天為ネット句会報2023年11月

 

天為インターネット句会2023年11月分選句結果

 ※特選句、入選句内の順番は互選点、句稿番号の順。
  また互選句は句稿番号順に並べております。

  <日原 傳編集顧問選 特選句>

秋高し尾まで真白き競走馬               内村 恭子

白毛の競走馬は珍しい。2021年の桜花賞を制したソダシという白馬が有名だが、その活躍する姿に材を取った作であろうか。上五「秋高し」と下七「競走馬」からは、良く晴れ上がった空の広い競馬場の光景が浮かびあがる。加えて、中七で「尾まで真白き」と白い尾に焦点を当てたことで、長い尾をなびかせて疾走する白馬の姿が見えてくる(傳)。

跳び抜けて先頭を走る白馬が見えてくる。(桂一)

秋晴れの下、白馬が駈ける景が素晴らしいですね。(佳久子)

競走馬然とした馬体に「尾まで真白き」で一番人気(憲史)

由紀子、尚、真弓

二代目の小児科医院小鳥来る              佐藤 博子

その地域で信頼されている小児科医院なのであろう。長年治療に当たってきた老先生は第一線を退き、同じく小児科医となった二代目が中心となって治療を担当するようになった。「小鳥来る」という季語がその世界をやわらかく包みこむかたちで働いている(傳)。

町の人々に長く親しまれてきた小児科医院の穏かな佇まいに小鳥来るの季語がピタリと合っている。(博行)

きっと地域の人々に信頼されている医院だろう (典子)

親子二代のかかりつけ医、安心します(智子)

史子、順一

  <日原 傳編集顧問選 入選句>

熊情報たしかめて行く墓参               土屋 尚

墓参する時には天候を調べますが、熊情報を調べて身体を張っての墓参ですね。(相・恵美子)

もちろん天気予報のように大切な情報なのでしょうが、「熊情報」という言い方がユーモラスです。(恭子)

墓は山間の麓にある。墓参に来たが、人との境がなくなってきた熊の動静を伺う。共存の道はどこにある。(茂喜)

眞五、万記子、那智子

払暁の妙義に高く雁渡る                阿部 旭

妙義山の奇怪な山容の上を渡る雁。見てみたい。(肇)

屹立の妙義山の暁を雁が渡りゆく。心が洗われる景。(ユリ子)

順一、芳彦、楓、百り子

斑鳩の小店に鬻ぐ吊るし柿               鈴木 楓

柿食えば、の法隆寺界隈を彷彿します。(博美)

斑鳩の地名が効いています。同じ光景を見ているので、吊し柿の綺麗な色まで思い出されます。(はま子)

「鬻ぐ」の表現が斑鳩の小店の吊るし柿に良く似合っていて良いと思う。(芳彦)

子規の柿食へばの句を思い出させる、斑鳩の里ののどかな情景です。(春野)

集合写真前列に神の鹿                 佐藤 博子

旅行の集合写真、それも前列に鹿とは、人慣れしている春日大社の鹿。アルアルの話を上手く俳句にしているなぁと・・・。楽しい旅の様子が伝わってきました。  (道代)

奈良では鹿は神の使いと言われています。良い記念写真になりました。(泰山木)

立哉、史子

神の留守賽銭箱に錠二つ                阿部 旭

季語と錠の組み合わせが妙味。唯、何故鍵がふたつか?(郁文)

神の留守中は油断大敵。罰当りな者はいつの世にも(憲史)

手鞠、澄江

蘭鋳は大和の生まれ水の秋               芥 ゆかり

博嗣、三枝子、手鞠

点と化す伊良湖岬の鷹柱                金子 正治

鷹柱を点となるまで見られて良かったですね。(佳久子)

遠くに見えている様子がよく分かります(みつ子)

玲奈

黒々とダリのキリスト哭く夜寒             森山ユリ子

キリスト磔刑像を真上から見るという斬新な構図、哭くの字に深い悲しみに耐える姿が見えます(律子)

たかほ

苔纏ふ石の仏や木の実降る               合田 智子

芳彦、手鞠

昼の虫犬の顔出す乳母車                相沢 恵美子

ふと巡り合った「景」、心が和みます。(孝雄)

久丹子

赤福餅一折買つて神の旅                西脇 はま子

出雲への旅は手土産を持って(智子)

良いですね!神様もお好きかも(早・恵美子)

鳥渡る救世観音の笑み永久に              西脇 はま子

下5が効いています。救世観音の微笑まれている御顔に心が和みます。(相・恵美子)

ふるさとのダムなき川の苦うるか            髙橋 紀美子

ダムなき川とは水量が刻々変化する危うさがあるが、魚が自由に遡上できる清い流れがあるということ。そんな故郷を想う気持ちにうるかの苦みがうまく響いている。(ゆかり)

夢殿の秘仏をろがむ秋日和               鈴木 楓

正治

山肌は熾火のごとし七竈                高島 郁夫

桑門の作麼生説破長き夜                石川 由紀子

堆黒の目釘かくしや秋灯                斎川 玲奈

 <互 選 句>

言葉も林檎の芯も黄昏るる               早川 恵美子

志昴女

図らずも百寿間近や冬隣                佐藤 克之

健康に気を付け、好きな俳句に精を出し、間もなく百歳の大台に乗らんとする人が冬に備えている。祝長寿。(茂喜)

長寿ですねおめでとうございます(みつ子)

図らずも白寿間近かと詠っています。すごいです。(玲子)

正明、澄江

腹大き蟷螂道の真ん中に                上脇 立哉

玲子

流星や戦争のこと誰も云はず              明隅 礼子

人間の性なのでしょうか。共存の難しさを思います。一日も早く平和になりますように(勢津子)

ドローンも生成AIも使われ始めた戦に、言葉を失う。流星に悼みと祈りの心を感じます。(博子)

志昴女、玲子

一山の神も仏も霧衣                  今井 温子

十三夜窮屈そうな月兎かな               児島 春野

面白い視点(典子)

蛇穴へゆつくりよぎり神の庭              熊谷 佳久子

蛇も神の庭への敬意を表してゆっくり行くのだろう(典子)

道代

シベリウス十一月の招待状               中島 敏晴

冬に聴くシベリウス、いいですね。(ユリ子)

violin concertですね。シベリウスやっぱり冬!大好きです!(早・恵美子)

地下街の正しい出方秋の蠅               てつお

確かに地下街の出口にはいつも戸惑います。動きが遅くなった秋の蠅との取り合わせが面白い。(光男)

「正しい」の表現に俳諧味を感じます。蠅も困っていることでしょう。(万記子)

都会の地下鉄出口は複雑です。迷い込んだ蝿だけでなく、作者も出口を探し中でしょうか。(恭子)

由紀子、久丹子

ハロウィンの魔女の親子の嗤ひ声            たかほ

やっと歩けるようになったお子様とお母さま 微笑ましいご様子。(温子)      

カート押す一番上は桃二つ               片山 孝子

確かに桃の運び方には気を使いますね。ハラハラドキドキしながら持ち帰る貴重な桃。その気持ちが伝わってきます。(光男)

眞五

草の花供ふ一輪石仏                  垣内 孝雄

石仏には草の花が似合いますね(夏江)

石仏には可憐な花が似合います(智子)

日のひかり平らに受けてぶだう園            河野 伊葉

ぶどう畑に刺す光を平面的と捉えた感性に拍手。(郁文)

「平らに受けて」の措辞となだらかな音調によって穏やかな秋の景が見事に写し取られている。(博行)

玲奈、香誉子

運動会ひとりあまりて男役               宮川 陽子

伊葉

くもりなき兼光の太刀秋の冷              斎川 玲奈

日記

宿裏は東シナ海十三夜                 熊谷 佳久子

東シナ海をバックに月見の宴とは雄大ですね。(泰山木)

香誉子

絶滅の狼を恋ふ秋の雨                 荒木 那智子

小雨が降り続く秋霖 この季節の雨はひたすら物悲しく狼の遠吠えが聞こえてきそう(美惠)

声出せば消ゆる魔法や冬銀河              明隅 礼子

冬銀河の下でかける魔法、くれぐれも声を出さぬよう。(孝雄)

冬銀河の美しさは声も出ないほど。声も出ないのは反対に魔法をかけられているからなのでしょうか…(律子)

万記子、那智子

藍染干す竿の向うの青瓢                原 道代

大和郡山の吟行句。藍工房の様子が手に取るようによみがえります。(はま子)

秋時雨町に空家の増えてゆき              金子 肇

敏晴、孝子

マロニエの葉擦れの音よ巴里は秋            中川 手鞠

爽やかな巴里の秋の様子が伝わってきます。一日も早く、戦争が終決して巴里の様になって欲しいです。(はま子)

秋うらら待合室のパステル画              野口 日記

病院の待合室か、パステル画の落ち着いた色調が穏やかな秋の日に似つかわしい。(博行)

待合室にパステル画明るい色でしょうか(みつ子) うららかな秋日和にパステル画がよく似合う。(ユリ子)

パステル画に待つ時間の緊張もほぐれるよう。外はうらやかだし・・(博子)

翁守る瀬音風音竹の春                 須田 真弓

季語が効いていると思います(早・恵美子)

女房の漬物名人秋茄子                 佐藤 克之

秋茄子の漬物は格別だ。輪切りにして、昆布の旨味を効かし、鷹の爪でピリッとさせる。いよ漬物名人。(茂喜)

秋晴を踏み締めて行くスニーカー            岡部 博行

三枝子、尚

秋惜しむ志功版画の裸婦の艶              竹田 正明

夏江、楓

秋日燦武廟の龍の髭二条                相沢 恵美子

伊葉、日記

澄む水のさざ波さやと影あかり             染葉 三枝子

秋の水の表情を上手く捉えましたね。(てつお)

正明

虫時雨ぴたりと止みてなにごとぞ            宮川 陽子

上五中七はよくあるフレーズだが、下五の表現は面白い。ビックリ感がうまく表されている。(光男)

秋深し「昴」で閉ずる演奏会              金子 正治

いつか来る別れ・・・谷村新司のご冥福を祈ります(勢津子)

澄江

立柱の柾目正しき秋澄めり               須田 真弓

春野

桐一葉落ちて焼場の喫茶室               たかほ

桐の葉が落ちるのと天国へ送る気持ちが繋がっている。(博美)

史子、孝子

十六夜の月いびつなりオキシトシン           齋藤 みつ子

陣痛で名月もゆがんで見える!オキシトシンが句になった!(肇)

鵙の声金輪際へ引き込まれ               松山 芳彦

真弓

今日一日何ごともなく衣被               岡部 博行

幸せな今日一日が過ごせました。「衣被」が効いています。真砂女の句が浮かびました(憲史)


山号はなき寺の柚子たわわなり             河野 伊葉

廃寺の庭の柚子の木は今年も律儀に実をつけて(美惠)

正治

筑紫野に有馬の領土曼珠沙華              牧野 桂一

眞五

千手観音ゆるやかな手の冴え返る            齋藤 みつ子

冴え冴えとした御堂の様子が伝わりました。(佳久子)

赤灯台流星海に届かざる                井上 澄江

立哉

世界地図ここが「日本」実南天             てつお

匠子、正治

からつぽの花瓶と秋の金魚かな             木村 史子

「からっぽの花瓶」と「秋の金魚」の醸し出す詩情。(孝雄)

夏と違う秋の感覚です。(百り子)

空っぽの花瓶と秋の金魚とは 面白くも寂しくも。   (温子)

敏晴、真弓

末枯やかつて臨港貨物線                泰山木

勢いが衰え始めた草むらの中に見える錆びついた線路。晩秋の風情です。(春野)

ポテトサラダ甘き老舗や文化の日            三好 万記子

古い洋食屋を思いました。ポテトサラダも昔と変わらぬ味つけ。文化の日が引き立ちます。(恭子)

敏晴

側溝に灯落つる町を踊下駄               町田 博嗣

香誉子

実習のメモ書き走る木実独楽              牧野 桂一

博嗣

銀木犀かつて名主の長屋門               槫林 匠子

日記

香も色も爪にうつれり青蜜柑              木村 史子

生活が目に浮かぶ。私など食べ過ぎて手先が黄色くなる。(桂一)

早摘みの温州みかんを思い出し、青蜜柑の持つ新鮮さをこの句からは感じます(律子)

博嗣

在祭強面となる村の衆                 槫林 匠子

たかほ

真直ぐな道は淋しい秋の雲               浅井 貞郎

遥か遠くまで真直ぐな道を行くことを淋しいと言う。敢えて散文的な作りが成功していると思う。(ゆかり)

久丹子、那智子、尚、孝子

ひとすじの煙のゆれる刈田かな             高島 郁夫

けむりの動きだけが刈ったあとの田をまるで支配しているかの様子。ひとすじが生きている。(伊葉)

柿もぐや少年手足縦横に                髙橋 紀美子

中七下五の表現が生態めいていていいですね。(たかほ)

百り子、勢津子

禅僧の大喝枝豆飛び出す                今井 温子

枝豆の莢から豆が飛び出すほどの大喝に俳味があります。(相・恵美子)

どこからも見ゆる九輪や里の秋             永井 玲子

玲奈、三枝子

桃吹くや婆の絵本の読み聞かせ             冨士原 博美

可愛らしい季語の「桃吹く」がおばあさんが孫に絵本を読み聞かせる光景にぴったり。絵本の中のワンシーンのように美しいです。(美惠)

水音の奥に深山の秋のこゑ               小栗 百り子

正明

百舌猛る遠き日のガザ軍場(いくさば)に        森山ユリ子

遥かなるガザへの思い。(肇)

余白に懐かしき地への慟哭を、感じます。(博子)

立哉

枝豆の背中をちょっと押してやる            冨士原 博美

枝豆の背中とはどの辺りでしょう。「ちょっと」がユーモラス。(泰山木)

匠子

実柘榴や割れて大陸移動説               佐藤 律子

柘榴から大陸移動の発想がユニーク。(郁文)

大陸移動説と季語の意外性に俳味を感じました。   (温子)

実柘榴と大陸移動説の取り合わせが妙。(てつお)

柘榴の実の割れる様子を想像すると、大陸移動説が妙にリアルに感じられる。(ゆかり)

由紀子、匠子

売られゆく牛に声なき菊日和              垣内 孝雄

寂しさと安堵感がよく出ている。(桂一)

牛の切ない気持ちを菊日和が包み込んでいると思います。(博美)

定めとは言え菊日和の中、売られてゆく牛の従順さをを思うと何とも言えませんね。(てつお)

順一、道代、夏江、志昴女

以上

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