ネット句会報2013年12月

 

天為インターネット句会2013年12月分選句結果 (作者名の後ろの点は互選点)
 ※特選句、入選句内の順番は互選点、句稿番号の順。また互選句は高点句から順に、同点句は句稿番号順に並べました。

<有馬主宰選特選句>

残念ながら、今回はございません。

<有馬主宰選入選句>

錻力屋に残る玻璃戸や花八手  杉美春  (6点)

錻力屋とは昔懐かしい所に玻璃戸が残っているこれも昔懐かしい。昔が思い出されます。(芳彦)

もう滅多に見掛けない錻力屋さん。お店の古いガラス引き戸とその奥にいる錻力職人が目に浮かぶ。花八つ手との取り合わせが、懐かしい雰囲気を作り出していると思う。 (ユリ子)

 

花石蕗や出雲に遺るいろは石  宮本壮太郎  (5点)

弘法大師直筆の「いろは歌」仏教の本義と石蕗の花が平安の心を象現する。(柳絮)

出雲の以呂波寺の遺跡のことですね。(芳彦)

 

子供にも三本締めの酉の市  佐藤博子  (5点)

酉の市ならでは子供もキリリと三本締めいいですネ(麻実)

 

星とんでクルスひとつの殉教址  和田仁  (5点)

隠れ里のクルスに星が流れる。私も長崎県五島などで見た風景。(編人)

殉教址にクルスがひとつあるという。そこに星が飛んで行った。何とも物さびしい心境が感ぜられます。(芳彦)

 

小春日や鳶の笛降る日御碕  宮本壮太郎

 

聖堂にチェコ少女らのキャロルかな  森山ユリ子

 

<互選句>
叱らるるまで振り回す千歳飴  松浦泰子  (8点)

よく見る光景です。嬉しくてしかたがない子どもの姿が微笑ましい(美春)

七五三についての句は、みな微笑ましいものばかりなのですが、成長の喜びや愛くるしい様子を詠むものが多い中で、子供のやんちゃぶりがおかしくて、選びました。(智子)

七五三のよくある風景を見事に句として定着された。(閑生)

 

新聞を小脇にパリの落葉踏む  内藤繁  (6点)

いかにもパリらしい風景。物語を感じます(美春)

 

児の声に溢れ来る乳実南天  永井玲子  (5点)

母親の児への限りない愛情が伝わって来ます。免疫力は弱く、病気に罹り易い時期なので、南天に禍を転じてほしいものです。(正明)

嘗ての、子育てを思い出し、実南天がよく効いている(晶代)

女性の生理的・心理的現象が句になるとは。実南天の豊かさと照応させているのが巧み。(閑生)

 

十二月八日膨らむ麺麭の種  鈴木楓  (5点)

太平洋戦争の開戦日、麺麭種が膨らむように、次第に戦争が膨張していったと詠みました。(赳夫)

 

着ぶくれて舌でころがすかはり玉  佐藤武代  (5点)

む、む。子供のころを思い出す。(美代子)

着膨れしても舌は別、飴玉を活発に転がしているというのが「かはり玉」で見えるようです。(赳夫)

 

物語終はらず木の葉散りやまず  明隅礼子  (5点)

 

むささびにかぞへきれない星の数  津久井紀代  (4点)

庭に出て夜空を見るも星は数えるほど、飛行機が西に東に頭上を通過。満天の星を見てみたいものです(温子)

満点に輝く星、樹立する枯れ木の間を一瞬、ムササビが過ぎった。静と動。ロマンチックな句である。(壮太郎)

 

軽きもの沈めて冬の用水路  荒木那智子  (4点)

 

霜月や書庫に手擦れの唐詩選  杉美春  (4点)

私家の本棚にも唐詩選の文庫本あり。霜月の季語がいいと思います。(編人)

何度も読み古した唐詩選が、霜がきらめいているように書庫にあるという、季語の使い方が上手いと思います。(赳夫)

かつて誰かが愛読した詩集を手にとっているのでしょうか。自分の愛読書再び紐解いているのでしょうか。十一月は、最も思索に適した月なのかもしれません。(智子)

 

灯さざる灯もある街や一葉忌  山本順子  (4点)

灯ともし頃に灯がない窓は寂しいですね。一葉の幸薄き生涯に重なります。(美代子)

 

小春日の銀行員のあくびかな  澤田和弥  (3点)

ついうっかり銀行員ならではの景(紀代)

 

ひょんの笛吹けば昭和の風の音  浅井貞郎  (3点)

 

帰国してほっと一息おでん酒  土田栄一  (3点)

おでん酒が効いています 。(編人)

 

光悦の白色冴ゆる楽茶碗  満井久子  (3点)

本阿弥光悦畢生の名作「不二山」まさに時を問わず冴えわたる感性。(柳絮)

 

初鶴に祈りの鐘の響きけり  西野編人  (3点)

 

秋麗のミサに地の声天の声  和田仁  (3点)

 

千条の日矢跳ね返し冬の滝  永井玲子  (3点)

 

天山の雪輝かす紅の花  早川恵美子  (3点)

スケールの大きな色彩感溢れる素晴らしい句ですね(貞郎)

 

草に霜一分のくるひ無く置かれ  中田秀平  (3点)

観察力、表現の素晴らしさグー (豊)

霜の朝には、野も畑も一様に白く見えます。これを一分のくるいも無いと表現されたことに感服しました。(正明)

 

隊列の兵馬俑軍冬銀河  劉海燕  (3点)

発掘された広大な兵馬俑に対比して空には冬銀河!壮大な景ですね。(佐博子)

 

白菜の野面しらじら韓の国  大下亜由  (3点)

キムチを漬こむ季節の景、行かずともさもありなんと思わせる。(閑生)

 

立冬や触れなば切れむ五日月  三宮隆宏  (3点)

冬の凍てつく夜五日月が寒さをいつそう深める。(豊)

細い眉のような五日月、触れなば切れむ、とは鋭い!(美代子)

 

襖絵の江楼圍棋図小六月  滝澤たける  (2点)

 

恐竜の卵居並ぶ冬日向  武藤スエ子  (2点)

恐竜の卵が暖かな冬の日差しの中で温められ孵りそう?(夏江)

 

金婚式に酔ふて候秋深し  芳賀赳夫  (2点)

私はもう62年になります。お二人益々お元気で(栄一)

 

栗を剥く愚直な夜の固き椅子  鈴木楓  (2点)

 

湿度計さがりて今日は三の酉  安藤小夜子  (2点)

 

車押して母の出てゆく小春かな  土屋香誉子  (2点)

季語小春が効いています(貞郎)

 

主もまた骨董めきて秋灯下  松浦泰子  (2点)

 

遠吠えのひびく板戸や隙間風  熊谷佳久子  (2点)

遠吠えが句を惹きたて隙間風の寒さを実感させる。(豊)

 

冬至風呂今年は友が二人逝き  齋藤みつ子  (2点)

私も故郷のちゃんずけで呼べる友二人亡くなりました(栄一)

年賀状を書く時期。独りお風呂であれこれ考えますね。 (小夜子)

 

新蕎麦や猿と出会ひし話して  永井潤子  (2点)

 

洗濯の仕上がりの良し菊日和  安藤小夜子  (2点)

なにはともあれ菊日和が良いですね(栄一)

 

地響きのやうな耳鳴り鬼胡桃  小橋柳絮  (2点)

 

抽斗のリラやフランや年送る  大下亜由  (2点)

リラやフランはもう流通していないイタリア、フランスの通貨。年の暮れ、抽斗を整理しながら、遠い日のフランスやイタリアへの旅を想い出しているのだろうか。私の机の抽斗にも古いリラやフランの紙幣が数枚眠っている。(ユリ子)

 

天平の夾纈染や帰り花  荒木那智子  (2点)

正倉院に残された三纈うち板の型抜きによる幻の染色技術。職人の努力によって返り花の如く今に甦る。(柳絮)

 

日輪を離さぬ陸奥の竜田姫  江原文  (2点)

日輪を離さぬと言う表現が妙を得ていると思う(晶代)

 

秒針の加速度つひて師走かな  中川手鞠  (2点)

最近では一週間がとても速く巡ってきます。師走になると秒針までも加速して動くのでしようか。(正明)

 

冬空やきれいに揚ぐるパンの耳  佐藤武代  (2点)

 

毛糸編む家系図代りの細き畝  渡部有紀子  (2点)

 

冬日差し鎖樋より溢れをり  内藤繁  (2点)

 

駝鳥の首ゆらりと長し十二月  安光せつ  (2点)

 

開戦日耳の底より海行かば  西野編人  (1点)

 

ショール買ふ 独り暮らしも早や三年  熊谷かをるこ  (1点)

 

たたなはる立山連峰雪しまく  浅井貞郎  (1点)

 

ちぎりきな鳥の形見に木守柿  松山芳彦  (1点)

和歌の言葉の響きのやさしさが、木守柿の風情に合っているように感じました。(順子)

 

デ・ニーロを知らぬ甥なり冬日和  加茂智子  (1点)

もうそんな世代になりつつあるのですね。「冬日和」がほんわかとしていて好感です。(和弥)

 

ひっそりと鏡花の池に散る紅葉  荒川勢津子  (1点)

ひっそりとの表現が鏡花を良くとらえていると思います(晶代)

 

木刀が寒風を裂く示現流  澤田和弥  (1点)

真剣で寒風を切り裂くと悲鳴が聞こえてきます示現流が良いですね(貞郎)

 

まづ三年つぎに三年文化の日  妹尾茂喜  (1点)

つぎに三年の発想がたくみ(紀代)

 

宇治川を渡る茶の花日和かな  永井潤子  (1点)

 

歌謡ショー終えて鍋焼き食ふ女  宮本よしえ  (1点)

 

寒行僧の大きなお掌にご喜捨して  今井温子  (1点)

 

ほっくりと山の恵みや零余子飯  嶋田夏江  (1点)

 

看板の麦酒絵夕日に泡寒し  岡崎美代子  (1点)

モノクロの映画を見ているようです。(小夜子)

 

幾度もコピーの動画や憂国忌  渡部有紀子  (1点)

イメージが増幅していく過程とその果てにある何か。現代人と過去の作家の姿が、合わせ鏡であるようにも思わせられます。(順子)

 

極月の美しすぎるチンドン屋  土屋香誉子  (1点)

 

襟立ててぞろぞろ史跡巡り隊  伊藤高甫  (1点)

風刺のようでもあり、何かおかしい(紀代)

 

時雨るるや拝殿守る天狗面  竹田正明  (1点)

時雨のうす暗い本殿、赤い天狗面の異形が畏怖の念を起こさせる。(ユリ子)

 

小春日の夫はどこまで行ったやら  齋藤みつ子  (1点)

 

国言葉するする牡蠣を啜るかな  早川恵美子  (1点)

 

時雨るるや面ざしやさし弁財天  森山ユリ子  (1点)

 

自然釉のどろりと垂れて鵙の贄  小橋柳絮  (1点)

 

出張の神も加はり三の酉  津久井紀代  (1点)

「出張の神」がユニークです。(和弥)

 

初時雨若き声して過ぎゆけり  上脇立哉  (1点)

 

傷口を覆ふ体液枯葉鳴る  山本順子  (1点)

すごい句だと思います。本当にすごい。(和弥)

 

上弦の少し脹らみ冬に入る  荒川勢津子  (1点)

秋が月の美しい季節なのは言うまでもく、満月以外にも様々な表情で人を魅了します。本句は、「上弦の少し脹らみ」で、月が満ちるとともに、冴え冴えとした光が明るさを増しながら、季節が秋から冬に変わる様を詠んでおり、緊張感と透明感を漂わせた美しい句だと思いました。(智子)

 

心外な寂しさクリスマスローズ   佐藤博子  (1点)

クリスマスローズの花は、名前に似合わず地味です。心外な寂しさ、という表現が、作者の寂しさと花の寂しさをシンクロさせています(美春)

 

身のうちの季節を言はば皸る  岡崎美代子  (1点)

 

水の色分かつ川筋雁渡る  江原文  (1点)

 

浅草に異人ひしめく小六月  土田栄一  (1点)

 

爽やかや一粒ごとのチョコレート  山崎好裕(1点)

 

早起きのいもうとふたり小鳥来る  明隅礼子  (1点)

何ともかわいいお句ですね 健やかな成長を祈ります (温子)

 

冬晴れや人力車来る清水坂  蛭川晶代  (1点)

 

濃く淡く水面に色おく紅葉かな  阿部旭  (1点)

 

面聡き虚空蔵菩薩冬ぬくし  山下閑生  (1点)

 

木漏れ日の張りつめてゐる散紅葉  中田秀平  (1点)

 

白鳥やロシア正教丘の上  武藤スエ子  (1点)

以上

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