天為ネット句会報2023年10月

 

天為インターネット句会2023年10月分選句結果

 ※特選句、入選句内の順番は互選点、句稿番号の順。
  また互選句は句稿番号順に並べております。

  <福永法弘同人会会長選 特選句>

赤チンで育ちし膝や敬老日               芥 ゆかり

バンドエイドなどなかった時代、切り傷、擦り傷にはとにかく赤チン。「育ちし膝」という言い方が面白い。 (法弘)

子供は転んで怪我して育ってゆく。昭和の時代、怪我には赤チンだった。懐かしさと俳諧味に拍手。(博行)

昭和の子たちはそうでしたね いつの間にか敬老の日のお祝いが来て(美惠)

昭和へのノスタルジア。(肇)

私もそうでした昔はそれで直っつたのですもの(みつ子)

昭和のはじめ大人用の自転車の三角乗り。怪我をすれば赤チンーそうゆう時代があった(勢津子)

懐かしい薬ですね(早・恵美子)

空き地もあったし、ガキ大将もいたし、赤チンも・・。一瞬で時空を越えた、敬老日の一人として共感。(博子)

老いとともに悪くなる自分の膝を見て子供のころを思いだすという懐古句(郁文)

万記子、尚、三枝子、真弓

神々の火遊び白花曼珠沙華               小栗 百り子

曼殊沙華の花は手花火に似ている。白花は神々の火遊び。(法弘)

  <福永法弘同人会会長選 入選句>

金毘羅の七百五段木の実降る              熊谷 佳久子

まだ行ったことがないので、足腰の丈夫なうちに、705段を自分の足で登ってみたい。(法弘)

調べが美しい。情景が目に浮ぶ。(ユリ子)

七百五段の石段に木の実が降る景は豪快ですね。(相・恵美子)

安易なものではなく疲労困憊で、大変だったのかもしれませんが、「木の実降る」と言う着地点、季語の斡旋にふと安堵感がよぎるのです。(順一)

伊葉

草の実や何でもママに教えたい             野口 日記

ママに甘えて、「賢いね」「よく出来たね」と褒めてもらいたい。(法弘)

学者牧野富太郎の再来かしら?(憲史)

立哉、香誉子

鴎外は娘に甘しネクタリン               芥 ゆかり

『甘い蜜の部屋』(森茉莉)、娘を溺愛する父親。父親は概して娘に甘いが、その代表格が森鴎外。桃の一種、甘い甘いネクタリンを持ってきたのがお見事。(法弘)

ネクタリンの甘い響きと娘への甘さが合っている。(博美)

日記

高々と牛追ひ唄や塩の道                荒木 那智子

塩は人が生きていくうえで欠かすことの出来ないミネラル。また邪気を浄める神聖なものともされた。その塩や海産物を内陸に運ぶのに使われた道を塩の道と言う。今はその道は廃れて久しいが、ふとそこで、高々と歌う牛追い歌が聞こえてきたのである。時代を錯覚してしまいそうだ。(法弘)

正明

爽涼や芸予の島の葉擦れ音               河野 伊葉

芸は安芸広島、予は伊予愛媛。その間に点在する瀬戸内海の島々にも秋が来て、木々を渡る風が爽やかな葉擦れの音を立てている。(法弘)

芳彦

鳥渡る君Iターン俺Uターン              合田 憲史

他にJターンというのもある。渡り鳥は二か所を行き来しているから、さしずめ二拠点居住。(法弘)

第二の人生、故郷で頑張って下さいね(早・恵美子)

林檎うさぎ種の片目が行方不明             中川 手鞠

早く探してあげないとかわいそう。(法弘)

匠子

今年米使ふ水にも心して                片山 孝子

嬉しい気分が横溢。 (法弘)

正明

俳聖堂空け放たれし翁の忌               浅井 貞郎

伊賀上野にある俳聖堂は芭蕉の旅姿を表しているそうで、八角八柱の建物に円い笠を象った屋根が載っている。普段は閉じられているが、翁の忌日である10月12日に開け放たれたのだ。これから芭蕉が旅立つのかもしれない。(法弘)

夜半にきく虫の音しんとメメント・モリ         森山 ユリ子

メメント・モリとは「人は死ぬ運命であることを忘れるな」ということ。キリスト教以前のローマでは「だから現生を楽しもう」という意味に使われたが、キリスト教が普及してからは「死後に地獄に落ちないよう、現生を慎んで生きよう」というふうに180度解釈が変わったそうだ。この句、キリスト以後の感じがする。(法弘)

   <互 選 句>

黒釉の茶入に宿る十三夜                阿部 旭

こっくりと艶のある黒釉の茶入。「宿る」に由緒を感じる。満月に少し欠ける十三夜も合っている。(ゆかり)

猫の尾の何ぞもの言ふ良夜かな             てつお

ペットの猫と飼い主の長い付き合いを感じる(眞五)

何ぞもの言ふ、が如何にも猫の尾の様子を捉えています。猫も月を喜ぶのでしょうか。(恭子)

尻尾をピンと立てる時がある。名月をめでているのか猫に聞きたい(勢津子)

人も物思う良夜、猫もまた物思いに耽るのか尻尾の動きがいつもとは違う良夜なのでしょう(律子)

何気ない一コマ。良い時間ですね(早・恵美子)

猫も月の余情あふれる夜のひと時に一句口ずさんだのでしょう。 (郁文)

玲奈、志昴女、香誉子、万記子、久丹子、旭

神鹿にお神酒注ぎて角を切る              今井 温子

道代、はま子

ベルゲンの潮香たっぷり鮭チャウダー          たかほ

カラフルな木造家屋、フレッシュな食事を提供する魚市場。潮香たっぷり・・に、思い出がよみがえりました。(博子)

松茸やブータン産は幸あまた              山根 眞五

ブータン国民は松茸の香りが苦手で多くを輸出しているそうです。下5が効いています。(相・恵美子)

指さきに仔猫の匂ひ鰯雲                木村 史子

子猫の匂いってどんなかな?あまーいママの匂いかな(玲子)

サンプルのアイス溶けさう秋うらら           佐藤 律子

博嗣

一日の陽の重さ増す吊し柿               中島 敏晴

柿の色が深まり皺が増える様が詩的に詠まれています。(春野)

中七の「陽の重さ増す」が上手い。(てつお)

尚、芳彦、万記子、道代

蓑虫の吹かるるままに山河暮れ             相沢 恵美子

気ままに揺れる蓑虫から山河へのカメラの引きに暮れてゆく時間経過も感じられる。(ゆかり)

蓑虫と山河の取り合わせが面白い。(泰山木)

景の遠近の対比が上手い。(てつお)

夏江、由紀子、はま子

若者の省略ことば文化の日               泰山木

時々孫とメールを交わす。「り。」は何か、「了解。」の意です。他にもいくつかある。(茂喜)

若者の省略言葉。これも文化かしら?(智子)

三枝子、尚、手鞠

曼珠沙華藪のなかでは暗からう             上脇 立哉

曼珠沙華のあでやかさがぽっかり浮かびます。暗からう・に技を感じます。(伊葉)

沙魚釣や勝鬨橋の跳ねしころ              金子 肇

正明、匠子

人死ぬ夜食みし津軽の林檎かな             鈴木 楓

敏晴

熱疲労寒暖差疲労蚯蚓鳴く               三好 万記子

字面の画数の多さが疲れを表すのに効果的です。熱疲労とはまさに猛暑のこの夏のこと。(恭子)

久丹子

コスモスや踊るプリマのオルゴール           石川 由紀子

孝子、桂一

鳥渡る倭国の海へ絹の道                牧野 桂一

日記

手び練りの良き器なり走り蕎麦             日根 美惠

走り蕎麦と「器」が語る世界。(孝雄)

桂一、百り子

セルロイドの少女倒れし秋の風             明隅礼子

敏晴

古民家のカフェいっぱいの秋の味            齋藤 みつ子

人気が回復している古民家の秋がうらら(眞五)

孝子

木を落ちてどんぐり旅の始めかな            上脇 立哉

童謡を思い出す楽しい句です。(春野)

神域を源流にして鵙高音                須田 真弓

源流に惹かれました。高千穂のような神話の世界の雰囲気を感じます。そこに鵙高音。説明が難しいのですが句に締まりが生じました。(順一)

正治、玲奈、三枝子

赤蜻蛉そつとピエタの白き手に             岡部 博行

由紀子

秋まつり百円玉を子に持たせ              明隅礼子

「百円玉」で何を買うのやら。(孝雄)

秋祭に百円玉が効いていいます。夏祭ですともう少し持たせてあげたかもしれません。(相・恵美子)

「百円玉」の使いみち。いろいろありますね(智子)

ケーブルカー高度二千の紅葉晴             金子 正治

素晴らしい光景が伝わりました。(佳久子)

快適ですね(貞郎)

玲子、旭

朝風や残暑和らぐ野菜畑                竹田 正明

あちこちの畑で野菜の収穫の不作を聴く。人間の汗を流しても天の意向は受け入れるのみ。(茂喜)

累々と首ひまはりの種を採る              早川 恵美子

史子

島の子の鉢巻白き残暑かな               合田 憲史

島の運動会でしょうか。鉢巻姿の元気な子供達が目に浮かびます。(泰山木)

博嗣、那智子

秋の暮れ自問自答の我ひとり              片山 孝子

自問自答それでいいのです(みつ子)

朴訥な師匠の口伝きぬかつぎ              木村 史子

多くを話さない師匠ときぬかつぎの素朴な味わいが呼応している。(博美)

「朴訥な師匠」と「きぬかつぎ」がハモっていると思いました。(ユリ子)

そんな師匠の言葉は尊いものです。きぬかつぎがいいなあと思います。(百り子)

飾り気がなく無口な人柄ゆえ必要なことだけの口伝なのでしょう。が、きぬかつぎに温かさを感じます(律子)

由紀子

雨音で目覚めし吾子の運動会              宮川 陽子

手鞠、真弓

母からの短き手紙草の花                中村 光男

すっきりとした句調。「草の花」で母のイメージがくっきり。(ユリ子)

草の花がいいですね(夏江)

華やかなかにも地味で可憐だった母に思いを重ねているのかしら?(憲史)

那智子、はま子

走り蕎麦切る音高き店に入る              髙橋 紀美子

「切る音高き」で蕎麦好きの走り蕎麦への期待が伝わってきます。(光男)

風わたる秋七草の盛りなり               小栗 百り子

秋の七草よく散歩の途中で見かけます(みつ子)

褒められて伸びる性格竹の春              泰山木

ユーモアがある(眞五) ぐんぐんと竹の様に心も。この取り合わせは新鮮。おかしみも。(恭子)

志昴女

牧神の一笛に駈く放馬かな               相沢 恵美子

ゲネプロを終へて無言の夜食かな            内村 恭子

明日の本番を前に、みんなの緊張した姿が浮かびました。(佳久子)

たかほ、百り子

宿題に残る割り算休暇果つ               牧野 桂一

確かに割り算は難しいです。(肇)

手術室消える灯りや月青し               郁文

「月青し」で大きな手術が終わったという感じが伝わってきます。(光男)

瞬くはドナウの真珠月今宵               早川 恵美子

新松子生年月日を問はれけり              榑林 匠子

青々とした松かさにも生年月日の早い遅いがあるのか、と面白く読みました(律子)

突然の事なのかアンケートなのか、シチュエーションは分からないのですが、何か瑞々しい実感が湧いていたのかもしれません。(順一)

山門は風通る道秋の蝶                 郁文

情景が浮かびます(夏江)

秋風が山門を過ぎてゆく風情を感じます。(泰山木)

立哉、楓、春野

羽田発窓にそれぞれ良夜かな              佐藤 博子

機窓から乗客が揃って名月を眺める。良夜の新しい捉え方が素晴らしい。(博行)

機内から見る眼下の景色 晴れ渡った秋のさわやかな夜が・・・(美惠)

久丹子、玲奈

仏前に零して供ふ栗の飯                てつお

立哉

渡り鳥道路の糞が増えて行く              石川 順一

カラスの糞はもっと酷い(貞郎)

うそ寒や空き巣注意の回覧板              石川 由紀子

物騒な世の中。「うそ寒」が効いています(智子)

孝子

秋天や塩なめにくる牧の牛               熊谷 佳久子

牛にとっても「塩」は必要物。(孝雄)

秋晴の牧場でのんびり放牧されている牛が塩分を補うために戻ってくる。牛の営みの観察が行き届いた句。(ゆかり)

抜けるような秋空のひろがりが目に浮かびます。(てつお)

桂一

小鳥来る移住夫婦の笑顔かな              合田 智子

移住夫婦のハッピィ―な様子が小鳥来るという季語で伝わってきます。(光男)

松茸一つ天下取つたる話振り              金子 正治

中七の滑稽表現がいいですね。光景が浮かんできます。(たかほ)

史子、真弓

きつね面秋の仲見世徘徊す               佐藤 律子

売られていた面をモチーフにされてとても奥深い句に。(伊葉)

博嗣、匠子

荒墓の前を過ぎ行く秋彼岸               土屋 香誉子

我が墓も遠き故郷に置いたまま、数年帰っていない。電話に聴く「草が伸び放題」と。(茂喜)

中秋の満月といふ贈り物                小髙 久丹子

天候も定まり満月を幾度も見上げる。自然界からの無償の贈り物(勢津子)

今年の中秋は満月だった。次は7年後。その嬉しさが直球で伝わってきました。(博子)

手鞠

白寿の母しゃりりしゃりりと梨を喰む          中川 手鞠

中七がとてもいい。音まで聞こえてきそう。(佳久子)

白寿といえば99歳中7の「しゃりりしゃりり」が大変良い(貞郎)

作者は古稀前後?「しゃりりしゃりり」が言い得て妙(憲史)

芳彦、香誉子

角の威の失せたる苑の鹿溜まり             今井 温子

史子

処暑なにを仕切るでもなきミニフェンス         町田 博嗣

いつの間にか処暑、仕切るほどの広さもない部屋のこの小さな衝立、暑い間、何も言わずそこにいてくれた。おもわず感謝です。(玲子)

島人は十七人や秋灯                  原 道代

那智子

いせ辰に買ふ千代紙や西鶴忌              西脇 はま子

浮世絵師西鶴なら千代紙もいろいろ買ったであろうと思う。(博美)

正治、たかほ、楓

雨あとのさざれ水粒ねこじやらし            垣内 孝雄

「さざれ水粒」という措辞も輝いている。(肇)

野仏に十日遅れの彼岸花                金子 肇

異常気象の影響があちらこちらに。(郁文)

志昴女、道代

天高し芭蕉生家に幟立つ                浅井 貞郎

日記

秋雨に告知されたる受胎かな              妹尾 茂喜

金の雨に変身したゼウスに愛されたダナエはペルセウスを生んだ。秋雨に受胎告知された子はどうなるのか?(博行)

敏晴、正治

群れて黙落穂ひろひの白き鳥              染葉 三枝子

渡り鳥たちでしょうか 静かな秋の田園風景 すてきです(美惠)

以上


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