天為ネット句会報2023年1月
※特選句、入選句内の順番は互選点、句稿番号の順。
また互選句は句稿番号順に並べております。
冬の雷竹百幹の響きかな 浅井貞郎
冬の雷が広い竹林に鳴り響いているのである。「竹百幹」と数を示したことで、冬の竹林の寒々としたさまが彷彿としてくる。小林康治に〈大寒の竹一幹を切り放つ〉の句がある(傳)。
楓
露こおるマザーグースの子守唄 木村史子
「マザーグースの唄」はイギリスの伝承童謡をいう。そのなかに何曲か知られた子守唄がある。「露こおる」「露凝る」は冬の季語。珍しい季語が一句のなかにうまく収まった(傳)。
クリスマス猫の里親決まりたる 荒木 那智子
何よりのプレゼントです。(博美)
何とも心が温かくなる御句。クリスマスに相応しいと感じました。(美穂)
里親が決まったのが降誕祭というのも猫のこれからに希望が持てます(律子)
猫にとっても里親にとっても新しい家族が決まりました。双方へのクリスマスプレゼントです。(百り子)
子猫の里親がクリスマスの日に決まった。貰われてゆく先にお子さんがいるのなら子猫はサンタさんの贈り物。里子に出す方も、子猫の幸せを願いながら別れを惜しんでいる。クリスマスの季語が味わい深い句にしている。(はま子)
道代、立哉、正治
寄鍋や夫とゲバラの話など 熊谷 佳久子
昭和を生きた二人 「ゲバラの話」でお二人がくっきり見えます (美惠)
暖かい寄せ鍋を食べながら、夫とチェ・ゲバラの話をする、、、何か凄いご夫婦ですね!(志昴女)
寄鍋とゲバラの距離感がよいと思いました。(恭子)
全共闘世代の夫婦だろうか。ゲバラと寄鍋のミスマッチが時の経過を感じさせる。(博行)
「チェ・ゲバラ」と呼ばれ愛された革命家と、みんなの好きな「寄鍋」の取り合わせが抜群!(博子)
久丹子、順一
牛小屋に大鋸屑届く聖夜かな 相沢 恵美子
これから厳寒を迎える牛小屋の牛さんに大鋸屑のプレゼント 新しい大鋸屑が香ってきます 聖夜が素敵です (美惠)
順一、玲子、尚、香誉子
たましひもあたたまりゆく日向ぼこ 森山 ユリ子
上五中七のひらがなで心までしみじみ緩んでいく様子がよくわかります(ゆかり)
魂の形が見えてくるようです。(恭子)
こんな日向ぼこ目指したいですね。たましいがあたたまる、心に残る表現です(律子)
郁文
冬凪や島影黒き瀬戸の海 井上 澄江
錆び凝る戦車の瓦礫虎落笛 岡部 博行
奉仕者(ほしゃどん)の樟脳匂ふ神楽舞 たかほ
初釜や利休生誕五百年 山根 眞五
ひとり出て名残の空を見てをりぬ 土屋 尚
盤上の雁木囲ひや雪催 金子 肇
落日を測る石門冬至祭 岡崎 志昴女
嚏ひとつ竹割く父の肥後守 金子 正治
史子、 紀美子、百り子
初夢は世界一周船の旅 合田 智子
世界一周せめて初夢でもみたかった。よかったですね。(佳久子)
満ち来たる潮の高鳴り寒北斗 浅井 貞郎
潮の高鳴っている様子と季語の取り合わせが効いています。(相・恵美子)
由紀子、玲奈、楓
粋筋が揃う桟敷や初相撲 日根 美惠
勝負後の力士の肌から発する湯気の色気、粋な姿に感動する観客の姿が目に浮かびます。(郁文)
初場所に和装で着飾った佳人達、おめでたいですね。(春野)
史子
街師走古書肆の奥に待ち合せ 内村 恭子
師走の街なかで待ち合わせならこういう場所が喧噪をさけられるのでよいかも。暫しの落ち着き(伊葉)
冬月の蝕あかがねや配流の地 斎川 玲奈
あかがね色の月 月食 配流の地 季語の冬月で鮮やかです (美惠)
句の背景にストーリーを感じる。(てつお)
山迫る雪の石狩カムイの地 竹田 正明
眞登美
やはらかにゐて大年の日の暮るる てつお
孝子
大鳥居海風を受け初詣 泰山木
厳島神社を想像(眞五)
生も死も枯野に返す風の声 牧野 桂一
孝子、楓
日記果つ人に会ひし日細やかに 土屋 香誉子
人と会った日は心が動く。細やかにの措辞からきれいな筆跡や人柄を思い浮かべた。(ゆかり)
人との出会いを大切にする作者の思いが伝わってきます(肇)。
澄江、玲子、立哉
狐火や家並ぽつぽつ湖畔村 相沢 恵美子
上5の季語の古風さと下五の現代性が素敵ですね。(たかほ)
小春日や大人のための絵本会 井上 澄江
「大人のための絵本会」というのが、「吾子俳句」「孫俳句」を越えた普遍性を表現し得ている。(桂一) 「
小春日」が効いていますね (光男)
出版不況の中、絵本は大人が自分用に買うことも多く好調だという。季語と中七下五の取合せが絶妙。(博行)
絵本は子供だけでなく大人も楽しめます(智子)
香誉子
一族の鎖あやふや海鼠噛む てつお
現代の世相を上手く捉えている(霜千住)
博嗣、久丹子、匠子、順一
歌声の昭和浪漫に酔ふ冬日 片山 孝子
正明
はんぺんの白浮き立てりおでん鍋 金子 肇
仕込んでいる時、崩れないようにはんぺんを最後に入れ、それがふわっと浮いてくる様が匂いと共に見えました。(スカーレット)
一礼や山門くぐる毛糸帽 榑林 匠子
毛糸帽のお方の一礼、「景」が開けます。(孝雄)
寒さの中の初詣りの様子がうかがえます(智子)
陽子
日溜まりを独り占めせむ水仙花 阿部 旭
冬の日溜りの中すっくと咲く水仙、気高さがみえます(智子)
あたらしき伊達衿の箔実万両 河野 伊葉
新年を迎えるにあたり、伊達衿にも気を使って新しくされた心意気が嬉しいです。(スカーレット)
朗人忌の天の奥まで星冴ゆる 牧野 桂一
先生は何もかもお見通しですね(夏江)
子と作る餃子二百個クリスマス 宮川 陽子
クリスマスと餃子の取り合わせの面白さ。200個も!(肇)。
今日水
木守柿失せてそれから空暗し 上脇 立哉
何という繊細な感覚をお持ちの方なのでしょう!(スカーレット)
匠子
戦術のごとく並びぬ浮寝鳥 明隅 礼子
「戦術のごとく」が 面白い (光男)
「戦術のごとく」がサッカーのフォーメイションを思わせて頷いてしまいます。(てつお)
旭、紀美子、日記
寒晴の船笛サキソフォンのごと 佐藤 博子
船笛を上手く表現している(霜千住)
極月の暮れて本所の七不思議 鈴木 楓
本所の七不思議、江戸情緒ですね!(志昴女)
史子
二世帯を仕切るドア開く年の夜 町田 博嗣
一年の最後の大晦日に二世帯のドアが開いた対比が効いています。(相・恵美子)
立哉、今日水
防具袋どんどん遠ざかる枯野 木村 史子
面白い景です。剣道の防具袋など想像しました。(たかほ)
歳重ね酢のもの増えし節料理 日根 美惠
全く同感させられる句でした。(郁文)
全くその通りに~若い頃見向きもしなかった叩き牛蒡が上手になりました。(博美)
リュック背に杖突く二人今朝の春 妹尾 茂喜
日記、道代
着ぶくれの衣を持たぬ雀かな 郁文
正明
雪女郎夜汽車の窓を覗きゆく 中村 光男
人を探しているのか、夜汽車の窓を覗く雪女郎。物語る句。(孝雄)
叩きつけるような雪の夜を思います。(春野)
「覗く」が雪女郎の不気味さを醸し出していいと思いました。夜汽車の寒さを感じます。(美穂)
尚
左義長の片目の達磨後むき 金子 正治
匠子
訳ありの林檎訳知り顔で買ふ 石川 由紀子
「知り顔で買ふ」が面白い (光男)
訳ありの~釣られ文句に弱いです。(博美)
那智子、勢津子
義士の日の街の見取り図閲覧す たかほ
那智子、今日水
地下室より漏れくるチエロや煤籠 熊谷 佳久子
正治
我影が我をみつめる枯野かな 鉄瓶
枯野に立つと人は思索的になる。作者が内省している上五中七の措辞に納得させられる。(博行)
枯野での自問自答。春に飛躍を期すのか!(憲史)
影は後からも前からも同じ形。目鼻はありませんが案外見つめられているのかも。(手鞠)
無人駅降りれば小さき雪だるま 霜千住
ほっとする風景に暖かさを感じます(夏江)
久し振りの帰郷。無人駅とはなったが小さくてもこのお出迎えが嬉しい(憲史)
小さな雪だるまと無人駅が呼応し、寂寞の景(ユリ子)
日記、陽子
聖夜足るアイスチョコバー一本で 岡崎 志昴女
我家では聖菓を故もはなく、妻とふたりのモンブラン。作者の生活を思う。(孝雄)
博嗣
「レット・イット・ビー」風に落葉は唄ひけり 野口 日記
風に落葉が唄っている表現が効いています。歌が聞こえてくるようです。(相・恵美子)
純白の湯豆腐吹くや共白髪 荒木 那智子
そして偕老同穴(眞五)
枯蓮のがくりと落武者の無惨 児島 春野
枯蓮と落武者の取り合わせが響き合っていると思いました。(美穂)
雪の夜のやはらかく煮る獣たち 内村 恭子
寒い雪の夜に獣の肉を煮る、薬食い。これも江戸情緒だな!(志昴女)
ちと不気味。ああ薬喰のことだと納得。(佳久子)
久丹子
山道の石垣の上冬紅葉 今日水
旭、眞登美
マフラーに編み込む君の好きな色 森野 美穂
ユーミン50周年記念アルバムを聴きながら選句。この句から青春の甘酸っぱい思い出が蘇りました。(手鞠)
お幸せに!(早・恵美子)
由紀子、澄江、旭
一月の坂東太郎滔滔と 鈴木 楓
私は筑紫次郎の傍で成長したので太郎には敬意を払います(眞五)
初芝居オペラグラスの中の恋 芥 ゆかり
贔屓にしている役者がいるのだろう。オペラグラスの中の恋、と上手く表現している(霜千住)
少し甘めですが、推しの気持ちがよく分かります。(恭子)
「オペラグラス」に閉じ込めた初芝居の恋!への視点に愕きです(憲史)
玲子、道代
ガリ刷りの譜面を栞る古日記 西脇 はま子
昔懐かしい。歌声喫茶など思い出す。「譜面を栞る」には、現実感がある。リアリティーを獲得している。(桂一)
誰でも持っているような体験ですが、中七が良いですね。(たかほ)
冬ぬくし広島弁の渡し舟 冨士原 博美
寒さも言葉ひとつで温かく感じる。心のほっこりした一瞬が伝わってきました。(博子)
夏江
虚子立子繋ぐ寿福寺実万両 須田 真弓
寿福寺に繋がりのある事を一句に詠まれたことに惹かれました(温子)
ほぼ漢字だけの、新年らしいきりりとした句。(ユリ子)
勢津子
綿虫の漂ふひとつ手に包む 原 道代
さりげない所作の句、とても洗練されている。(伊葉)
手の皴は生きた勲章冬至風呂 荒川 勢津子
よく頑張りました!温まってね(早・恵美子)
正治
凍星の語るがごとく光り出す 霜千住
大気の揺らぎで星が瞬き出した。語るがごとくと思ったのはずっと冴えた星空を眺めていたからこそ。(ゆかり)
幻想的なイメージ(芳彦)
凍星と交信しているようなるひととき。煌めきを想像して惹かれました。(博子)
木の葉降る音無き音を累ねつつ 岡部 博行
音無き音という表現に読み手の想像力が膨らみます。『累』を選ばれたのもとてもいいです(律子)
光り出す冬三日月に星生まれ 小栗 百り子
荘厳さを感じました(温子)
柚子一つ浮かべひとりの贅沢か 片山 孝子
旭
歌がるた小町の顔は後ろ向き 児島 春野
那智子
爆撃に祈るほかなき去年今年 佐藤 博子
玲奈
勾玉は命の形冬木の芽 今井 温子
歴史は続くって感じが致します(早・恵美子)
由紀子、玲奈、正明
雪晴や生活の音の響き初む 中村 光男
陽子、孝子
神木にひと声高し寒烏 原 道代
芭蕉の名句を連想しました。(ユリ子)
滝の音残し熊野の山眠る 小栗 百り子
「滝の音残し」というところに景色の移っていく姿がよく描かれている。(桂一)
山々の深い眠りの中に聞く那智の滝(温子) 抒情詩的なイメージ(芳彦)
真冬でも那智の滝は完全に凍てつくことはない。眠る山に抱かれながら滝壺目がけて流れ落ちる。その滝音の響きは将に那智の滝・神の滝。(はま子)
春野、尚、正治、眞登美、澄江
初夢や西湖十景濃く淡く 山根 眞五
西湖十景に初雪が降り、ますます素晴らしい景色ですね。懐かしく思い出しました。(佳久子)
真青なる空を捉へて氷面鏡 阿部 旭
風生の「しだれざくら」の句の本歌取りか。流れるような調べの良さがあります(肇)。
晴れ渡った青空をしっかりうつして氷面鏡が美しく輝いています。捉えてが良いと思います。(百り子)
極月や五つ先まで赤信号 石川 由紀子
12月の気忙しさが伝わってきます。でもイライラ運転は事故の元。ゆっくり行きましょう!(手鞠)
正治
辛き日をパステル色のマスクして 野口 日記
博嗣、香誉子
歳晩や時差ある国に翔び立てり 佐藤 律子
年末、海外に住んでいる人が、お正月を迎えるため里帰りをするのでしょう。「飛び」ではなく「翔び」から心の昂揚が感じ取れる。(はま子)
紀美子
桃割れや黒髪匂ふ初写真 永井 玲子
正月の明るさが滲み出ている(芳彦)
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