天為ネット句会報2021年1月

 

天為インターネット句会2021年1月分選句結果

 ※特選句、入選句内の順番は互選点(選句者名を記載しています)、句稿番号の順。
  また互選句は句稿番号順に並べております。
 ※一部インターネットで表示できる文字に置き換えております。ご了承ください。

   <日原 傳編集顧問選 特選句>

狐火を探しにいかれたまひしか         佐藤博子

有馬先生への弔句であろう。疑問の助詞で終わる口調が、ご逝去が信じられない反芻するような気持ちをあらわしている。「狐火」という幻想的な季題もよく働いている。有馬先生には「飛び上る火は子狐の火なるべし」「狐火の村へ携帯電話かな」といった「狐火」の句がある(傳)。

亡くなられた師を、「狐火を探しにいかれたまいしか」と偲んで、詩がある。(武夫)

有馬先生の そして天為誌の先人の方々のご冥福をお祈り申し上げます(温子)

恭子・佳久子

先生の猫の句拾ふ聖夜かな           西脇はま子

急逝された有馬先生を偲びつつ聖夜に句集を繙く。有馬先生の猫の句といえば、「猫の子のどう呼ばれても答へけり」「もう既に子猫が申す好き嫌ひ」「親猫の尾の偉に子猫たはむれて」などなど数多ある。「雪月花」の句ではなく、「猫」の句を追ってゆくところに味がある。愛らしい猫のすがたに興ずる先生の面影の髣髴とするのが救いである(傳)。

イエスに纏る句も思い出される心魅かれる一句でした(博子)

正明

   <日原 傳編集顧問選 入選句>

遠州の風や切干濃く甘く            土屋香誉子

泰山木・芳生・紀美子・佳久子・手鞠

胸深くたたむ悲しみ冬牡丹           西脇はま子

冬牡丹の中に悲しみがしみ込んでいく(眞五)

いったいどんなことがあったのか想像させられる一句です(柳匠)

勢津子・那智子

初空へ白き鳥飛ぶ師の詩魂           妹尾茂喜

白き鳥と師の詩魂の取り合わせがぴったりで素敵な句です。(相・恵美子)

由紀子・楓

行く年や大海原に向かう船           児島春野

船の名は地球号。乗組員は人類。ノアの方舟を思います。(万記子)

玲奈・楓

別れゆく土星木星年惜む            土屋 尚

雄大な景色が大きな季題に相応しいと思います。(春野)

柳匠

姫街道さらに抜け道枇杷の花          榑林匠子

尚・恭子

初烏天地返しの田に群るる           浅井貞郎

天地返しが新年の季語と呼応する。(ゆかり)

海神の師の句を胸に年の暮           竹田正明

紀美子

枯木星難民の列続きけり            長濱武夫  

    <互選句>

冬ぬくし点字の山をすべる指          石川由紀子

勘六・三枝子

大縄跳び一糸乱れず勝ち上がる         瀬尾柳匠

跳ぶ方も回す方も緊張感が漲っている。優勝できたか気になる。(ゆかり)

冬菜畑てんとう虫と立話            今井温子

メルヘンチックな句ですね。(眞五)

突然に師をお見送りした私たちの心境を詠まれたのでしょうか。先生の小さな命への優しいまなざしを思い出します。(明)

みつ子

かいつぶり潜りゐること誰も見ず        明隅礼子

好奇心の旺盛なかいつぶり・・密やかに根の国を覗きにいったのでしょうか。(博子)

数へ日や自粛の路地を猫の影          竹田正明

自粛の路地が効いています。猫の影で静まり返った路地を上手く表現されています。(相・恵美子)

コロナ禍の深閑とした露地を猫がよぎる。取り合わせの妙。(ユリ子)

道代・由紀子・旭

父の手の凧を揚げるや夢の中          早川恵美子

日記

初夢の人を待ちたるエアポート         長濱武夫

出逢いの場所-別離の場所エアポートが佳いです(眞五)

初夢の人を待つエアポートもまた夢の中かと思わせる幻想的な句と感じました。(万記子)

嫁ぐ日の近しマフラーやはらかに        野口日記

美穂

冬の星再び逢へぬ星もあり           森野美穂

冬の星再び逢うことのない星もあるとしたところ、有馬先生と重なり悲しみを覚える。(芳彦)

星となってしまわれた師、もう逢えないのでしょうか… 寂しさが募ります(律子)

中七の措辞に先生の俤が重なり、つきぬ想いを共感致しました。(博子)

先生のことですね。しみじみと感じます(早・恵美子)

シャッターの絵は若冲よ冬菜売る        荒木那智子

若冲と冬菜の取り合わせに惹かれました。(てつお)

眞登美・美穂

太陽の膨らんで来る初茜            浅井貞郎

初茜は確かに太陽がゆっくりと膨らんでいくようすだと感じられます。(明)

太陽の膨らんでくるは、初茜の説明とも見ることはできるが、初春を寿ぐ、一句一章の句として佳い句だと思う。(武夫)

初茜を「太陽の膨らんで来る」と詠う作者。発見がある。(孝雄)

玲奈

なまはげの蓑ゆさゆさと声猛し         武井悦子

なまはげはテレビでしか見たことがありませんが、「蓑ゆさゆさと」の情景描写により、なまはげの熱気が伝わってきます。(はま子)

冬の星出そろひギリシャ神話かな        高橋紀美子

冬の星座にはロマンがありますね。(ユリ子)

ローマ神話や北欧神話も思い浮かびました。(順一)

泰山木・旭

色町の名残はあらず暮早し           上脇立哉

防人の妻恋ふ島の冬菫             熊谷佳久子

冬菫に惹かれました (夏江)

季語の冬菫で健気で可憐な妻の姿が一気に浮かびました(律子)

久丹子・勘六

ぽつかりと天に穴ある初景色          芥 ゆかり

ぽっかりと天に穴があるのは何故か。それは作者の胸に穴があるからだ。 追悼の気持ちの感じられる句である。(武夫)

淋しさを上手に表現為さっておられます(早・恵美子)

雅明

介護棟全室灯る聖夜かな            泰山木

心温まる情景が詠まれている (光男)

医療従事者の方の日々の労苦を思い、患者さんの回復を願う、そして作者は「聖夜」に祈る。(孝雄)

面会自粛の中で介護職員さんがささやかなクリスマスパーティを催しているのが、目に浮かびます。(酔猿)

治美・立哉・史子・尚

初御空劫初のごとき青さかな          鈴木 楓

今年の元旦の空の色は見事でした。中七に同感(明)

橙や武蔵野台地晴れわたり           山口眞登美

久丹子・玲子

天上の恩師目覚めよ帰り花           早川恵美子

芳生・尚

窓枠にしつぽりと見ゆ冬の山          齋藤みつ子

雅明

丸々と太らせてより薬喰            内村恭子

そういうことです、人間て勝手だ、、、、しかも美味しいんだよ!(志昴女)

いのちを頂戴するのならより効果的に。シニカルな視点が面白い。(ゆかり)

玲子・香誉子

天井絵の花に冬蝶迷ひけり           斎川玲奈

天井絵の花に冬蝶が迷い彷徨う姿はなんとなく哀愁を覚える。(芳彦)

大雪や抽斗しめて師の逝けり          高橋紀美子

「抽斗しめて」の措辞が良い。(てつお)

中七に師のお人柄を感じます。(春野)

美穂

きりたんぽ訛り懐かし里の味          武井悦子

秋田県の特産品きりたんぽを食べる度に故郷の事を思い出すのですね季語「きりたんぽ」が効いています、(貞郎)

極月の訃報に赤門慟哭す            山根眞五

有馬先生のご訃報に、私も同じ気持ちです。(ユリ子)

茂喜・玲奈

年の瀬の遠回りする陽射しかな         三好万記子

忙中閑。忙しないはずの年の瀬にもぽっかりと、遠回りするような時間のあるもの(耕)

クリスマス千の燭光世を照らす         森山ユリ子

コロナ過で暗い今の世界にあってクリスマスの光は世界を明るくします、中七の「千の燭光」がきいています、(貞郎)

丸善の書を買ふ列に年惜しむ          三好万記子

丸善という少々ノスタルジックな響きを持つ書店名が年惜しむの気持ちをよく表していると思います(柳匠)

史子

絵すごろく道草多き子が上がる         芥 ゆかり

「道草多き子」の措辞が良い。(てつお)

何時も道草ばかりしている子が、道草をせず絵双六の上りになった、母親のやさしい目が捉えた、目出度いお正月の一齣。(はま子)

子ども逹がコロナに感染しにくいのはひとすじの光です。その子ども逹がたくさん道草をして豊かな人生をと、この句からあらためて思いました。(万記子)

「道草多き」が双六の道筋と小さい子供の下校の様子の両方をイメージさせて、ふくよかな句と思いました。(眞登美)

道草多き子が上がるの表現がよいです。道草は成功の糧ですね。(相・恵美子)

道草するのも悪いことばかりではありません。すごろくは人生にも似ていて面白いですね(律子)

道草と言う言い方にユーモアを感じました。(順一)

久丹子・恭子・香誉子・三枝子・悦子・道代・匠子・手鞠

若菜野の平らかなるはめでたけれ        小髙久丹子

温子

枯山の麓でバスの折り返す           鹿目勘六

バスの折り返し地に、何もない景が浮かびます。(酔猿)

耕・夏江・正明・立哉・匠子

極月の密なき街の風のこゑ           鈴木 楓

治美

蜜柑むく口過ぎし日の淋しさに         てつお

口過ぎし日の淋しさに同感です。あるあるです。蜜柑の色が見えるようです。(玲子)

勢津子

失ひし師の影さがす冬帽子           室 明

失ひし師の影を探している冬帽子があるとしたところの冬帽子に詩的感覚見えてくる。(芳彦)

冬帽子に師を思い出す寂情が伝わります。(酔猿)

朗人先生の代表句の一つ「失ひし物を探しに冬帽子」をふまえた追慕溢れる句。冬帽子を被れば先生の「やぁ」という声が聞えそうですね。(はま子)

楓・泰山木・治美・紀美子・悦子

室の花マネキン服を脱がされて         相沢恵美子

立哉

ビル壁に走るテロップ年の暮          中村光男

史子・春野

凍つる星点滅のみの赤信号           染葉三枝子

匠子

霜の夜の既読にならぬラインかな        佐藤律子

既読にならぬラインとは悲しい響きです。(みちよ)

どてら着て遠嶺の白を包み込む         内藤芳生

雅明・正明

オリオンや眼鏡の奥の師の瞳          相沢恵美子

有馬師のご逝去は私の胸にも大きな穴が。それを直接言わないでの表現。有難うございます。(志昴女)

有馬先生を偲ぶ良い句ですね、冬の夜空に輝く季語『オリオン」が光っています、(貞郎)

眞登美・茂喜・日記

目を入れて拝謝の達磨年送る          荒川勢津子

那智子・悦子

ねんねこの子の温もりをいとほしむ       中川手鞠

子は母の温もり、母はこの温もりを知る「ねんねこ」。お子様は立派になられたことでしょう。(孝雄)

勘六・夏江・日記

師走六日師は天啓に導かれ           妹尾茂喜

勢津子

少年の引き摺る鱈や雪の道           阿部 旭

北国の生活が上手く表されている (光男)

手鞠

足跡をつけ足跡を残し雪            森野美穂

雪に託した思いに切実さを感じました。(順一)

香誉子

蜜柑たわわ日本橋より七十里          榑林匠子

東海道を少し歩きました。宿場宿場には日本橋より何里、と。思い出します。蜜柑の色が美しいことでしょう。(志昴女)

ポインセチア笑顔の裏の赤き嘘         中村光男

みつ子・温子

冬麗湖北に波は光りをり            酔猿

みつ子

師の背中ひたすら追ふて冬夕焼         佐藤律子

本当に先生の背中を追う月日でした。(芳生)

茂喜

忽然と師はシリウスとなり給ふ         森山ユリ子

あまりにも突然のことで、言葉もありません。でも先生は人の何倍も生きられて、今も皆様の心の中で生きておられると思います。(早・恵美子)

由紀子・旭・佳久子・三枝子

霜柱硝子細工の兵馬俑             石川由紀子

霜柱をガラスの兵馬俑ととらえる感性に脱帽 (光男)

那智子

                        以上

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