天為ネット句会報2024年12月

 

天為インターネット句会2024年12月分選句結果

 ※特選句、入選句内の順番は互選点、句稿番号の順。
  また互選句は句稿番号順に並べております。

  <福永法弘同人会会長選 特選句>

梟の森と木地師のともしびと           荒木 那智子

見事な絵になっており、空気感も伝わる。自然に溶け込んだ暮らし。 (法弘)

夜活躍する梟の森に住む木地師。夜遅くまで、仕事をしている様子が。(佳久子)

民話の世界ですね素敵です(早・恵美子)

朗人先生の「ごろすけほう観音さまが生まれるぞ」の世界を感じ、惹かれました。(博子)

雅司、香誉子

地方紙の人生相談秋深し             木村 史子

地方紙には地方独特の空気感が籠っている。人生相談欄もまたしかり。(法弘)

新聞の投稿欄には人の悩みごとの相談が後をたたない。読者も同じ悩みを持つ。(茂喜)

博嗣

  <福永法弘同人会会長選 入選句>

国引の綱と成るまで藁を綯ふ           早川 恵美子

国来、国来と国引きは四回行われた。相当に太い縄でないとなるまい。(法弘)

藁仕事は根気のいる作業。それを「国引の綱と成るまで」と大きく出て己を鼓舞する気概が感じられます。(ゆかり)

神話の物語性が広がりをかんじました(余慶)

由紀子、那智子、匠子、百り子、手鞠、はま子、真弓

はいはいの冒険進む冬日和            野口 日記

成長するとその冒険の行き先は世界の果て、あるいは宇宙にまでも。冒険人生の第一歩は、はいはいによる家中の探索。(法弘)

冬日射す芝生の上でしょうか。中七でエネルギッシュな赤ちゃんの姿が目に浮かびます。(泰一)

「はいはいの冒険」この言葉で、寒さに負けない元気なお子の姿が眼に浮かびます(憲史)

はいはいも慣れてくると行きたい所に自由に行けます。それを冒険と詠まれているのが面白いです(律子)

正治、道代、百り子、尚

柿熟るる猫が一番偉い家             西脇 はま子

猫のおかげで家族の絆とバランスが保たれている。(法弘)

健やかにお過ごしの「景」が浮かび上がる。(孝雄)

自分が一番偉いと思っている猫、皆でかわいがつている家族、赤い柿の実が明るく見守っています.(光枝)

甘えたいときには甘えてくるけど知らんぷりされるときも。マイペースで思い通りには行動してくれない。でも可愛いから許せる。柿の木のある家が句にしっくりきます。(ゆかり)

柿が熟れた。まずは猫に食べさせる。その後が家族の口々に入る。猫様一家のおもしろさ。(茂喜)

恭子、匠子

小春日や石工の昼餉石の上            相沢 恵美子

石切り場の冬暖かな日の光景。(法弘)

小春日の暖かくなった石の上での石工の昼食、のどかな景が見える。(光男)

石工、石の上、のくり返しが暖かな光景を広げています(光枝)

あたたかな陽ざしの中、石工ならではの昼食の場所。のどかな光景が目に見える。  (郁文)

よく見るこんな光景。うまく掬いましたね。(哲雄)

ユーモラスだと思いました。観察が効いている句かと。(順一)

冬めくや切手の顔は横を向き           森野 美穂

子規でしょう。(法弘)

細かいことですが言い表しがかわいい(みつ子)

そう言われると切手の顔は横向きが多いですね。それに気づいたことが手柄です。(桂一)

肖像画のイメージで句に深みができ冬本番になろうとするころをうまくとらえた。(伊葉)

横顔というと子規を連想。右と左で顔相の違う飛鳥仏もあり、想像が広がります。(博子)

その日よりその凍蝶を誰も見ず          明隅 礼子

時は残酷。(法弘)

その時、その凍蝶が個性あるものとなり、それ故に消えた物語があります   (幸子)

哀愁漂う詩情にいただきました(余慶)

綿虫のほうと木曽塚巴塚             西脇 はま子

なぜか、旭将軍木曽義仲ファンは多い。芭蕉しかり。後鳥羽院も(駒並めて打出での浜を見わたせば朝日にさわぐ志賀の浦なみ)と詠んだが、承久の変に敗れて、隠岐へ配流された。(法弘)

絮虫が向かうのは 木曽か大津か 木曽殿にはロマンがいっぱい (美惠)

飛ぶものは奥に売らるる絨毯商          内村 恭子

魔法の絨毯は特別な客にしか見せないし、売らない。(法弘)

そんな絨毯屋さんがあったら、是非行ってみたいです(美穂)

志昴女

晩秋の埴輪の口は馬子唄を            熊谷 幸子

割と最近の研究で、奇妙な手の形をした埴輪は、馬の轡を取っている人だとわかったそうだ。その男が馬子歌を歌う。面白い着想。(法弘)

いいですね「埴輪の口から馬子唄」 馬子唄思いつきませんでした 素敵 (美惠)

伊葉

朗人忌や聖書に栞る鵠の羽            佐藤 博子

朗人先生へのリスペクト。(法弘)

「鵲の羽」で久留米の有馬先生の句碑開きで出会った鵲のことを思い出しました。

日記

ストーブや政治談議の上滑り           金山 哲雄(”てつお”改め)

世界は混沌としてきた。政治談議などで盛り上がらないほうが幸せなんだが。(法弘)

史子

   <互 選 句>

装丁の篆刻文字や漱石忌             熊谷 幸子

漱石は篆刻の印を数多く所有していた。本屋さんに並ぶ漱石の本の帯に「漱石」の篆刻文字。イコール、この季語しか無い。(正規)

漱石によく似合う篆刻文字ですね。(ユリ子)

日記、玲奈、史子、那智子

寒晴や産土神と暮らす町             合田 智子

志昴女、陽子

根深汁止まり木がいい間柄            日根 美惠

肩肘張らない間柄と根深汁がマッチしてます(早・恵美子)

立哉

コート着しまま名画座のファム・ファタル     芥 ゆかり

「大正ロマン」の雰囲気を感じます。好きな句。(ユリ子)

あばら家の高村山荘梟鳴く            荒木 那智子

冬には雪か吹き込むというあばら家の高村山荘に季語が相応しいです。梟の声聞こえてくるようです。(相・恵美子)

春野

枇杷の花昔は華族といふ女人           中村 光男

「枇杷の花」「昔」「家族」「女人」の醸し出す味わい句。(孝雄)

枇杷の花は秋から春まで控えめな小さな花をつけ近づくと香も控えめですがいい香りがします。 「昔は華族という女人」 にそのままのお花です。 (美惠)

淡い桃色はんなりと帰り花            荒川 勢津子

淡い桃色がはんなりとしていて帰り花が咲いている。はんなりという落ち着いた華やかさがあるという上品な言葉の感覚が帰り花引き立てている。(芳彦)

並び立つ夫婦別称由布鶴見            牧野 桂一

由布岳と鶴見岳がどちらも引き立てるように仲良く並んでいると感じているのが伝わってくる。(博美)

着ぶくれてふと手すさびの肥後守         金山 哲雄

恭子

水郷の娘船頭時雨けり              鹿志村 余慶

陽子

湖国暮れ水鶏の雛の声残る            山本 純夫

暮れゆく琵琶湖に水鶏の雛の声が残る、その余韻ある表現にとても惹かれます(律子)

はま子

零余子飯ヒトは害獣かもしれぬ          木村 史子

自然の恵みの零余子を賞味しながらヒトという種は自然にとって害獣かもしれないと自問する作者に共感。(博行)

確かに、確かに。「ヒト」としたのがミソですね。(哲雄)

一本の大樹を目指す七五三            明隅 礼子

神社の大木でしょうか。伝統なのかもしれませんが晴れがましさが間接的に伝わって来ました。(順一)

七五三の神社には銀杏の木が景を作る。この句の樹も七五三の子と同様に大樹を目指しているのだろう。   (郁文)

風呂吹や京の小路の小料理屋           垣内 孝雄

底冷えのする京都の冬、風呂吹で一杯、そんな景が見えてきます。(光男)

京の冬季は底冷えする。風呂吹き料理などを食べて暖をとりたくなる。(眞五)

神奈備の光菩薩や冬うらら            斎川 玲奈

中7と季語の取り合わせが効いています。冬日に明るく輝いている光菩薩が見えてきます。(相・恵美子)

綿虫の水気おびたる夕間暮            石川 由紀子

志昴女

時雨忌や新たに買いし旅鞄            児島 春野

芭蕉の辞世の句「旅に病んで、、、、」を即思いました。(博美)

芭蕉の時代の旅の必需品は何に入れていたのだろう?(眞五)

紀美子

化粧したままのピエロの長き夜          須田 真弓

夜、化粧したままのピエロであることに気づく時が来る(敏晴)

老猫の背にある愁ひ夕時雨            中村 光枝

情景が目に浮かびました(侑里)

老いた愛猫がじっとしている背中を見ていつ迄一緒に居れるのだろうか、とか思っているのが伝わってくる。(博美)

一人居のおでん明日も明後日も          冨士原 博美

身に沁みる内容でした。(侑里)

昔、深夜ラジオで、365日夕飯はおでんと、投稿があった。家族で365日おでんはかなり切ないが、一人居だと、切なさなのか、事件なのか。(正規)

つい作り過ぎるおでん!でも二日目三日目の味のしみこみは絶品です(智子)

宍道湖に夕日の沈む神送り            荒川 勢津子

静謐な冬日の沈む宍道湖の景、神送りという季語の斡旋がいいですね。(光男)

宍道湖も神様方との別れを惜しんでいるようです。(春野)

正明

凍星や大海原に張り付いて            齋藤 みつ子

正治

やはらかな芭蕉の筆致初しぐれ          金子 肇

正明、日記、夏江

緑の首並べ真昼の大根畑             髙橋 紀美子

冬の陽射したっぷり浴びた大根!美味しいはずです(智子)

アラビアの菓子の甘さや星月夜          上脇 立哉

バクラヴァでしょうか。アラビアの菓子の甘さと星月夜の取り合わせ。くっきりとした印象です。(ユリ子)

真弓

立ち呑みす冬暖かな浅草に            内村 恭子

冬あたたかな浅草で、立ち飲みなど江戸っ子かな。(芳彦)

四股響く地方巡業秋の日に            片山 孝子

テレビ・ラジオでしか見聞きした事のない力士!生でしかも真近で見ると迫力が違います(智子)

冬麗の小さき村のミナレット           鈴木 楓

西洋の小さな村々にもミナレットが沢山。私も見上げながら、よく歩いたことを思い出して懐かしい句でした。(佳久子)

初鴨の宇佐に未還の特攻機            牧野 桂一

鴨は今年も飛来して来たが特攻機は出撃したまま還って来ない。人の愚かさに対する作者の憤りに共感。(博行)

鴨は来たのに、帰ってこない飛行機…切ないです(美穂)

余慶

朗人忌や句集に滲むアプリオリ          松山 芳彦

「朗人忌」に深く明日を感じる句である。(孝雄)

枯芝の宙を飛ぶ犬フリスビー           小栗 百り子

勢いが有って枯芝が生きています(早・恵美子)

旧邸の瓦礫のままに石蕗明かり          佐藤 律子

玲奈

冬ざれや素描の裸婦の白映えて          山本 純夫

中七と下五の響きがとても美しいです  (幸子)

孝子

雪催シャベルと飴と長靴と            森野 美穂

雪掻きの準備に飴を入れたところが面白い。作業のきつさが思いやられる。(肇)

制服の応援がきて落葉掻             土屋 香誉子

立哉、紀美子、恭子

鬼怒川も木々も尖りて冬景色           鹿志村 余慶

勢津子、手鞠

どこからかゆるきボサノヴァ街小春        岡部 博行

正治

消防車帰る間遠の鉦鳴らし            土屋 香誉子

火事場引上げの例句が見当たらず、新しいと思いました。(純夫)

玲子

明日のこと明日にまかせて花八手         岡部 博行

天狗の団扇の異名のある八手。夏から一気に冬の様な移り変わりの昨今、いろいろある忙しき日々。明日にしましょう。(正規)

時の流れに任せることも必要(眞五)

秋寂びや空のため息ちぎれ雲           齋藤 みつ子

ちぎれ雲は空のため息の容と思うと空をずっと見ていたくなります(律子)

梟の一廻りして同じ貌              鳩 泰一

言われてみれば梟の顔の表情は常に同じ。ひと回りしようと10回りしようと変わらないのでは。とぼけた句で面白い。  (郁文)

手鞠

バルザックの外套セーヌ暮れゆきぬ        熊谷 佳久子

はま子

翻訳機使ひこなすや紅葉晴れ           宮川 陽子

立哉

思羽閉じてくつろぐ一羽あり           小高 久丹子

鴛鴦のオスにも一羽でいたい時があることに共感しました。(純夫)

吟味して終大師の巳の根付            芥 ゆかり

来る年が良い年でありますように…(美穂)

由紀子

冬田道薄暮に揺らぐ白煙             高島 郁文

孝子

仮名書きの地名の峰へ寒鴉            町田 博嗣

史子

露座仏の背の北窓を塞ぎけり           石川 由紀子

玲子

新海苔や有明海の干満差             山根 眞五

干満差を利用した独特の養殖海苔。新海苔の香りは何とも言えません。(哲雄)

中世の塔多き町葡萄枯る             髙橋 紀美子

勢津子、 真弓

携帯を立てれば倒れ冬林檎            石川 順一

匠子

四つ角の裸電球聖樹売り             中川 手鞠

孝子、陽子

天にのぼる詩人につこりちやんちやんこ      妹尾 茂喜

谷川俊太郎のことかなぁと思い、選んだ次第です。合掌(侑里)

谷川俊太郎を思いました。詩人にっこりに面影ががあります。(桂一)

蝉氷つぶやくやうに浮かびをり          日根 美惠

「蝉氷」と言う季語を初めて知りました。中七で溶けて薄くなった氷や泡粒など、「浮かびをり」で的確に表現されていると思いました。(順一)

雅司、紀美子、玲子

小春日や茶筅ゆるりと手にもどり         中島 敏晴

ゆるりと手にもどりいいですね(みつ子)

小春日と”ゆるり”が合っていますね(夏江)

下宿屋の庭に顔出す狸かな            中川 雅司

香誉子

肩狭き武人埴輪や片しぐれ            河野 伊葉

正明

立冬の風のぶつかる交差点            相沢 恵美子

人の流れ、車の流れ、風の流れが交差していきます。時の流れにせかされている感じが表れている(光枝)

玲奈、春野、勢津子

小春日や画筆を洗ふ写生の子           金子 正治

野外での写生授業。小春日の中、子供達の真剣な眼差しが感じられる。(泰一)

博嗣、尚

着ぶくれの園児の列と笑み交はす         金子 肇

保育園の園児の散歩は大きな箱の中だ。子は決まって微笑みながら手を振ってくる。(茂喜)

大勢の園児其々が着ぶくれている。私も見かけるとつい声を掛けてしまいます(憲史)

御神籤の無人販売神の留守            永井 玲子

御神籤の無人販売の合理主義に神の不在を感じる作者の批判精神に共感。トホホ感が佳い。(博行)

神の留守がきいています(夏江)

道代

仙厓の禅画に遊べ小六月             嶋田 夏江

穏やかな日は、そうして居たいものですが…(百り子)

師走も近いけれど、仙厓の禅画に心もほんわか・・・(博子)

雅司、 楓

捨てきれぬものを広げて暮早し          中村 光男

悩みますね取っておきましょう(みつ子)

捨てる衝動と、愛おしいものたち、すでに冬、決断する時間は少ない(敏晴)

暮れの自分を観ている様です  (幸子)

年末の断捨離の進まない景とも背負う人生の荷物を広げてため息ついている景とも。いくらでも深読みのできる句です。(ゆかり)

同感です。(肇)

断捨離が進まぬうちに今年も暮れてしまった。よくわかります。(泰一)

那智子、香誉子

雪連れて気圏の光降り来たる           中島 敏晴

降り来たるで堂々とした雪とひかりになった。(伊葉)

新しき供花に動かず冬の蝶            佐藤 博子

「供花に動かず」でその冬の蝶の様子が伝わりました。(佳久子)

供えたばかりの花に早速冬蝶が来た。厳冬のなか久しぶりに美味しい蜜を頂けた!ご先祖も冬蝶を見守っているかしら(憲史)

花の少ない時期に、冬蝶が供花にまで蜜を求めることに驚きを感じました。(純夫)

博嗣、尚

鶴万羽舞翔つ出水天つ空             鈴木 楓

見てみたい景。古来より親しまれてきた鶴には「天つ空」の措辞がよく合う。(肇)

窓窓に聖樹の灯りマンハッタン          中川 手鞠

道代

三日月の玲瓏として冬に入る           阿部 旭

三日月の玲瓏として冬にいるの玲瓏という感性が良い。(芳彦)

中7と季語の取り合わせが効いています。初冬には三日月が透き通るように見えてきます。(相・恵美子)

由紀子

                              以上


ホームへもどる 句会報へもどる