄ちゃんが願い事を書いてあげたのでしょう。優しい気持ちが星祭を効果的にしています。(真弓)

思わず微笑む句です。(和弥)

 

反抗期過ぎの無口や遠花火  安西佐和  (4点)

口答えばかりしていた子どもが、いつの間にか無口な青年になっている。遠花火との取り合わせがよいと思います(美春)

 

地蔵会や右へ右へと数珠回す  明隅礼子  (4点)

単なる描写に止まらず、臨場感が伝わって参ります。(仁)

 

星飛んでマンモス「ユカ」の目覚めけり  大下亜由  (4点)

私も見に行きました 可愛いゾウでしたね (みつ子)

億光年かけて飛んできた星と数万年前にこの星に生息していたマンモスの目覚め、まさに夢と憧れの世界。(大久子)

 

木のにほひ覚えキャンプの果てにけり  永井潤子  (3点)

都会の子の林間学校でしょうか、木の匂いが新鮮だったのですね。(香誉子)

 

北斎の隠し落款みみず鳴く  荒木那智子  (3点)

北斎は大変好奇心旺盛だったらしく、当時長崎を通じて入ってきた洋画や書物を参考に、浮世絵の題字の日本語をアルファベット風にくずして記すなど遊び心たっぷりの作品を残している。北斎の隠し落款だからこそ、季語が効いている。(有紀子)

 

朝顔の眩しき瑠璃や殉教碑  和田仁  (3点)

 

観音の掌に乗る名月闇を解く  原豊  (3点)

「とく」を説くとせず解くとしたことで観念的にならずスッと心に響く!(文)

 

羽抜鶏夜明けを待たず啼きにけり  西脇はま子  (3点)

羽抜鶏のこっけいさ、まぬけさがごく自然でほほえましい。 (高甫)

 

阿波踊動きぴたりと利休下駄  満井久子  (3点)

下駄の乾いた音と手踊りの激しさが聴こえてくる。(豊)

阿波踊り動きぴたりと利休下駄、利休下駄は足が痛くならないように新素材の鼻緒を採用してその美しさ履き心地良さを徹底的に追究した。「動きぴたりと」が効いている。(貞郎)

 

チェス盤にナイトは跳ねて黒麦酒  渡部有紀子  (3点)

黒麦酒が雰囲気抜群(佐和)

 

鯔とんで風わたりくる神西湖  宮本壮太郎  (2点)

神西湖に限らない。動くか。(朗人先生)

 

閘門の木組みを今に竹の春   竹田正明  (2点)

 

蜩や磨崖仏拝す宇陀の里  石之敦子  (2点)

少し不鮮明な磨崖仏が岩山に。そして降るような蜩の啼く声。いいですね。(美代子)

 

曼珠沙華この世の思ひ全て吐け  齋藤みつ子  (2点)

 

藍浴衣富士の裳裾に寄せる波  妹尾茂喜  (2点)

 

大川の底見し祖母や震災忌  安藤小夜子  (2点)

 

水澄むや半跏思惟像薬指  米田清文  (2点)

 

丹田がふはついてゐる酷暑かな  岡崎美代子  (2点)

本来力が入っていないと立ちゆかないのが丹田。 こう暑くては力を入れようにも入らないことを 「ふはついてゐる」 と把握。常識を逆手にとった中七が見事。(高甫)

本当に暑い夏でした。丹田がふはつく、という表現がいいと思います(美春)

 

沢蟹の足裏赤く水澄めり  須田真弓  (2点)

 

水澄んで瀬音荒ぶる舟下り  原豊  (2点)

壮観ですね。(和男)

 

清秋や篠竹揺るる子規の墓  浅井貞郎  (2点)

篠竹の繊細さと勁さが子規のイメージと合っていると思いました(ユリ子)

 

生身魂大きなカツを喰ってゐし  津久井紀代  (2点)

油っぽいカツは食べづらいだろうと、孫・子が気遣うのは余計なことか。長寿の秘訣は人一倍よく食べ、よく喋ること・・・かもしれない。(有紀子)

絶対に長生きなさいますね、この生身魂は(笑)(和弥)

 

水撒きの人に影あり今朝の秋  上脇立哉  (2点)

季節の移り変わりをうまく表現しているし、美しい句だと思います(美春)

 

消しゴムがちびてノートに秋の風  江原文  (2点)

夏休みの宿題で消しゴム使いすぎたのだろう、知らぬ間に季節は、秋に表題と秋の風がマッチしている。(豊)

 

七夕や筆太に書く願ひごと  土田栄一  (2点)

どんな大きな願い事でしょうか、、、。筆太に書くが思いが入っています。(よしえ)

 

七つの子のチャイムが森に夏の果  土屋香誉子  (2点)

 

夏草や遊女の墓の傾ぎをり  嶋田夏江  (2点)

 

迎火を家族総出で焚きにけり  安光せつ  (2点)

 

急流の黄河に沿ひて帰燕かな  齊藤昭信  (2点)

 

気泡ある琉球瑠璃の蝿捕器  西脇はま子  (2点)

気泡から丸を連想、のちの角張った漢字の羅列なのだが俳諧味がある。ぜひとも一見したい蠅捕器。(大久子)

 

夏名残り異国で喰らふ猫パンチ  安藤小夜子  (2点)

 

綾取りの赤の橋桁天高し  杉美春  (2点)

赤の橋桁で句がおおきくふくらんだ。(紀代)

 

客人のしたり顔なり濁り酒  澤田和弥  (2点)

同感(栄一)

 

穹高しわたすげ靡き雲となれ  岸田晶  (1点)

穹蒼にわたすげがなびき雲になれとしたところ、雄大な景色を詠まれた。(芳彦)

 

涼しきは海豚と遊ぶキューピッド  斉藤輿志子  (1点)

今年の猛暑を忘れ楽しむ句です。(編人)

 

流星や真っ直ぐ天の端に消ゆ  髙橋紀美子  (1点)

 

落ちてよりただ一息の秋の蝉  佐藤博子  (1点)

最後の最後まで啼きつくした蝉です。ただ今、その声が、、、、、(美代子)

 

木の洞の年輪消えて秋の風  内藤繁  (1点)

千年の楠の大洞を見ましたが、秋の風との組み合わせが良い。(編人)

 

夕月夜霓裳羽衣の舞ひにけり  董?  (1点)

 

夜の秋読めば聞き入るごんぎつね  石川由紀子  (1点)

ごんぎつねを読み聞かせる母、聞き入る子供、いい時間です。(佐和)

 

鳳仙花遅刻の足を早めけり  山口すみ子  (1点)

季語のイメージから学校の遅刻しそうな子と想像しました。(清文)

 

仏手柑四角の顔の四国犬  佐藤博子  (1点)

馬鹿野郎!怒鳴る主相の有りにけり(隆宏)

 

灯台に風の集まる実はまなす  安田孝子  (1点)

 

鈴虫やこの夜の闇を泣き明かし  浅井貞郎  (1点)

 

日盛りのヒエログリフの鳥獣  和田仁  (1点)

 

道草の多き人生秋麗  中坂和子  (1点)

道草大好きです(みつ子)

 

湯気たてて富士五合目の登山馬  杉山良  (1点)

 

店先に風の出てきし吾亦紅  三雲繪里子  (1点)

吾亦紅のある景色にふさわしいと思います。 (清文)

 

啄木鳥の耳を澄ましてをりにけり  中田秀平  (1点)

 

大太法師(だいだらぼつち)も驚く人出富士登山  伊藤高甫  (1点)

大太法師が富士山を運んで来たという民話があります。富士山が世界遺産に登録され、登山者数も急に増え、大太法師は驚いているに違いありません。(正明)

 

台風一過 波に足裏を洗はせる  熊谷かをるこ  (1点)

 

浅草のサンバに燃えし八月尽  鈴木楓  (1点)

 

大きなる風の来れる蓮田かな  上脇立哉  (1点)

爽やかですね。(董?)

 

石筍に風孔あまた秋涼し  杉美春  (1点)

 

松代の地下壕八月十五日  伊藤高甫  (1点)

俳句にもこうした歴史の記録があってよいと思います。(清文)

 

小鳥来る大宍道湖を一またぎ  宮本よしえ  (1点)

 

秋立つや赤絵香合五爪の龍  岡崎美代子  (1点)

 

新涼や民話の里の駅に立つ  中村光男  (1点)

 

手にとまり頬にもふるる赤蜻蛉  土田栄一  (1点)

蜻蛉の群の中にいる喜びが感じられました。(香誉子)

 

若冲の力満ちたる葡萄かな  西野編人  (1点)

 

姉もまた終戦日にはだんご汁  嶋田夏江  (1点)

 

紅木槿老ひて里恋ふ妹一人  山口すみ子  (1点)

「老ひて」ではなく、「老いて」。(朗人先生)

赤い木槿が咲いている老ひて里恋ふ女性が一人いるという。何となく切ない思いが感ぜられる。(芳彦)

 

乞功奠母の和鋏磨ぎにけり  佐藤武代  (1点)

 

玉葱の日の雫なる丸みかな  中田秀平  (1点)

 

一番に櫓に上り一踊り  あさだ麻実  (1点)

 

レコードの嗄れ声のせ扇風機  江原文  (1点)

 

ルドベキア新月の夜も咲き満ちて  岸田晶  (1点)

 

フラクタル海岸線に夏の詩  菅野強  (1点)

 

ハーレーダビットソン月光を浴ぶ  佐藤武代  (1点)

 

ちちろ鳴くかつて兵舎の博物館  荒木那智子  (1点)

知覧の特攻隊の三角兵舎虫の声を聞きながら、出撃前の一夜を過ごしたことは、いつまでも隊員の心に残ったことでしょう。(豊)

 

シャガールの壺もブルーや秋澄めり  熊谷佳久子  (1点)

 

以上

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