天為ネット句会報2019年5月

 

天為インターネット句会2019年5月分選句結果

(作者名の後ろの点は互選点)
 ※特選句、入選句内の順番は互選点、句稿番号の順。また互選句は高点句から順に、同点句は句稿番号順に並べました。
 ※一部インターネットで表示できる文字に置き換えております。ご了承ください。

  <日原 傳 編集顧問選 特選句>

月山の稜線さやに水芭蕉            竹田正明    (5点)

『おくのほそ道』に登場する月山は信仰の山のイメージがあるが、掲句は夏山としてのその美しさを中心に据えて詠みあげた。〈夏山の中に月山美しく 前田普羅〉の系譜に連なる作(傳)。

よく晴れた日の月山と水芭蕉の様子を上手く表現している思います。「さやに」が効いていてとても清々しい感じがします。(相・恵美子)

子規虚子の道後に遊ぶ桜かな          佐々 宙    (2点)

作者は観桜の時節を松山で過ごしたのであろう。道後温泉のある松山は言わずと知れた子規や虚子の生地。「道後」にかぶせた「子規虚子の」という措辞が、俳句の歴史を読み手に想起させ、国誉めのかたちで働いている(傳)。

  <日原 傳 編集顧問選 入選句>

テノールもバリトンもゐて囀れり        中村光男    (6点)

確かに囀りは同じじゃ無いので面白いとこに目をつけたと思います。(柳匠)

男声の音域に見立ての面白い、優しさも感じられます。(昌夫)

改元の成りて八十八夜かな           荒川勢津子   (3点)

蓮如忌の西も東も鐘朧             佐藤博子    (3点)

中七が如何にも布教に専心され、東奔西走された蓮如上人に相応しい。鐘朧の解釈に含みも感じられ、味わい深い。(武夫)

花は葉に小さくなりしランドセル        佐藤律子    (2点)

時の経つ速さ、吾子の成長の速さ、感慨にふける作者の気持ちが素直に伝わってきます。(明)

不揃いの円筒埴輪夏の雲            今井温子    (2点)

オルガンは鎮魂曲や沈丁花           森山ユリ子   (1点)

オルガンの音色と甘い沈丁花の香に、参列者の悲しみが癒やされていくようです。(博子)

乙女山古墳を守りて牛蛙            今井温子    (1点)

守っているのが牛蛙とは!面白いです。乙女の字面に、メルヘンチックな親指姫の物語を想起しました。(博子)

すずめ蜂木を齧る度顔動き           石川順一

頂に一基の墓や桐の花             原 道代

ホイアンの赤きランタン紅き蓮         鈴木 楓

  <互選句>

音立てて崩す積木や修司の忌          小野恭子    (8点)

積木を「崩す」に作者の寺山修二への思いが感じられる。余談ですが、寺山修二の「俳句」が好きです。是非、ご一読を。(孝雄)

積木崩しが何とも言えず修司を思わせます(早・恵美子)

黒南風や聖地は何処も血の匂ひ         早川恵美子   (8点)

聖地がどこも戦争と黒南風と悲しいが合ってると思います(みつ子)

聖地はどこも血生臭い歴史を秘めてますね、宗教は人間に必要なものかもしれませんが同時に厄介なものでもあります。(柳匠)

哀しいことだが、中七下五は今の世界の現実だ。その現実は将に黒南風としか言えない。(武夫)

蝌蚪群るる一乗谷の夢の跡           染葉三枝子   (7点)

一乗谷の歴史を思い・・今は蝌蚪が育っている・・大きな歴史のうねりと育つ命の逞しさのようなものを感じました(美穂)

朝倉一族、京都憧憬の百年の栄耀栄華も信長の越前攻めでまさしく夢のごとく潰え拠点が北の庄に移り衰退するばかりでしたが近年地元の熱意で一部当時の町並みが復元されて居るようです。(昌夫)

出口まだ見つけられずに花筏          中川手鞠    (5点)

花筏が動きを止めている様、もしかしたら御自身の心情も掛けておられる??(春野)

ひとりより二人がさびし夕桜          中川手鞠    (5点)

ちょっと寂しすぎます (光男)

相手のことを思うばかりに「深み」に、「夕桜」がもの寂しげです。(孝雄)

二人のほうがなんとなく淋しさを覚えますね。共感しました。(柳匠)

2人で居て感じるさびしさほど、さびしいものはありませんね。同感です(律子)

深い孤独に対して夕べの桜の存在感も増す。(順一)

滴りの一滴青き地球かな            佐藤博子    (4点)

地球の余命を思えば心を込めて・・・(宙)

極小の「一滴」と「青き地球」との対比が美しいと思います。(明)

縄文の遺構に遊ぶ白き蝶            鈴木 楓    (4点)

白き蝶が良く効いていいですね (和)

一枝の先の重さや白椿             片山孝子    (4点)

枝をたわませるほど立派な白椿の花、美しいですね。(春野)

凜とした大輪の白椿。眼を奪われた様子に共感を覚えます。(博子)

こでまりの路地に泣き声笑い声         石川由紀子   (4点)

日本の原風景を見る思いがします。どんなに狭い路地にも草花を愛でる人々がいて、住人同志のおつきあいも温かい。(明)

黒髪のおもたきころのソーダ水         西脇はま子   (3点)

判るな~この年頃、またこの季節。青春で春愁い、貴方は若かった!!(志昴女)

春夫の忌触れれば痛き無精髭          永井玲子    (3点)

髭面分かるわかる!!(早・恵美子)

無精髭に注目したのがいいと思いました。(順一)

儚さを形にひらく白牡丹            荒川勢津子   (3点)

儚さを形に開くが白ボタンにあってると思いました(みつ子)

みどりの日昭和も遠くなりにけり        鹿目勘六    (3点)

昭和20年生まれの私には、令和になり昭和が一段と遠く思えます。(芭行)

花の辻幾曲りして去来塚            内藤芳生    (3点)

いく曲がりして景が浮かびます (和)

永き日のエプロン掛ける曲がり釘        小野恭子    (3点)

家事を終えまだ春の陽射しが残っている中。少し休もうかと考えている作者の様子が見えて来ます。「曲がり釘」がよく合っていると思います。(相・恵美子)

平成の残花令和の御代となる          鹿目勘六    (3点)

見事な季語の斡旋!敬服しました。(宙)

接骨木の花のこぼるる子規髪塔         浅井貞郎    (3点)

子規髪塔と接骨木の花がよく合っていて、そこに花がこぼれているところが良いと思います。(相・恵美子)

散る桜帽子で受ける小さき影          児島春野    (3点)

幼子も桜を楽しんでいます!作者の暖かな心が伝わる一句。(宙)

中7の「帽子で受ける」の措辞によって可愛い子供たちの姿が浮かんできます(貞郎)

天命を待つといふ語のあたたかし        西脇はま子   (2点)

天命を待つこころは、悟りの心である。季語あたたかしに驚きはないが、深く共感できる。(武夫)

蜆積み舟帰りくる日の出前           土田栄一    (2点)

糸桜遺構に洛中洛外図             染葉三枝子   (2点)

糸桜が効いていますね (光男)

桜散る弘法の井の浅からず           石川由紀子   (2点)

弘法大師、空海の井戸に桜散る。見て見たいと思いました。(順一)

春の山近ずくほどに春の山           かや和子    (2点)

遠目で春の山を見て、距離が近くなると草木の種類が解り、なるほど春の山、でしょうか、、、。(芭行)

平成のひらりはらはら散る桜          片山孝子    (2点)

ひらりはらはらが平成の終わりの桜にマッチしていると思います(みつ子)

予花と言うのが良かったですね(和)

蒼天に花の帯解く神田川            阿部 旭    (2点)

中7の「花の帯解く」の措辞によって神田川の情景が浮かんできます(貞郎)

初蝶のその夜よりの風と雨           上脇立哉    (2点)

新緑の俳句の町に都電かな           武井悦子    (2点)

あらかわの地は今まさに緑なのでしょうか、都電が効いていると思いました(律子)

巡り逢ふ有終の美の花明かり          窪田治美    (2点)

象徴という務めを全うされた平成天皇を畏愛を持って詠まれたと解しました(律子)

五月来るハンカチの木の領巾振つて       土屋香誉子   (2点)

季重なりかとも思いますが、「領巾振って」が言い得て妙です。(ユリ子)

神代より舞ひ来し花か浴びゐたり        内藤芳生    (1点)

棲み馴れし隼人の里の八重桜          中嶋昌夫    (1点)

塔燃ゆる大聖堂やパリ若葉           妹尾茂喜    (1点)

春愁ひ静けさにある選挙戦           窪田治美    (1点)

選挙戦の水面下での気持ちの闘い・・そんな雰囲気が伝わりました(美穂)

盲導犬の腹這ふ車内日永かな          高橋紀美子   (1点)

平和な光景です。盲導犬を邪魔にしてけ飛ばすような方も居ない、こんな平和な光景が続きますように。(志昴女)

染卵見つくる遊び子ら駆け           高橋紀美子   (1点)

食卓にサラダたつぷり山笑ふ          瀬尾柳匠    (1点)

春らしい句ですね。野菜を楽しむ食事、「山笑ふ」が優しく寄り添います。(孝雄)

囀や天使のラッパ吹くやうに          中村光男    (1点)

「囀り」という季語と「天使のラッパ」との取り合わせが素晴らしい(貞郎)

春燈の消へて静かなバスの車庫         瀬尾柳匠    (1点)

夕暮れに藤の花ゆれ匂ひ咲く          齋藤みつ子   (1点)

碧落の瓦礫を犛牛と青罌粟と          早川恵美子   (1点)

「犛牛(ヤク)」と「青罌粟」、チベットの景でしょうか。ロマンを感じます。(ユリ子)

花水木売り物件ののぼり旗           岡崎志昴女   (1点)

街路樹に花水木の多い街並みに売り物件が多い。わが町もです (光男)

鍵括弧頂き物の桜餅              垣内孝雄    (1点)

戴いた桜餅、さぞ美味しかったことでしょう!関東風の餅だったかな?葉っぱまで戴きましょう!(志昴女)

花残る医師に歯根を誉められて         加茂智子    (1点)

良いですね~歯は大切にしましょう!季語の選択が良いです(早・恵美子)

種浸し師のふるさとの用水路          荒木那智子   (1点)

師の故郷にてまた、新たな芽が出る・・そんな風にも読めたり・・情景も浮かびました(美穂)

紫陽花の色へる朝の交差点           妹尾茂喜    (1点)

出勤時でしょうか、、。綺麗な表現が心に残ります。(芭行)

ロープウェイ青野の海を渡りけり        室 明     (1点)

花曇追ひかける幻の猫             森野美穂    (1点)

マーガレット平成吾を母とせり         野口日記    (1点)

以上

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