天為ネット句会報2026年3月

 

天為インターネット句会2026年3月分選句結果

 ※特選句、入選句内の順番は互選点、句稿番号の順。
  また互選句は句稿番号順に並べております。

  <日原 傳編集顧問選 特選句>

ガムランの導く叙事詩春の月                 芥 ゆかり

ガムランはインドネシアのジャワ島、バリ島で演奏される合奏音楽。舞踊や影絵芝居の伴奏などでも演奏される。青銅製の音板を打つ音は特に印象深い。掲句は「ワヤン」と呼ばれる影絵芝居を詠んだ句であろうか。月の見える屋外で催される芝居。本格的な演目は夜から明け方まで長時間上演されるようである(傳)。

バリ島へ行った時のことを思いだす。春の月にぴったりの景だ。(光男)

ガムランの音色は春の月によく似合いますね。(ユリ子)

芳彦、余慶

春立つや紅掛空の淡き照り                  中川 雅司

「紅掛空(べにかけそら)」は日本の伝統色。ほんのり赤みを帯びた淡い空色。藍で下染めした空色の上に紅花で染め重ねて出す色だという。掲句は立春の明け方の空を見ているのであろう。「紅掛鼠」「紅掛藤」といった染色の名も江戸時代や明治時代の文献に見える(傳)。

  <日原 傳編集顧問選 入選句>

淡海に雨音走る菜の花忌                   日根 美惠

司馬遼太郎の「街道をゆく」は湖西のみち、近江から始まった。それも踏まえ、湖を渡る雨と菜の花が美しい印象の一句。(ゆかり)

菜の花忌をしみじみと回顧    (温子)

景が綺麗忌日にぴったり  (幸子)

水の淡海と、菜の花に満ちた景が優しく美しい。時代を駆けた龍馬や空海等を描く司馬遼太郎の語り口のように。(博子)

夏江、楓、那智子、尚、百り子

うぐひすや金継ぎもする骨董屋                荒木 那智子

立哉、雅司、伊葉、手鞠、はま子、純夫

啓蟄や出土瓦に朱の少し                   荒木 那智子

啓蟄と出土瓦の関係の妙、朱の少し残る瓦の描写(敏晴)

春の日に古代史に思いをはせる。(泰一)

正明、匠子、日記

木の窓のねじ式の鍵春ともし                 中島 敏晴

志昴女、おしおいけ、日記

待ちきれず負うランドセル山笑う               児島 春野

何とも可愛い一年生。山笑うの季語がよく働いている。(桂一)

新一年生のはやる気持ちがよくわかります。(哲雄)

恭子

如月の光鏤め鳩の首                     相沢 恵美子

春の日を鳩の首に捉えて見事です。(肇)

鳩の首が眩しい如月の光に煌いている。キリスト教において精霊の象徴とされる鳩に似つかわしい。(博行)

春寒の白き雨粒六地蔵                    野口 日記

史子、三枝子

啓蟄や天平古道潦                      中川 雅司

雪が解けたり雨が降ることにより水たまりができる春が感じられる。(博美)

余慶

門跡様は数へ百歳梅に佇つ                  今井 温子

春風に吹かれ白梅を見上げる影は御門跡様、御年なんと100歳、世紀を歩きし達人よ。(茂喜)

道代

湿原の白骨樹林冴返る                    熊谷 佳久子

三枝子

媽祖廟の赤き蝋燭春立てり                  相沢 恵美子

赤き蝋燭、われわれにはちょっとなじみがないが、媽祖廟につきもの。春立てりという季語の斡旋がいい。(光男)

紅鶸の枝に春の日のしづりかな                伊藤 正規

  <互 選 句>

桃の花切磋琢磨の三姉妹                   森野 美穂

陽子

春の雪ターナー島は風になれさうな              河野 伊葉

秋山兄弟の風を感じました。(誠治)

闇ほどく梅一輪の香りかな                  郁文

梅の香りが闇を解くという見方に感銘(桂一)

ほどく に目を開かれるおもいでした(夏江)

闇ほどく、の表現が素敵だと思いました(美穂)

上五がお上手です。(春野)

澄江

風光るコペルニクスの生まれし日               西脇 はま子

志昴女

現れし湖底の郷に春の雨                   荒川 勢津子

雨不足が幸いし過去に住みし里が垣間見え感慨ひとしおでしたね。しかも望みの雨。春の雨が効いています。(郁文)

湖底から昔のものが現れるという句は結構あるが、この句は春の雨という季語との取り合わせで生かされている。(光男)

ダム湖に沈んだ故郷、渇水は大変ですがひと時郷愁に浸る事が出来てやがて待望の春の雨。作者も安堵されましたね(憲史)

陽子、おしおいけ、道代

雛市の雛売る人の髭ばうばう                 中川 手鞠

雛売りの髭がぼうぼうとは驚かされる(正規)

可愛いい雛を売る人の対比が極端で面白い(智子)

キムチ部に新人二人春兆す                  金山 哲雄

こんな部があるとは驚きました。朝鮮系の学校でしょうか?何よりも入部があり、その感激が季語の春の兆しに表れています。(郁文)

種物屋白ひまはりをすすめたる                土屋 尚

雅司

酒蔵の親子三代雛かざる                   斎川 玲奈

奥ゆかしい「意」と「景」(孝雄)

長く受け継いでいく気持ちが伝わって来る。(博美)

龍甲に踊る十指の春を呼ぶ                  長岡 ふみ

箏の弦を弾いている踊る十指が如何にも春を呼んでいるかのように感じます。(相・恵美子)

梅の里駅の広場の足湯かな                  合田 智子

旅情あふれる句。(孝雄)

真空の中のマシュマロ春の雲                 髙橋 紀美子

綿あめのようになるのかと思いましたが、意外にしっかりした固体なんですね。(誠治)

帰り来て初音告ぐ妻声弾む                  金子 肇

帰宅後すぐ”初音”の報告。毎年ご夫婦で待たれているのですね。毎年続く新鮮な様子が目に浮かびます(憲史)

少年は線路に土筆置いてみし                 上脇 立哉

釘とかでなく土筆とは。何の実験だったのか?今の子は道徳的で何よりもです。(郁文)

少年の置く土筆は爆弾のごとき破壊力を持つ。(敏晴)

沈丁花故山の風に会ひに行く                 染葉 三枝子

「故山の風に会ひに行くという」フレーズが沈丁花とマッチしてますね(芳彦)

「故山の風に会いに行く」優しくおだやかな表現、お人柄も沈丁花も利いていますね。「祭りの花を買いに行く」ちあきなおみの歌を思い出しました。余慶

雪解風熊避け鈴の子ら下校                  宮川 陽子

熊避けの鈴を持って下校は大変ですね(芳彦)

孝子

人肌の小さき急須や梅見茶屋                 永井 玲子

まだ寒い時期、熱くはなく、人肌の急須がリアルだと感じました(美穂)

未だ春の浅い梅見茶屋に人肌の小さい急須が温もりを感じます。(相・恵美子)

中七までが梅見にピッタリほっこりします(早・恵美子)

澄江

草萌ゆる原野を動くぱおの民                  早川 恵美子

雄大なモンゴルの遊牧民の春の風景 素晴らしい(美惠)

雄大な草萌えの句ですね。(春野)

朋子、日記、純夫、由紀子

雪の壁ぬいて辿るや投票日                  郁文

史子

言の葉のやうに薄氷こはれけり                明隅 礼子

薄氷にきらきらと日が差す。美しい言葉ほど危うく壊れやすい。(玲子)

「言葉」には強い面と儚い面と両面ありますね。(哲雄)

煌きながら儚く消えて行く薄氷を言葉に準えたことに、言葉の美と限界を知る詩人の認識を感じる。(博行)

言葉も薄氷も本当に危ういものです。(泰一)

紀美子、由紀子

一ヶ月検診の稚児風光る                   荒川 勢津子

この稚児は男の子と思いたい。(正規)

春宵や異国に母語の短波聴く                 山本 純夫

周波数合わせて聴く様子がありありと  (幸子)

異国に暮らす人が母語を懐かしく思い出せるのが短波放送を聴く時間。良い時間と想像します(律子)

由紀子、玲奈

歳時記にコーヒーこぼす目借時                佐藤 博子

歳時記は奥深いですね。ついつい我を忘れて・・・(哲雄)

春は眠い、こんなことをするのは私ぐらいかと思っていたら……(律子)

朋子、正明

理由ありの格安りんごパイを焼く               髙橋 紀美子

理由などあって無きもの。格安の林檎ゲットして最高。アップルパイ美味しく焼き上がります様に(玲子)

後出しのじゃんけんなのに負けて春              おしおいけ

大人ですかね?ほのぼのとして、でもちょっぴり淋しさも感じる春です。(敏)

何故だろう?もしかすると夏に螢に生まれ変わりたいから?(肇)

おじいちゃんと孫娘。無事におじいちゃんが負けて安堵。孫娘もご満悦(憲史)

じゃんけんに弱い人のあるある、です(律子)

匠子

運慶の閻魔も笑むや黄粉鳥                  佐藤 博子

早春の鶯鳴き声の愛らしいこと。鎌倉円応寺閻魔大王さんでしょうか  そうでしたか閻魔大王さんの微笑は鶯の声でしたか。(美惠)

鶯の別称の黄粉鳥を使われて、そこに黄粉まみれの鳥がいるような面白さの句。(佳久子)

楽しいです。(百り子)

掃除より洗濯が好き桃の花                  西脇 はま子

桃の花から「いつ掃除するの?」と言われているような愉快な句。(佳久子)

啓蟄や地軸揺るがす響あり                  石川 由紀子

匠子、手鞠

啓蟄の竈に滾る産湯かな                   合田 憲史

公魚の光の軽さ掌に並べ                   岡部 博行

氷上の生き物の放つ光は総て軽い。(敏晴)

光の軽さと言う表現に惹かれますね。(順一)

公魚を「光の軽さ」と表現したのが素晴らしいと思います(美穂)

自分で釣った公魚を何匹も手に並べた。中7が良いです。(肇)

那智子、博嗣

二ン月のシャルトル青き聖マリア               鈴木 楓

青い街並みと 聖マリアが響きあっています 現世を浄化させて天からは粉雪まっているのでしょうか    (温子)

蜷の道見てをり明日はクラス替へ               内村 恭子

期待に胸がドキドキしながらも静に過去を振りかえる 蜷の道に見る真直ぐではなかった来し方。   (温子)

思春期の色々な思いが交錯するのでしょう。(春野)

いろいろ想像がわきます。(百り子)

下萌の小径の起伏わらべ唄                  竹田 正明

春風が小枝を鳴らし、母親が幼児を連れて草の芽を探しに川辺の道を歩く。児の謡う歌に足音鳴らす。(茂喜)

わらべ唄が効いている。(博美)

マラソンのゴールは徒歩で春の空               鳩 泰一

道代

ふらここを漕ぐでもなくて揺らしけり             熊谷 幸子

気持ちに迷いがあるのでしょうか?春は気持ちの揺れる季節です。一緒に揺れそうです。(敏)

穏やかさに気怠さと一抹の不安が混じる春の気分が、ブランコを揺らす人の姿から漂って来る。(博行)

紀美子

花すみれ徒歩三分の文学館                  合田 智子

花すみれと文学館の取り合わせ。春のロマン。徒歩3分が軽やか。(ユリ子)

好き嫌ひはつきり言ふ子黄水仙                金山 哲雄

きっと独立心の強い頼もしい子でしょうね。(泰一)

黄水仙の姿・形・匂いを想像させてくれます(智子)

立哉

春の雨傘をさす人たたむ人                  榑林 匠子

穏やかな春の雨模様がリズムよく表現されています(智子)

史子、陽子、真弓、恭子、孝子、勢津子

しづもりて低く日矢差す雪解原                岡部 博行

春の訪れまじかですね  (幸子)

雅司

此の列車雪の列車を待つてをり                明隅 礼子

博嗣

故国恋ふ花菜明りに十字墓                  熊谷 幸子

夏江、真弓

貯水池の底をさらして二月尽                 土屋 尚

那智子、勢津子

膨らみの足りぬケーキや花曇                 中川 手鞠

娘たちの小さいころを思い出しました。膨らみの足りないケーキと花曇りがマッチしていますね。孝子

スポンジの膨らみあと少し足りない気持ちの表現に花曇りをもってきたところがうまい。(伊葉)

真弓

春星やコリンと齧るコンフェイト               芥 ゆかり

手鞠

春祭り陽当たる方へひよこ売り                永井 玲子

作者は、ひよこへの優しさと同時に、このひよこたちへの悲しみも感じていらっしゃるように思います。(敏)

「中七」の「重さ」と「深さ」を思う。(孝雄)

ひよこ売が春らしくて良いですね(早・恵美子)

三枝子

ひとところ売場明るし飾雛                  上脇 立哉

恭子

古屋あり庭いつぱいの大椿                  中島 敏晴

長く住んでいた人は椿好きの人だったかと想像されますね。(ユリ子)

鶯の音符を越ゆる調べかな                  竹田 正明

音符を越えるということで鶯の声が手に取るように伝わってくる。言葉の力はすごい。(桂一)

はま子

農道の轍くつきり囀れり                   佐藤 律子

轍跡がくっきりとしている景に季語が相応しく、青く晴れ上がった空を相像します。(相・恵美子)

耕し、春耕ですね。農機具と言うのか、トラクターなども思い浮かびました。(順一)

農道をトラクターなどが行き来してできた轍。囀りで春の兆しが感じられる句。(佳久子)

立哉、純夫、玲奈

春昼や子規球場に猫の入る                  須田 真弓

上野公園にある小さな球場。試合でも始まるかと覗いていると一匹の猫が登板してきた。春の昼らしい光景。(ゆかり)

正岡常規 伊予松山ニ生レ東京根岸ニ住ス 日本新聞社員タリ。忘れずに子規球場を訪ね来し黒猫よ。(茂喜)

中七を坊ちゃん球場ではなく子規球場としたところにひかれました。(伊葉)

楓、博嗣

蕗の薹しばしの留守居頼まるる                榑林 匠子

暫しの留守を頼まれた筆者、蕗の薹が伸びてしまわぬうちに帰ってきてと、どこか切なくも面白いです。(玲子)

啓蟄やそろそろ潮時かもしれぬ                長岡 ふみ

潮時大切にしたいです。(美惠)

季語の斡旋が上手です。面白い!(早・恵美子)

志昴女

龍馬ゐるポニョもゐさうな鞆の春               向田 敏

龍馬とポニョの取り合わせに思わず笑みが。。。(誠治)

鞆の浦を散策したくなるような一句。いろは丸事件と潮待ちの港も、いまはポニョ・・・ですね。(博子)

船室で歌会のあり人丸忌                   熊谷 佳久子

紀美子、はま子

縁談のすすむ客間や梅真白                  内村 恭子

玲奈

つくしんぼ乳歯生え初む頃となり               嶋田 夏江

勢津子

復元の遣唐使船寒昴                     今井 温子

冬の季語なのでどうかと思いましたが、季語「寒昴」と遣唐使船の復元に詩性を見ました。(順一)

春潮や鯛が狙ひの磯小島                   山本 純夫

瀬戸内か南紀か。「鯛が狙ひの」という措辞に春の気分の高揚が感じられる。秘密の磯小島なのかもしれない。(ゆかり)

切通過ぎし辺りの初音かな                  合田 憲史

切通しを歩くのは少し勇気がいる。過ぎし辺りの初音にほっとする。(正規)

朋子、正明、おしおいけ

潮の香のほのと香るや春隣                  嶋田 夏江

日本海側でしょうか。厳しさを耐え抜いて、春の気配を感じた時の嬉しさは格別でしょう。(博子)

澄江

虚も実も躬の内にして粥柱                  牧野 桂一

以上

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