天為ネット句会報2026年7月

 

天為インターネット句会2026年7月分選句結果

 ※特選句、入選句内の順番は互選点、句稿番号の順。
  また互選句は句稿番号順に並べております。

  <日原 傳編集顧問選 特選句>

月涼しゲルの灯浮ぶ大草原                  中村 光男

「ゲル」はモンゴル高原に住む遊牧民が使用する移動式住居。掲句はそのゲルの灯火が点在する大草原をやや高所から見下ろしている感じである。「月涼し」という季語と相俟って大きな景が描かれた(傳)。

モンゴルの大草原、月が照らしていたのはほのかな明かりのゲルの灯のみ。私も体験したので、懐かしく拝見。(佳久子)

モンゴルの大草原、行ってみたいです!(春野)

月光の大草原。雄大な景に誘われます。(ユリ子)

朋子、秀平

坊津に黒潮やすむ海紅豆                   早川 恵美子

「坊津(ぼうのつ)」は薩摩半島の南西端にある古くからの港町。江戸時代には島津氏のもと、領内一の良港として海外貿易の基地となった。「黒潮」は日本列島の南岸沿いに流れる強い海流だが、天然の良港である坊津はその影響は受けず、港には穏やかな水面が広がっているのであろう。それを「黒潮やすむ」と言ったのであろう。そこには南国の花である真紅の「海紅豆」も咲いているのである(傳)。

志昴女

  <日原 傳編集顧問選 入選句>

フランスパン抱え茅の輪をくぐりけり             榑林 匠子

買物の帰りでしょうか。フランスパンを抱えての茅の輪潜り、おもしろいけいですね。 (光男)

日常のついでの面白味  (幸子)

古き良き伝統行事を大切にしている一方で、食は洋が好みかしら?「フランスパン」が効いている(憲史)

フランスパンを抱えて潜るとは。買い物の帰りだったのかもしれません。(順一)

ホイアンの古き茶房の仏桑花                 鈴木 楓

ベトナムのホイアン。古い茶房と鮮やかな赤いハイビスカスの対象がよかった。(佳久子)

古き遺産の町、日本橋があり日本との交流があり、古き茶房が季語を生かしていると(余慶)

立哉、純夫

弓町も鷹匠町も梅雨の中                   金山 哲雄

江戸の雰囲気が残る町名、やはり風情が違いますね。(春野)

志昴女

家康の時計涼しく時を打つ                  小栗 百り子

朋子、 三・恭子

指さしてはや見失ふ揚羽蝶                  木村 史子

指さして「ほら、あそこ」と誰かに伝えている間にいなくなる蝶。作者の動きがとてもよくわかる。(ゆかり)

飛翔力のある夏蝶を詠まれて同感(勢津子)

明けやすきゴビに夢見る羊たち                佐藤 博子

史子、百り子

ヴォ―リスの街の片陰オルガン鳴る              おしおいけ

近江八幡であろうか。ノスタルジックな町の空気感を味わえる句。オルガンの音もどこか懐かしい。(ゆかり)

万緑の心字池畔の師弟句碑                  金子 肇

東大構内の心字池の側に二つの句碑が並び建つ。山口青邨氏の「銀杏散る」と有馬朗人氏の「銀杏散る」である。(茂喜)

大旱や羅馬古道の石白く                   中川 雅司

長く続くローマ古道が大旱で白くなってしまった大きな景が想像されます。(相・恵美子)

白南風や町家の長き通り庭                  児島 春野

梅雨明けの古都の静かな佇まいが感じられる。(泰一)

都路の日ざしに竦む祭牛                   斎川 玲奈

牛さんも都路のこの暑さには耐えられない。(泰一)

光圀の若き肖像実梅落つ                   芥 ゆかり

紀美子

老鶯の雨衝いて鳴く伊良湖岬                 佐藤 博子

朋子

屋久杉の齢を聞くや月涼し                  中村 光男

日記

水無月や行方知れずの「蛍丸」                芥 ゆかり

雀の子二羽三羽ゐる鬼瓦                   阿部 朋子


武蔵野の一本道や独歩の忌                  森野 美穂


飛ぶものを発たせ麦藁日の匂ひ                日根 美惠

箱舟の乗り手は一人蓴採り                  早川 恵美子

岩手山望む牧場風薫る                    井上 澄江

岩掘の谷戸の隧道苔茂る                   山本 純夫

名にし負ふ笛吹川の徒歩鵜かな                西脇はま子

 

  <互 選 句>

夕顔や戸締まり早き老夫婦                  上脇 立哉

十七音が醸し出す世界がある。(孝雄)

私生活を見られているみたいです。(温子)

実感です。寿恵

源氏物語でもカトリーヌ・ドヌーブでもなく夕顔の咲く頃が戸締まりの時間、老夫婦の生活ぶりが好ましい。ふみ

夕顔の咲く老夫婦の庭が目に浮かぶようです(美穂)

夏江

朝顔の双葉に雨の上がりけり                 西脇 はま子

雨上がりの希望の象徴のような双葉が良いと思いました(美穂)

三・恭子

抽斗に消えぬ消しゴム桜桃忌                 野口 日記

昭和初期の消しゴムはなかなか消えず強くこすると紙が破れそうになりました。鉛筆も滑りが悪く削る時も木の柾目が通っていなくて真っすぐ削るには子供にはむつかしかったです。(美惠)

情報過多のネット、溢れかえる電子音、誠意なきAIなどに晒されている我らの微かな郷愁です。(誠治)

内・恭子、陽子、尚

病める日も上見の金魚うつくしき               木村 史子

上目の金魚に心情が良く出ている。(桂一)

目の涼し仁左衛門似の老主治医                今井 温子

このような主治医に診てもらえるなんて羨ましいです。(博美)

純夫

空よりも水面明るき菖蒲池                  岡部 博行

芳太郎、玲奈、内・恭子、澄子、正明、道代

合歓咲くを確かめたくて回り道                荒川 勢津子

殊勝な心掛けだと思いました。(順一)

我が町にも合歓の大木があります。時期になると木一杯に咲く合歓の花に会いたくなります。(澄江)

紀美子、道代

雑魚寝した日々は遥かにさくらんぼ              中川 手鞠

昭和も雑魚寝も遠くなりました。「さくらんば」がなぜか懐かしいです。(美惠)

幼い日の思い出がさくらんぼにピッタリですね。(博美)

ざっくりパックに入ったさくらんぼから雑魚寝のイメージ 言えてると思いました(久丹子)

兄弟で雑魚寝した幼い日々、合宿で雑魚寝した青春の日々。時間も距離も遠くなった人々を想う作者の優しい心を感じます。(澄江)

那智子

年毎にへりゆく畑や夏燕                   土屋 香誉子

「人の営み」と「自然の営み」との取り合わせに心を打つ。(孝雄)

線刻のビザンツ壺に夕焼差す                 中川 雅司

日記

苔の花微かに水が漏れて居る                 石川 順一

玲子

御目失せし野仏あまた走り梅雨                相沢 恵美子

立哉、芳太郎

繊繊と一村覆ふ植田風                    中田 秀平

澄子

息つめて覗く手のひら蛍狩                  斎川 玲奈

息詰めてに真剣に捕った蛍を見詰めている子どもの姿が浮かぶ。(桂一)

暗い中で蛍の光見られたのかしら,ドキドキです。寿恵

上五で真剣に蛍火を探している様子が分かります。(相・恵美子)

小さな掌をそーっとひろげる瞬間のドキドキ感「ヤッター」か「残念ー」どちらかな?(智子)

立哉、日記

皿にあるごとくパセリの育つ畑                土屋 尚

伊葉

語り継ぐ摩文仁の空や慰霊の日                合田 智子

昭和20年5月沖縄戦下の米軍は日本軍に迫った。いま摩文仁の丘に戦没者慰霊碑が並ぶ。人の命はもう戻らない。(茂喜)

またあの日が巡っ来た 戦中派の胸の痛み 目や鼻水にのびゆく手が忙しい   (温子)

沖縄摩文仁の激戦に祈る(芳彦)

那智子

八咫烏世界の夏を駆け抜けて                 今井 温子

日本代表のエンブレムに描かれている鳥「八咫烏」サッカーFIFAワールドカップ2026 4回の試合とても楽しく観戦させていただきました。(美惠)

サッカー日本代表のシンボルマーク。頑張ったけど残念!次回に期待!(智子)

サッカーの象徴・八咫烏。ブラジル戦・2対1の惜敗に、四年後の飛躍を期待。エールの一句に共感です。(博子)

紀美子

梅雨の星町医宣長訪ふ真淵                  山本 純夫

松阪の一夜を想われて。(正規)

芳太郎

麦星やことば少なに語る人                  相沢 恵美子

余計なことを言わず、説明もせず、「語句」に語らせている句。(孝雄)

雨の晴間の雲の間に見え隠れする麦星が、言葉少なに語り聞き手に想像の余地を残してくれる人の姿に重なる。季語が効いている。(博行)

雅司、玲子、百り子

喜雨来る鉦に太鼓の讃岐かな                 合田 憲史

匠子、尚、道代

ほたるの火草の丈より戻りけり                河野 伊葉

蛍の浮かび上がる様子を「戻りけり」と表現した巧みさ(敏晴)

長雨のやみ間のがさず夏燕                  土屋 尚

玲奈

夏帽子碓氷峠の風になり                   岡田 寿恵

下五で決まりです。  (温子)

恐竜がメタセコイアの新樹蔭                 小池 澄子

なんとシュールな一句。生きた化石と言われるメタセコイアの新樹影に、ジェラッシックパークから抜け出た恐竜が・・・。(博子)

大賀蓮泥掻き分けて観世音                  冨士原 博美

正明、三枝子

夕立くる日なたの匂ひ巻き上げて               熊谷 幸子

下五が夕立の気配、勢いを感じさせます。(手鞠)

夕立が来る前の匂いを実感しました。「日なたの匂い巻き上げて」でほこりの匂いや雨が降っているときの静かさまで感じられました。青猫

中七下五の描写に実感がこもり共感する。嗅覚と聴覚に直接訴え、遠い記憶を呼び覚ます力がある。(博行)

中下句がお上手です。(春野)

夕立が来る瞬間の描写が素晴らしい。(泰一)

中七と下五の表記が効いています。(相・恵美子)

日なたの匂いという表現が新鮮(久丹子)

日向の匂いを巻き上げるという表現に惹かれました(早・恵美子)

志昴女、夏江、雅司

ひとかけの矜持や父の盆用意                 宮川 陽子

伊葉、玲子

行々子水流プラス監視塔                   石川 順一

博嗣

野いばらや亡き友に重ね偲びたり               嶋田 夏江

なんとなく分かります(みつ子)

存分に遊ばれてゐる夏の水                  伊藤 正規

夏休みに子供たち家族を含め大いに楽しんでいる光景が浮かびます。 郁文

遊んでいる子供(人?)の元気で楽しい様子が浮かびます 水もうれしそう(久丹子) 

芝生踏むネイルアートの素足かな               金子 肇

気持ちいいですね(みつ子)

緑の芝生へ踏み出す一歩はネイルアートの白い足、綺麗ですね。ふみ

ネイルに凝っているようだが、根っからのお転婆娘かしら?「素足」に惹かれました(憲史)

香誉子

芋焼酎島の宴席抜けられず                  内村 恭子

沖縄でしょう。宴会は長いと聞いていますが、作者はそれを楽しんでいるように見える。(肇)

人間関係の濃密な島の宴会は、そう簡単に抜けさせてもらえません。(哲雄)

孑孑や老いてこころうこともあり               垣内 孝雄

三枝子

母のこと「オイ」と呼ぶ父籠枕                金山 哲雄

はま子

一面に帯垂らすごと昆布干す                 熊谷 佳久子

帯の発想力に感心。 郁文

干昆布の様子が良く見えます(早・恵美子)

陽子、はま子

体力測定こけて老身の青蛙                  齋藤 みつ子

「こけて老身の青蛙」はこけて青蛙のようなポーズになった亡父を思いだしました。それを笑いにしてくれるところが粋だと思いました。青猫

朝まだき茅の輪くぐりのビジネスマン             髙橋 紀美子

少し早起きして茅の輪潜り、無病息災を願う健気なビジネスマンにエールを。ふみ

おしおいけ、那智子、香誉子

夏羽織ぬいで怪談本題に                   土屋 香誉子

講談士の熱演ぶりが目にうかびます。 郁文

羽織を脱ぐ所作もタイミングも芸の内。(哲雄)

羽織をぬぐことが、今から怪談が始まるという合図のように感じその瞬間からわくわくしてしまいます(律子)

雅司、玲奈

夏に病んで光こぼるる匙の粥                 中田 秀平

とにかく早くお元気になってと思われる句です。(正規)

病んで匙の粥が光り輝いていたという病み上りの気持ちが良く分かる(芳彦)

五月闇スマホに閉ぢてゐる世界                岡部 博行

世界とつながる道具であるはずのスマホが、個人をある世界に閉じ込める道具となっている怖さ(敏晴)

便利ではあるけれど、頼りきるのは危険ですよね。(誠治)

年齢もありますがスマホの機能を理解しきれない。とても残念です。(勢津子)

スマホには世界の闇が全て入っている。小生も気が付きました。(芳彦)

内・恭子

文学部裏に熟れゆく杏子かな                 小池 澄子

学生達は杏子に関心があるのか否か。寿恵

史子、はま子

男梅雨ゴム長も良き若女将                  児島 春野

大雨の出水にかまえている女将の様子が浮んできます。(光男)

若女将は長靴を普通は履かないので、男梅雨を上手く語っています。(博美)

若女将のさっそうとした姿が浮かんできた。(佳久子)

激しい梅雨の雨に下五の若女将が対照的にあり、ゴム長も良きの中七のつなぎにより季語が動かない句(余慶)

雲ゆるゝ碧水にさす田植ゑ歌                 よしたろう

歌は、昭和17年に発表された文部省唱歌。中山晋平の曲が弾む。「そろた 出そろた さなえが そろた」。(茂喜)

まさに田植え直後のあざやかさがあります。(伊葉)

青梅雨や十年暮らす猫の背                  岡田 寿恵

家猫ちゃん?地域猫ちゃん?十年見慣れた背中を見ているゆったりとした時間(美穂)

博嗣

西瓜買ふ叩けば甘き音のして                 阿部 朋子

正明、匠子

地下通路てふ匂ひあり梅雨湿り                長岡 富美

由紀子

噴水の止み間を待てプロポーズ                宮川 陽子

噴水の止む間は、次のステップへの衝動か!(ユリ子)

梅雨寒しやたら物言ふ電子機器                鳩 泰一

まさに炊飯器までおしゃべりしますよね(みつ子)

梅雨で籠もりがちな毎日、あのお喋りは鬱陶しい。(肇)

最近の電子機器の音声機能を煩わしく感じる作者。私もその一人だ。季語が作者の気持ちを語ってくれている。(博行)

夏江

風鈴に好む風あり軒静か                   熊谷 幸子

夕風を待っている静かな佇まい(勢津子)

風鈴の音がならないのは風鈴にも好まない風があるからなのか、と妙に納得してしまいます(律子)

史子

梅雨さなか珈琲館の昼灯                   原 道代

由紀子

鰻丼や妻を育てし川の町                   中島 敏晴

おしおいけ、三枝子

夏至の夜や生きもの潜む蒼き森                三浦 恭子

ノルウエーの森に棲むトロールを連想しました。(手鞠)

何とも言えない不気味さ   (幸子)

秀平

大き虹厨の母を呼びにけり                  髙橋 紀美子

虹を見る機会はあまりない。折角の大きな虹、母にも是非見てもらいたい。(肇)

雨上がりの美しい虹。独り占めしないで、一緒に見ようと母に声をかけている。親子の仲の良さが垣間見える(智子)

今日は今日明日は明日とてねぶの花              冨士原 博美

ねぶの花をみているとそんな気持ちになりますね。(ユリ子)

九十九折風待月の木挽唱                   中島 敏晴

南部か、奈良か。雨の中を山を下りて来る職人達が見えました。(正規)

欠席の理由(わけ)夏風邪といふことに            福田 誠治

由紀子

捩花や吾を見送る杖の母                   野口 日記

老いても自分の心配をしてくれることをありがたく思う気持ちと離れて暮らす気持ちの重さが伝わります。青猫

母君に見送られるとは、心強い。(順一)

水攻めの城の跡地や蓮青葉                  妹尾 茂喜

澄子、秀平

龍神の冷やす貴船のラムネかな                小栗 百り子

貴船神社の参拝を終え、喉を潤すラムネはキンと冷えていてそれは龍神が冷しているのだと思う作者。貴船の水の美しさ、神域の緑の美しさも見えてくる。(ゆかり)

何やら有難いラムネですね。そういえば昨今のラムネ音がしなくて小さくて残念(早・恵美子)

場所柄「竜神」が「ラムネ」を冷やす~という発想に”あっぱれ!”(憲史)

おしおいけ、三・恭子、匠子、純夫

指笛のやうに鳴く鳥梅雨晴間                 上脇 立哉

指笛という具体的な描写と、季語が良いと思いました。(手鞠)

何の鳥かしら  (幸子)

香誉子

黴の靴拭ひて急ぐ家族葬                   青猫

家族葬とは言え普段履きの靴という訳にはいきませんものね。(哲雄)

博嗣、陽子

誕生日ワタシに送るサクランボ                小高 久丹子

自分の誕生日を自分でいわうという心が分かるような気がする。片仮名がそのことに気づかせてくれる。(桂一)

ワタシが効いていますね。(光男)

金魚鉢水おさまって今朝のいろ                河野 伊葉

身近な日常が収まるべきに収まる安心感(敏晴)

撒き餌かな?右往左往していた金魚たちも静まった。「今朝のいろ」を想像するのも楽しい。(博子)

ででむしや一人ぼっちの帰り道                垣内 孝雄

一人ぼっちなのは作者なのか、はたまた蝸牛なのか。楽しい想像が広がります。(誠治)

帰り道がいいと思います。(百り子)

ひとりぼっちで帰る道は『や』で切れているものの、まるでででむしの道のりのようにひたすら長く感じたのかもしれません(律子)

しづかに音もなく移動するででむしの習性を詠取り、作者とででむしの侘びさびの情趣が見えてくる句(余慶)

澄江

以上

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