天為ネット句会報2024年10月

 

天為インターネット句会2024年10月分選句結果

 ※特選句、入選句内の順番は互選点、句稿番号の順。
  また互選句は句稿番号順に並べております。

  <福永法弘同人会会長選 特選句>

ユーミンの歌が流れる敬老会              中川 手鞠

ユーミンは今年70歳。もう立派な敬老会メンバーである。そしてファンのみんなも立派な老人。(法弘)

しゃれてますね(みつ子)

そういう年代の敬老会なんですね(夏江)

ユーミン世代の人たちも敬老となっのですね。光陰矢の如しです。(はま子)

敬老会の和やかな雰囲気が伝わってきて素敵です。(侑里)

立哉、香誉子、勢津子

花野にも天にも近し五合庵               早川 恵美子

良寛さんが暮らした五合庵。天にも花野にも近いし、もしかしたらそこが極楽かも。(法弘)

良寛が長く暮らした五合庵、「花野にも天にも近し」が言いえていると思います。(博美)

良寛さんの愛した五合庵 花野にも天にも近い素敵な場所の想像が広がります。(美惠)

花野にも天にも近い場所…行ってみたくなりました。(美穂)

日記

  <福永法弘同人会会長選 入選句>

星砂の浜の煌めく月今宵                阿部 旭

与論島あたりか。美しく神秘的な光景。(法弘)

月が明るいと星は見えない。今宵はその星々が浜に降りて煌めいているのかも。美しい光景です。(ゆかり)

美しい叙景句。一度見てみたい。(肇)

浜の星砂を煌めかせる月光が美しい。(ユリ子)

星砂とは美しい名前が付いていますね。月明に照らされ地上の星のように見える浜が浮かびます(律子)

綺麗な句だと思います(眞五)

楓、芳彦、日記

コスモスや髪切りし日の回り道             森野 美穂

誰かに見てもらいたくて。(法弘)

手鞠、伊葉、香誉子、恭子

虫の闇軋む裏戸の蝶番                 合田 智子

平安朝の貴公子がお忍びの訪問かも。(法弘)

静かな夜一人で居るとぎぎーっと軋む、あの怖い感覚が蘇りました。(博美)

陽子、由紀子

どちらへと聞く人もなし秋日傘             木村 史子

聞かれたら「ちょっとそこまで」と答えようと決めているのに、誰も聞いてくれない。(法弘)

秋日傘に感じられる過ぎ行く季節の一抹の寂しさが上五中七で描かれる人の無関心さと呼応している。(博行)

正装し出掛ける近所の婦人に出会した。濃色の秋日傘が婦人の佇まいを感じさせる。(純夫)

手鞠

走り根のこんがらかつて深む秋             相沢 恵美子

牛若丸(義経)が跳躍の練習をしたと伝わる鞍馬山の木の根道は走り根が無数にこんがらがって、どれがどの木のものなのやら、全くわからない。(法弘)

史子、伊葉

文机の硯の海の水澄めり                阿部 旭

秋ですね。一筆啓上「お仙泣かすな馬肥やせ」(法弘)

澄み切った心境がうかがえます(夏江)

温子

狐花蕊を整へダリの髭                 小栗 百り子

狐花は曼殊沙華の別名。この花のさまをダリの髭に例えた句を初めて目にした。(法弘)

中7の表記と季語の取合せに俳味があります。(相・恵美子)

紀美子

御殿坂七面坂と野分晴れ                西脇 はま子

日暮里あたりは坂の街だ。そんなに急な坂ではないが一気に上るのはきつい。野分後の空は東京の淀んだ空気を一掃して清々しい。(法弘)

台風一過、青空の下のお散歩ですね。(春野)

秋祭けふ掛け替へる藁の蛇               内村 恭子

祭りの様々な進行手順の中、今日は藁で作った蛇を掛け替える重要な日。(法弘)

史子

天高し難波八阪の獅子御殿               佐藤 博子

獅子頭の形をした見事な社殿である。さすが大阪と圧倒される。(法弘)

   <互 選 句>

稲刈つて鸛の降り立つ真昼かな             阿部 朋子

絶滅していた日本のコウノトリもボランティアの保護で復活。この句のような原風景は宝です。(博子)

葉末もて掬ふ柚子味噌輪花皿              町田 博嗣

「葉末」「輪花皿」の景と響きが抜群です。(敏晴)

早・恵美子

声明に和して闇夜の鉦叩                熊谷 佳久子

巧まざるこれぞ日本というセッション 鉦叩さんの姿見えずもよろしきかも(久丹子)

志昴女

六角堂波うつ岩場天心忌                高島 郁文

震災で流された岡倉天心が設計の六角堂は再建されたとのこと、中7との取り合わせが相応しいです。(相・恵美子)

父母の軽き茶碗よ秋の朝                野口 日記

伊葉、てつお

軽トラの信州飯綱林檎売り               荒川 勢津子

飯綱高原のリンゴ売りの情景が軽トラという報告のようであるが軽妙に響いてくるのが良いと思いました。(余慶)

とんぼうの影の膨らむ新校舎              永井 玲子

新校舎に多数の蜻蛉の影が映り、子供たちの歓声が聞こえる日が近いことを暗示している。(純夫)

玲奈

卵焼は母方の味秋澄めり                宮川 陽子

恭子

月明や独りの窓の灯は消えず              妹尾 茂喜

紀美子

赤蜻蛉小さくなりし子規の空              榑林 匠子

「小さくなりし子規の空」で歴史を感じる(桂一)

自然に親しんだ子規 近年のビル乱立と自然退化になにを想うでしょうか(久丹子)

子規は病床から窓越しに小さな空を見ていたでしょう。赤蜻蛉が遠ざかっていく寂しさを感じました。(ゆかり)

子規庵には、ことあるごとに吟行をしている。その度に、家の中も庭も整備されて、趣がなくなってゆくように思える。「ちいさくなりし子規の空」は、正鵠を得た表現だ思います。(はま子)

名月を取り込む窓を磨く午後              児島 春野

恭子

おさらひは”エリーゼのために”秋暑し          嶋田 夏江

孝子

宣長忌そうだそうだと思い出し             門司 侑里

朋子

月光へ翼拡ぐる迦陵頻                 竹田 正明

由紀子

秋蝶や瓦礫の上を迷ひをり               熊谷 佳久子

世界各地の瓦礫の上で可憐な蝶が迷っているようです。(敏晴)

災害後瓦礫だけが残る場所で秋蝶があまりにも変わり果てたいつもの場所に戸惑っている様子かと想像しました(律子)

能登の被災地にも秋蝶が飛び交う日が一日も早からんことを。(泰山木)

立哉、香誉子、澄江

カーテンを開ければ秋の来てをりぬ           泰山木

急に秋らしくなった今年の様子、うまく表現している。(光男)

コロセオにオペラのアリア律の風            山本 純夫

オペラと律の風合ってます(みつ子)

コロセオで聴かれたオペラのアリア、まさに律の風が吹き抜けていく様子が。うらやましい。(佳久子)

芳彦

ひとりずつさわさわと揺れ秋桜             齋藤 みつ子

陽子

露草の一つにひとつ小さき空              岡部 博行

露草の青の表現がいいな、と思いました。(美穂)

順一

秋刀魚網今年は重くなりにけり             中川 雅司

道代

母音多き蜀の国なる甘き桃               上脇 立哉

芳彦、玲子

天空のここが真中ぞ今日の月              岡部 博行

大満月の存在感が伝わってくる。(光男)

雲一つない満月を堪能している様子が伝わってきます。(博美)

雲一つない満月の夜が見えてきます。(泰山木)

手鞠、志昴女

渓谷の蜻蛉ここより上昇す               中島 敏晴

確かに渓谷を歩いて蜻蛉の群れがあるところから何をもってか上に向かって飛んで行くことがある。トンボの動きを見据える作者の顔も見えてくる佳句。(余慶)

新酒舐め古賀メロディーに浸りをり           金子 肇

先日、明大マンドリン倶楽部の演奏会で古賀メロディーに浸って来ました(眞五)

正明

人去りて秘仏の堂に秋の風               中島 敏晴

夏江

熊蝉の過ぐる十月黙に座す               鹿志村 余慶

雅司

秋蝶とペルシアの壺に迎へられ             明隅礼子

早・恵美子

夢殿の宝珠の光月今宵                 髙橋 紀美子

宝珠が月の光で輝いている厳かな景が見えて来ます。(相・恵美子)

復元の震災ピアノ律の風                中村 光男

地震の避けられぬ国に住む我らに、復元はさけられぬもの。娘の弾ずるピアノの音高し。(茂喜)

被災したピアノの蘇った音色の感動は如何ばかりだったでしょう。それは季語が全て語ってくれています。(ゆかり)

能登のピアノのニュースを私も見たのでこの句を見つけた時あっと声が出てしまいました。(侑里)

バッカスの両手に重き黒葡萄              石川 由紀子

ベラスケス描く海の神バッカスの酒宴風景に思い至りました。(泰山木)

バッカスの生命力あふれる掌中で、黒葡萄がより香り高く美味に感じられる句。(ユリ子)

早・恵美子

母嫁妻の三役忘れ星月夜                中川 手鞠

母を忘れ嫁を忘れ妻を忘れ”自分”という存在を大切にしたいですね(智子)

ぼくという少女野兎野に放ち              牧野 桂一

メルヘンチックですねぇ野球帽の良く似合う少女かしら  (幸子)

従妹で、二人の兄と歳の離れた妹がかつて自分を”ぼく”と呼んで伯母を困らせていました。お転婆でした。”野兎を野に放つ”がいいですね(憲史)

ボクっ娘の持つ現代的で都会的な雰囲気と野兎の取り合わせが面白かったです。単なる兎ではなく野兎にしたところが素敵だと思います。(侑里)

てつお

月明や五重塔の心柱                  今井 温子

澄江、日記

虫干しの資本論には朱線あり              門司 侑里

朱線に青春が詰まっています (美惠)

陽子、てつお

夭逝の墓秋蝶のシルエット               合田 憲史

連れ立ちて墓参したり、赤ん坊で死んだ姉の墓に祈る。折も折、翅を休める蝶の姿。もっと生きよ。(茂喜)

幸子

十三夜一服所望の井戸茶碗               石川 由紀子

道代、朋子

後悔を空に放ちて曼珠沙華               佐藤 律子

「空に放して」で吹っ切れた。曼珠沙華が効いている。(桂一)

英訳の桐壺の帖秋灯下                 竹田 正明

光る君へ 源氏物語で明け暮れの一年になりました。 (幸子)

虫すだくいつまで続くその話              合田 智子

孝子

秋灯や螺鈿細工のエレベーター             野口 日記

博嗣

東天の星はや凍てて不稀忌来る             牧野 桂一

正明、玲子

望月やレール点検車を照らす              冨士原 博美

順一

秋の田の眩しトンネル抜けるたび            土屋 香誉子

トンネルを抜けるたびに黄金の田んぼが広がる。豊穣の秋の喜びが素直に伝わってくる。(光男)

山国の日本は列車にトンネルを潜り抜けて走ります。秋はどの列車に乗っても黄金色に輝く稲畑が・・・(美惠)

野面積みの前に佇み穴惑い               冨士原 博美

隙間の多い野面積み。どの穴に入ろうか迷ってしまう。(肇)

雅司

秋寂ぶや津々浦々に小町伝               佐藤 博子

那智子、志昴女

唐破風の天狗の鼻のひややかに             斎川 玲奈

史子、由紀子

石段の崩れをよそに曼珠沙華              河野 伊葉

曼珠沙華の生命力と何処に咲いても綺麗(眞五)

立哉

影ふたつ歩幅小さきを月が追ふ             熊谷 幸子

月光を浴びてゆっくり寄り添って歩く恋人たちの姿を叙情的に詠っている中七下五に感銘を受けた。(博行)

どの雲も何かに見へて秋彼岸              てつお

雲の形が思い出話のきっかけになります(智子)

秋の雲は本当にそう見える。雲は天才。(肇)

お彼岸を迎えやっと暑さも落ち着き空を見上げることが増えました。そう、どの雲も何かに見えますよね(律子)

瀬戸に散る島々眺め天高し               原 道代

瀬戸は故郷の近く、楽しいときも寂しいときも島影に救われた。雲の流れが島々を渡る。(茂喜)

「散る」の表現がいいと思いました。景が浮かびます。(美穂)

胡桃二つリハビリの掌に転がされ            土屋 香誉子

かつて母も懸命に転がしていました。”胡桃二つ”今も残っています(憲史)

裏庭に日の廻りたる晩夏かな              永井 玲子

雅司、尚

八千草やそれぞれにある思ひごと            垣内 孝雄

秋草はそれぞれの夏の思いを秘めて静かで多様です。人もまた。(敏晴)

赤とんぼパントマイムの指の先             中村 光男

動の中に静があるパントマイムの指先に赤とんぼがそっと留まった瞬間を鮮やかに切り取っている。(博行)

赤とんぼはどこにでも止まるんですね(みつ子)

パントマイムと赤とんぼとの取り合わせに安らぎを感じる。(孝雄)

”パントマイムの指の先”映像が鮮明に浮かびました(憲史)

指の先に止まられて、その後どうしたのでしょう。面白い光景。(佳久子)

手を伸ばして捕まえたくなりますが、そこは我慢。(春野)

落花生剥くボサノヴァを聞きながら           森野 美穂

原産は南米というピーナツにブラジル生まれのボサノバ 手付きも軽やかにノリノリですね (久丹子)

あのリズムとメロディが落花生を剥くBGMにピッタリ。ゆったりした時間を共感しました。(博子)

順一

祖谷渓の深き静寂や星流る               金子 肇

楓、温子

ファミレスに配膳ロボや秋うらら            てつお

働き方改革の実践でしょうか?季語”秋うらら”がいいですね(智子)

勢津子

虫の音のまま虫売の店じまひ              内村 恭子

現代の虫売は縁日の夜店だろうか。売残りの虫の音を聞かせながらの店じまいが印象的。(純夫)

那智子、博嗣、紀美子

この道は友と歩いた曼珠沙華              齋藤 みつ子

道代

マリンバや月の兎の踊りだす              宮川 陽子

ファンタジックな世界。兎と一緒に踊りたくなる。(桂一)

無花果や白く照りゆく扇状地              芥 ゆかり

玲子

盆石の末の松山秋深む                 荒木 那智子

歌枕になつている末の松山は、宮城県多賀城市にあり、小倉百人一首の清原元輔の「末の松山波越さじとは」の如く、東北大震災の津波の被害がなかったという。二十年以上前、朗人先生御来仙され、天為仙台支部で末の松山をご案内したことがあった。私も同行して見に行ったことがある。盆石の末の松山、美しい措辞であると思います。(はま子)

松島への旅で、伝承の地には津波が来ていないと知りました。美しい盆石から、深む秋が立ち上がってくるようです。(博子)

文机を拭きて九月の風渡る               相沢 恵美子

清々しい句。(孝雄)

尚、春野

雄滝から女滝は近し初紅葉               泰山木

単純な素直な句なれどまわりくどくなくてよい。(郁文)

朋子

冷まじき地獄極楽千体仏                原 道代

「冷まじ」の季語が、千体仏の静けさを引き立てる。(ユリ子)

吾Uターン君Iターン島の秋              合田 憲史

面白くリズムが何とも言えない。。(郁文)

拳骨に似たり隣の庭の梨                上脇 立哉

拳骨に似ている梨と発見、比喩が面白いです。(佳久子)

博嗣

異常気象なれどいつもの彼岸花             染葉 三枝子

正明

地下足袋の自在な動き松手入              髙橋 紀美子

職人の熟練ぶりがうかがえる句。(郁文)

植木屋さんの松手入れの丁寧な動作が伺える句。(孝雄)

職人の自在な動きを地下足袋の動きととらえたことが手柄であると思いました。(余慶)

玲奈、澄江、那智子、勢津子

ソプラノの留守電聴けば今朝の秋            森山 ユリ子

孝子

夜業果つビルの谷間に明けの星             山本 純夫

玲奈、温子

                              以上


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