天為インターネット句会2013年10月分選句結果 (作者名の後ろの点は互選点)
※特選句、入選句内の順番は互選点、句稿番号の順。また互選句は高点句から順に、同点句は句稿番号順に並べました。
<有馬主宰選特選句>
組体操一気に崩れ秋高し 熊谷秀章 (6点)
運動会の歓声が聞こえるようです(美春)
秋晴れの運動会の一コマ、動きが鮮明に伝わります。(閑生)
大遷宮成りて出雲は豊の秋 宮本壮太郎 (6点)
秋の澄んだ空気感が伝わる(紀代)
今年は20年に一度の大遷宮、祭神は大国主命で農業を司る神。豊の秋が相応しいと思いました。(赳夫)
出雲大社の大遷宮は今年の5月に行われました。遷宮の後には良い事があると言われていますので、豊の秋が訪れていることに同感です。(正明)
20年祭にお供えする日本酒もお米も野菜もまさに神様からの授かりもの。豊穣の秋に遷宮が成ったというおめでたい句(大久子)
D51に乗れば賢治の銀河澄む 吉野巨楓 (3点)
銀河鉄道に乗って宇宙を旅したいなー(豊)
懐かしいD51!確かに賢治の銀河を想う!(文)
秋声を聞くや耳なき二面石 山下閑生 (3点)
橘寺境内悪面・前面。同時に十人を聞き分けた聖徳太子大使であれば澄んだ心の耳で十分であろう。(柳絮)
奈良の明日香には沢山の石造物があり二面石もその一つ。何度か訪ねている橘寺なのに 耳がなかったとは知らず・・・二面石の 善面 悪 面 どの様な秋の声を聞いたのでしょうか?彼岸花の咲くころの明日香はことの他 趣のある風景です。(温子)
秋深し椎葉の里の稽古笛 西野編人 (1点)
缶蹴りの缶の音澄みて秋の暮れ 石之敦子
爽やかや魚の描かれし半坡土器 董?
<有馬主宰選入選句>
地芝居の夜叉の仮面や盆の月 董? (5点)
おそらく村の盆の行事でしょう。盆の月に村人の安らぎを思う。(せつ)
烏賊干して人影もなき浜の昼 宮本壮太郎 (3点)
浜の賑わいは朝。烏賊が干されてあるという風景が面白い。(赳夫)
十一の町十一の踊りあり あさだ麻実 (3点)
終南山眺む王維や月涼し 齊藤昭信 (1点)
「終南山眺むる王維月涼し」連体形は「眺むる」であるので。(朗人先生)
中国陝西省西安の南方、秦嶺山脈中にある一峰を唐の詩人王維が眺めている。そこに月影が射している。いかにも中国らしい光景が雄大でよい。(芳彦)
縄文の紅き土面や山装ふ 浅井貞郎
<互選句>
手秤りで梨売る婆や絹の道 杉山良 (8点)
梨の肌婆の皺もみえます。(隆宏)
中国と地中海を結ぶシルクロード上の寒村での風景を想像しました。(閑生)
手秤りと絹の道で悠久の歴史を感じさせます。大きな句です。(真弓)
中央アジアの交通路シルクロードに、素朴な老女がナシを売る。「手秤りで」がよく言い得ていると思う。(ユリ子)
大山の水こんこんと新豆腐 土田栄一 (7点)
大山の水が効いている(紀代)
コスモスやいつも誰かに心揺れ 内藤繁 (6点)
コスモスが揺れているのは風のせいではないのですね。淡い恋心(美春)
この感じとってもよくわかる。私もいつも誰かに心揺れていたい。(大久子)
私小説のタイトルみたいで気に入りました。(麻実)
寝転びて星空の海の底にゐる 中村光男 (6点)
自分の寝ころんでいる所を海の底と見た所が面白い(貞郎)
シューベルト流れて秋の薔薇香る 西野編人 (4点)
シンプルでそつのない構成。豊饒な叙情が素直に伝わって来ます。正に至福のひととき。(仁)
シューベルトの曲にも薔薇の香りが漂いますね。(劉海燕)
杉玉に注連巻く甲斐の新酒かな 山下閑生 (4点)
霊峰富士の湧水で醸された蔵出し。霊験もあらたかであろう。(柳絮)
新しい酒は神の恵みです。最近は新酒の時期に杉玉を新しくしなくなったのか?(美代子)
芳しい新酒を酌み交わしたく思う二人暮らしの老夫婦です。(温子)
石段の崩る歳月萩の寺 荒川勢津子 (4点)
萩の寺と言えば古寺を連想します。古い歳月のせいで石段が崩れたのでしょうが、参拝客も多いのでしょう。(赳夫)
石段が崩れてしまう程の長い時間、萩は咲き続けました。歳月という言葉で奥深さが出ました。(真弓)
老いるにも前期と後期 栗実る 熊谷かをるこ (4点)
後期高齢者なんか嫌な言葉 身につまされます(みつ子)
まもなく後期入りする者には身につまされる。 秋に実るもの数ある中で、 栗の斡旋は人の固い信念を想わせてハマっている。 (高甫)
横浜の夜景に月の海澄めり 髙橋紀美子 (3点)
菊の香や十二神将薄闇に 齊藤昭信 (3点)
空蝉の地に爪立ててなほ立てり 津久井紀代 (3点)
「地に爪たてて」とは人間なら大地にしっかり足を踏ん張って生きよということかな、(貞郎)
更待の月に解きたる旅衣 宮本よしえ (3点)
旅を終えたのだろうか、それともまだ旅の途中だろうか。「更待の月」と旅衣の取り合わせが響きあっている。(ユリ子)
自画像のゴッホの中の秋思かな 上脇立哉 (3点)
十字切る手もてしつかと稲を刈る 和田仁 (3点)
素朴な農民の信仰の深さが感じられます。(美代子)
真砂女のこゑ沁みたる路地や十三夜 西脇はま子 (3点)
真砂女さんが出てきそうな気がします (みつ子)
人麻呂の古径夜霧の匂ひけり 宮本よしえ (3点)
人麿の通ったという径。夜霧が思いを深くする。(せつ)
人麻呂が歩いた道に夜霧の匂いがするというところが古典的でよい。(芳彦)
秋気澄む桧の香る宮遷し 満井久子 (3点)
惜しみなく余呉の風受け稲実る 大下亜由 (3点)
仲見世で買ふ深秋の万華鏡 熊谷佳久子 (3点)
賑わう仲見世の深秋。様々な音、香り、人の声、その中で不思議世界の万華鏡を選ぶ。とても楽しそう。(敦子)
眠くなるコスモス地球までゆらし 小橋柳絮 (3点)
コスモスのやさしさに包まれて地球も少し休憩!(文)
この大胆な表現が何とも言えず心地よい!!(大久子)
良夜かな楽譜を書いてゐるひとも 明隅礼子 (3点)
楽譜を書いている人にもそれを見ている人にも良夜の静かな時間が流れる。(せつ)
ベートーヴェンのムーンライトーソナタもこんな夜に生まれたのでしょうね。下5のひらがなが良い。(文)
上五の「かな」切れで初めて名句に出会いました。(和弥)
名刹の末寺と言はれ萩盛り 安光せつ (3点)
名刹と末寺の関係は人それぞれ、 私の場合は時宗総本山 藤澤山清浄光寺(遊行寺)と塔頭長生院ということになるが、 長生院に残る 「小栗判官眼洗いの池」 にも雨に濡れた萩叢が覆いかぶさっていた。 (高甫)
毬栗の最初からして喧嘩腰 大下亜由 (3点)
発想が面白い(豊)
コスモスに色を残して風抜ける 原豊 (2点)
風に色の無いのは、そうですか、コスモス畑を風が抜ける時、一本一本に色を付けて抜けて行ったからでしょうか。秋の爽やかな風、コスモスが風の向きに揃って揺らぎながら色付けられていく、そんなアニメーションのようなシーンが見えてきます。(敦子)
ひつじ田と同じ番地に暮らしをり 安西佐和 (2点)
ひらがなは解け易くて穂絮飛ぶ 杉美春 (2点)
漢字、ひらがな、カタカナ、日本人の識字率は世界一とか。夫々の文字には絵画的な感覚があると感じています。ひらがなが「解け易い」という感覚を持たれ、また、その感覚を「穂絮が飛ぶ」様子に結びつけられたことに魅かれました。(敦子)
環濠の櫓を照らす月今宵 竹田正明 (2点)
情景が手に取るように見える(豊)
菊採るや陶潜の詩吟じつつ 内藤芳生 (2点)
陶潜の「菊を採る東籬の下、悠然として南山を見る」は菊に託し、自分の志を表す名句ですね。高潔な品質へ追求する心はたぶん、誰でもあるでしょう。(劉海燕)
桐一葉琵琶湖疏水を瞬かす 今井温子 (2点)
色変へぬ松や文豪旧居跡 根岸三恵子 (2点)
さぞ旧居跡にはりっぱな松が青々としていることでしょう。季語が動かないと思います。(真弓)
水澄むや浄行菩薩に杓一つ 阿部旭 (2点)
秋天やメテオラ階段登りきり 蛭川晶代 (2点)
秋天や跳ね橋ぬける遊覧船 嶋田夏江 (2点)
跳ね橋を門司港レトロで見たことがあります。この景が秋の鮮明さを以って蘇ってきます。秋天が良く働いています。(正明)
草の花十字架の墓文字消えて 森山ユリ子 (2点)
芒野に貨物列車の曳く灯り 三雲繪里子 (2点)
日本人の旅情の典型的な情景だと思います。(ユリ子)
秋彼岸昭和の匂ふ古本屋 土田栄一 (2点)
秋彼岸の季語でいただきました。(麻実)
白芙蓉ふわりジゼルの舞ひにけり 早川恵美子 (2点)
風の盆男踊りは切れ命 あさだ麻実 (2点)
念仏踊の遺産とも言われる八尾おわら風の盆。若柳吉三郎振り付けの男踊りは農作業の所作を単純化し素朴で力強く切れがある。(柳絮)
良き声の通る女教師運動会 安藤小夜子 (2点)
かすかなる風をとらへて萩の花 満井久子 (1点)
我が家にも萩の花がさきます。中七の「風をとらへて」でいただきました。(麻実)
けふの月御座舟浮かぶ塩竈図 荒木那智子 (1点)
400年前、月浦から遣欧使節船が出帆したことも連想させる句だと思います。美しい光景です。遠藤周作の『侍』を読んだところなので共感しました(美春)
とんぼうや砂場に残る三輪車 杉山良 (1点)
パドックに焼鳥の香や天高し 大澤久子 (1点)
パドック周辺の雰囲気がいかにも伝わってきます。「天高し」がなんとも気持ちがいい。(和弥)
引越しのベットの跡や秋の暮 江原文 (1点)
引っ越した後にベッドの脚の跡が残っていたのでしょうね。「秋の暮」でその跡の陰影が鮮やかになっています。(和弥)
雁の列空がぐんぐん近くなる 中田秀平 (1点)
感覚的把握を強調。表現に無駄がない。俳諧ならではの表現。(仁)
机上にてはじけて柘榴笑ひけり 熊谷佳久子 (1点)
机上にてに意義がある(紀代)
汽の文字のとんと書かざり夜長の灯 伊藤高甫 (1点)
銀座和光超ダンディーの秋の服 斉藤輿志子 (1点)
苦瓜の輪切り鮮やか大皿に 片山孝子 (1点)
日常の暮らしですが、なんだか趣が感じられます。(劉海燕)
月光のとどく枕に顔うづむ 土屋尚 (1点)
研ぎ細き母の包丁敬老日 江原文 (1点)
料理上手な母上の使いこまれた包丁を見て感謝の念を抱かれたのでしょう。(閑生)
語り部となりて地に落つ木の実かな 荒木那智子 (1点)
木の実が地に落ちるのを見て、秋の到来が実感されます。これは木の実が語り部として語り掛けているからに違いありません。(正明)
降り注ぐ宇宙の雫星月夜 竹田正明 (1点)
高砂の姥・尉が出る良夜かな 岡崎美代子 (1点)
手ぶらでは帰れぬ仕儀に草の市 芳賀赳夫 (1点)
秋冷至る東京駅の赤レンガ 須田真弓 (1点)
焼栗やオペラ談義の巴里雀 三宮隆宏 (1点)
身に泌むや枕慈童の能の舞 斉藤輿志子 (1点)
れきけんざんに流された少年が、経文の映った菊の葉の露を飲んで7百歳まで若さを保ったことを脚色した能の舞いには身に泌むものがあるとしたところがよい。(芳彦)
震(なゐ)ふるふ地にもあまねく月今宵 岡崎美代子 (1点)
地球のローカルな事情にかかわりなく、天体は絶対平等。 (高甫)
水引の赤の錆びゆく引込線 杉美春 (1点)
一句の構成、把握が知的で実に巧み。ミステリアスな展開を予感。(仁)
瀬戸内の秋鯖積みし貨車「レムフ」 滝澤たける (1点)
星合に熱上ぐ高校天文部 内藤繁 (1点)
爽籟や武蔵野に雲湧き止まず 滝澤たける (1点)
渡し場に昼の虫聞く矢切かな 根岸三恵子 (1点)
塔の町切り絵のやうな秋の月 森山ユリ子 (1点)
島の家二百十日の黄の甍 渡部有紀子 (1点)
名月をスカイツリーの串に刺し 石川由紀子 (1点)
白拍子の銀の鞘巻月宿る 町野敦子 (1点)
兵児帯のゆく秋日濃き裏銀座 西脇はま子 (1点)
揺るる穂の蜻蛉の翅の互ひ違ひ 中田秀平 (1点)
咆哮の虎に月ある夜長かな 妹尾茂喜 (1点)
迫力のある屏風絵か掛け絵と見ました。(美代子)
以上
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