天為ネット句会報2024年2月
※特選句、入選句内の順番は互選点、句稿番号の順。
また互選句は句稿番号順に並べております。
裏白や入籍だけの新所帯 中川 手鞠
最近はそういうカップルが増えてきた。(法弘)
裏白は夫婦和合、夫婦共白髪の長寿の象徴。新婚夫婦の末永い幸せを祈る作者の心が伝わる。(博行)
今時の気負わないさっぱりとしたスタート 裏白 マッチしてます (久丹子)
結婚のあり方はいろいろ。幸せを祈ります(智子)
由紀子、玲子
瓦礫の中赤く小さき寒椿 原 道代
一日も早い復興を祈る。(法弘)
紙を漉く枠のさざなみ引き寄せて 牧野 桂一
やってみると結構難しい紙漉き。一人前の職人になるには時間がかかる。(法弘)
寒中の水に手をさらしながらの厳しい作業。出来具合を決める枠の中のさざなみに視覚・触覚・聴覚を集中させている様子が伝わる。(純夫)
由紀子、芳彦、紀美子、尚
ぐし縫ひの針目の揃ふ針祭 合田 智子
ぐし縫の目の細やかさ。熟練の技。(法弘)
針目が揃うとはすごいベテランな縫い手ですね(みつ子)
精進の甲斐あって縫物の腕が上達し、よく働いてくれ使えなくなった針を納めにいらっしゃったのでしょう。(春野)
紀美子
絵暦の反弾琵琶の飛天かな 西脇 はま子
新年らしく華やかに。(法弘)
日記、典子
快復に向かふ予感の福茶かな 木村 史子
予感が当たることを祈ります。(法弘)
勢津子、手鞠
大根干す竪穴住居たてるごと 中村 光男
面白いたとえ。(法弘)
組み方を竪穴式とは面白いです(幸子)
敏晴
丸餅と角餅で争ひし夜も 土屋 尚
近年、我が家では丸餅がだんだん劣勢になってきた。(法弘)
博嗣
みちのくの炉火に煤けし笑ひ仏 佐藤 博子
煤けた笑み仏に長い年月を思う。(法弘)
陽子
訓蒙の絵図の古びや寒燈下 武井 典子
目に一字もない貧農の哀しさ。(法弘)
楓
白砂利の能褒野(のぼの)の陵の木の芽立ち 松山 芳彦
ヤマトタケルの墓。芽吹きが復活を思わせるごとし。(法弘)
猫のため仕舞ひきれずに春炬燵 金子 肇
長年一緒に暮らしている猫と気持ちが通じる。(法弘)
寒の水呑む少年の喉仏 熊谷 幸子
りりしく成長していく少年の姿が、力強く描かれていて美しい。特に喉仏がいい。(桂一)
部活で頑張った少年でしょうか。寒の水を一気飲みする清々しい姿が目に浮かぶ。(泰山木)
季語”寒の水”に少年のすがすがしさがみえます(智子)
「咽仏」に焦点を当てることで、冷たい水をもろともせず一気に飲み干す少年の力強さを捉えることに成功している。(てつお)
史子、陽子、春野
占なひの外れ卒寿や冬苺 荒川 勢津子
地を這い冬に実が熟す冬苺のように生きて迎えた卒寿、山頂から見える景色がうらやましい。(茂喜)
昔の占いで気になっていた予想が外れ、めでたく卒寿を迎えた。冬苺の赤い実のように、寒い中でも晴々とした気持ちで、元気な様子が伝わる。(純夫)
ひと際赤く輝く季語が良いですね。お健やかに!(憲史)
三枝子、澄江
粗大ゴミアンティークめく寒満月 小高 久丹子
粗大ゴミは前日に自宅前に出す。満月の下アンティークのようだった。持って行かれるのが少し惜しいか。(肇)
尚
無名戦士と記す墓標や冬の草 須田 真弓
勢津子
寒暁の繊月凜と久女の忌 山本 純夫
久女のイメージにピッタリの句ですね。(郁文)
寒暁・繊月・凛と並び久女にふさわしい。(佳久子)
立哉、万記子、 楓、志昴女、てつお
飯の上に黄身盛り上がる寒卵 阿部 旭
卵料理はたくさんありますがやっぱり卵かけ御飯ですね(智子)
伊勢海老の髭にはじかれ箱の籾 斎川 玲奈
伊勢海老の最後の抵抗が伺える。(郁文)
箱から飛び出しているいかにも生きのよい海老がいいなあと思います(みつ子)
伊勢海老の生きの良さが伝わって来ます。(相・恵美子)
真弓、道代
皆で呑む下戸も一口寒造り 齋藤 みつ子
お酒は飲めないが皆が舌鼓を打っているのを見ると、一口味わってみたいという気持ちが伝わってきます。(博美)
下戸も利き酒したくなる(眞五)
陽子、道代
往診医誉めるトロフィー浅き春 永井 玲子
上五中七で場面の状況、登場人物の関係性が読み取れる。「トロフィー」が語っているのだろう。(ゆかり)
いまは年老いた病む身でしょうか? 若き日の働きを褒めるトロフィーはうれしいですね。(ユリ子)
冬ざるる奇跡と悲劇離着陸 高島 郁文
万記子
龍の眼は地球の色や寒明ける 荒木 那智子
地球色の比喩が素敵です。澄みに澄んだ眼をもつアジア的発想の神の龍を想像。躍動の始まりですね。(博子)
日記
セロファンに透かす浅春みすゞ飴 芥 ゆかり
キラキラと軟らかい包み紙を透かした感覚が良く見えます(幸子)
セロファンに透けてみえるのが浅春と詠まれているところにとても心惹かれました(律子)
季語がピッタリです。(早・恵美子)
包み紙のセロファンから透けるみすゞ飴の色は、早春の色そのものです。(はま子)
匠子、典子、博嗣、志昴女
吉野川の源流点や探梅行 原 道代
澄江、順一
焚火痕裏に日付のある写真 中村 光男
焚火をしていたのはどんな人で、何があったのだろうと読者の妄想を膨らませてくれる。(博行)
要らない物を焚火に燃やしたが写真が重なっていたのか裏の日付が見えて、思わず日付を確認してその日に思いを馳せてしまいます。(博美)
災害地の焚火を思いました(典子)
山番の琥珀のグラス氷柱小屋 合田 憲史
渋味のある色の琥珀のグラスが山小屋と合っています。(相・恵美子)
鼻と鼻散歩の犬が交はす賀詞 岡部 博行
楽しい句。2匹とも真新しいベストで着飾っていた?。(肇)
犬語で おめでとう! とか 今年も頑張ろう! とか (久丹子)
眞五、志昴女、恭子
外套や省略効かぬ貌載せて 早川 恵美子
昭和の男も女も個性あふれる自分の貌を持っていました。まさに省略効かぬ貌です(美惠)
寒きびし能登の海神鎮まれよ 中島 敏晴
さとす口調が静か。能登の地震の被災に心痛みます(百り子)
那智子、孝子
点描の自画像の眼に星冴ゆる 佐藤 律子
1880年代の後半、スーラ、ゴッホ、ピサロなど一点描が盛んになった様です。季語の「星冴ゆる」からゴッホの鋭い視線の自画像が思い浮かびます。(はま子)
打たるるを待てり追儺の鬼の面 染葉 三枝子
芳彦
竜の玉君にまんまと転がされ 冨士原 博美
玲子
風花や精進落しにほろと酔ひ てつお
近しい人を見送った後、僧侶もいっしょに一席設けた。青空に雪が舞い、お疲れさま。(茂喜)
三枝子
一方の独楽の止まりて夜が来ぬ 明隅 礼子
勝負がついた途端の場面転換がいい。熱くなっていた二人がふっと我に返る瞬間。さぁ遊びはおしまい。(ゆかり)
敏晴
初日記老いてまだ見ぬ月日美し 森山 ユリ子
老いてますます意気盛ん!余生を「美し!」とは心の若さを感じます(憲史)
史子
梟は考えるAIのこと 上脇 立哉
万記子
鬼役は演劇部より鬼やらひ 内村 恭子
病気をせず健康であるため、鬼に向けて豆を投げる。その鬼役は演劇部員が務めた。(茂喜)
どういう鬼やらひなのかしら?どんな鬼になったのかしら?(百り子)
裃姿で豆を撒く役より、赤鬼や青鬼の役は金棒で人を怖がらせたり、逃げ廻ったりと演技力が必要。演劇部の出番ですね。(はま子)
立哉
どうどうと海鳴る輪島春北斗 妹尾 茂喜
どうどうと海鳴るが、冬の能登の海と地震の厳しさを表現していると思います。早く復興することを祈ります。(孝子)
てつお
春近し手足を伸ばす裸体像 児島 春野
恭子
剥製の熊の目ぢから遅き春 金子 正治
熊の目力が剥製を越えて生きて伝わってくる。(桂一)
中7が効いて剥製の熊の圧力を感じます。(相・恵美子)
生徒売る六個百円寒卵 石川 由紀子
伊葉
湯かげんの程よき足湯水仙花 相沢 恵美子
ゆっくりめに咲く水仙花と程よき温度の取り合わせは巧み、美的な句に仕上がった。(伊葉)
良いですね。温まって風邪をひかないようにね(早・恵美子)
慶びの色を散らして紙を漉く 井上 澄江
お祝い事に使える紙漉き素敵ですね(みつ子)
正治、那智子
初護摩や太鼓未明の堂揺する 山本 純夫
勢津子
春立つや天眼鏡に躍る文字 泰山木
家にある天眼鏡を覗いてみた。種が芽を出すように文字がやや歪みながらも大きくなる見立てが、立春の季語に合致していると思った。(純夫)
太笛と和する波音島神楽 たかほ
由紀子、香誉子
鉄棒の端に手袋忘れられ たかほ
逆上がりへの挑戦か。頑張り具合が忘れた手袋で実感。(郁文)
寒い中逆上がりの練習にでも来たのでしょうか、できるようになったかしら?忘れて帰るところに余韻があります(律子)
順一
勝ち負けに明け暮るる世の手毬かな 町田 博嗣
史子、尚
うすらひの仁淀川の青い石 松山 芳彦
夏江
寒梅や願ひのままの小さき葬 てつお
故人の願いのまま小さくお見送りできたことで、残された側に僅かな慰めを感じる。梅の冷え冷えした匂いが句を包み込んでいる。(ゆかり)
コロナ禍以来、親族のみの葬儀が見直されている。季語が効いていると思います。(泰山木)
大往生の人生。残された御遺族の心豊かな葬儀が「小さき葬」で故人を称えておられる。季語が活きている(憲史)
立哉、三枝子、澄江、真弓
めだたさの豊洲やっちゃ場宝船 鈴木 楓
博嗣
風花や妣へと散華するごとく 岡部 博行
正治
おでん店の横顔だけの馴染みかな 熊谷 幸子
いるいる!(早・恵美子)
敏晴、香誉子、真弓
マフラーの蘇州刺繍の胡蝶蘭 西脇 はま子
両面刺繍でも有名な蘇州刺繍。胡蝶蘭の模様のマフラーとは豪華で素晴らしいですね。(佳久子)
芳彦
断りの口調美し初鶯 永井 玲子
どんな方がどんな口調で・・・そんな断られ方されてみたいです(美惠)
順一
筆太き菓子鋪の木額寒明忌 泰山木
「筆太き」が自分の意思を強く何物にも左右されない生き方を示しています。(博美)
山眠る女人高野の赤き塔 須田 真弓
赤き塔は、女人高野の静かさのなかの叫びかと……(ユリ子)
春野
人日の日差しやはらか石蕗の花 森山 ユリ子
やはらかにに、石蕗の花のおだやかな、人日の感じがよくでているとおもいました(夏江)
律儀なる父の拳や冬すみれ 垣内 孝雄
正治、夏江
猫が出て魚が撥ねて春立てり 河野 伊葉
春らしい賑やかな句(眞五)
あと一月もすれば虫も這い出し、春は進む。(肇)
万物が動き出す春。躍動感が立ち上がってくるようです。(博子)
正明、手鞠
さり気無く波響を掲げ海胆に酌む 早川 恵美子
蠣崎波響ですか 贅沢なお酒(美惠)
草城忌腹の立つ事多かりき 石川 順一
香誉子
多喜二忌や刺さる小説店頭に 三好 万記子
発禁書を刺さるの表現が壮絶な多喜二に相応しいと思います。(幸子)
高千穂の柱状節理龍天に 佐藤 博子
玲子
落椿踏まぬやうゆく姫街道 金子 肇
正明、伊葉、道代
降りだした雪の香りや鄙の駅 中島 敏晴
恭子、匠子
福耳の父よく食べて着膨れて 宮川 陽子
ご家族の暖かさ 満ちたるとはこのようなことと思います (久丹子)
微笑ましいなと思わず笑いました。(孝子)
幸せな老いが、よく表現されていますね。(ユリ子)
楓
小流の底に日溜り冬帽子 竹田 正明
穏かな冬日和、小流に沿って散歩する作者の姿が浮かぶ。ほっこりとした気持ちにさせてくれる句。(博行)
手鞠
海明けを待つ知床の爺と猫 熊谷 佳久子
正明、 楓、百り子、那智子
ぎゅうぎゅうに押し合い圧し合いカリフラワー 冨士原 博美
匠子
凧あぐる大雁塔の蒼き空 鈴木 楓
青空の下、大雁塔と競うように凧が揚がっている。スケールの大きい景ですね。(泰山木)
大雁塔の空に上がっていた凧を見たことがあり、懐かしく鑑賞した。(佳久子)
みちのくの木仏の温み野水仙 染葉 三枝子
「みちのくの木仏」と言うだけで庶民的な暖かさが伝わってきて、春と共に幸せを運んでくれそうだ。(桂一)
野水仙の気品のある姿と温みのある木仏がよく響き合っています(律子)
日記、紀美子
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