天為ネット句会報2024年4月
※特選句、入選句内の順番は互選点、句稿番号の順。
また互選句は句稿番号順に並べております。
啄木忌汽車のかたちの春の雲 荒木 那智子
啄木忌は4月13日。旅、汽車、雲、漂泊、北国、etc.胸がきゅんとなる。(法弘)
ふんわりのんびり春の雲は柔かい 「汽車のかたちの春の雲」で啄木の世界に入ってゆきました。(美惠)
汽車と雲 早世した啄木のイメージと重なりました(久丹子)
春の雲に青雲の志を託した。(泰山木)
立哉、正治
永き日や妣のレシピに家族の名 牧野 桂一
妣は「はは」と読み、亡き母のこと。そのレシピを見たら家族の名前があったという句だが、そこにはおそらく、家族それぞれの味や固さの好み、食材の好き嫌いなど、細やかに記してあったのだろう。亡き母の家族への気遣いを改めて知り胸が熱くなったに違いない。(法弘)
香誉子、勢津子、那智子
春風や蛙掘り当てまた埋める 嶋田 夏江
有馬先生の句に<冬眠の蛇を起こして蛇使ひ>があるが、この句は冬眠の蛙を掘り当ててしまったがまた元通りに土をかけて寝かせたという心根が優しい。(法弘)
そっと埋め戻す優しき景が浮かびます。春風に包まれるような読了感。(博子)
志昴女
満州の幽かな記憶柳の芽 今井 温子
満州での忘れがちな思い出。柳の芽吹きに触発されて蘇る。(法弘)
季語の柳の芽が中七に良くあっています(幸子)
幼き頃に住んだ満州の地のかすかな記憶を懐かしく思い出されているのでしょうか。季語もいいです(律子)
中国の水辺に多い柳。終戦の前、穏やかに暮らしていた頃の思い出なのでしょうね。(博子)
花の宴見知らぬ人の盃を受く 中川 手鞠
ついつい盛り上がって、お酒を過ごす。(法弘)
「花の宴」のなせること。(孝雄)
花の宴だからこそでしょうね、楽しさが伝わってきます。(博美)
紀美子
更紗木瓜八雲旧居の日溜まりに 冨士原 博美
中国原産の木瓜と英国出身の八雲。ともに故地を遠く離れての邂逅。(法弘)
楓、由紀子
モンローの手形足形春の風 熊谷 佳久子
モンローの左足は指が6本あったという伝説があるが、足形はどうなのだろう。(法弘)
シャネル№5のモンローには春の風が相応しい(眞五)
意外に小柄なモンロー、春の風が良いです。(玲子)
空席の猿の腰掛百千鳥 早川 恵美子
空席に誰が座るのか、百千鳥がはやし立てているとも思える仕立て。(法弘)
面白味です(幸子)
猿の腰掛に腰掛けるのは誰かななんて、面白い発想。鳥達が一斉に鳴き交わしている、私は湖畔で。(佳久子)
吹き渡る風に向かひて茎立てる 岡部 博行
野生に戻ろうとする逞しい生命力を感じる。 (法弘)
尚
花の下巡査あくびを噛み殺す てつお
のどかな光景。巡査の出番がないことが何より。(法弘)
史子
春疾風奈落を覗く岩の先 山本 純夫
怖くてたまらない奈落覗きのはずが、春の疾風を見つけて余裕あり。(法弘)
ホルンかつぎ駅前忙し花ぐもり 齋藤 みつ子
駅前広場でブラスバンド部の演奏。ホルンは結構重いので、持ち運びには苦労する。(法弘)
おだやかな日々の暮らしや春の雨 嶋田 夏江
「春の雨」が醸し出す暮らしぶり(孝雄)
敏晴、陽子、三枝子
荼毘にふす恒河の辺涅槃西風 阿部 旭
志昴女、立哉、春野、三枝子
燕来る小学校に子規の句碑 西脇 はま子
松山市番町小学校には、子規の句碑「國なまり故郷千里の風かをる」がある。子燕も飛んで来た。(茂喜)
子規の句碑を通して心の教育も実践しているのですね。(相・恵美子)
子規庵そばの根岸小学校にも句碑があります。子供たちが卒業する頃にはその句を味わって行ってほしいですね。(ゆかり)
匠子
風光る空を目指して海豚跳ぶ 井上 澄江
青海原で海豚が群れをなして泳いでいるのを見た。空を目指して跳んでいる様子が鮮やか。気持ちのいい句でした。(佳久子)
定規あて引く線までも朧の夜 内村 恭子
定規を当てて引く直線にさえも柔らかな歪みを感じる朧夜の気怠さを感覚的に詠いとめている。(博行)
定規をあてて引く線までもはっきりしないのは朧の夜だからなのか、作者の心持ちからなのか……(律子)
道代 、手鞠
アマンドに始発を待ちし夜も朧 芥 ゆかり
六本木で良い思い出が有ったのですね素敵! (早・恵美子)
始発を待つ喫茶店は深酒を醒ます時間でもある。朦朧とした頭の中と同じく、月も朧となっている。懐かしい景。(純夫)
立哉、博嗣
またひとつ捜し物する万愚節 宮川 陽子
万愚節がきいています(夏江)
日常茶飯事化されている「捜し物」!疲れます(智子)
史子、尚、恭子
横道に逸れては戻り蓬摘み 児島 春野
夢中に成り横道にそれてしまいますね、蓬の香がするようです。(孝子)
玲奈、香誉子、正明、那智子、道代
煮ゑ切らぬ終活談義鳥雲り てつお
孝子
唐招提寺に蒼き狼黄砂連れ 日根 美惠
蒼き狼に惹かれる。今は大陸にしか居なくなったが。(桂一)
芳彦
水草生ふ昨日の雨に育つもの 岡崎 志昴女
草木の日ごとの成長著しい春 雨を受けて水草も伸び伸びと(久丹子)
何気ない静かな時が見えるよう(早・恵美子)
一雨ごとに草も花も育つ春。水草も同様。昨日の雨に育つものという表現に惹かれました(律子)
恭子
山笑ふ初日を迎ふ金丸座 合田 智子
春野
通帳の古きを閉める遅日かな 小高 久丹子
玲奈
飛鳥路を歩き疲れて花菜漬 熊谷 佳久子
飛鳥路と春菜漬の取り合わせが好いと思う(眞五)
三枝子
幻影の世阿弥の舞や花吹雪 竹田 正明
玲奈
天つ風ゆるり淡月乗りたまふ 熊谷 幸子
メルヘン。「たまふ」がいい。(肇)
天つ風に乗った淡月の綺麗な景が見えて来ます。(相・恵美子)
芳彦
指先でワルツのリズム初桜 野口 日記
指先でワルツに花に浮かれる気分が良くでている。(桂一)
花見行くプリンサンドを食ってから 石川 順一
たかほ
麗かやスイーツ分け合ふ喫茶店 染葉 三枝子
百り子
泥炭地一歩に耕馬埋もれゆく 相沢 恵美子
ずぶりと沈んでも沈んでもゆっくり進む耕馬に、泥炭地との長い闘いの歴史を感じます。(ゆかり)
博嗣
ふらここをふたりでこげる昼下り 孝雄
ふたりでこげると昼下がりがマッチして仲の良いご夫婦が思われます(孝子)
まるで一幅の絵のような古代風景。(泰山木)
香久山へ霞一巻置忘れ 早川 恵美子
博嗣、匠子
つちふるや海渡り来し弥勒仏 西脇 はま子
志昴女
竜天に登り卑弥呼の高笑ひ 金子 肇
古代史の卑弥呼。解釈が難しいと思ったのですが、曰く言い難いこの句の魅力に引き込まれました。(順一)
由紀子
人知れず三味線草の独り言 松山 芳彦
三味線草ならあるかも。ユーモアのある句。(肇)
なずなの種の撥で三味線を弾いているのでしょうか 聴きに入りたいです。(美惠)
三味線草の別名”ペンペン草”の「独り言」と捉えているのが面白い(智子)
春雨や柔らかく打つ句読点 児島 春野
この句読点は単に文章上のものに止まらず、暮らしの中の句読点かも知れない。(てつお)
季語が生きています(早・恵美子)
敏晴、由紀子、百り子、手鞠
子の描く笑ふ太陽イースター 野口 日記
笑う太陽の絵がキリストの復活を祝するイースターに相応しい。(博行)
木の芽風小田原城の狭間いくつ 永井 玲子
総構え、数多の狭間など鉄壁の護りで北条氏五代百年の繁栄を支えた名城(眞五)
秀吉の小田原攻め。滅亡の歴史を「狭間」を介して偲んでいるのか。季語が絶妙(憲史)
一斉に内堀埋め菖蒲の芽 永井 玲子
勢津子
「マイウエイ」の後は嫌はれ四月馬鹿 泰山木
普通はアンダンテからドラマチックな後半で感動するけれど、何をしでかしたのかと、あれこれ想像して楽しい。(博子)
遠嶺の白き耀き犬ふぐり 小栗 百り子
正明
春深し手形を競ふ力士塚 相沢 恵美子
春野
大楠は江戸見てきしか風光る 岡崎 志昴女
樹齢数百年の大楠 楠の新芽・新緑は美しいです。「江戸見てきしか」のような言葉を書けるようになりたいです。(美惠)
老大樹を見上げては感嘆します。(幸子)
公園を一回りして花の下 荒川 勢津子
行き着くところは「花の下」(孝雄)
雛飾る港の見える異人館 髙橋 紀美子
陽子
比良八荒七本槍の武者ぶるひ 今井 温子
中七下五が比良八荒の激しさを物語っています。(博美)
季語が相応しく季語が効いています。(相・恵美子)
街道へ家並迫り出す日永かな たかほ
古い街道の姿が「家並み迫り出す」によく出ている。(桂一)
百り子
屋上に地産地消の春菜畑 芥 ゆかり
香誉子、日記、恭子
眠る児のまつげのふるへ蝶生る 石川 由紀子
昼間、目をつむっている子が睫毛を震わせることがある。その光景を季語と対比させることで、子の愛らしさを印象的にしている。(純夫)
生まれたばかりの生命の愛しさ。(泰山木)
敏晴、道代
いつよりの春入学ぞ放哉忌 土屋 尚
玲子
オンライン講座の長し春の昼 木村 史子
夏江
投宿の朝寝重たき磨りガラス 町田 博嗣
玲子
今日もまた自在に生きて春の雲 日根 美惠
手鞠
亡き人の色極めたる紅椿 片山 孝子
正治
建物は明治のつくり花の雨 中村 光男
日記
青空のほころび探す揚雲雀 石川 由紀子
空高く舞い上がる雲雀の様子を「青空のほころび探す」とこれまでにない表現で詠いとめている。(博行)
中七の「ほころび探す」が、揚雲雀の動きを何ともうまく言いとめている。(てつお)
ロマンチストの鳥観察なのかもしれません。揚げ雲雀を主観的に詠んで居て、魅力を感じました。(順一)
匠子
犬ふぐり花壇の隅の自己主張 井上 澄江
別名”星の瞳”。小花ながら「自己主張」している(憲史)
江戸つ子の似たもの夫婦花は葉に 鈴木 楓
共に仲良くどこまでも すっきりと言いきれて響きます(久丹子)
何年連れ添ったのかお互いが空気的存在。だが相思相愛の気持ちはお互い残っている。季語が絶妙(憲史)
看護師の優しき小言春の風邪 金子 正治
「テレビは遅くまで観ないでね」と看護師の言葉を耳にした。術後の人を思う温かい声だ。(茂喜)
「やさしき言葉」ではなく、「やさしき小言」がいいですね。(てつお)
春風邪をひき病院へ行くと、看護師から油断が原因と諭されてしまった。しかし、優しく言われた患者は骨身に沁みてないようです。(純夫)
たかほ、尚、夏江、勢津子
卒業の子は約束の髪を切る 牧野 桂一
身だしなみを整えて、新しい社会人になる覚悟が。(佳久子)
たかほ、正治
曲水や声ろうろうと緋衣の僧 髙橋 紀美子
芳彦
春休み漫画全巻読了す 木村 史子
ささやかな達成感?(智子)
100巻以上あった大部なストーリーだったのかもしれません。「読了す」に充実感が隠れていると思いました。(順一)
読経せる寺百畳や臥竜梅 孝雄
楓、正明
鉤の手に囲むあかるさ掛大根 斎川 玲奈
紀美子
桜すき今までも又これからも 山根 眞五
ズバリ日本人の気持ちを代弁しました。(肇)
火の国や霞たなびく阿蘇五岳 山根 眞五
楓
催花雨や銘々皿の十ニ枚 熊谷 幸子
雨が止めばお花見に~とそわそわ準備している様子が分かります。(博美)
美しい季語ですね。銘々皿が用意され何か宴が開かれるようです。「催」という言葉からも自然と春の宴へ連想を誘います。(ゆかり)
紀美子
花楓散る縄文の住居跡 金子 肇
青森の三内丸山遺跡は大きな縄文の遺跡だ。紅き楓の花も新葉の陰からのぞいている。(茂喜)
日記
幕間の一口稲荷春の宵 小栗 百り子
陽子、史子
武家屋敷庭に撓むる夏蜜柑 松山 芳彦
那智子
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