天為ネット句会報2019年4月

 

天為インターネット句会2019年4月分選句結果

(作者名の後ろの点は互選点)
 ※特選句、入選句内の順番は互選点、句稿番号の順。また互選句は高点句から順に、同点句は句稿番号順に並べました。
 ※一部インターネットで表示できる文字に置き換えております。ご了承ください。

  <福永 法弘 同人会会長選 特選句>

榛名富士よくよく晴れて春田打         西脇はま子   (3点)

上毛三山の一つ榛名山は、均整の取れた美しい姿をしており、榛名富士山と呼ばれている。よくよく晴れ渡った空。春田打ちから今年の農作業も始まるんだという喜びが感じられる。(法弘)

自然豊かな榛名富士の麓で暮らしている人々の、感謝と喜びが溢れている一句だと感じました。(博子)

ならまちの格子の家並み椿餅          荒木那智子   (2点)

ならまちは奈良の旧市街地のこと。同じ古都でも、京都とは違った風情がある。そして、格子の家並みには椿餅が似合う。(法弘)

麗らかな春の日、のんびり散策なさっている御様子が目に浮かびます。(春野)

   <福永 法弘 同人会会長選 入選句>

花の名も木の名もうたふ卒業歌         明隅礼子    (8点)

卒業の歌は、前途洋洋たる卒業子たちへのはなむけの歌だ。子の成長への寿ぎを、花や木の生長に託し思いこめて唄う。(法弘)

具体的な卒業歌の内容に踏み込んでいるが、「花の名」「木の名」からは具体的な花、木が分からず、読む者の想像力を刺激していると思う。(順一)

校歌にはふるさとの自然を詠み込んだものが多いので懐かしい想い出となるでしょう、季語「卒業歌」が良い(貞郎)

花にも木にも感謝して! (宙)

卒業歌は校歌でしょうか。故郷の山河を花や木の名で讃えている望郷の賛歌。(はま子)

平成の御代を見送る花の雨           中川手鞠    (5点)

平成が終わった。30年の御世は、天変地異が相次いだものの、戦争だけは無かった。令和はいったいどんな時代になるのだろうか。花の雨は切ない季語だ。(法弘)

「花の雨」で、一時代の終わりという感慨のなかに、明るさが表現されていると思います。(ユリ子)

万愚節猫と赤子が会話する           小髙久丹子   (4点)

赤ちゃんの喃語は、猫には結構通じるのかもしれない。(法弘)

猫と赤子が会話とはユーモラスですが、エイプリルフールなので嘘っぽさも含めていいと思いました。(順一)

猫と赤ちゃんが、それぞれ声を出している微笑ましい光景が浮かびます。万愚節が良いと思います。(芭行)

ありうる話ですね。よく観察していると思います。(光男)

亡き友の一句に出会ふ春灯           中嶋昌夫    (3点)

友は死んで俳句を残した。そんな一句を作りたいものだ。(法弘)

俳句でタブーと云われる、「友」と「俳句」を詠みながら、シンプルで詠み手の心が伝わって来る。春灯という季語の力だろうか。(武夫)

友の一句との出会い、「春灯」がやさしく包む。(孝雄)

句で偲ぶということも供養ですね。(博子)

関八州見晴らし台の初音かな          西脇はま子   (3点)

関八州という言葉の響きと季語の初音の若々しさが、これから、男を売るヤクザ稼業に乗り出さんとする若い渡世人の気概を感じた。大衆演劇の舞台の一幕のようだ。(法弘)

箱根の展望台からの広々とした光景が上五から伝わり、澄み渡る鶯の声が読み手にも聞こえてきます。(明)

鳥雲に我れ活断層の上に住む          關根文彦    (2点)

鳥のように飛んで逃げるわけにも行かず、揺れたら揺れたときのことさと達観し、あまり気に病んでいない様子。(法弘)

火山列島の日本何処に住んでも不安は有りますでも住めば都、人は勿論、鳥も安心して飛来してくれることを願う次第です (昌夫)

恐竜の化石騒動山笑ふ             今井温子    (2点)

国籍、人種を問わず、人はみんな恐竜が好きだ。人類がいつか滅んだ後、次の知的生命体が人類の痕跡として「俳句」を見出したりしたら面白かろう。(法弘)

今年も各地から恐竜の化石発掘の新情報を期待しています。(昌夫)

ネクタイを締めず三年沈丁花          上脇立哉    (1点)

定年後のゆったり流れる時間の中で、沈丁花の香りにふと、ネクタイを締めていた現役ビジネスマン時代を思い出したのだ。もう三年もたってしまったという感慨。(法弘)

退職から三年!でしょうか?色々やる事を試行中でしょうか? 退職から三年!でしょうか?色々やる事を試行中でしょうか?(芭行)

花冷えの関守石の黒き縄            鈴木 楓

関守石に注連縄が巻かれていて、それが雨に濡れて汚れ、黴が生えて黒くなってしまったのだろう。印象に残る黒。(法弘)

改元を寿ぐごとく桜咲く            小髙久丹子

平和な時代であって欲しい。(法弘)

  <互選句>

鳥雲にキトラ古墳の天体図           中嶋昌夫    (9点)

キトラ古墳の天体図に季語がおさまっていてよい句と拝見いたしました。(温子)

鳥雲に天体図を重ねる詩人のこころ。(宙)

天体図と「鳥雲に」の取り合せが効いています。(芳生)

水音の軽き厨や初わらび            染葉三枝子   (7点)

浅春の明るい様子がよく表現されていると思います(早・恵美子)

軽い水音という発想に感心しました。(智子)

「水音の軽き」の措辞は春のイメージですね季語「初わらび」が生き生きとして動かない(貞郎)

水音の軽さとはつわらびの取り合わせ良かったですね(和)

春の靴選ぶ未来を買ふ如く           加茂智子    (7点)

お気持ちがわかる女子としては、きっと明るい色の靴を選ばれたと想像します(律子)

朧夜や奇術師の手の長き紐           内村恭子    (4点)

ファンタジーを感じる不思議な感覚に惹かれました。(美穂)

ふと芥川龍之介の小説「魔術」のミスラ君を思い出しました。こちらは秋の夜でしたが…(春野)

厄年のなき齢生き春炬燵            川崎伸治    (4点)

風まぶし天指すヒップホップの子        土屋香誉子   (4点)

ちょっと違った季語の言い方や、ヒップホップの子が印象的でした。(順一)

勢いを感じる明るい句だと思いました。(美穂)

風まぶしとは風光る以外の何ものでもなく、路上で踊るヒップホップの子の天を指さす印象を強烈に表して佳い。(武夫)

畦道の美しき直線はだれ雪           渡部有紀子   (3点)

情景描写浮かび上がりました(和)

まだらに残っている雪の中にまっすぐに伸びる畦道が見えてきて、春が近づいているのがうかがえます(律子)

町角を曲がればひとり卒業子          染葉三枝子   (3点)

未知の世界に一人で行く思いを感じました。(美穂)

春愁を集めて海といふ硯            早川恵美子   (3点)

春愁が集まるのではなく集めるが逆に面白いですねえ。(柳匠)

たんぽぽの絮メリーポピンズの傘        石川由紀子   (3点)

メルヘンチックで楽しいです(温子)

夢のある楽しい句です。(光男)

百僧の大声明の涅槃通夜            かや和子    (3点)

百僧の大声明が荘厳に響き渡る。夜の闇が見えるよう。(ユリ子)

まつしろな巫女の水干花鎮め          中川手鞠    (3点)

桜の下で古来の厳かな神事 美しく舞う巫女の姿感動です(温子)

巫女の水干が咲き充ちて妖しき気配の桜を鎮めているようだという句意かと思いますが、成程納得です。(柳匠)

水底の影立ち上がる春の闇           長濱武夫    (3点)

薄暗い春の夕闇に乗じて水底からも禍々しきものたちが立ち上がっているとの句意と思いますが、一読ぞくっとしました。(柳匠)

「春の闇」と「影」、うごめく生命が感じ取れる。(孝雄)

時々は蛇行もしつつ卒業す           土田栄一    (3点)

蛇行する青春。若き頃は何だか訳が分からない反抗もしたな~共感する元若者も多いのではないでしょうか。(志昴女)

盲導犬の乗りこむ車内日永かな         高橋紀美子   (2点)

季語の日永が効いていると思います。(光男)

盛装の乙女の埴輪花薊             竹田正明    (2点)

正装した埴輪の乙女と野にある花薊が佳い。 (武夫)

入学子さみしがり屋の母のいて         児島春野    (2点)

夕日さし耕人ミレーの絵となりぬ        森山ユリ子   (2点)

夕日と季語「耕人」の取り合わせが素晴らしい、」まさにミレーの絵を見るようです(貞郎)

三月のりゅうぐうに水あると云ふ        鹿目勘六    (2点)

はやぶさ2号のミッション見事に成功しています、次のミッションもクリアーして無事の帰還を祈ります。(昌夫)

しばし宇宙の彼方に思いを馳せた、そんな句でした(律子)

春の鴨蹴りし水面のやはらかし         明隅礼子    (2点)

「水面のやわらかし」の表現が、春の鴨に呼応している。(ユリ子)

鬼の血のむらさきとなる花の冷         長濱武夫    (2点)

桜には怨念も有り、様々に歌われてきましたが、鬼さんの血が紫は初めて!?きっと妖艶な鬼なのでしょう(早・恵美子)

ただでさえ桜の頃は闇に鬼気迫る気配が満ちます。背後の鬼が紫色の血を滴らせる、、、、スゴイ迫力の句です。(志昴女)

雪解風坑道奥の琥珀片             竹田正明    (2点)

雪解風がよく合っており坑道の周りの景も想像されます。(相・恵美子)

久慈でしょうか?琥珀を太古の眠りから覚ますような季語が魅力的です。(博子)

鷹鳩と化すや鷹部屋がらんどう         佐藤博子    (2点)

ネットオフ句会で、浜離宮に吟行しました。その時、見学した鷹の茶屋での作でしょうか。作者のしっかりとものを見据えた視線が、眩しく感じられます。(はま子)

花冷や師の図書コーナーありし町        武井悦子    (1点)

池の面に総身を濡らし松の花          永井玲子    (1点)

春の宵膝抱けばたまごに戻る          森野美穂    (1点)

若い日にはこんなことを考えた、、、、作者は青春中!の方でしょうか。(志昴女)

スタンプを押すロボットや鳥雲に        荒木那智子   (1点)

現代性のある句を上手く表現しており「鳥雲に」が効いていると思います。(相・恵美子)

筆洗に揺れる瑠璃色水温む           児島春野    (1点)

ラマンチャの風車は廻る春疾風         松山芳彦    (1点)

竜淵の色に漂よふ花筏             佐々 宙    (1点)

色彩に根差した句、竜淵は深い色を想起させる。得体のしれぬ深みに漂う花筏。(孝雄)

けざやかに朱の堂花の池の面に         土屋香誉子   (1点)

宇治の平等院鳳凰堂を思い浮かべました。(芳生)

霾や海向く墓の月参り             嶋田夏江    (1点)

花見弁当大手門に届きけり           永井玲子    (1点)

花見弁当と大手門の取り合わせが絶妙だと思います。当日の桜狩は大満足に終わったことでしょう。(明)

大甕にあふるる花のロビーかな         阿部 旭    (1点)

桜蕾君からの声静かに待つ           菅野火星    (1点)

釈奠の赤き衣裳や絹の雨            松山芳彦    (1点)

せはしなき鶺鴒の尾や芝青む          佐藤律子    (1点)

同病のマスク姿に目礼す            岡崎志昴女   (1点)

目礼と会釈の違いを知った方の句ですね。相手は知人でしょうか?(芭行)

鞦韆の空の子うたふドレミ歌          土田栄一    (1点)

鞦韆を大きく揺らし歌っている景が見えて来ます。ドレミの歌も聞こえてくるようです。(相・恵美子)

暴れ凧茜の空へ伸ばす糸            原 豊     (1点)

夕暮れ迄凧上げを為さったのでしょう。一幅の絵を見ているようです(早・恵美子)

いづこにも不正不正や四月馬鹿         嶋田夏江    (1点)

四月馬鹿であって欲しいですね(和)

花便かたき蕾の村に聞く            土屋 尚    (1点)

薄ら陽の海へ輪を描く白子船          原 豊     (1点)

夜明けに出漁する白子船の情景が次第にくっきり見えてきます。(明)

祖の山の幾代見てきし遅桜           佐々 宙    (1点)

タカラヅカソングに和して春寒し        窪田治美    (1点)

店の門に主待つ犬春の星            相沢恵美子   (1点)

透きとほる筆のきらめき康成忌         妹尾茂喜    (1点)

さっと来てわつと下しぬ春の花         中村光男    (1点)

りゅうぐうの宇宙の水や風信子         高橋紀美子   (1点)

季語の風信子がぴったりと決まりました。(宙)

鷺苔や俄に猫の走り出て            野口日記    (1点)

霾るや斑鳩の塔模糊として           内藤芳生    (1点)

ホトトギス啼くや山湖のいさら波        浅井貞郎    (1点)

花冷えの面頂く役者の手            鈴木 楓    (1点)

春の鵜の飛翔の度に止まる人          石川順一    (1点)

何の作為も感じさせない、見た儘を見事に五七五に詠み込んだ作者の、技量に感心しました。(はま子)

以上

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