天為ネット句会報2025年1月

 

天為インターネット句会2025年1月分選句結果

 ※特選句、入選句内の順番は互選点、句稿番号の順。
  また互選句は句稿番号順に並べております。

  <日原 傳編集顧問選 特選句>

年の夜やエンドロールを最後まで            石川 由紀子

大晦日の夜、作者はゆったりとした気分で映画を見ているのであろう。普段は端折ってしまうエンドロールも最後まで見通したというのである。新年を迎えるに当たって、すべきことはしたという作者の心の余裕が感じられる(傳)。

忙しかった一年を振り返り自宅で好きな映画を見て除夜を過ごす。こんな年越しもよいものだ。(博行)

感動的な映画鑑館での様子季語が良いですね  (幸子)

観た映画を初めから振り返りつつ、様々なことが起こった一年を終えゆったりと寛いでいる作者を感じます。(相・恵美子)

せわしい歳末を逃れて長編映画の余韻に暫し浸っている。(泰一)

恭子

初電車薙刀を手に乗り来たる              熊谷 佳久子

弓道における「弓始」のように、薙刀の世界にもその技を披露する新年の行事があるのであろうか。ふだん目にすることの少ない「薙刀」だけに、初電車における出会いが珍しく、面白い(傳)。

立哉

  <日原 傳編集顧問選 入選句>

星一つ冴ゆる真下の石舞台               日根 美惠

星が冴へているその直下に石舞台がある。良い景色ですね。(芳彦)

冬空の星と石舞台の取合せに悠久の時間と無辺の空間の中に独りいる自己を見詰める作者を感じる。(博行)

ひときわ輝く星が石舞台の真上にある。この句は真下の石舞台が主役。凍星がスポットライトである。(ゆかり)

勝者の歴史書のなか、敗者を祀る地元民の心のような「星一つ冴ゆる」だと感じました。(博子)

雅司、はま子、陽子、正明

煤逃や船の汽笛を聞きにゆく              明隅 礼子

港町に響く汽笛は郷愁を誘います。日常から離れ、色んな事に思いを馳せているんでしょうね。(博子)

正治、尚、伊葉、恭子

動かない回転木馬冬ざるる               岡部 博行

「動かない回転木馬」と「冬ざるる」との取り合わせの妙。(孝雄)

北風の吹く冬の遊園地の情景が浮かびます。 (郁文)

遊園地が閉演なのか?回転木馬が故障なのか?動かない木馬は淋しいね(智子)

冬海のしぶきの中の能舞台               原 道代

能舞台と冬海のしぶきの取り合わせに迫力を感じました(美穂)

船弁慶の舞台などがイメージに浮かんできます。(ユリ子)

志昴女、尚

蒼天の那須薄氷の棚田かな               鹿志村 余慶

冬の大気の中で、大きな青と白との対比(敏晴)

那須の寒々とした景が良く見えます (幸子)

紀美子

猫のものばかりを買つて小晦日             西脇 はま子

人間のものは大方揃え終わって、いよいよ愛猫のお正月グルメが買物の仕上げなのでしょう。小晦日がいいですね。(ゆかり)

日記、匠子

凩や六文銭の絵馬鳴らす                宮川 陽子

まだ見たことないけど(早・恵美子)

ともあれど口角上げて去年今年             小高 久丹子

玲奈

みちのくに長き道あり除夜詣              明隅 礼子

みちのくの寺に続く道は長く、大晦日詣でるまでに除夜の鐘の音が聞こえ始めた、そんな風情ある景が浮かんできました(律子)

水雪の夜や恐ろしき日本海               伊藤 正規

北陸の重い雪、暗い海を想像し能登半島地震を思いました。(孝子)

戦国の城石垣や虎落笛                 染葉 三枝子

上5で凄まじい烈風のもがり笛を感じます。(相・恵美子)

花八つ手菓子舗の蔵の美術館              須田 真弓

老舗の菓子舗や造り酒屋などに、店の歴史や関連美術品を飾っている所がある。季語が店の雰囲気や親しみ易さを伝えている。(純夫)

花選ぶ妻に付き合ふ年用意               中村 光男

陽子

寒晴や薬箪笥の読めぬ文字               佐藤 律子

明るさは十分あるのですが、読めない字は読めません。(春野)

冬帝や田も山々も墨色に                片山 孝子


悴みて歓楽街を素通りす                金子 肇


冬青空波打ち寄せる人麻呂碑              合田 智子

 <互 選 句>

銀杏黄葉ここに私がゐるといふ             上脇立哉

博嗣

タワマンに囲まれし街除夜の鐘             鳩 泰一

マンション建設ラッシュの都心で,古くからの建物が一掃されている。除夜の鐘は残る寺の存在を知らせているようだ。(純夫)

来迎の菩薩小春の鳳凰堂                染葉 三枝子

志昴女、余慶

疎ましい奴親しげに息白し               岡崎 志昴女

疎ましいのに、はく息まで目に見えてしまう。(敏晴)

銘酒売る湯元の大路冬の月               町田 博嗣

銘酒売っている湯元路に冬の月が出ていた。何んとなく抒情をそそる。(芳彦)

伊葉

絨毯に織る千夜一夜の物語               西脇 はま子

ペルシャ絨毯の上で「アラビアンナイト」を読んでいると物語の中に入り込みそうな気がしてくる。やがて飛ぶかも。ロマンティックな一句ですね。(ゆかり)

千夜一夜物語はアラビアンナイトで即絨毯に結びつきました。(博美)

博嗣、那智子

ゴッホ画の渦巻く星や虎落笛              中川 雅司

正明

外出の神父冬帽ポアロめく               森山 ユリ子

あの口髭と歩き方!神父さまも何やら探偵然としたお姿なのでしょうか?(憲史)

年流る地にささくれの数多なり             野口 日記

この地球上の誰もが穏やかな日常を送れますように(勢津子)

冬の丘登れば見ゆる白き船               嶋田 夏江

冬になっても丘に立てば、青い海に白浪たてて進む船が見える。島国の人にある幸せだ。(茂喜)

年の瀬や荷を山積みに大運河              芥 ゆかり

何処の風景だろうか。年末を彷彿させる句。(郁文)

春野

我一人ゐて寒月のひと雫                森野 美穂

我一人ゐてと、ひと雫がとてもマツチしてより寂しさを感じられます。(孝子)

「一人」と「ひと雫」が呼応して美しい句。(ユリ子)

紀美子

山越へて能登の便りや雪花す              阿部 旭

山越へて能登の便りがあった。雪花の香りがする。(芳彦)

白息の怪獣ごつこ通学路                石川 由紀子

怪獣の吐く火焔をこどもたちは白息で真似て遊んでいる。寒中の元気な様子が伝わる。(純夫)

史子、恭子

思ひ出がかがやく未来日記買ふ             木村 史子

さり気無く晩年の心意気を書き留めていらっしゃいます(早・恵美子)

日記に書くことで日常も未来に残る。新年に開くまっさらの日記帳の輝き。(ユリ子)

楓 、百り子

冬鴎軍港ますぐに飛び抜けり              中島 敏晴

佐世保での景を思い出しました。真っ直ぐに危機感があれります。(桂一)

伊葉

ダイヤモンドダスト地には軽きジャズ          早川 恵美子

玲子

葉牡丹に地獄の火焔渦巻けり              金子 肇

順一

指先に別れの予感冬木の芽               金子 正治

指先で予感という感性が冬木の芽とよく響き合います。(桂一)

握手でしょうか、冷たい指先に別れの予感良く分かります。(孝子)

冬苺恋の呪文もかけておく               森野 美穂

可愛らしい冬苺、恋の呪文をかけるなどたのしいですね。(光男)

人日やおととの影を探しゆく              妹尾 茂喜

「おとと」という古風な言い方に惹かれました(侑里)

法隆寺資材置場の鼬罠                 今井 温子

木材が沢山置かれている資材置場はイタチの良い隠れ家なのでしょう。(春野)

立哉、はま子、香誉子

AIの時代といへど湯婆(たんぽ)抱く               中川 手鞠

新旧の対照が湯たんぽがよい。(郁文)

花形たる職業人間も、昔からの「湯婆」を重宝している!そのギャップが面白い(憲史)

余慶

日向ぼこ人生なんてあつたかな             門司 侑里

志昴女、香誉子、匠子

火遊びは御法度江戸の空っ風              早川 恵美子

由紀子

コンサートのついでとのメモ柚子のジャム        荒川 勢津子

立哉

御降りを乞ふ快晴の東京に               土屋 尚

由紀子

クリスマス宵の路地裏恋占い              垣内 孝雄

クリスマスの宵に路地裏で恋占いをしているなんてちょっとさびしいけど、いろいろと未練があるのでしょうね。(光男)

この貌かこちら貌か荒巻の               伊藤 正規

鮭の鼻曲がり 鼻の曲がっているのは雄 産卵をしない雄は栄養たっぷり 鼻の曲がりっぷりのいい貌を・・・・(美惠)

肉付きもさることながら 決めはやはり眼つき口元しっかりの貌(久丹子)

巫女出づる三方幕に北吹けり              町田 博嗣

玲子

白壁の海岸教会ポインセチア              相沢 恵美子

正治

クリスマス五指踊らせる手話の劇            牧野 桂一

心温まる光景。「五指踊らせる」がいい。(肇)

心があたたかくなるクリスマスですね。愛を感じます。(美穂)

中七の「踊らせる」に手話劇の楽しさが伝わります(智子)

玲奈、史子、正治、日記、香誉子、道代、那智子

海氷の溶ける疾さよ白熊よ               佐藤 博子

匠子

伊豆石の土蔵ある町初旦                榑林 匠子

博嗣

冬桜見返り坂の先の先                 合田 智子

「中七」より「下五」の修辞に惹かれる。(孝雄)

冬桜の名残を惜しむ「見返り坂」。「先の先」に作者の思いが増幅されているよう。(博子)

史子、夏江

輪唱の森のくまさん日向ぼこ              永井 玲子

どなたとの「日向ぼこ」、読み手は思いを巡らす。(孝雄)

思わぬ陽の温もりに口遊みたくなります(智子)

手鞠

岩塩は水晶のごと初日影                熊谷 佳久子

雅司

ミステリーのどんでん返し年つまる           荒木 那智子

陽子

首塚へ冬三日月の白きこと               冨士原 博美

何方の首塚なのでしょうか 冴えわたった冬の空にシャープな三日月と首塚 背筋が伸びます(美惠)

百り子

老猫の背にある愁ひ秋の雨               中村 光枝

背を丸めてじっとしている老いた猫、何を考えているのでしょうか?うつらうつらしているだけでしょうか~(博美)

夏江

年忘下戸の上司と酔ひにけり              木村 史子

年に一度くらいは下戸の上司と酔ってみたい。「下戸の上司」におかしみがある。(肇)

上司との素敵な関係ですね(侑里)

酔ってしまったお二人にはまず『今年もお疲れさまでした!』と言ってあげたい。お勤め人の悲哀を感じます(律子)

首塚に冬の白菊黄菊かな                斎川 玲奈

順一

背の子の寝息うなじに冬うらら             合田 憲史

母であることの至福のひと時。(肇)

中7が効いています。作者の背に心預けて寝ている子の安らかさを感じると同時に、作者も子の温もりを感じている。(相・恵美子)

「冬うらら」にふさわしい情景だと思いました(美穂)

穏やかな冬の日の平和な日常。(泰一)

道代

全編を書簡往来読始                  土屋 香誉子

玲子

冬座敷客を尻目に退かぬ猫               児島 春野

道代

初日射すいつか遺構となる街に             芥 ゆかり

今年もこの街に初日を迎えたがいつかここも無人の遺構になるのだろうかと遥かな未来に思いを馳せる。(博行)

志ん生の江戸へ誘ふ夜長かな              森山 ユリ子

べらんめいな語り口いいですねぇ (幸子)

楓、那智子、百り子

霜天や棘研ぎ澄まし冬薔薇               熊谷 幸子

棘を研ぎ澄ますという所に冬薔薇の特別な美しさを感じます。(桂一)

年の市夫はたこ焼なぞ食うて              内村 恭子

年末支度目線の妻 たこ焼きを頬張る連れ合い なぞ食うて でしょう(久丹子)

そう云う経験はないが生きていてくれたら連れ立って年の市に行きたい(勢津子)

寒林を抜け幻のやうにカフェ              内村 恭子

日記

湯奴の向かいは淀川(よど)の流れゆく             合田 憲史

風情のある句でした(侑里)

惑星の幽けきひかり花柊                髙橋 紀美子

柊の花もひっそりと咲いていますね(夏江)

正明

我が影を壊さず映す冬の水               中村 光男

冬の水の固く澄み透った様子が「壊さず映す」という言葉で実感できます。(敏晴)

冬の水の清らかさに映る我が姿。色々なことを考えている姿が。(佳久子)

冬帽をかぶり直すや鏡池                中川 雅司

鏡池に映る己の姿をみて帽子をかぶりなおしたといこと。ユーモラスな様子が見えて面白い。(光男)

降る雪や奥に余呉湖の眠りをり             日根 美惠

琵琶湖の北東に位置する余呉湖、その神秘なところ、静謐な佇まいは何かしら物語が生まれそう(律子)

蕉翁を偲ぶ枯野へ一人旅                竹田 正明

余慶

書留を出しに急ぐや小晦日               土屋 尚

郵便局は大晦日から新年5日までお休み 書留の中身は?(久丹子)

日記帳仕舞ふに栞る冬紅葉               荒川 勢津子

私も綺麗な紅葉を拾って栞にします。(博美)

よそゆきの顔してをりぬ初鏡              荒木 那智子

新年で普段しない化粧顔に「よそゆきの顔」との表現、自分自身が驚いているのかしら?(憲史)

雅司、手鞠、順一

天井の龍は眠らず去年今年               上脇立哉

大きな目を開けている天上画の龍が、まざまざと思い浮かびました。(佳久子)

言い得て妙です!(早・恵美子)

年が改まっても龍の勢いは落ちませんように。(泰一)

はま子、手鞠

森閑の被災地能登に除雪音               高島 郁文

深深と冷えゆく半島の家に人の声は消え、住む家は自然の脅威につぶれ、しんと雪が降る。(茂喜)

故郷に撃たれし熊の眼や優し              中島 敏晴

せつないです 彼らの生息地を奪ったのは人間なのに(美惠)

全句集開く「母国」よ朗人の忌             牧野 桂一

朗人師全句集を開けば「母国」だ。「草餅を焼く天平の色に焼く」がとてつもなく好きだ。(茂喜)

朗人先生のご冥福をお祈り申し上げます(勢津子)

山茶花散る十二単単衣を脱ぐやうに           中村 光枝

平安朝の時代が目の前に現れたような俳句でした。(佳久子)

玲奈、由紀子、紀美子

以上

ホームへもどる 句会報へもどる