天為ネット句会報2024年1月

 

天為インターネット句会2024年1月分選句結果

 ※特選句、入選句内の順番は互選点、句稿番号の順。
  また互選句は句稿番号順に並べております。

  <日原 傳編集顧問選 特選句>

四十物は雪の地に置く能登の市             早川 恵美子

「四十物(あいもの)」は干魚、塩魚の類をいう。「相物」「間物」とも書く。輪島の朝市であろうか。生の魚介類は雪を除いた売り手の前に並べ、干物などは売り手の脇のこんもり残った雪の上に並べるのであろう。雪国の屋外の市らしい光景が想像されてくる(傳)。

焼失した輪島の朝市を思い出しました。(肇)

干物でも一夜干しは特においしいです。傷みやすいので天然の冷凍庫積もった雪の上にひろげて売る能登の朝市を飲み込んだ 元旦の 能登の震災無念 被災が最小になりますことをお祈り申し上げます。(美惠)

目玉商品が多いので他のものは脇に。雪の地に置くが輪島の朝市をよく表している。それにしても大地震はむごいことです。(郁文)

雪の地に置く~~としたところが新鮮。(伊葉)

こんな光景がもう一度見られますように!(泰山木)

中7に能登特有の市の様子が感じられます。悲しいことに今回の大地震の地ですね。(相・恵美子)

四十物というのを初めて知った。漁村ではトロ箱を雪の地べたに置いて売っている。その飾らなさが能登と響き合う。輪島の市かもしれない。(ゆかり)

年明け早々の能登の惨状を見るにつけ、あの朝市を思い出すと共に、阪神大震災の経験を持つ者として一日も早い復興を祈るばかりです。(てつお)

元日の地震のため、一層懐かしい風景となりました。(春野)

地震の前の雪の能登の風物詩。四十物は初めて知りました。被災地の映像に胸が痛みます。(はま子)

楓、敏晴

揃ひたる夜番の衆の義士めきて             てつお

火の用心の夜廻りにこれから出発しようという状況であろう。揃いの衣装を着ているのかもしれない。予定していた顔ぶれの揃ったのを確認し、いざ出陣といった気分なのである。赤穂四十七士の討ち入り出立の場面になぞらえ、滑稽感のこもる句となった(傳)。

町内パトロールの夜の体験版です(幸子)

たかほ

  <日原 傳編集顧問選 入選句>

塗り椀の黒の鎮もり小晦日               熊谷 幸子

大晦日に塗り碗の黒の鎮まりがあるとしたところが良い。(芳彦)

黒塗りの椀、寒ーい部屋に鎮もってまさにお正月を迎えようとしているところがうかがえます。(伊葉)

磨き抜かれて出番を待つ漆椀。「黒の鎮もり」との表現がいい。もりもりの音韻もお見事。(ゆかり)

匠子、勢津子、手鞠、春野

風花や欠航知らす島ラジオ               合田 憲史

島には今もこういう生活が(典子)

自然と人の営みの何もかもが美しさの中にある。(万記子)

慌てふためく旅人の年末の景がみえ、島ラジオで場所がわかりなおさらに狼狽している様子が伺える。季語がよいですね。 (郁文)

離れ島の厳しい冬が伝わってくる。(泰山木)

空模様は風花が舞っている程度なのに、連絡船は早早に欠航を決めた。スピーカーではなく、ラジオで知らせる北の離島の雰囲気が伝わる。(純夫)

日記

掌に夫転がして年用意                 冨士原 博美

転がされているのは妻への1年間の感謝の表れでしょう。(肇)

練達家人の技 ご主人もわきまえられて めでたし! (久丹子)

掌に夫転がして、転がされているのは夫?なのかどうか。どちらにしてもご円満なご夫婦だと思います(律子)

手鞠

パスワードの大文字小文字年暮るる           宮川 陽子

何とも面倒くさい世の中になったものとつぶやいている様子が浮んで来る句です。(光男)

アナログ人間にとっては死活?問題です(智子)

伊葉

縄文の骨の針孔針祭る                 小栗 百り子

縄文の骨の針孔を針供養にもってきたところが発想が面白い。(芳彦)

玲子

初詣ぽつくり寺の坂きつし               金子 肇

逝く時はぽっくり逝けます様にとお願いしに行くにもきつい坂が立ちはだかる。人生思うようにはいかないというペーソスを感じる。(ゆかり)

ぽっくり!即ち、ぴんぴんころり!願う前の苦難か?(憲史)

背守りの糸の綻ぶ師走かな               たかほ

史子、尚

四君子の帯を二重に初鏡                熊谷 幸子

新年の華やいだ気持ちがよく伝わる(典子)

おめでたい高潔な図柄と初鏡に立つ美しいお姿をうっとりと思い描いています。(温子)

指ほどの氷下魚を釣りてひもすがら           熊谷 佳久子

玲子

カマキリの躯ころがる冬日向              嶋田 夏江

順一

支笏湖に赤きカヌーや初明り              熊谷 佳久子

初空やパリへと向ふ一番機               中島 敏晴

たかほ

でんち着て父福相になられけり             荒木 那智子

初凪やはるか帝の御食島                芥 ゆかり

天神の空美しき初詣                  鈴木 楓

あか旗の祖谷に伏せ墓福寿草              合田 憲史

福藁敷く延年舞の常行堂                荒木 那智子

 <互 選 句>

朝がてに止むお湿りの大晦日              荒川 勢津子

お降りになると思いきや元旦は、、、(幸子)

三体の御仏の留守水仙花                榑林 匠子

香誉子、勢津子

門標は亡き人のまま年暮るる              今井 温子

眞五、孝子、夏江

けふ一日悔ひなく生きよ去年今年            齋藤 みつ子

ほんとにそうですね、そうありたいと思います(夏江)

十二月八日患者の主訴を聴く              木村 史子

順一

鶏鳴に八百万の神目覚めたり              明隅 礼子

八百万の神が目覚めたのですから相当迫力のある鶏鳴ですね。俳味があります。(相・恵美子)

中国の歳時記に「正月一日、鷄鳴いて起きる」とあり、目覚めたのは八百万の神。文化・風土の融合の一句に淑気も一入です。(博子)

寒の水女の磨く杉丸太                 石川 由紀子

研ぎ澄まされた冷たい寒の水を使って杉丸太を磨いている女の気持ちが伝わってきます。(博美)

押してみてやっぱり買わぬ寒海鼠            三好 万記子

そんなことしていいの?と思いましたが、光景がよく伝わりました。(佳久子)

恭子

空席の猿の腰掛深雪晴                 早川 恵美子

旭、立哉

冬の虫青菜とともに茹でらるる             嶋田 夏江

冬日和古書とひとときカフェテラス           高島 郁文

ほのぼのとしていいですね(みつ子)

正治

ごみ箱の裏に落葉の隠れ家は              上脇 立哉

吹き溜りを隠れ家とは面白い(智子)

異国児の聖樹を灯す避難宿               牧野 桂一

戦禍を逃れ来て、やむなく異国の地で聖夜を迎えざるを得ない児らの気持ちを察すると心が痛みます。(てつお)

笑み交はす赤子の瞳お元日               佐藤 律子

清らかな赤ちゃんの瞳、何者にも代えがたいお元日ですね(夏江)

赤ちゃんの微笑みに未来が見えます(智子)

値引かれしセーターのやや若向きか           土屋 尚

買いての気持ちがよく理解できます。願わくはセーターより高額な衣服類が良かったけれど。  (郁文)

遠山の裏側知らず初明かり               日根 美惠

いつかあの山の向こうの世界へと少年も少女も夢をみる初明かり。(万記子)

遠き山より昇る初日の出、当たり前に観ている景を山の裏側は知らずと詠まれ、着眼点がとても面白いです(律子)

敏晴、恭子

コンビニに着膨れゐても一人かな            たかほ

フィジカルとメンタルは時に離反することも (久丹子)

毎年よ富士ではじまる初暦               佐藤 博子

由紀子

水仙の寄り添ふ二本空の青               阿部 旭

紀美子

クリスマス友の余命は六ヶ月              齋藤 みつ子

街はクリスマスだが、幼友達は病院のベッドにある。しかも余命を宣告された友にどうすれば…。(茂喜)

一山の音を閉込め沼凍つる               金子 正治

深々とした冬の沼の景が浮んできます。(光男)

山の音を閉じ込めて沼が凍てて眠っている姿が、大きな自然の景で格調も出てくる。(桂一)

沼も凍りつく程の冬の山の寒さと静寂が身体感覚を伴ってひしひしと伝わって来る。(博行)

正明、那智子

氷上のはじける刹那スプリンター            中村 光男

中7にスプリンターが滑って行く様子を上手く表現されています。(相・恵美子)

夕さりておでんの幟はためきぬ             上脇 立哉

寒くなる今夜は「おでん」で温まる。(孝雄)

数へ日の富士美しき東都かな              岡崎 志昴女

年末年始の東京の空は空気が澄んでほんとにきれいです (美惠)

百り子

歳晩や時差超えてくる佳き知らせ            佐藤 律子

海外の現地の方 赴任中の子供たち 留学中の子供たち 「佳き知らせ」どんないいことあったのでしょうか いいですね。 (美惠)

外国からのよき知らせうれしいですね(みつ子)

世界は狭くなりました 佳き知らせが一瞬ですね。(幸子)

地球儀に印す戦禍や虎落笛               竹田 正明

季語が作者の思いを伝えている(典子)

地球儀に印す戦果という発想と虎落笛という季語の取り合せ決まっている。(芳彦)

戦の無い世のある事を願うばかりです。  (温子)

たこ焼をくるりと返し師走かな             西脇 はま子

たこ焼が上手く焼けましたね。(孝雄)

湯に浮かぶおもちゃのアヒル庭の柚子          児島 春野

「おもちゃのアヒル」と「庭の柚子」ということで、現場が具体的に浮かび上がってくる。子どもと一緒にお風呂で童心に返ってはしゃいでいる姿が俳句的。(桂一)

正明

入院の日々の空欄古暦                 てつお

古暦にまとまった空白の期間がある。今は家に戻り、安堵の気持ちで空白を見ているのか?新年の息災を祈る気持ちが伝わる。(純夫)

無事退院できました!新暦には予定をどんどん記入していこう!(憲史)

博嗣、孝子、香誉子

一本歯の高下駄の音寅彦忌               髙橋 紀美子

高下駄で闊歩している寅彦が見えるようです。(博美)

年の夜を迎へる心の追ひつかず             土屋 尚

アッという間に除夜を迎えてしまった戸惑い。(泰山木)

老いてなほアヒルうかべる柚子湯かな          垣内 孝雄

たかほ

肝管の詰りを空くる去年今年              松山 芳彦

大変な状況なのに、さらりと一句に纏められた。俳句は生きる力を増幅する気がします。(博子)

投函の音確かめて年賀状                片山 孝子

手鞠

飛び来たる鴨大池を蹴飛ばせり             中島 敏晴

大池を蹴飛ばすなんて、元気な鴨ですね。(佳久子)

星星のこゑに苦悶の雪婆                河野 伊葉

正治

冬青空アニメのごとく機影過ぐ             小高 久丹子

冬青空ならではの感覚と光景(百り子)

毛糸編む手首足首首根つこ               合田 智子

成程と感心しました(早・恵美子)

藁苞は母の胎内寒牡丹                 今井 温子

「母の胎内」という表現がぴっり。鎌倉で寒牡丹を見たことをリアルに思い出す。(桂一)

大切に育てられている寒牡丹と母のお腹の胎児が響き合っています。(博美)

紀美子

鯛焼の餡に平和の重み知る               山根 眞五

「神は細部に宿る」平和もまた細部に宿るのだと気づく。鯛焼の餡の発見が俳句らしくすばらしい。(万記子)

悲しいニュースの多い中鯛焼きの餡で平和を知る本当に平和が一番(みつ子)

同感です。餡の甘さは平和の象徴と思う(百り子)

鯛焼きのはち切れんばかりのたっぷりとした餡は平和そのもの。(はま子)

日記、由紀子、正治

去年今年まだ戦争と自転して              野口 日記

年が改まってもウクライナでガザで戦争が続いている状況を大きな自然の摂理と対比して詠っている。(博行)

身につまされます(早・恵美子)

戦の終わる気配がない昨今。「自転して」の措辞が繰り返す負の歴史を思い起こさせます。(博子)

住職と懇意になりぬ薬喰                冨士原 博美

住職はマタギも兼ねていらっしゃるのかしら?(憲史)

香誉子、志昴女

平穏を祈り小さき注連飾る               荒川 勢津子

神棚に注連縄を飾る。縄は小さいが、家族の健康と幸せを、世の中の平穏を祈るばかりである。(茂喜)

今年は特に平穏を祈りたいのですが、元旦から心癒やされません。(佳久子)

正明

開演のベルが鳴るなり去年今年             中川 手鞠

孝子

マスクして賑はふ街とすれ違ふ             岡部 博行

都心に用事の時など まさにこの景です (久丹子)

尚、匠子

余呉の湖ただいま白雁着水す              日根 美惠

中七下五は実況放送のよう。待っていた白雁の到来が嬉しい。(肇)

寒さ厳しい余呉湖に舞い降りる真っ白な雁の姿が目に浮かびます。(てつお)

餅花や上がり框の旅鞄                 石川 由紀子

那智子、日記、博嗣、史子、陽子、紀美子

打鳴らす絵馬や二見の海しまく             山本 純夫

絵馬を打つ音と二見の場所が良いです。(温子)

立哉

小春日や猫とダンスはいかがです            佐藤 克之

新春らしい明るく楽しい句(眞五)

ダンボール並べれば店小六月              芥 ゆかり

言いっ放しが響き合ってます(早・恵美子)

由紀子、那智子、恭子

首ぐるり廻し梟カフェにをり              内村 恭子

志昴女

五分だけ駅のベンチの日向ぼこ             岡部 博行

電車が来るまでの「日向ぼこ」。(孝雄)

人参の色の弾けし離乳食                宮川 陽子

楓、史子

鏡餅上下のどうも落ち着かず              内村 恭子

三宝に色紙などを載せて月と太陽の鏡餅を載せようとするが今一つである。世の平穏も如何に。(茂喜)

自分で搗いたのだろうか形がどうも整っていない鏡餅。でも何とか飾ろうとする作者。俳味のある句。(博行)

大きな鏡餅なのでしょう。鏡餅の表面は緩やかな凸面。上に乗せる小さいほうの鏡餅の底は水平なので、どうも落ち着かないのでしょう。(はま子)

自宅で作る伸し餅や鏡餅はいびつになる。特に鏡餅は人に見られるので、餅の乾燥とともに傾くようでは困ります。(純夫)

匠子

たとふれば余生といふは冬林檎             泰山木

秋の出始めの林檎は酸味も甘味もあり新鮮さを感じます。余生を意味する冬林檎とは熟した旨味のあるものと信じたいですね(律子)

敏晴、勢津子

空を飛ぶ鯨の夢を見たき夜               鈴木 楓

眞五

ベルベットのワンピース吊る師走の夜          木村 史子

陽子

銅ねのガラシャの座像実南天              河野 伊葉

楓、玲子

初社口調のやさし注意書                榑林 匠子

春野

煤逃や屋号飛び交ふ草野球               金子 正治

何ともほほえましい煤逃げの様子、うまく捉えています。(光男)

順一、志昴女、博嗣、立哉、陽子

以上

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