天為ネット句会報2024年8月
※特選句、入選句内の順番は互選点、句稿番号の順。
また互選句は句稿番号順に並べております。
七夕や緩和ケアのバースデイ 宮川 陽子
生かされていることに感謝。(法弘)
現代の時代を象徴している(桂一)
三枝子
戦禍の報入梅の報聞くように 中島 敏晴
戦禍慣れしてしまって、報せを聞いても、入梅と同じくらいにしか感じなくなった。困ったことだ。(法弘)
悲しいことに日常になりつつありますね(夏江)
尚
メデゥーサの髪も逆立つ炎暑かな 中川 手鞠
暑さのレベルが最凶なのがわかる。(法弘)
メドゥーサの髪は蛇 それが逆立つという恐怖の暑さ 今夏の尋常ではない暑さに言えてます(久丹子)
メデューサの髪は蛇、炎暑で蛇も逆立ったと面白い。(芳彦)
髪の毛は蛇の女神に見つめられると石になるという、恐い伝説。炎暑の中では、益々髪の毛が逆立って。(佳久子)
今年はホント暑いですものね。皆様気を付けて!(早・恵美子)
由紀子、玲奈、旭、真弓
荒縄の飾り結びや鉾を組む 金子 肇
伝統の祇園祭。荒縄なれどもはんなりと鉾を縛る。(法弘)
玲奈、春野、志昴女、香誉子、道代、礼子
沈黙に泡の饒舌ソーダ水 岡部 博行
沈黙vsソーダ水の泡。(法弘)
沈黙と饒舌のソーダ水の対比が面白い。(芳彦)
”泡の饒舌”との表現が素晴らしい(憲史)
紀美子、手鞠
夕端居一人でできぬ膝枕 芥 ゆかり
そりゃそうだ。(法弘)
配偶者に先立たれたのだろうか、長閑なはずの夕涼みが物悲しいものに感じられる。(博行)
夕べに涼を求めて縁先に座し、独りでできぬ膝枕は作者の心のゆとりと俳諧味ある句といだだきました。(余慶)
手鞠
老桜は伐られゆくなりチェーホフ忌 上脇 立哉
チェーホフは44歳の早生。老桜として伐られる前に折れた。(法弘)
年取った桜は病気には勝てずチェーホフ忌うなります(みつ子)
河童住む殿様川の出水かな 嶋田 夏江
殿様川? どこにあるのだろう?(法弘)
河童と殿様のとり合わせ、災いの中にユーモアの感あり。(ユリ子)
大雪渓フォンデュの村へ尾を伸ばす 早川 恵美子
フォンデュにはグリュイエール村のチーズが欠かせない。(法弘)
スイスの小さい村までも伸びている大雪渓の様子が。規模が違って雄大です。(佳久子)
露けしや墨濃淡の「雲隠」 佐藤 博子
題名のみあって本文がない。(法弘)
木の間より涼風入野松原に 町田 博嗣
土佐の景勝地。いかにも涼しそう。 (法弘)
晩夏光かつて明石に「たこフェリー」 てつお
明石と淡路を結んだフェリー。白い船体にユニークなタコの絵が描かれていた。明石海峡大橋の影響で2012年に廃止。(法弘)
★☆★殿様川・・由緒がありそうだったので、嶋田夏江さんに、お尋ねしてみました。★☆★
北九州市白野江植物園近くの門司区白野江 野江谷にあり、現在は、幅1メートル位、水量もわずか。
文明のころ門司六ケ郷の領主大積系門司親秀が、お供をつれて騎馬で領内の巡視をしていたところ、野江谷の川岸近くで突然カッパが現れ、親秀の馬を川に誘い込もうとした。
ところが、逆に馬の方がカッパを岸に引きずり上げたため、親秀はこのカッパが先々領民や家畜に危害を加えることを心配して、その場で切り捨てようとした。するとカッパは岸辺にある大石を指さし「この石が朽ち果てても、あなたの領内の人々や家畜には決して害は加えません」と助命嘆願をした。親秀はその石を証文にしてカッパを許してやったという話である。・・・「門司文書」、「中世北九州落日の譜」より。(やはり興味深い内容。有難うございました。)
草わけて訪ふや浅間の氷室跡 土屋 尚
立哉、博嗣、夏江、道代
地ビールや国男の遊ぶカッパ淵 合田 憲史
遠野物語の世界を訪れた作者。季語が妙に現実的で旅先の感じも出ていてよかったと思います。(ゆかり)
夏柳ひとりふたりと舟に乗り 明隅 礼子
さらりと詠まれた水墨画の味わいのある一句です。(ゆかり)
夏柳の青さと句の全体のリズムが川の流れを彷彿とさせます。(美穂)
順一
賀茂茄子や長い歴史に丸くなり 山根 眞五
中七下五がそのまま古都京都の歴史にも思いが巡って上手いと思いました。(ゆかり)
あのふっくらとした丸み 歴史のエキスも養分かもしれません(久丹子)
な~るほど!美味しいお茄子も己を変えてきたのですね(早・恵美子)
落し文多分口下手なあいつ 冨士原 博美
「口下手なあいつ」が面白い(桂一)
立哉
心太ただ今雷雨ゲリラ中 小高 久丹子
昨今の異常気象、線状降水帯?構わず、平常心で食べている作者が想像できました(憲史)
遠雷やぴりりと辛きおろし蕎麦 阿部 朋子
雷が近づいてくるのではと思うと大根おろしの辛さが増すように感じられるという心理描写が巧み。(博行)
来るか、来るかと思いつつ来たら怖い遠雷、大根おろしのピリッとした辛みが良く合っています。(博美)
遠雷とおろし蕎麦、何の関係性もないようでいてぴりりと辛きの表現が何かしら二つを結びつけています(律子)
”ぴりりと辛き”が遠雷と響きあっています。美味しいおろし蕎麦ですね(憲史)
眞五、勢津子、旭、百り子、日記、澄江、温子
恋下手の同士が抓むさくらんぼ 西脇 はま子
陽子
水琴のかそけき音色秋立てり 小栗 百り子
水琴の音色と秋立てるに関連付けたところが良い。(芳彦)
朋子
新しき墓地置く山や旱星 妹尾 茂喜
置くと表現されたのがいいですね。(伊葉)
志昴女
夏茱萸や雨を含みし野路の砂 町田 博嗣
夏茱萸は水分の多い場所によく育つそうですが、中7で赤く熟した瑞々しさを感じます。(相・恵美子)
由紀子、香誉子
閻魔堂裏も表も蟻地獄 今井 温子
今はもう見なくなりましたが昔はお堂の下に蟻地獄がありました、懐かしい~(博美)
蟻地獄にユーモアがある(桂一)
朋子、夏江、匠子
鳥除けの張子の鳶や稲の花 染葉 三枝子
博嗣
夕晴れや秋篠川の蜘蛛の糸 斎川 玲奈
博嗣
単衣帯銀座の卯波今はなし 郁文
行ってみたかったです。立ち姿が彷彿としてきました。(博子)
あす秋の蒼き老松鏡板 鈴木 楓
由紀子
すれ違ふ香水騒ぎ出す海馬 石川 由紀子
香水のマドレーヌ効果。遥かなる恋の記憶が甦った。(肇)
眞五
海風に幾万の墓沖縄忌 熊谷 幸子
切に平和を願う一日です(智子)
伊葉、手鞠
放牧の牛の一頭梅雨晴間 原 道代
孝子
眠前の薬数へて明易し 阿部 旭
陽子
風鈴市風の指揮する交響曲(シンフォニー) 児島 春野
風鈴の音色が交響曲きれいですね(みつ子)
風鈴が風に揺れて、シンフォニーを奏でているよう。素敵な捉えかた。(佳久子)
三枝子、孝子、温子
父の忌や白紫陽花の納骨堂 原 道代
「白紫陽花」と「納骨堂」の醸し出す世界。(孝雄)
滝に身を鎮め平家の女人塚 牧野 桂一
陽子
苔の花羅漢の鼻の穴のなか 石川 由紀子
羅漢様の鼻の穴の中を覗いたら苔の花が咲いていた。花と鼻、何ともくすぐったくて、大笑いです。(玲子)
道代
打水や集まる猫の背の円し 宮川 陽子
史子
契約の乙欄にゐて汗ばめり 芥 ゆかり
勢津子
華胥の夢目覚めて空の赤蜻蛉 松山 芳彦
順一
星飛ぶや予告の時はとうに過ぎ 永井 玲子
天体観測それともNASA宇宙船...根気強く待ったあと少々お疲れ気味なのか?(伊葉)
方丈記読めば出水のニュースかな 森山 ユリ子
日記
一塔の一刻を染む稲光 日根 美惠
「一刻を染む」瞬間をとらえた言葉が利いています。(敏晴)
真弓
潮の香の届くここにも地蔵盆 河野 伊葉
小さな漁村でしょうか、私も一度、行ってみたくなりますね。措辞「ここにも」が、決めた一句だと思います。(はま子)
那智子
すいとんを喰ふて八月十五日 合田 智子
那智子
地の果てに浮かぶ色丹銀河濃し 熊谷 佳久子
納沙布岬から見える歯舞群島 景色は素晴らしいのに思いは複雑 銀河も島々もすぐ手が届きそうなのに (美惠)
静かで雄大な光景ですね。(春野)
楓
ふうはりと交番覆ふ合歓の花 井上 澄江
合歓を植えてる交番!地域に愛されているお巡りさんなんでしょうね(博子)
一文を長く涼しく谷崎忌 土屋 尚
中七「長く涼しく」の織り成す意味合い。(孝雄)
谷崎の文章を「長く涼し」ととらえた所に共感します。(肇)
礼子、匠子
ダリア燃ゆ母にやりたきことありし 荒木 那智子
艶やかなダリアと母の秘めた情念の対比に迫力を感じます。(敏晴)
母の隠された情熱は、娘が叶えてくれるのでしょうか。(博子)
祇園会や直会あとの藍布巾 斎川 玲奈
「藍布巾」での後片付けの人と所作に思いを馳せる。(孝雄)
盛会のあとの静寂が藍布巾が干されあって直会への一層の記憶、祇園会への思いが感じられる良い句といただきました。(余慶)
眞五
連山の声立ち上がる初嵐 日根 美惠
台風程では無いが急に強い風が起こり初嵐に「声立ち上がる」が効いています。(博美)
中7に初嵐が吹き込んでいる連山の勢いを感じます。(相・恵美子)
まねをして寝る子に高き籠枕 土屋 香誉子
微笑ましい光景が目に浮かびます。(てつお)
伝えたきことの半分ソーダ水 山本 純夫
ソーダ水のグラスを見詰めながら言葉少なに向かいあう二人。昭和の若者の姿が思い出される。(博行)
言いづらいことあとはシュワッと泡で・・・(みつ子)
言い出しにくい話はあるものです(智子)
油照り予報の地図の真紫 荒川 勢津子
あの紫は赤よりも強烈です。(肇)
日盛りの橋に蜻蛉の乾きをり 阿部 朋子
孝子
頬濡らす青葉時雨や山は晴れ 鹿志村 余慶
上5に繊細さを感じます。(相・恵美子)
膝折つてカメラの先は燕の子 上脇 立哉
慎重に近づいてカメラを構えるときの息遣いがよく伝わります。(てつお)
勢津子
蝉時雨西より晴れて讃岐かな 合田 憲史
立哉
公園に荷を解く屋台蝉の昼 相沢 恵美子
尚
愛犬も心得てゐる夏休み 森野 美穂
大好きな人が家にいる それだけでわかるワン というところ ワンさんのうれしさが伝わります(久丹子)
恭子
黒眼鏡アランドロンにジャンギャバン 山根 眞五
なんか懐かしい名前を想い出させて頂きました!(早・恵美子)
サングラスの変身。言い得ていますね。(ユリ子)
西瓜よく冷えし頃合不意の客 山本 純夫
主にとって不意の客は間がよかったのか悪かったのか?誰かと一緒に食べると美味しさも増します(律子)
雨あがり遅くなります花火の夜 永井 玲子
雨上がりあと散文的に中七がまとめてあり花火の夜が老若男女それぞれに詩の展開を楽しめる佳句といただきました。(余慶)
梅雨晴れ間水玉模様のワンピース 井上 澄江
私も着ました。大きな水玉模様のワンピース(智子)
噴水のはたりと止みて生まるる無 児島 春野
尚
刺し直す子のヘアピンや夕立晴 明隅 礼子
お子さんは夕立にずぶ濡れになって帰って来たのでしょう。乱れた髪を直しヘアピンを刺しなおす、お母さんの仕草まで思い浮びます。母と娘の大切なひと時です。(はま子)
史子
炎天を抽選はづれし葉書来る 榑林 匠子
恭子、朋子
横綱の安泰安堵甘酒す 小高 久丹子
匠子
半開く奪衣婆の口炎暑来る 須田 真弓
奪衣婆の半開きの口にある欲と哀しみが炎暑と合っている。(玲子)
奪衣婆も暑さに喘いでいるようです。(春野)
玲奈
駅ピアノ喜怒哀楽の夏の空 齋藤 みつ子
旭、順一、澄江
ぎっしりと仔牛が積まれ海霧の町 熊谷 佳久子
海霧の町釧路でしょうか たくさんの仔牛たちが生まれた広大な牧場ならではの光景(美惠)
ぎっしりと仔牛を積んだトラックが海霧の町を走り去ってゆく。生活のためとは言えやりきれなく悲しい。(玲子)
何か解らないまま積みこまれた仔牛たち。海霧の町と重なり切ない風景です。(美穂)
どこの海辺の町かしら。珍しい情景に「海霧」が、いろいろの感情を抱かせます。(百り子)
恭子、紀美子、香誉子、真弓
あめんぼの穿つ足穴ゆがむ水 竹田 正明
小さな足と水のゆがみに集中した視点に感心しました。(敏晴)
ブッセ詠む青嶺の彼方(あなた)幸ありと 森山 ユリ子
楓
木管のパート練習夕焼雲 中川 手鞠
夏休み中のパート練習でしょうか?木管と夕焼雲の取り合わせもいいです。頑張った甲斐あり翌日はきっと晴天です(律子)
史子
灯涼しガレのランプの草華紋 相沢 恵美子
エミール・ガレでしょうか。私も好きです。灯涼し、がぴったりです。(美穂)
草華紋が一層ガレのランプの灯を涼しくする。(はま子)
楓、日記
水茄子の濃きいろ水にほどけをり 河野 伊葉
三枝子、礼子
遮断機の上り遥かな雲の嶺 中島 敏晴
紀美子
仁王留守山門抜ける風涼し 須田 真弓
修理に出されていらっしゃる大きな仁王さんがお留守の山門を抜ける涼やかな風が・・・(美惠)
志昴女、澄江
巨船眩し明石海峡梅雨明ける 泰山木
梅雨が明けて晴れた日の明石海峡は実に爽快ですね。去来するタンカー(?)も手に取るように見えます。(てつお)
梅雨明けの海峡の輝き。明るい夏への期待。(ユリ子)
百り子、那智子、温子
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