<福永法弘同人会会長選 特選句>
介護限界冬空真青深呼吸 齋藤みつ子 (6点)
介護疲れが限界に達しそう。真っ青な冬空の気を深呼吸して取り込み、もう一頑張り。漢字のみの一句の姿が重々しい。(法弘)
大変な現状を、自然の力で切り替えられたような措辞に読み手も救われる気持ちです。(博子)
鯛焼の顔ととのへる鋏かな 明隅礼子 (4点)
おせんべいのような食感の羽根付きを売りにしている鯛焼きもあるが、これは、それを鋏で切り取り、鯛の形を鋏で整えて売るお店。鯛焼きの理髪店といった風情。(法弘)
鯛焼は言うまでもなく鯛を両面形とった鉄製の型に小麦粉の生地と餡を入れて焼く。はみ出した生地や餡を焼き上がつた鯛焼から職人さんが手早く鋏で切り落とす。焼きあがるのを待ちながら、こんな光景を見るのも楽しい。(はま子)
<福永法弘同人会会長選 入選句>
木の実降る縄文人のかまど跡 高橋紀美子 (6点)
縄文人の食生活は豊かでバランスが取れていたらしい。(法弘)
縄文人も弥生人も主食はドングリなどの木の実だったという研究結果があります。(骨を分析した結果)竈の跡には今でも木の実が落ちる、秋の風景。この実でクッキーでも焼いたのかな、、、(志昴女)
季語の斡旋が上手いと思います (光男)
首里城の一朝に消ゆ冷まじや 内藤芳生 (6点)
惜しい。残念。一日も早い復旧を願う。(法弘)
大事件でした、一日も早い再建を願います、中七の「一朝に消ゆ」が適格な措辞で季語「冷じや」が動かない(貞郎)
「一朝に消ゆ」の表現が哀しい。早い再建を願っている。(ユリ子)
ボルシチは父の味なり雪催 早川恵美子 (5点)
どのくらいの年代の「父」なのだろう。ロシア文学にあこがれた世代の一人か、シベリア抑留された恨みをかこつ人か。(法弘)
托鉢僧時雨の銀座四丁目 森山ユリ子 (4点)
百銀座で托鉢というおよそそぐわない二つが、時雨の中で奇妙にマッチしている。(法弘)
歌舞伎座あたりであろうか、時雨の銀座での托鉢僧との出会い、作者の立ち位置を思う。(孝雄)
百穴にいにしへの声夕時雨 野口日記 (3点)
埼玉の吉見百穴だろうか。古代人の営みを思う。(法弘)
いにしへの声と詠んだところが巧みであると思います。(相・恵美子)
お墓なんでしょうか?。季語にいろいろ想起しています。(博子)
牡丹鍋軍議ぐつぐつ滾ちけり 早川恵美子 (2点)
牡丹鍋は煮えたぎり、軍議もいよいよ大詰め。(法弘)
赤ちやんのおててのゑくぼ冬ぬくし 石川由紀子 (2点)
無条件で愛らしい。(法弘)
七五三とてもお嫁にやれませぬ 永井玲子 (1点)
可愛い盛りのおてんば娘。早くもお嫁入りの心配?(法弘)
こんな七五三の句があっただろうか。しかし、七五三子を見て親ならばそのように思ったことのない人がいるだろうか。誰も句にしていないことを読まれたことに敬意を表します。(武夫)
今井なる江戸の町並み鵙の声 佐々 宙
奈良県橿原市の今井地区は、かつて「大和の金は今井に七分」といわれるほど繁栄した町。現在も多くの町家が残り、江戸の雰囲気を色濃く残す。鵙の鋭声が景色をきりりと整えている。(法弘)
転害門戦痕にぞ片時雨 今井温子
平重衡による南都焼き討ちや、三好・松永の戦さなどで東大寺の建物は何度も焼失したが、転害門(てがいもん)だけはその戦火をまぬがれて今に残る。害を転じるという名前のお蔭なのだろうか。平景清が源頼朝を暗殺しようと待ち伏せをした門なので景清門という別名もある歴史の証人たる門が片時雨に濡れる。(法弘)
<互選句>
時雨降る一打の鐘に湖北暮れ 石川由紀子 (9点)
一打の鐘が湖北の冬の厳しさを良く表している。(柳匠)
「一打の鐘」と「湖北暮れ」の取り合わせが素晴らしい響きとなりました(貞郎)
暮れ方の湖北らしい景で時雨と鐘の音が響いて来る様子がよく合っていると思います。(相・恵美子)
一打の鐘の音が、湖北の夕暮れのしんしんとした淋しさを表現していると思います。(ユリ子)
滋賀県の琵琶湖に北方と鐘の音。「一打の」に思いがこもっている。(順一)
一打の晩鐘にとっぷりと暮れてしまった琵琶湖。時雨降るの措辞より、旅人芭蕉の姿が思い浮かびます。そして「この道を芭蕉もゆきぬ初時雨」の青邨先生の御句があったことも。(はま子)
白菜の白に光の重さかな 野口日記 (7点)
白の光の重さと見たところが新鮮。(芳彦)
大鍋に重き木の蓋大根焚(だいこたき) 佐々 宙 (4点)
そのままの景を詠まれているのでしょうが情景が良く浮かびます (光男)
「大鍋に蟹茹で上がる時雨かな」鈴木まさ女の句を彷彿とさせました。(柳匠)
大鍋からもうもうと湯気が立っている台所、温そうですね。(春野)
「重き木の蓋」に着目したのが、大根焚と合っていいと思いました(眞登美)
凩のかき混ぜて行く人の群 児島春野 (6点)
「かき混ぜて行く」の表現が諧謔味があってよいと思いました。(芳生)
かき混ぜて行くが巧みだと思います。(柳匠)
人の群れが凩をかき混ぜていると表現しているうまいと思います(みつ子)
落葉踏む足裏(あうら)の温み陽のぬくみ 室 明 (6点)
足裏の温み陽のぬくみという表現に、晩秋の陽の温かさまで感じます(律子)
日溜まりの落葉を踏むと気持ちが軽くなり穏やかになります。実感がこもっている句です。(相・恵美子)
あうらで落葉の陽の温みを感じたところ新鮮な発見です。(芳彦)
藍甕の蓋ぴつたりと神の留守 西脇はま子 (5点)
藍甕の蓋も、神の留守もどちらも戸を閉ざすという細い糸で結ばれただけの面白みだが、そのシンプルな二物衝撃が好い。(武夫)
「ぴつたりと」にはっとしました。(順一)
しんしんと兵士の墓の雪帽子 中嶋昌夫 (5点)
若い兵士だったのでしょうか?もの言わぬ姿をしんしんと表現しました----(宙)
雪の静けさ冷たさと兵士の哀しさを感じます(美穂)
墓を覆う雪帽子から、国のために命を捧げた兵士を大自然が暖かく包んでいるように感じました。(明)
カメの首伸びて縮まる今朝の冬 原 豊 (5点)
カメの一連の動きが立冬の朝をより鮮明にしていると思います(律子)
季節を問わぬカメの動作ですが、季題と合っていると感じます。(春野)
カメの生態よくご覧に成っていますね。季語がピッタリです(早・恵美子)
おはじきは昭和の色の冬茜 西脇はま子 (5点)
ノスタルジーに溢れるとてもホッコリとする句だと思いました(美穂)
風花や風の子はまだ遊びをり 鹿目勘六 (4点)
冬の雨枳殻の棘研ぎ澄ます 室 明 (3点)
オアシスの井戸の話や寒昴 内村恭子 (2点)
水の星、地球のことを改めて深く考えさせられます。せめて日々の生活の中で水を大切にしなければと思います。中村哲医師の尊い献身の一生を思いつつ、「俳句を通して世界平和を」との有馬先生の願いが叶いますようにと祈るばかりです。(明)
赤シャツの女庭師の松手入 土屋 尚 (2点)
休むこと殊に勤労感謝の日 窪田治美 (2点)
働くだけが能じゃない!大賛成!(早・恵美子)
かきとカキ少し違ってみんな秋 永井玲子 (2点)
かきとカキの取り合わせの妙、下五の「みんな秋」が良いですね(貞郎)
煌めきのマンハッタン島聖夜かな 中川手鞠 (2点)
マンハッタンならではのきらびやかさ!メリークリスマス!----(宙)
聖夜のマンハッタン島の煌めきは美しく清らか。(ユリ子)
冬麗の古寺の灯籠織部焼 染葉三枝子 (2点)
灯明に浮かぶ秘仏や冬ぬくし 染葉三枝子 (2点)
「秘仏」が醸し出す「世界」と「灯明」、そして「冬ぬくし」、安らかな刻が流れてゆく。(孝雄)
厨子の中の秘仏が灯明に照らされている、冬ぬくしの季語になかなか観られない仏様なのではと想像しました(律子)
散紅葉薄暗がりに菩薩座像 榑林匠子 (2点)
散紅葉の彩りと御堂の「薄暗がり」との対比のなかに菩薩が浮かび上がる。(孝雄)
交番の指名手配書冬に入る 鹿目勘六 (2点)
季語の斡旋が上手いと思います (光男)
飴色の木の葉時雨のつぶてかな 長濱武夫 (2点)
木の葉時雨とした発想がよい。(芳彦)
連峰の白き稜線冬ざるる 浅井貞郎 (2点)
鰯雲遠州灘を目刺しをり 加茂智子 (1点)
鰯が目刺しになって遠州灘を行進しているのでしよう!----(宙)
落葉みな茶色き径になりにけり 佐藤律子 (1点)
渡し賃犬は十文文化の日 嶋田夏江 (1点)
江戸時代の犬の渡し賃でしょうか?ちょいと高いんではないの。船頭さん!(志昴女)
冬日さす池面に浮かぶスカイツリー 土田栄一 (1点)
冬の田の澳の社や茜雲 垣内孝雄 (1点)
荒涼と広がる冬田と茜雲のコントラストが美しいと感じます。(明)
赤松の大雪吊りの仕上がりて 荒川勢津子 (1点)
固まって街ゆく人等冬隣 相沢恵美子 (1点)
通勤者は急いでいるので固まっているようにみえるのが寒いから固まっていると思わせ冬隣りとあってると思います(みつ子)
風花や媼手織の草木染 竹田正明 (1点)
椋の実や昼静かなるはけの寺 土屋香誉子 (1点)
初冬や銀髪靡くマエストロ 森野美穂 (1点)
三四郎池玄帝の師弟句碑 浅井貞郎 (1点)
白無垢を迎へる神社冬紅葉 原 道代 (1点)
星冴ゆる駅前ライブに硬貨投げ 相沢恵美子 (1点)
駅前ライブに投げたコインの音が聴こえてくる。(玲子)
窓開けて一息吸ふや小六月 佐藤律子 (1点)
犬駆ける多摩の河原や小春風 土田栄一 (1点)
不意に開く観音堂や冬紅葉 榑林匠子 (1点)
雪囲ひ犬も入るなり角館 武井悦子 (1点)
角館の雪囲い、犬小屋も囲ってやるんですね。厳しい寒さに一緒に耐える仲間。雪解けを待とうね!!(志昴女)
松下村塾見し目に萩の秋日燦 内藤芳生 (1点)
越えられぬビル裂いてゆく冬三日月 佐藤博子 (1点)
無論現実ではないが、作者にはそのように見えたのであろう。荒唐無稽も時には面白い。(武夫)
小春日や汗ばみながら四千歩 片山孝子 (1点)
手庇に鷹の飛翔の一文字 山口眞登美 (1点)
語り継ぐ実朝の悲話雪催 高橋紀美子 (1点)
暗殺された源実朝。暗殺犯公暁。歴史の深さ、継続性を思いました。(順一)
AI(えいあい)のよみ込む俳句古暦 松山芳彦 (1点)
以上
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