天為ネット句会報2020年11月

 

天為インターネット句会2020年11月分選句結果

(作者名の後ろの点は互選点)
 ※特選句、入選句内の順番は互選点、句稿番号の順。また互選句は句稿番号順に並べております。
 ※一部インターネットで表示できる文字に置き換えております。ご了承ください。

   <日原 傳編集顧問選 特選句>

暮れ残る塩街道の木守柿             西脇はま子

海辺から内陸へ塩を運ぶために整備された塩の道。糸魚川と松本を結ぶ千国街道、直江津と信濃追分を結ぶ北国街道、岡崎と塩尻を結ぶ三州街道などが有名である。その街道沿いで目にした木守柿に焦点を当てた。「暮れ残る」という冒頭の措辞は意味の上では「木守柿」にかかる訳だが、かつての繁栄を忘れたようにひっそりとした現在の塩街道の様子を暗に示すような働きも生まれている(傳)。

暮れ方の塩街道の静かな景に木守柿はよく合っており、趣のある景が見えて来ます。(相・恵美子)

昔をしのぶ情景が想い浮かびます。(光男)

季語が薄暮の情景と街道の命脈を繋ぐ人たちの生活まで想起させてくれました。(博子)

ずっと人と物の流れを見守ってきた木守柿の景がいいと思いました(典子)

三枝子 ・日記・みつ子・正明・旭

油槽貨車霧から出でて霧に入る          中村光男

ガソリンや石油などを運ぶ油槽貨車。円筒形のタンクの列が、霧の中からあらわれ、また霧の中に消えてゆくというのである。濃い霧のなか、長く連なる貨物列車の一部だけが見えているのであろう。硬質の素材を幻想的にとらえた(傳)。

澄んで冷たい空気を感じる、深い霧の中の情景ですね。(春野)

「ターナーの汽罐車」を連想しました。(匠子)

芳生・泰山木

   <日原 傳編集顧問選 入選句>

野のひかり集まるところ小鳥来る         明隅礼子

広々と開けた野原のひときわ明るい所に小鳥たちが飛びかっている情景が見えて気持ちの良い句です。(明)

孝子・恭子・玲奈・香誉子・道代

身にまとふタータンチェック小鳥来る       石川由紀子

日常にある季節感がタータンチェックでくっきりと思い浮かびました。(万記子)

柳匠・三枝子・治美・那智子

南朝の御所の坊跡木守柿             今井温子

私の句の木守柿は塩街道で見ましたが、南朝の御所の木守柿の方が大粒で見事ですね。(はま子)

立哉・柳匠・眞登美

観月や水あかりして神楽殿            斎川玲奈
 

由紀子・三枝子

逝く秋や素数といふは限りなく          中川手鞠

数学を愛する心が伝わります。天文学的ですものね(早・恵美子)

治美

秋深し木の図書館の木の匂ひ           永井玲子

今時珍しい木の図書館に俳味を感じました。(順一)

流山市にある木の図書館の記事を目にしたのはいつだったか、深まりゆく秋 木の香の中に身を置きレポートを書く学生さんをそこに見た思いです (温子)

独り居に自問自答の秋の暮            片山孝子

ひとりでいるとああでもないこうでもないと自問自答するのが秋の暮にあってると思います(みつ子)

霧晴れて立山連峰指呼の間            浅井貞郎

晴れた日の、迫り来るような連峰の姿が目に浮かびます。(てつお)

杣仕事おわらぬ釣瓶落しかな           斎川玲奈

茂喜

パリ唄ふグレコ逝けりと暮の秋          森山ユリ子

連峰の白き稜線天高し              浅井貞郎

王宮へ騎馬隊の列秋の空             武井典子

鈴屋へ急なきざはし秋日差し           荒木那智子

    <互選句>

腰折りしままに山芋堀り進む           土屋香誉子

その通りなのでしょうが、何だかユーモラスです。(春野)

情景が浮かぶとともに、山芋を掘る作業の大変さを感じます。(美穂)

眞登美

表情筋怠けてばかりマスク中           中川手鞠

本当に!(典子)

表情筋から詩が生まれました。俳句は何でも詩にしてしまいます。(はま子)

勘六・玲奈

高齢に前期後期や草紅葉             てつお

お上の考えることは、ある意味滑稽。季語に救われる心地です。(博子)

勘六・恭子・夏江・久丹子

秋深し今後のことは未定稿            山根眞五

今後のことは世の中のことも自分のことも予測し難い、それを未定稿の言葉に託して言い切ったところがいいと思います(律子)

糶終へし三崎に響む野分波            阿部 旭

紀美子

修羅落す谺に熟るる信濃柿            早川恵美子

道代

冬帽子和服と登る神楽坂             酔猿

立哉

障子洗ふ覗き穴など付けてから          内村恭子

やってます、、、、子供のころもやった。孫が来て、嬉々として破いたり。障子張りはかなり楽しい作業です。(志昴女)

穴を付ける遊び心がほほえましく、うなづきながら笑ってしまいました。(悦子)

障子を貼りかえる前、ついついと・・解るように思います。(美穂)

爽籟やヨットは白き帆を上げて          瀬尾柳匠

紀美子

名月を報告し合うウェブ飲み           児島春野

洒落た報告会だと思いました。(順一)

黄葉の遠景なりし富士の嶺            窪田治美

山梨県側でしょうか、富士山の裾野を隠すような紅葉・黄葉が目に浮かびます。(酔猿)

黄落や味噌蔵に干す木の柄杓           高橋紀美子

田舎の土壁のみそ蔵を思い出しました。何に使う木の柄杓なのかな。(志昴女)

味噌蔵の静かな刻を感じます。(匠子)

黄落と味噌の色合い、それに昔ながらの木の柄杓がよく合っていると思いました。(眞登美)

史子・由紀子・礼子・道代・泰山木

探り聴く短波放送秋の声             土屋 尚

やっと探り当てた短波放送。よかったですね。(芳生)

深夜放送を聞いていると耳障りなノイズと共に短波放送が流れてくる。興味をそそられて探り聞く気持ちはよく解ります。(相・恵美子)

史子・立哉

大根煮るコトコトことと昭和かな         齋藤みつ子

「大根炊」は京都了徳寺の太鼓煮の行事ですが中七の「コトコトことと」のリズムが良い、如何にも昭和の雰囲気がある(貞郎)

秋晴や溜息すらも透きとほる           森野美穂

澄んだ青空を見上げて、愁いも溶けていったでしょうか?(博子)

恭子・万記子・尚・治美

叡山の山門固めいぼむしり            内藤芳生

三門に鎌を 持ち上げる「いぼむしり」、その姿は「固め」とも。(孝雄)

楓・玲子

花野道山羊の尾つぽの見え隠れ          相沢恵美子

花野と山羊。絵画的ですね。(ユリ子)

色とりどりの秋草を山羊たちも楽しんでいるようです。(明)

初にして納めといたす秋刀魚かな         榑林匠子

お高くなった今年の秋刀魚、いたすという言葉選びが滑稽味があっていいですね(律子)

正明

柏手は力を込めて神無月             武井悦子 

コロナ禍の不安を払うかのような、柏手の澄んだ音が心地よい。(匠子)

万記子・泰山木

色なき風スワンボートの尾撫づる         木村史子

「スワンボートと色なき風」のとり合わせが、秋の侘しさと空気感をよく表現していると思います。(ユリ子)

秋桜手話の少女等真白き歯            今井温子

秋桜の花の色と少女たちの歯の白さが際立ちます。(眞五)

香誉子

秋光や鬣(たてがみ)映ゆる御﨑馬        室 明

夏江

秋惜しむ端切となりし唐衣            早川恵美子

みつ子・香誉子

駈けぬけし伽羅の香りの龍田姫          佐藤博子

夏江

港江の浮世絵のごと雁の棹            竹田正明

言葉遣いが端的ですっきりしており、綺麗な景が見えて来ます。(相・恵美子)

虫すだくハードボイルド最終章          永井玲子

ワクワクします。虫さんもきっとエンディングを楽しみにしていらっしゃるようで、季語の斡旋が上手です(早・恵美子)

手鞠

竜田姫仕上げに散らす黄金色           森野美穂

芳彦

夕富士に自在なうねり稲雀            高橋紀美子

稲雀の群て波打つごとき情景が見えます。(光男)

どっしりと優美な姿を見せている夕富士とうねるように飛び交っている稲雀、動と静の対比が美しいです。(明)

芳生・柳匠

柿簾くぐり出づれば甲斐の山           中村光男

青邨先生の「「干柿の金殿玉楼といふべかり」の句をおもいだしました。(はま子)

ふと口をついて出たのは武田節でした (温子)

柿の簾をくぐったら雄大な甲斐の山々の景が広がった 。甲斐の国らしい情景と思います。(眞五)

茂喜・春野・楓・日記・旭

観覧車近づいて行く秋の空            鹿目勘六

観覧車と空が同類であるかのような詩情を感じました。(順一)

水晶の圧電正し青邨忌              松山芳彦

玲子

万両や隔たりありて鮮やかに           山口眞登美

史子

まなざしのうすねず色に秋を透く         小髙久丹子

うすねず色に透く秋、それは色なき風のわたる「素」であろうか。発想が新鮮な句。(孝雄)

木で組みし星の飾りやハロウィン         三好万記子

茂喜

後醍醐の荒ぶる海や天の川            瀬尾柳匠

隠岐の島からか境港からかは分かりませんが、大きな風景です。(酔猿)

手作りのプリンの届く十三夜           荒川勢津子

いいお友達が近くにお住まいでしょうか。手作りのプリンを戴きながらのお月見、しかも後の月。楽しいですね。(志昴女)

日記

返り咲く花の命の白さかな            鈴木 楓

勢津子・久丹子・芳彦

今朝の冬再就職の夫の背             野口日記

再就職の夫を見送る景か、再就職に挑もうとしている夫なのか、「今朝の冬」が背とともに物語る。(孝雄)

少し緊張の面持ちで夫を送り出した日が私にもありました ご健康をお祈りいたします (温子)

勢津子・手鞠

神無月ひかり遍く三番瀬             鈴木 楓

初冬の海原の光に心洗われる思いです。(悦子)

抱き起す萩の紫身に受けて            石川由紀子

実感として解ります。花が多くつき、萩の枝はしなり・・起こすときの実感ですね。(美穂)

孝子・紀美子

外国で団子作る子十三夜             齋藤みつ子

玲子

青蜜柑先へ進むの意味違ふ            石川順一

「青」が若者に連想を誘い、親世代の呟きを聞くような気がしました (典子)

片時雨縁切り寺の石仏              竹田正明

礼子・芳彦

百度石願ひ届くや神無月             泰山木

神無月にお参りする百度石 結果は・・・(夏江)

正明

旅帰り金木犀の香る中              上脇立哉

眞五

土産にと猿のこしかけ峡の村           三好万記子

『猿のこしかけ」は癌の特効薬だそうです、良い物を土産にもらいましたね、(貞郎)

訓練の掛け声遠く秋の海             嶋田夏江

海上保安庁か海上自衛隊の訓練を想像しました。秋の海が寒そうです。(酔猿)

秋晴へ尻をもたげて畑仕事            山口眞登美

「尻をもたげて」の措辞が的を得ていていいですね。(てつお)

身に入むやふと口を衝く郷里ことば        てつお

いくつになってもふと口に出る郷言葉、自分ではいやと思っていないのでは。(光男)

我にかえりみて、秋田弁をつぶやいてみました。(悦子)

那智子

用水に水着く紫式部かな             佐藤博子

孝子・玲奈

主食ではないが主役の酸橘かな          山根眞五

勘六

虫すだく暗室に旅広げれば            内村恭子

手鞠・久丹子・那智子

艶やかな柿もぐ竿や空の蒼            阿部旭

柿と空の色の取り合わせが良いと思いました、(貞郎)

怖きもの夜に広がる鱗雲             上脇立哉

夜空いっぱいの鱗雲、恐るおそる夜空を見上げてしまいました(律子)



孔明の知略に溺る秋灯下             内藤芳生

諸葛孔明の物語に時を忘れる秋の夜。お若く楽しそうで素晴しいです。(ユリ子)

夢中になって読んでいらっしゃるご様子が伝わります。でも目を大切にね!(早・恵美子)

軍司孔明の知略の妙に溺れたら、長い秋の夜もアッという間ですね。(てつお)

旭・勢津子

水潺潺(せんせん)野火止用水九月尽        岡崎志昴女

由紀子・楓・尚

                           以上

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